衣玖さんが行くだけ。   作:君下俊樹

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書きたいことは全部書いた。いやぁ、NKT…。
個人的に煙草が似合うと思うのは妹紅と魔理沙。それと幽々子様と小町。
前者は紙煙草で後者はキセルだと思う。俺だけ?

ちなみにリュ-カクサ-ンタグはこの話の為だけに考えた。

違和感あったので書き換え


妹紅と竹林と煙草

 永江衣玖は、探求者であった。その瞳に映るのは広大な竹林。乱雑に生い茂る数万の竹を眼下に見下ろしながら、気になった物をメモに取っていく。

 入り口には錆びた赤い吸殻スタンド。

 丁度良く、一本。外の世界じゃベストセラーだという赤いパッケージが胸ポケットに入っている。彼女の忙しない上司が拾ったといって押し付けてきたものだった。最後の一本を取り出して備え付けのゴミ箱にパッケージは捨てる。身体中のポケットを弄り、これもまた、最後の一本のマッチを見つけた。

 何か、トゲトゲしい味がして、衣玖は顔を顰めた。

 

 

 

 

 中ほどに交差するようにへし折れた竹、大きな岩、少し空いた謎の空間、などなどパッと見て分かるものを箇条書きしながらふよふよと飛び回る。目指していたのは永遠の名を持つ屋敷。用事がある訳ではないが、そこは探求者。

 何かがなくても、何もないがあるならそれでよし。哲学じみた思考を重ねる。

 

 しかし、今回の用事は永遠亭自体にある訳ではない。むしろ、その手前。今まさしく眼下に広がる竹林こそが目的である。

 

『迷いの竹林』

 

 変わらぬ景色、深い霧、僅かな傾斜から斜めに生えた竹が方向感覚を狂わせて、名前の通りに、数多の生き物を迷わせ、食む。そして、竹はさらに育つ。ふと目を離したら土から頭を覗かせていた筍がこちらを見下ろすようにしなっていた、何てこともしばしば。

 余程の強運、豪運がなければ無事に竹林を抜けることは出来ないだろう。

 

 では、成長せず、動かぬ物を目印に歩けば迷わずに着くのではないだろうか。

 それが、今回の議題であった。まさしく、探求者であると言えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、結果。

 

「何やってんのさ」

「いえ、3日ぶりの会話が出来る生命につい涙が」

 

 三日間、竹林を彷徨い歩いていた訳である。その間、数十では収まらない程度には妖怪に襲われたが全て返り討ちにはしてきた。命までは奪っていないが。何度あの雲の中へ帰りたいと思ったことだろうか。あの中だって人は居ないが、自分のテリトリーであるなら安心感は段違いなのである。

 

 今は、白髪の少女に手を引かれて、竹林を進んでいる。不思議な少女だった。空気が停滞どころか、完全に停止してしまっている。おそらくは不老不死、それも最高クラスのものだろう。

 背丈は衣玖よりも頭一つ程低い。地面まで届くかと言うレベルの白髪をゆらゆらと揺らし、その奥で紫煙も行き場をなくしたように揺れている。

 少しよれた白いカッターシャツに赤いサスペンダーで吊るした同色のもんぺ。お札が貼り付けられているのはどういう訳があるのか、聞かないことにした。

 

「ねえ、あんた。空を飛ぼうとは思わなかったの?」

 

 少女が振り返り、こちらへ質問を投げかけてきた。口の動きとともにタバコが上下に動く。こちらを見つめる深紅の瞳は、少し訝しいものを見るような目だった。

 

「少し、知りたいことがあったので」

 

 衣玖がそう言うと、少女は自分からの質問だというのに興味なさそうにふぅん、と漏らした。

 枯れる寸前の土は歩く度にサリサリと乾いた音を立てて、二人の無言を引き立たせる。

 

「…………あんた、吸う人?」

 

 この沈黙を破ったのは少女の方だ。彼女は衣玖に向けて青いパッケージを見せた。それには西洋のアルファベットで銘柄が書かれていたが、あいにくと衣玖には読めなかった。この間のは例外として、紙のタバコはあまり吸わなかった。もっぱらキセル。リキッドなんてお洒落なものも数回吸ったことがある。

 

「……まあ、嗜む程度には」

「ゴロワーズを吸ったことがあるかい、って歌があるのよ」

 

 彼女が差し出した一本の煙草は衣玖の想像とは違い、両端が切り落とされて、フィルターは付いていない。衣玖が一度も吸ったことのない形だった。

 衣玖はそれを受け取って少しの間困惑しつつも回しながら眺めていた。

 

「両切りタバコってやつさね。口に入っちまうから、優しく吸うのさ」

 

 少女が軽く笑ったので、衣玖は口に咥えてそこでようやく火を持ってないことに気が付いた。電気で点けられるだろうかと悶々としていると少女の白魚のような指が衣玖の咥えたタバコに伸びた。

 少女が触れた先端から煙が立ち上る。炎を操る能力か何か持っているのかもしれない。しかし、名前も聞いていなければ、こちらも名乗っていない。そういうことも聞けないだろう。

 少女の言う通りに心持ち優しく吸ってみれば、重く、棘のある煙が舌と喉を蹂躙するように流れ込んだ。目にも染みて、薄く涙が流れる。急いで口から離して何度か咳き込む。少女をみれば何が面白いというのか、軽やかに笑っていた。

 

「まだ強かったみたい。まあ、こういうのは慣れよね。空気と一緒に吸えば少しは和らぐと思うけど」

 

 二度言うが人の不幸の何が面白いのか。彼女の咥えたタバコはふるふると震えている。衣玖は一抹の恥ずかしさを感じながら更に優しく、丁寧に吸う。

 

「これは……」

「お、上手くいったか」

 

 普段吸うものとは比べものにならない、上質な煙。普段のものが粗悪な訳ではないだろう。吸い方の違いでこうも変わるのだろうかと、衣玖は驚く。

 

「フィルター付きだと、ついつい強く吸っちゃうからね」

「ああ、クールスモーキングというヤツですね。なるほど、良い香りです」

「…………あんた、嗜むってレベルじゃないでしょう」

「いえ、どうでしょうね」

 

 衣玖はもう一度煙を吸って、たおやかな微笑を浮かべる。少女はなんだかな、と頭を掻いて苦笑いする。

 

「さあ、もう出るよ」

 

 ふと、少女の視線の先をみれば明るい陽の光。霧で薄暗い竹林を抜けた証がそこにあった。

 

 急に辺りの竹がなくなる。ついに戻ってこれたのだ。ああ、よかったと胸を撫で下ろして、少女にお礼を言う。少女は照れたようにお礼を受け取った。

 

「それと、吸い殻はここね」

 

 彼女が指さしたのは、錆びてしまった赤い吸殻スタンド。彼女が言うには昔タバコのポイ捨てで火事があって、それから置かれたらしい。衣玖は小さく笑う。少女はまた訝しげにこちらを見た。

 

「いえ、なんでも」

 

 探求者衣玖は一つの結論を出した。やっぱり、迷いの竹林は迷ってしまう。

 けど、タバコ好きの少女に会えれば帰ってこれる。たぶん、何度でもこの吸殻まで帰ってこれるのだろう。

 備え付けのゴミ箱には、きっと赤いマルボロが入っていた。




衣玖さん「けほっけほっ(涙目)」←アルティミットシイングかわいい。

これからどうしよう。衣玖さんの可愛さはとどまるところを知らないけど、書くシチュが思い浮かばない。
活動報告で書いて欲しいシチュでも募集しようか(するとは言ってない)

最後に、未成年の喫煙は法律で禁止されています。ブタ箱じゃないと生きていけない悪ガキ以外は吸わないようにしましょう。

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