マクロスΔ 黒き翼   作:リゼルタイプC

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遅れて申し訳ありません。

全然時間を取れなかった。何故だーorz

FGOの現イベも全然進められていないぜ。なのにマリーさんきました。


第6話 教練と息抜き(後編)

翌朝。

デルタ小隊と『ワルキューレ』の共同使用するブリーフィングルームでミラージュは水が入った水筒を片手に頭から机に突っ伏していた。

しばらくすると、

 

「アレ?ミラージュ??」

「どうした?ミラージュ少尉?」

 

同じデルタ小隊の同僚であるメッサーとチャックがやってきた。

 

「・・・・・・き」

「「き?」」

「・・・・・・・・・聞かないでください。」

 

余りにも弱弱しいその声は強大な精神的なダメージを負っている証拠だった。チャックは何が起こったのかわからなかったが、メッサーは瞬時に察したようだ。多少同情した声で、

 

「災難だったな。」

「・・・メッサー中尉。ありがとうございます。ご心配をおかけしてすみません。」

「な?なに?なにが分かったの?」

 

チャックは何もわからない様子だったが。

 

 

アラドとカナメは各部隊長との定例会議に参加していた。

 

「じゃあ、あの機体に載っていた少年は問題ないと?」

「はい、現状では不審な行動は確認されていません。」

「あの機体『ストライクノワール』に関しても不審なものは発見されていません。既にマキナとレイナによって完全に解析が完了されています。空間転移装置等も発見できませんでした。機密保持用と思われる自爆装置は発見されましたが、既に解除済みです。起動も遠隔タイプではなく、直接入力するタイプですし。ルシ君も機体情報の提供は惜しんでいませんでした。」

「問題はなさそうだな。『エリシオン』内でも一人でいることは自室以外ではほとんどなさそうだ。」

「一応、監視は継続した方が?」

「不要だろう。現在までも怪しい行動は確認されていないからな。」

「奴はこちらでこのまま預かります。それにうちの隊のメッサーがパイロットとして奴を推してますからね。」

「了解した、奴に関してはこのまま頼む。」

「ああ。」

 

カナメには確かにその理由もあるのだが、それ以上にでかい理由が秘められていると分かっていた。だがこの場でそれを言うのは憚れた。流石に彼女もミラージュの二の舞にはなりたくはなかった。

 

 

自分が会議の場で話し合われている事などつゆ知らず、ルシウスと美雲は街へと出かけていた。

 

「だいぶこちらの生活には慣れたかしら?」

「ぼちぼちですね。けどこの世界は惑星間を移動したりできるんですね。」

「フォールド航法ね。外宇宙に進出し始めた昔からあるわ。」

 

しかし。

しかしだ。

 

美雲さんは前回と同じような変装をしているが、それでも他の人々に注目されている。結構ひそひそ話があちらこちらで聞こえる。

 

(やっぱり、あの人って。)

(『ワルキューレ』の美雲さんだよね。)

(しかし、あの野郎、誰だ!?)

(お忍び?だけど、あの雰囲気って?)

(やっぱり、どう見ても)

 

「あの~。」

「何かしら?」

「・・・・いえ、なんでもありません。」

 

そう、『エリシオン』からのゴンドラが出た直後、左手が美雲さんに手を握られたままなのだ。手を握るとしても状況によって握り方が変わるのだろうが、この状況でいうと。

・・・いうと。

・・・・・・恋人のような繋ぎかたである。

 

という訳で。

・・・近い。

・・・・・・限りなく近い。

 

恥ずかしい事この上ないが、美雲さんとならありかなとそう思うようにした。

それだけでも注目の的なのだが、変装しても美人の部類に入っている美雲さんなので。

あとは言いたいことは分かるだろう。

 

変装が役に立ってない。

そのおかげで直に人気アイドルグループのエースボーカルと分かる。その人物が男連れ。話題にならない方がおかしい。

 

「注目されてきたわね。」

「この状況でそれを言います?」

「だけど、悪い気はしないでしょう?」

「そりゃそうですが。」

 

当然だろう。

 

「とはいえ、注目され過ぎたわね。」

「どこか公園とかありますかね?」

「すこし心当たりがあるわ。」

「よろしくお願いします。」

 

 

メッサーはルシウスとの模擬戦を見ながら、ある種の事を考えていた。

 

「・・・・・・」

 

やはり、『VF-1EX』の性能がルシウスの能力値に追いついていない。ルシウス本人は気付いていないようだが。しかし、現状ではルシウスの能力に対応できる機体は『エリシオン』内では1機しか心当たりがない。

 

「熱心に見ているな。」

 

そこにアーネスト艦長がやってきた。

 

「現状でルシウスは実戦でも役に立つでしょう。ですが、ルシウスの反応速度に対応できる機体が1つしかありません。」

「あの機体を使うのか?元の世界では軍人であったから、撃つ事にためらう事はないだろうが。」

「ですが、奴の能力値を無駄にはできません。」

「・・・・よかろう。」

 

ルシウスの能力値は既にVFのトップエースに食い込み始めている。その能力値に対応できる機体は1機しかない。レディMとS.M.S.『ウロボロス支社』の特務少佐の手により、『エリシオン』にはある1機のVFが保管されている。かの『バジュラ戦役』で終戦の役割を担った機体の派生機。その地球本国仕様の機体が。

 

 

俺と美雲さんは街から少し離れた公園に向かった。そこは小高い丘の上にあり、街を一望できる場所だった。

 

「ふぅ、風が出ていて気持ちいいわね。」

「ですね。しかし、キレイな場所ですね。」

「海の次にお気に入りでね。」

「そうなんですか。ん?」

「どうかしたかしら?」

「『アイランド船』の全貌を初めて見ました。結構でかいですね。」

「ええ、戦闘艦である『マクロス・エリシオン』と民間人の居住の『アイランド船団』、この2つの組み合わせで超長距離移民船団を意味するの。」

「なるほど。」

 

確かに。あの巨体の『エリシオン』はほとんどが戦闘用の区画だった。星から星へ旅をするには別の居住が必要と考えるべきだ。

 

「どう?良い息抜きになって?」

「ええ。ありがとうございます。良い場所を知りました。」

「どういたしまして。」

 

美雲さんはこちらに笑いかけてくれた。不覚にもくらっときてしまった。

 

「訓練はどうかしら?」

「自分はいつも通りにしているつもりなんですがね。メッサー中尉にもチャックにも無理をしていると言われました。」

「・・・失礼を承知で言わせてもらうけど。私にもそう見えるわ。」

「そうですか?・・・・・・・いやそうなのかもしれませんね。」

「???」

 

俺は柵にもたれかけて海をみながら話しかけた。

 

「この世界に来た、いや来てしまった。その理由が見つからない。そして、VFの操縦がメッサー中尉に追いつけない。」

「戦う理由。この世界に来た理由。それが見つからないと?」

「ええ。武力を使う理由。空を飛ぶ理由が欲しい。」

「・・・・・・」

「情けない。自分自身でもそう思います。俺は狂う事ができない。狂う事で他者を傷つける事が怖い。何か理由をつけないと力を揮う事を恐れてしまう。」

「・・・・・・・」

 

少し黙っていた美雲さんだが、しばらくすると。少し離れてこちらに向き直り、

 

「ルシウス・ペンドラゴン。」

 

静かな声でこちらを呼び、左手を胸に当て、右手を差し出した。

 

「私、美雲・ギンヌメールはあなたに願う。あなたの力を私の為に。私の力はあなたの剣と共に。この願いと共に私と歩んで欲しい。」

 

俺は目を見開き、美雲さんを見た。

 

「あなたの力を揮う理由を。あなたにあげる。あなたは私の為にVFに乗り力を揮って欲しい。私はあなたの為に歌を歌う。」

「・・・・・・」

 

俺と美雲さんは見つめ合ったまま黙っていた。

 

「あなたの答えは?」

 

俺は少し考え、

 

「・・・すみません。できません。」

「!?なぜ?」

 

美雲さんは目を見開き、問いかけてきた。

 

「あなたの歌は数多くの人を救ってきました。これからも救うことができるでしょう。それを俺の為だけに歌うのはやってはならない事だと思います。」

 

『ヴァールシンドローム』の沈静化の為の戦術音楽ユニット『ワルキューレ』。そのトップエースボーカルが一人の男の為に歌う。その危険性がわからない美雲ではないだろうとルシウスは思っていた。

 

「だけど私は「しかし。」?」

 

ルシウスは美雲の声を遮り、自身の右手を美雲の右手に重ねる。

 

「力を使う理由をくれたことに感謝を。私、ルシウス・ペンドラゴンはあなたを護る為に力を揮いましょう。」

 

彼女の力は人々の為にあるべきだ。俺は彼女達に降りかかる戦火を切り払う。

 

「個人的には不満だけど。あなたには私の白鳥の羽衣を奪う男になって欲しい。」

「これぐらいの方がいいです。」

「まぁいいわ。」

 

今ここに1人の『ワルキューレ』と黒き翼を担う者との誓いが成立した時であった。

 

 

オマケ

 

「しかし、これは・・・。」

「・・・・・・」

「クモクモかわい~~~」

「いいね。」

「あの美雲がね~。」

「チキショーーーーー!!!!!!!!」

 

上からミラージュ、メッサー、マキナ、レイナ、カナメ。一番下は言わなくてもわかると思う。

ミラージュは以前ルシウスと入った店の店員からある1枚の写真が添付されたメッセージを受け取っていた。恋人のような雰囲気を出す『ワルキューレ』のエースと『ノワール』のパイロット。一般的には隠し撮りの写真は連続複数枚からでないと大抵の事は分からないことが多い。しかし、この写真はそれ1枚だけでも甘い雰囲気が出せるだけの威力を醸し出していた。

 

「とりあえず絶対拡散させないように警告しておきます。」

「そうしておいてやれ。」

「下手したらルシが・・・」

「社会的に抹殺されるかも~」

「流石にそれはねぇ~」

「チキショーーーーー!!!!!!!!」

 

ミラージュは鬼気迫る勢いでメールを打ち込み。

メッサーは写真から離れ、溜息をつきながらブラックコーヒーを飲み。

レイナとマキナは写真がネットにばらまかれた時のルシの被害状況を予測し。

カナメはその予測が冗談だと思いたいが、冗談に聞こえないことに顔を引きつらせ。

チャックはその写真が撮られた現実に絶望を感じていた。

 




前編は皆さんにお気に召していただいたようでして光栄です。

あと5話以内に本編に入りたいと思います。

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