上司の人選により時間が取れませんでした。
ルシウスと美雲の丘の公園での誓いから三日がたった。ルシウスは今まで以上に訓練に精を出していた。その間も『ストライクノワール』の修復が進められていたが
「やはり1ヵ月半はかかると。」
「無理もない。」
「機体解析は済んでいますが、部品の成分分析から修復は始めないと。下手なパーツは使えませんからね。」
『ワルキューレ』のマキナとレイナが端末を呼び出して状況を見ながら、呟く。『ストライクノワール』の修復状況の予定が組まれた。部品構成・部品成分解析・部品作成・組立・配線・システムチェック・試運転・実戦投入までに1ヵ月半はかかると工程が組まれていた。
「私達もできるかぎりサポートしたいけど。」
「できる時で大丈夫ですよ。マキナ姐さんは本業が優先すっからね。」
「私も手伝う。・・・可能な限り急いで欲しいって頼まれたから。」
マキナとレイナは整備班と話しをしながら今後の予定を組んだ。
アーネスト艦長がある人物と話しをしていた。
『じゃあ、あの機体にその異世界の人を載せる訳?』
「現状で、それがベストだ。」
『個人的に言えば不満があるんですけどね。見たとこフォールドレセプターの保菌者でも無い。VFの操縦も2週間も満たない。知識もほとんど無い。不安な要素だけしかないんですけど。』
「こう言ってはなんだが、メッサーが奴をパイロットにと推していてな。それに珍しいことに美雲が奴にご執心でな。」
『・・・美雲が?』
「そうだ。」
画面の人物は顎に手を添え、考えこみながら。
『分かりました。『YF-29B』のこの通信以降の判断は艦長に一任します。『VF-31』の開発過程でのデータ収集でも使われた貴重な機体です。容易く失うことがないように。』
「了解した。」
『では。』
そう言って通信を切った。特務少佐との話し合いはこれにて完了だ。あとは実戦あるのみ。
「チャック少尉、宙返り時にエンジンの出力が甘い。ミラージュ少尉、背面飛行時に機体のグラつきが多少ある。注意しろ。ルシウス、左後方からのチャック少尉の接近時に気付くのが遅い。レーダーだけでなく、目視の確認をするのも忘れるな。」
「了解。」
「ウー・ラサー。」
「分かりました。」
「今日の訓練は以上だ。」
メッサー中尉はそのまま歩いて行った。
「・・・・」
「今日もまた死神様は死神様だな。」
「手厳しいですね。」
俺は答えず手元の端末を見て先程の指摘に関して確認していた。確かに1テンポ遅いのがわかる。よく見てらっしゃる。
「さて、ルシウス君?」
「ん?なんっだ!?」
チャックに肩を捕まれた。っていうか、痛い!痛い!!
「先の美雲さんとのデートについてくわ~しく話してもらおうか?」
「あの・・・・チャック。」
「・・・・・・。」
チャック・・・さんは目を血走らせて、笑いながら(?)肩をつかみながら話してきて、
ミラージュさんは完全にあきれ声で、
俺は完全に固まった。
「おい?話してもらおうか?」
「ちょっと待ってください。えーとまず、なんで知ってんの?」
「実は・・・。」
ミラージュさんはある出来事を話してくれた。
「マジかよ!!!!!!」
「マジかよは俺のセリフだよ。何で俺がアプローチしても取り付く島もないのに、会って間もないお前が!!!!お前がデートに行けるんだよ!!!!」
「・・・・・・」
俺はデートがバレていたのに、それが以前ミラージュさんと入った店の店員から知らされたことに愕然としてしまった。世の中って怖い。
「あら、私にだって選ぶ権利くらいはあると思ってよ?」
「「「!!!」」」
その喧噪がピタリと止んだ。
「美雲さん?どうしたんですか?」
「艦長からあなたたちに通達。11:00に艦長室に来てほしいって。ルシに関する事らしいけど。」
「俺ですか?」
「そうみたい。じゃあ伝えたから。」
そのまま美雲さんは格納庫から去っていった。
「とりあえずシャワーぐらい浴びましょう。」
「・・・そうすっか。」
「そうしましょう。」
俺たちは訓練で掻いた汗を流すため、シャワー室に向かった。
チャックと俺はシャワーを浴びながら、
「しかし、何のことかね?ルシに関する事って。」
「わかりません。やっぱり行って確かめるしかなさそうですね。」
そろそろ11時になりそうだったので、チャックと俺は着替えて、艦長室へと向かった。
「艦長、チャック・マスタング少尉、ルシウス・ペンドラゴン、出頭しました。」
「入れ。」
「「失礼します。」」
入室して敬礼をする。まだ、ケイオス式の敬礼には慣れていないな。
部屋に入ると、デルタ小隊のアラド隊長とメッサー中尉、ミラージュさんに『ワルキューレ』の美雲さん、カナメさん、マキナさん、レイナさんがいた。チャックはデルタ小隊の列に並び、俺は艦長の前に立った。
「よく来た。早速だが、通達を行う。ルシウス・ペンドラゴン、現時刻をもって貴君を少尉に任命。同時にデルタ小隊に配属する。」
「ルシウス・ペンドラゴン。拝命致します。」
俺は返事をするとともに敬礼を返した。
「コールサインはデルタ5とするが、まだ貴君用の『VF-31』は準備ができていない。その間は出撃ができないが、我慢してくれ。」
「わかりました。」
「さて、通達は以上だ。メッサー中尉、今後もしっかりと鍛えておけ。」
「わかりました。」
メッサー中尉が敬礼を返す。
「以上だ。解散。」
その言葉でアラド隊長以外のデルタ小隊と『ワルキューレ』のメンバーが退出する。
「艦長。あの話は本気で?」
「戦闘能力を削る訳にはいかないからな。現状でヴァールシンドロームの根本たる原因がつかめていない。その現状で奴の戦闘能力だ。下手なパイロットよりマシだ。」
「『ワルキューレ』の護衛小隊である『デルタ小隊』に戦闘要員を配属させると?」
デルタ小隊に求めらるのは何も戦闘能力だけじゃない。『ワルキューレ』のバックでのスタント飛行。曲芸飛行等の器用さが求められる。現在のルシウスに欠けているのはこの『器用』だ。デルタ小隊の配属はやはり早いと思う。
「ところがそうも言ってられない状態になり始めた。」
「どういうことだ?」
「30光年隣の惑星『アル・シャハル』でヴァールが確認された。」
「!!!」
「2日以内に行ってもらうことになる。」
「了解しました。」
その小さなやり取りで全てを理解した。原因不明の感染症との闘い。1つでもこちらの戦力なるなら、使わなければならない。
だがこの時、『マクロス・エリシオン』の艦長と『デルタ小隊』の隊長は知る由もなかった。ヴァールシンドロームとは別の、それも明確なる敵意を持った敵との闘いが幕を開ける事を。
俺達は『エリシオン』内の『ワルキューレ』と『デルタ小隊』用のブリーフィングルームで立ち話をしていた。
「ついにルシルシがデルタ小隊に参戦か~~」
「ぶっちゃけさほど違和感がない。」
「2週間は確実に私達と一緒にいましたから。」
「そーだったな。」
俺がデルタ小隊に配属されることに皆はさほど違和感を抱いていないらしい。確かにここ2週間近くはデルタ小隊と『ワルキューレ』の誰かと一緒にいた気がする。
「ともあれ、これからも厳しくするがついていけるか?」
「努力しますよ。」
「努力するだけでは不合格だ。確実に指導した内容を己のものにしろ。」
「・・・・・・了解。」
指摘された通りだ。確実に技量を積まなければ意味がない。
「大丈夫よ。ルシなら」
「そうです。私も保障します。」
「ありがとうございます。」
美雲さんとミラージュさんが応援してくれるが、ミラージュさん何かあったの?なにやらすごく必死なんだけど。
「それじゃあ今日の訓練が終わったら、デルタ小隊用の寮に行こうぜ。」
「そうだった。準備ができてるんだっけ。艦長から許可もらってあるから今日からそちらに移ります。」
「よっしゃ。なら歓迎のパーティーを開かなくっちゃな。」
「残念だが、パーティーはお預けだ。」
アラド隊長が部屋にやってきた。
「アラド隊長?」
「何がありました?」
「30光年隣の星『アル・シャハル』でヴァールシンドロームの発生が確認された。」
「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」
「2日以内に準備・現地での調査を行う。場合によっては沈静化も行う。」
闘いの幕が目の前に卸された瞬間だった。
本編主人公がもうすぐ出ます。
エンブレム槍トリアにします。