マクロスΔ 黒き翼   作:リゼルタイプC

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遅れました。

地味に三連パンチは痛い。


第8話 惑星 アル・シャハル(前編)

惑星『アル・シャハル』

 

首都シャハルシティを中心とした砂漠に包まれた星。観光産業を現在進行形で発展させているため、都市部の開発で活気が出ている。また、ゼントラーディによるプロトカルチャーの遺跡破壊が免れた星であり、多数遺跡が存在している。新統合軍とゼントラーディの駐留軍がいる。

 

「そのような星でヴァールシンドロームが・・・」

「とはいうが、どの星でもヴァールが起きている。つまりどこの星でも起こるってことだ。」

「そういうことですね。」

 

アラド隊長が俺の独り言に答え、着々と準備を進めている。俺は自分の準備分を終わらせて手持ち無沙汰になっていた。とはいえ、俺は出撃ができない。皆の準備を手伝うくらいだ。

 

「ヴァールシンドロームは現在どのような人種でも発症する。対症療法はできても感染源が分からないようでは。」

 

溜息が出るのも無理はない。生きている上で感染源は無数にあるのだ。

一旦アラド隊長と俺はミーティングルームへと向かった。そこにはデルタ小隊と『ワルキューレ』の面々がそろっている。俺はアラド隊長から離れミラージュさんの隣に立った。

 

「早速だが、通達だ。これより惑星『アル・シャハル』に潜入し、現地調査を行う。現地潜入組に関してだが、『ワルキューレ』から美雲さんとマキナさん、うちからはミラージュを。」

「あの、隊長。それは」

「実地調査はまだしたことないだろ?経験だ。」

「それを言ったら、ルシだって。」

「すみませんけど、ミラージュさん。俺は元いた世界では軍人です。しかも正規軍にいたので潜入調査とかしたことがないんです。癖が抜けてないので、分かる人がいれば直に軍人って分かりますよ。」

「私だって元は軍人ですが・・・・はぁ~分かりました。」

「話がついたな。それからチャックとレイナは惑星の衛星軌道上から遠距離通信と解析を行って欲しい。」

「ウーラ・サー」

「ラジャ」

「しっかりね~。レイレイ~。」

「そっちこそ。」

 

二人で『W』の文字を作り、気合を入れていた。

 

「俺とメッサー、カナメさん、ルシウスは待機だ。状況によっては出るがルシウスは先の通達があった通り、機体が準備出来ていない為出撃できない。苦い思いをするかもしれんが、堪えてくれ。」

「分かっています。」

 

歯がゆいが、今は我慢するしかない。

 

「それでは、解散。各員準備にかかれ。」

 

その言葉で皆、出発の準備にかかった。俺は電子戦機を使うチャックの準備を手伝った。

 

 

「今回の潜入で原因が分かればいいですね。」

「現状で対症療法が手一杯だ。原因解析は高望みだな。」

「だが、問題点はその点だけじゃない。」

「・・・『アル・シャハル』にはゼントラーディ軍の駐留軍がある。」

「???」

「さっき言ったろ。ヴァールはどの人種にも感染するって。」

「!!!・・・まさか。」

 

アラド隊長とメッサー中尉の言葉で気付いた。最悪の状態を想像したら、確かにこのような事態があり得る。潜入組と解析組に俺は声を掛ける。

 

「気を付けて行ってきてください。」

「おう。」

「気を付ける。」

「もち~。」

「肝に銘じて」

「ありがと。」

 

そう言って潜入組とチャックのVF-31が飛び立って行った。

 

俺は待機組がミーティングルームに向かうのを後目に、『ストライクノワール』が収納されている格納庫に一旦向かった。そこでは現在修復が行われていた。近くの整備兵に俺は話しかけた。

 

「ご苦労様です。」

「おう、お前さんか。」

「どのくらいかかります?」

「VFなら一週間くらいなんだが、こいつの場合、ひと月半はかかるな。悪いが我慢してくれ。」

「かかって当然です。すみませんけどよろしくお願いします。」

「おう。」

 

整備兵との話を終え、俺は一旦『ストライクノワール』を見上げた。

かつての世界ではこの機体で『ザク』『グフ』『ジン』を倒した。それなりに戦歴を積んだつもりではある。だが、これから赴くであろう戦場はその経験を一度リセットすべきだろう。『ヴァリアブル・ファイター』と『モビルスーツ』。その特性は違いすぎる。

 

---初心に帰っても癖は抜けきれないか。

 

「ん?どうした?」

「いえ、なんでもありません。」

 

俺が立ち去らずに立っていたので、不信に思ったのだろう。

一言断ってから俺は格納庫から立ち去った。

 

「遅れました。」

「遅いな。どこに行っていた?」

「『ストライクノワール』の格納庫に。」

「そうか。」

 

メッサー中尉の言葉に俺はそう返し。モニターを見つめた。

 

「こちら美雲。異常はないわ。マキナとレイナの方はどう?」

「こちら、マキマキ~シャハル・シティも異常なし~・・・はっ!?あ!あれは!?」

「「「???」」」

「104式リガードちゃ~ん。ん~~きゃわ!」

 

俺以外の3人が一気に脱力した。

 

「?どうしました?」

「い・・いや。」

「・・・なんでもない。」

「・・・気にしちゃダメよ。気にしちゃ。」

「・・・了解です。」

 

触れてはならないのだろう。

 

「ところで『104式リガード』って?」

「ゼントラーディが使っている機動兵器だ。星間大戦時より使われている。」

「そのアップデート版だが。」

「なるほど。」

 

「こちらレイナ。複合センサー異常なし。」

「今度、うちの店で辛みそクラゲ餃子ってのだすんだけど、良かったら・・・」

「いい。クラゲは生がイイ。生で丸呑み。」

「く~いいねぇ~。クラゲの刺身にバナナ酒。」

「アラド隊長!」

「任務中だぞ。チャック少尉。」

「ウーラ・サー。しかしホントにヴァールは現れるんのかね?」

「この一月の間に10件のヴァールシンドロームが発生している。その内3件で生体フォールド波の異常を検知。」

「15時間前シャハルシティ近辺でも探知されたわ。」

「そこでその正体を掴めってのがレディMからのご命令だ。」

「・・・レディM?」

 

初めて聞く名だ。コードネームか?

 

「うちのヘッドみたいなものさ。」

「・・・成程。」

「で?美雲さん。うちのまっすぐ娘はどうだい?」

 

・・・まっすぐ娘って。

 

「ミラージュさんってそんな風に呼ばれてるんですか?」

「・・・隊長だけだ。」

「・・・そのわずかな沈黙はなんです?」

「・・・」

 

「さあ?あの子と一緒じゃ潜入調査なんてできないわ。」

 

その頃

 

「美雲さん!?応答してください美雲さん!・・・まったくいつもこれなんだから!!!」

 

・・・ミラージュさんは苦労人なんですかね?

 

 

ハヤテSIDE

 

今日は厄日か?

ハヤテ・インメルマンはヤケクソ半分正義感半分でバイクを飛ばしていた。その後ろには密航犯の少女が載っていた。

バイトはクビになるし、密航犯を見つけてしまうし、尚且つそいつを助けてしまった。

厄日なのかとぼやきたくなるが、最終的にそいつを助けてしまったことに対して後悔はない。密航犯ことフレイア・ヴィオンをつれて俺は必死にバイクを駆った。

 

路地裏に逃げ込み一息ついていたところ

 

「あ あの、なんで助けてくれたん?」

「さぁね。」

 

ホントなんでなんだろうな?

 

「あんた、星は?それとも移民船団?輸送船ならツテがあるから、さっさと・・・」

「帰らん!!」

「ラグナまで飛ぶつもりかよ・・・」

「風に乗れば飛べる!命がけで飛べば飛べる!」

「たかがオーディションにそんな価値があるのかよ・・・」

「ある!なんでさっきからそんなことばっかいうかね!」

「なかったからだよ!」

 

ひどくイラつく。俺には見つかられなかった。

 

「散々色んな所行って色んなことして。でも見つかられなかった。」

「そりゃそうだよ。どこかじゃなく行きたい所にいかんきゃね!」

 

・・・行きたい所?

 

「私は好きな歌を歌いたい!1分でも1秒でも長く!」

 

・・・羨ましい限りだな。こいつには自分の芯がはっきりしてやがる。って!?

 

「あぶねぇ!!」

「え!?」

 

とっさに俺は走り出しフレイアを受け止めたがスピードを出し過ぎてしまい、フレイアごと転がってしまった。

 

「つ~~~~~」

「イッテてててて」

「はわっ!!はわわわわわ」

「イッテ!おい!止め!」

 

こいつ殴ってきやがった!

 

「動くな!この変態!」

「え!?」

 

変態って、俺のことか!?

 

「密航犯確保!!」

「ちっ違う!!」

 

俺じゃない!!

 

「はわわわわ、ハイ!!密航犯は私です!!!!」

「・・・え?」

 

なんでもいいから関節技をほどいてくれ!

フレイアのおかげ(?)でなんとか誤解を解いてくれたが。

 

「すみませんでした!!」

「あんた空港の警備員じゃないな。なにもんだ?」

 

突如現れた女はとてもじゃないが警備員という雰囲気を纏っていない。薄いが軍人って感じだ。

 

「『ケイオス』ラグナ第3飛行団所属 ミラージュ・ファリーナ・ジーナス少尉です。」

「えっ!デルタ小隊!?」

「苦情でしたら広報に・・・」

「デルタ小隊ってひょっとしてワルキューレと一緒に飛んどる・・・」

「そうですが・・・」

「は~~~~~ゴリゴリ~~~~~!!」

「な・・・なんなんですか・・・?」

「ファンなんだと。アンタ達の。」

「はいな!!」

 

ここまで行くとかなりの筋金入りか。

その時

 

「「!!!」」

 

なんだ?今の?

 

「今のは?」

「・・・歌?」

 

今の歌は一体!?

 

SIDE OUT

 

「生体フォールド波に異常!!どうしてこんな一斉に!!!」

「最悪の展開だ!メッサー!カナメさん!!出るぞ!!!」

「「了解!」」

「ご武運を」

「デルタ小隊出るぞ!!」

 

アラド隊長とメッサー中尉、カナメさんは準備をして出撃していく。

 

「・・・」

 

歯がゆい気持ちが高まるが、どうにか我慢する。

俺はどうしようもなくその場にいるのはどうかと思い直し、一旦自室に戻ろうとした。

 

「ルシウス。」

「?艦長。」

 

ゼントラーディの艦長がこちらを呼び掛けてきた。

 

「ちょっと来てくれ。」

「了解。」

 

艦長の呼びかけで俺はついて行った。

 

「お前用のVF-31は準備中だと言ったな。」

「ええ。そう聞いています。」

「悪いが実は準備すらされていない。」

「!?どういうことです!?」

「喚くな。メッサーと話し合ってな。お前の戦闘センスを鑑みて別の機体をお前に割り当てようと決まった。」

「?別の機体?」

「ああ。」

 

そういうと艦長はある格納庫へと入り俺もそれに続く。

 

「この機体だ。」

「!!!これは」

 

そこには黒い機体があった。黒を基調とし、所々に青のラインが入っている。全長はVF-31とそんなに変わらないだろう。だがエンジンが4発ついており力強さがより前面に出ている。

 

「型式番号YF-29B ペットネーム『パーツィバル』。試作機だがこいつの元になったYF-29 『デュランダル』が初めて実戦に投入され『バジュラ戦役』終結に大きな役割を果たした。これはその地球本国仕様の機体だ。」

「それがなぜここに?地球からだいぶ離れてるんでしょう?」

「デルタ小隊用のVF-31開発過程で必要になってな。データ取りに使用された。それ以来オーバーホールして保管状態にだったんだが。そんな中お前が来た。」

「・・・」

「ルシウス・ペンドラゴン少尉。現時刻をもって待機命令を解除。YF-29Bへ搭乗し、『ワルキューレ』及び『デルタ小隊』への援軍に迎え。」

「了解!!」

 

敬礼し、俺は直に駆け出した。パイロットスーツを着込み、大急ぎで格納庫へと戻る。そこでは整備兵達が取りつき、機体の最終チェックを行っていた。

 

「YF-29B用のスーパーパックは大気圏内でも使用可能だ。だがその分貴重だからな!簡単に壊してくれるなよ!」

「了解!!」

「全システムチェック完了。射出要員に作業を移行!!」

「了解デルタ5搭乗機をカタパルトへ!!」

 

俺は誘導に従い、カタパルトへと運ばれた。そこには満点に広がる星々と、蒼く光る星惑星『アル・シャハル』。

 

「全部署に伝える。現時刻をもってデルタ5の識別コードは有効になった。デルタ5の出撃を許可する。」

「デルタ5射出準備完了。グットラック、デルタ5。」

「サンクス。デルタ5。ルシウス・ペンドラゴン。出る!」

円卓の騎士の名を冠した機体が今、虚空へと飛び、蒼き星へと向かって行く。

 




三連パンチ
1発目→出張(流石に書く暇なかった。)
2発目→データ消失(何が起こった?)
3発目(これが地味に大きい)→Operating System Not Found


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