俺こと、ルシウス・ペンドラゴンは治療を受けながらどうするかを決めかねていた。身元を示すIDがない状態なのだ。これでは何をしようにも不審者でしかない。
「脳震盪の後遺症もなさそうですね。治療はこれで完了です。あーあと、アラド隊長から伝言です。この後、司令本部に来てほしいと。案内はつけます。それからこれに着替えてください。」
「わかりました。」
俺は病院服から渡された服に着替える。黒のカーゴパンツに深い朱色の半袖に白のジャケットを身に包み、医務室を出る。
「これからどうなるかな。」
「そのことに関することですよ。アラド隊長が呼び出したのは。」
通路を歩きながら話をしていく。窓もあった。外を見下ろすと街が見えた。しかし・・・
「高いな。」
ざっと400mくらいはありそうだ。俺がいる船と思しき箇所からケーブルが伸びて街に伸びている。
「こちらです。」
一つの扉の前に立ち、入室する。
「・・・・・っ!?」
部屋には数名の人がいたが、その中でも異様な人がいた。
服を見るに最高責任者とわかるが、巨漢で尚且つ緑色に染まっている。
もう一人も巨漢ほどはないが、肘の箇所にヒレ?がついていた?
「??????」
「初めましてだな。『ケイオス』所属『マクロス・エリシオン』艦長アーネスト・ジョンソンだ。」
「あ、はい。えっと。オーブ連合首長国第2宇宙艦隊『スサノオ』所属ルシウス・ペンドラゴンニ尉です。」
俺は敬礼しながら答える。
「あらかたの事情はアラドから聞いた。別の世界での戦争。明らかに我々の世界とは違う機体。君の身柄は我々が保護しよう。下手に新統合軍に引き渡してモルモットにされるのはまずいからな。」
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」
「さしあたってだが、君のIDを用意しておくがまだ時間がかかる。エリシオン内に君の部屋を用意しておいた。当面はそこに利用してくれ。」
「ありがとうございます。」
「それとある程度の情報が知りたいだろうから、機密指定されていない情報をまとめた端末を用意したから閲覧しておいてくれ。一般常識がない状態では街とか出歩けないからな。」
「なにから何までありがとうございます。」
「服に関しては用意しているからもう少し待ってくれ。」
「助かります。」
とりあえず衣食住の内、衣と住は何とかなりそうだ。
「話は一旦ここまでだ。すみませんが、カナメさん。彼を部屋に案内してやってくれ。」
「分かりました。こちらへどうぞ。」
「わかりました。では。」
「とりあえずはゆっくりしてくれ。」
「ありがとうございます。」
俺は敬礼し、部屋を出ていた。
奴が部屋を出た。その後、俺は艦長に尋ねた。
「で、艦長。例の話は本気で?」
「あの映像を見たろ。あの操縦技術は欲しいと思うんだが?」
「確かにそうですが。」
そう言い俺はその映像を端末に呼び出した。その映像は半壊の機体から抜き出したものだ。戦闘時の映像。相手は一つ目の緑と青の機体。中には一つ目の灰色機体だってある。それらの機体群の射撃や斬撃を躱し、切り払い、打ち返し、さらには大量の敵機を撃墜しているのがわかる。
「ですが、やはりあの機体は近接戦闘に特化した機体です。俺達のVFシリーズとは明らかに操縦がかみ合わないかと思いますが。」
「隊長。その事で試したいことがあるのですが。」
「なんだ?メッサー?」
「VFの取説を彼に閲覧させる許可を。」
「おいメッサーそれは・・・。」
「奴をVFに搭乗させる気か?」
「個人的な意見ですが、彼は直に化けるとも思います。」
そういい彼は出て行った。
俺はカナメさんという女性に自室に案内してもらいながらまた周囲を見回していた。
「あなたの世界ってどんなところなんですか?」
「?」
「あっと、まずは自己紹介ですね。カナメ・バッカニアです。デルタ小隊のマネージャーみたいなことをやらせてもらっています。」
「ルシウス・ペンドラゴンです。知り合いからは『ルシ』と呼ばれていましたので、そう呼んでください。」
「ルシ君ね。じゃあ、さっきの質問。どんなところ?」
「結構この世界とは違いますね。まだ地球圏での戦争状態を抜け出していませんからね。西暦が終わってコズミック・イラと呼ばれる年号に変わった後も短期間で多数の紛争・戦争が起こりましたから。」
「こちらも同じようなものよ。地球上の星間大戦にバロータ戦役、バジュラ戦役等、テロ運動とか起こってるから。」
「それでも、この世界の方がまだマシかも。少なくても多種族との和平等に繋げられているのですから。」
「そうかも。あっとこの部屋ですね。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「また、夕食時間に食堂に行きましょう。呼びに来ますので。」
「わかりました。」
そういいカナメさんは出て行った。
「さて、読書タイムと行きますか。」
俺は渡された端末を操作しながら情報収集に入った。
それから俺は情報端末を操作しながら、この世界の常識と戦っていた。
後に『SDF-1 マクロス』を呼称される『ASS-1』の地球落下。そこから得られた技術と『ASS-1』を巡っての統合戦争。統合戦争終了後の異星人『ゼントラーディ』のファーストコンタクト。星間大戦と和平と和解。星間大戦による地球人激減の対策による『銀河播種計画』。マクロス7船団の『バロータ戦役』。マクロス・フロンティア船団の『バジュラ戦役』。やはりというべきか、俺のいた世界とはだいぶ違う。外宇宙への進出が異星人からのオーバーテクノロジーと戦争とは、やはり科学の発展には戦争がつきものかとこの点には残念に思う。そして、この球状星団で起こっている『ヴァール・シンドローム』の事。デルタ小隊と戦術音楽ユニット『ワルキューレ』の関係。しばらくして(?)
「ノックしても気づかないから勝手に入った事に文句言わないでね。」
そのような言葉とともに頭に重しが乗っかった。
「って!!!?」
振り返ると紫の髪をした美女が立っていた。
「あなたの服よ。一通りはそろったから持ってきたわ。」
「あーと、ありがとうございます。えっと?」
「美雲。美雲・ギンヌメール。戦術音楽ユニット『ワルキューレ』に所属しているわ。」
「『ワルキューレ』ってヴァール沈静化の為に組まれている・・・?」
「あら、そこまで行ったの?そ。その通り。私はそのエースを務めさせてもらっているわ。」
「オーブ連合首長国第2宇宙艦隊『スサノオ』所属ルシウス・ペンドラゴン。階級は中尉です。」
「あなたの居た世界ってどんなところ?」
「どんなところって、こちらの世界よりかまだ開拓されていないな。」
「じゃあ、まだ地球圏に?」
「その通りだな。そういえばマクロスって・・・」
しばらく俺は美雲さんとの会話を楽しんだ。
更に時間が経過して、ノックの音が聞こえた。
「ルシ君。入っても大丈夫かしら?」
「大丈夫よ。」
「って、おい。あなたが答えてどうすんの?」
「???あれ?美雲?何でここに?」
カナメさんが部屋に入ってきて、尋ねる。
「私達の仲間になるかもしれない人と親睦を図りに?」
「なぜ疑問形?そして俺に振られても。」
「彼の服を持ってきたついでに彼の世界の話と私達がいる世界の話を互いに話してたわ。後、お互いの事を少し。」
「へ~。美雲がね~」
「なによ?」
「べつに~」
何やら含む言い方がカナメさんから発せられ、美雲さんが何故か慌てはじめたので
「カナメさん。カナメさん。何か御用だったのでは?」
少々強引に断ち切った。
「あーとそうだった。食堂が開く時間になったから一緒にいかない?」
「そうですね。助かります。」
「私もご同伴にあずかろうかしら。」
「ホントに珍しい。」
「そっそうかしら?」
何故かカナメさんが美雲さんをからかいながら俺の部屋から出て行ったので、俺は慌てて後を追った。
FGOから採るかな
*8/15誤字修正しました。