マクロスΔ 黒き翼   作:リゼルタイプC

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VF-31C のスーパーパック装備できたー!!!!

塗装までやったらやっぱ時間かかってしまいました。


第22話 奇襲作戦

―――ルシウス!!!

―――こっちでカバーする!!チェックシックス!!!ザク来るぞ!!!

―――了解!!

 

白く光る月面。そこで俺はストライクノワールを駆りザフト軍と戦っていた。

レクイエム発射阻止作戦。

月面の発射口にまさか陽電子リフレクターを配置しているとは思わなかった。これにより鉄壁の壁ができてしまった。そこに至るまでにいるのはザフト軍のMS群。オマケに散り散りになった地球連合軍のMS群まである。

 

―――撃墜報告なんざ後にしろ!!!友軍機が撃墜されないようにカバーしろ!!!

―――耐えろ!!!アークエンジェル隊のMSがレクイエム発射口に向かっている!!!

―――可能な限り敵を撃破するぞ!!!我が祖国を焼かせるな!!!

 

エネルギー・弾薬が尽きたら補給を受け、再度出撃。

これを2回程は繰り返していた。それ程までに数が多すぎるのだ。オマケに最初のザフトの移動要塞の『ジェネシス』の砲撃により、こちらの艦隊の半数以上が持っていかれている所為だ。

 

―――ルシウス二尉!!!無事か!?

―――ロアノーク一佐!!!ザラ二佐!!!こちらは大丈夫です!!!早く行ってください!!!レクイエムを!!!

―――分かった!!!持ち堪えろ!!!

 

オーブの旗機『ORB-01 アカツキ』と紅き騎士『ZGMF-X19A ∞ジャスティス』が発射口へと向かうの横目に俺は更に『グフ』を破壊する。

 

―――作戦遂行中の全部隊に通達!!!敵要塞に『ジェネシス』発射の予兆有り!!!射線軸上にいる部隊はただちに退避せよ!!!繰り返す!!!

―――!!??全軍回避ーーー!!!!

 

その瞬間目の前が光り、友軍艦艇が破壊される。こちらもあおりを食らってしまう。

 

―――ぐっ!!??左腕部・・・左脚部は・・そ・・・ん

 

俺はその瞬間目の前がブラックアウトし、意識を失ってしまった。

 

 

 

 

「ぐ!?かは!?」

 

目の前に広がっているのは狭いコクピットの中ではなく、波の音が聞こえる寮だった。

嫌な夢を見てしまった。先の大戦。俺が元いた世界の戦争。プラントが作った前大戦の遺物。その発展型の光。

 

「最悪。」

 

どうやらトラウマ状態でこちらの中に残っていたようだ。

体を起こし、頭をガシガシとこする。

 

「・・・・・・どう・・・したの?」

 

声は同じベッドの上から聴こえてきた。紫色の髪を持つ美女。美雲さんの声が響く。今回は流石に服を着てもらった。艦内の部屋とは違い、寮には子供もいるので。

 

「いえ、少し夢見が悪かっただけです。」

「・・・・・・・そう。」

 

俺は枕元に置いてあったタオルで顔の汗を拭い、体全体の汗もついでに流そうとベッドに力を入れて立ち上がろうとしたが。

 

「・・・・・・・・・・(ガシッ)」

「・・・えっ、美雲さん?」

「・・・・・・・・。」

 

美雲さんに肩を捕まれてズルズルとベッドに引き戻された。でそのまま俺の頭を抱きかかえるように丸く収まってしまった。

 

「えっと?美雲さん?」

「今は、・・・・私の胸の中で・・・・眠りなさい。」

 

服越しでもわかる程優しい匂いがする。優しい音がトクトクとなって俺は少しずつ眠気に襲われた。

 

「・・・・汗臭いですよ。」

「気にしない。」

「・・・・・・・・ありがとうございます。」

「どういたしまして。」

 

俺は優しさに包まれながらその日は静かに眠れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クォォオオオオララララアアアァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

翌日。

俺はチャックの叫び声で目を覚ました。

 

「ああ、おはようございます、チャック。」

「挨拶はいらねぇよコンチクショウ。俺に対する嫌味か自慢かそれは?」

「何が?」

 

チャックの問いの意味が分からず、逆に問いかけながら体を起こしかけると、体が妙に重たい。ふと下を見たら。

 

「・・・・・ああ、そういうことか。」

 

はい。美女が俺の体を掴んだまま寝ていました。寝顔がすごいキレイです。

 

「チャック。ルシはいいから朝飯の用意しろってさ。」

「うるせぇよわかったよ悔しいよ羨ましいよコンチクショウ。」

「ったく、ルシ!その人ちゃんと起こしてからこいよ。飯は確保しとくから。」

 

ハヤテが部屋に入ってきてチャックを追い出す。さて俺は美雲さんを起こしますか。

 

 

 

その日、俺はチャックの指導を行って、休憩をしていると。

 

「・・・・・・つぅ!?」

 

頭に歌が響いた?

 

「ルシ?どうした?」

「今・・・頭に歌が響いて・・・?ってまさか!?」

「ラグナ支部全職員に通達!!惑星アル・シャハルが現在ウィンダミアの攻撃を受けている!!」

「!?チャック!!」

「おう!!行くぞ!!」

 

その放送を聞き、チャックと共にロッカーへと駆け込む。エナジードリンクを飲みながら『YF-29B』のシステムを立ち上げながら作戦概要を聞いていたが。

 

「作戦変更につき発進中止!!」

「はぁ!?」

「どういうことです!?」

「ブリッジ!!何があったんです!?」

 

ハヤテとミラージュさんは不服そうだった。俺は通信を一旦ブリッジに繋げたが。アーネスト艦長からその理由が知らされた。

 

「アル・シャハルが陥落した。戦闘開始からわずか15分。」

「まさか!?そんな!?」

 

速すぎる。いくら何でも。

 

「アル・シャハルの新統合軍は完全に沈黙した。」

「・・・・・・。」

 

 

 

それから数時間後、全小隊隊員が集められた。

 

「諸君!よく集まってくれた。早速始めさせてもらおう!」

 

アーネスト艦長の号令により、変更された作戦概要の説明が始まる。

 

「まず、これを見てください。ウィンダミアの旗艦とみられるこの戦艦はフォールドリアクターの波形からおよそ50万年前にプロトカルチャーによって建造されたものと推測されます。」

「先程ウィンダミア王国 グラミア6世が統合政府からのアル・シャハル解放を宣言した。次の狙いはラグナに間違いない。」

「国王自らお出ましって訳か。」

「決戦という訳ね。」

「問題は襲撃がいつか・・・・」

 

問題はそこか。

 

「今までの傾向から見れば、風の歌が聴こえた直後に別の地点への襲撃はなかったはずです。直に襲撃はしてこないと思いますが、少し楽観視してますね。この推測は。」

「ルシの推測だけど、私はその推測に賛成。あれだけの力を持つ歌。歌い手の負担も相当なはず。」

「ルシウス少尉の意見は今までの傾向からの推測だけど。美雲。あんたの意見は根拠がないぞ。そんなことどうしてわかる?」

「わかるの。私には。」

「???」

 

強い力を持つ者の感受性みたいなものか?

 

「先程ルシ君が言っていたように、風の歌による攻撃が24時間以内に連続して行われたことは過去にはありません。」

「そこで先手必勝。歌が聞こえてくる前にこちらからアル・シャハルに奇襲をかける!」

「奇襲作戦・・・!」

「そうだ。奇襲作戦はデルタ小隊とワルキューレを中心にラグナ支部で行う!俺達はワルキューレの歌を常に身近で聞いてるからな。諸君より風の歌の免疫が強いはずだ。」

「他の支部の部隊にはラグナの防衛にあたってもらう。作戦開始は04:00。以上、解散!!」

 

その号令で俺はメッサー中尉達と準備に向かおうとしたが

 

「ちょっと待て、お前ら。」

 

アラド隊長のお呼びがかかった。

 

「俺以外のデルタ小隊の全メンバー、現時刻を持って1階級あげる。」

「「「「!?」」」」

「こう言ってはなんだが、今作戦はこの奇襲攻撃が一番の危険性を孕む。アル・シャハルにいる敵部隊を4隊で相手取るようなもんだ。」

「戦時特例ということですか。」

「そういうことだ。ルシウス中尉。それはそうとして、ミラージュ。」

「はい。」

「以後のデルタ小隊戦闘指揮はお前に任せる。」

「はい!?」

「俺は総司令官である艦長の補佐として作戦の全体を見なければならない。メッサーは俺の補助をしてもらう。」

「それでしたら、技量的にみればルシの方が・・・。」

「いやいや、ミラージュさん。VFの操縦技術は教えてもらいましたが戦隊運用方法は知りません。そういったのは経験者がやるべきです。」

「というわけだ。頼んだぞ。ミラージュ中尉。」

「はっ!」

 

 

SIDE OUT

 

 

アラド SIDE

 

「アラド隊長。」

「?どうした、メッサー?」

 

俺は詳細打ち合わせの為、ミーティングルームに行こうと通路を歩いているとメッサーが話しかけてきた。

 

「先程の件ですが、何故ルシウス中尉に指揮権を渡さなかったんですか?」

 

やはりメッサーも疑問を持っていたようだ。

 

「やはり疑問だったか?」

「技量で言えば先程ミラージュ中尉が言ったとおりです。状況確認能力、視野の広さ、決断力もあの4人の内ではルシウス中尉が一番強いと思いますが。」

「そうだな。だが、だからこそあいつを自由にしたんだよ。」

「???」

「戦術的の強さを見ればあいつがダントツだろう。だが、それと同時に空中騎士団の強さに対等に渡り合えるのは誰だと思う?」

「残念ながら、ルシウス中尉ですね。」

「そうだ。現状それ以外の3人はあの3人で騎士団達の強さにギリギリ届くかどうかってところだ。だからこそミラージュを中核に添えてチャックとハヤテで連携。ルシウスを遊撃にさせる。」

「成程。」

 

メッサーは納得した顔になった。そこでミーティングルームについたのでおしゃべりをやめた。

 

 

SIDE OUT

 

 

「作戦開始までには間に合いますか?」

 

俺は『ストライクノワール』の格納庫で整備主任に話しかけていた。

 

「ダメだ。間に合わん。今のペースでも作業完了が作戦開始より少し遅れたタイミングになる。それに試運転もできてないだぞ。」

「・・・・・・・。」

「悪いが諦めてくれ。」

 

悔しいが作業の完了していない機体に乗ってもどうしようもない。整備不良で落ちてもそれは自分の責任になる。今回も諦めるしかなかった。

俺はそのまま『YF-29B』の格納庫に行き、こちらの調整に入った。

 

「先の戦闘から見て、少し各関節部の反応速度を上げておいた。確認してくれ。」

「ありがとうございます。」

 

VFの整備担当者と話しをしながら調整を続けた。2時間程調整を続け、仮眠を取るため自室に向かったが

 

「デルタ小隊、ミラージュ中尉、ルシウス中尉。大至急第3会議室へ。」

 

艦内アナウンスで俺は第3会議室へと向かった。

 

「デルタ小隊、ルシウス・ペンドラゴン中尉です。」

「入れ。」

 

そこにはアーネスト艦長とアラド隊長、メッサー中尉、カナメさん、ミラージュさんの他に新統合軍の制服を着た将校がいた。

 

「失礼します。ルシウス・ペンドラゴン、出頭しました。」

「新統合軍参謀局2部ラウリ・マラン少佐だ。」

「失礼しました。『ケイオス』ラグナ支部第3飛行団所属デルタ小隊5番機ルシウス・ペンドラゴン中尉であります。」

 

俺は少佐に敬礼を返す。

 

「新統合軍内部でも噂になっているよ。ラグナ支部のデルタ小隊に、ウィンダミアの空中騎士団と互角に渡り合える猛者がいると。どうだね、今からでも新統合軍(こちら)に移ってみないかね?」

「申し訳ありませんが、自分にはそのような権限はありません。」

「で、本題を話してくれんかね。」

 

いきなりのヘッドハンティングだったが、アーネスト艦長が強引に話を戻させる。

 

「新統合軍総司令部より通達です。惑星ラグナのプロトカルチャー遺跡を破壊することが決定しました。」

「!?」

 

あの遺跡を爆破する・・・だと!?

 

「あの遺跡からはエネルギーシャフトが惑星の中心に伸びています。下手をすれば地殻変動を引き起こす可能性が・・・!!」

 

カナメさんから反論の声を上げるが。

 

「指向性戦術反応弾を使用しますので、大気圏内の被害は最小限度で済みます。それとも他に手段があるとでも?」

 

少佐の更なる弁にカナメさんの言葉がつまる。現状においてラグナに風の歌を止める手立てがない。遺跡の爆破することで、遺跡の能力を封じ響かせないようにするというのが新統合軍の考えなのだろうが。

 

「それでも承服しかねる。恐らくレディMも同じ意見だと思うが?」

「そのレディMの顔を立てて報告に来たのですよ。」

「!?ってことは既に設置済みということですか!?」

「そういうことだ。」

 

少佐がこちらの顔を見て言い放ち、艦長に顔を戻して言った。

 

「本来ならば了承を得る必要もない事。既に工作部隊は派遣済み。そして先程設置完了の報告が入りました。」

 

俺は悔しさに顔を苦ませる。

新統合軍側との会談が終わり、少佐は会議室から出て行こうとする時、再度こちらを見て言った。

 

「ルシウス中尉と言ったか。転属の件考えておいてくれたまえ。」

「先程申したはずです。自分にはその権限がないと。大体作戦前にそのような事を言いますかね?」

 

とっとと帰れと言いたいが、その事は言わずオブラートに包み代わりの言葉を放つ。軽く殺気を飛ばすが相手も相手でその程度の殺気は軽く受け流す。

 

「まぁ、考えてくれるだけで構わないよ。」

 

少佐もそこまで本気ではないというように、片手を上げて去って行った。

 

「済まなかったな。ルシウス。」

「構いません。それよりも。」

「ああ、わかっている。レディMに連絡をつける。お前は少し仮眠を取っていろ。」

 

俺はその言葉に頷き、自室に向かった。

 

 

SIDE OUT

 

 

 

カナメ SIDE

 

 

「アーグルパドラ遺跡を爆破!?」

「そんな・・・。」

「嫌だ。そんなの。」

「・・・・・・・」

 

私は先程通達された情報をメンバーに伝えた。

 

「今艦長がレディMに連絡して爆破延長を願い出てるけど、まだ連絡は来てないわ。」

 

私は苦い顔を隠せずに伝えた。

 

「一応、最悪なパターンも考慮に入れないといけないわ。」

 

アーグルパドラ遺跡が爆破されれば、ラグナ支部の立場が完全に地に落ちてしまう。そうなればこの地には居られなくなってしまうだろう。

暫くして休憩、各自準備を言い渡したが私は美雲を呼び止めた。

 

「美雲。」

「?なに、カナメ?」

「ルシ君についていてあげて。」

「?何があったの?」

 

私は先程あった出来事を話していくが、段々と美雲の顔が鋭くなっていった。

 

「それで帰り際に転属の件を考えて欲しいと言われたんだけど、その時の・・・ルシ君の目が完全に・・・。」

「相手を殺すような目だった?」

「うん。もしかしたら以前何か嫌なことがあったのかもしれない。だから・・・。」

「分かったわ。」

 

美雲は最後まで聞かず、部屋を出ていった。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

作戦3時間前

俺は仮眠を取り、少し眠気を覚ます為に甲板に出ていた。

 

「・・・・・・・。」

 

戦略兵器を使用しての遺跡の爆破。

全体的に見れば、判断としては正しい。相手の力で遺跡がコントロールされているのであれば使えないようにする。戦略的に見れば正しい判断だろうが。

 

「爆破される前にケリをつけてやる。」

 

俺は決意を胸に固めた時。背後から柔らかい感触が広がった。

 

「!?美雲さん?」

「・・・・・・・・・・。」

 

美雲さんは何も言わず体に回した腕の力を強めた。

 

「どうしたんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・気負い過ぎてはだめ。」

「・・・・・わかっています。」

「デルタ小隊の中ではあなたが一番強いのは、皆知っている。だけどそれだけよ。下手に意気込んでいては持てる力を十全に発揮できないわ。」

「・・・・・・・・・・・・わかっています。」

「・・・・・・ならいいの。」

 

それでも美雲さんは腕を下さない。

 

「どうかしたんですか?」

「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

 

暫くそのままで過ごしていた。

 

「・・・・・・・・あなたが。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「あなたが私の前からいなくなってしまうのではないかと思ってしまって。」

 

転属の件を聞いたのだろう。

 

「大丈夫です。あなたの傍にいます。」

「・・・・・・・・・・うん。」

 

俺と美雲さんはデルタ小隊と『ワルキューレ』共同のミーティングルームで待機しようと移動した。

 

「まだ誰も来てない・・・か。ねぇ。」

「はい?」

 

俺は再度作戦を確認しようと端末を見ようとしたが美雲さんに呼び止められた。

 

「少し後ろ向いて。」

「???」

 

美雲さんからそのようなことを言われ、疑問符を浮かべながら後ろを向くと首に何かを掛けられた。

 

「?・・・・これは?」

「これでよし。」

 

ネックレスだった。胸元にくるのはこの間の潜入作戦で手に入れた、フォールド・クォーツ。二対あったその片割れ。そしてもう一つの片割れのネックレスを手に握らせてくる。

 

「私にもつけて。」

 

美雲さんは髪を託し上げながら背を向けて言う。

 

「・・・・了解。」

 

俺はそのように言い、美雲さんに片割れのネックレスを付ける。少し手間取りながらもつける。

 

「これでお揃いね。」

 

嬉しそうな顔を見て俺も顔が綻んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レディMが新統合軍と話しを付けてくれた。

奇襲作戦の成否によって爆破を待つとのことだ。なおのことさら失敗は許されなくなった。

パイロットスーツに着替える。美雲さんからもらったネックレスは右手首につけてリストバンドで固定してある。ロッカーにはもう一つのパイロットスーツがある。

作戦開始50分前。

 

「・・・・・・。」

 

初めて渡された時は認められたと喜んだもんだ。まだ1年と経ってないはずだが随分昔のように思える。

 

「・・・・・・。」

 

感傷に浸るのよそう。今は作戦前だ。今やるべきことはひとつだ。

 

 

敵に占領された拠点に対して奇襲し、敵の大将を撃てだ。

 

 

俺は気合を入れ直し、格納庫に向かった。

 

 

 

 

同日04:00時 作戦開始。

 

 

 

 

警報音と共に、船体に振動が走る。

 

『マクロスエリシオン、発進スタンバイ!繰り返す、マクロスエリシオン、発進スタンバイ!』

『ウェポン・システム、チェック急げ!!』

 

「『YF-29B』全システムチェック。オールグリーン。」

 

『メインリアクター、出力上昇!!重力制御システム起動!!』

『係留システム、ロック解除!!』

『発進エリア、オールクリアー!!』

 

アナウンスを聞きながら俺はシートに体重を預ける。

 

『マクロスエリシオン、浮上開始します!!』

『≪ケイオス≫ブリージンガル球状星団連合艦隊総司令、マクロスエリシオン艦長アーネスト・ジョンソンである。これよりオペレーション・アインへリアルを開始する。本物のヤック・デカルチャーってやつを見せつけてやれ!!』

 

 

 

 

 

『マクロスエリシオン、全速発進!!』

 

 

急激な振動と共に段々と高度が上がっていく。

 

 

『トランスフォーメーション、開始します!!』

『メインエンジンブロック、大気圏外航行モードへ!!』

 

 

マクロスの船体が変形し、完全な船の形へと変わっていく。

 

 

『全艦、フォールド!!』

 

マクロスがフォールド空間に入り、アル・シャハルの近辺の宙域に飛ぶ。

 

「主任、『ノワール』の状態は?」

『今さっき全システムチェックが終わって、推進剤と弾薬を補充している!デフォールドまでには悪いが終わらん。』

「そのまま、作業を。場合によっては途中で使います。」

『っ!?分かった!!』

 

3分程たった。再び作戦概要が伝えられる。

 

『≪ワルキューレ≫はデフォールド後敵艦隊に向け強行ライブを行う!デルタ小隊はワルキューレを援護。他の部隊は敵巨大戦艦に集中攻撃を掛ける!諸君らの健闘に期待する!』

 

 

そのままデフォールドして強襲と行きたかったが。

 

『!?デフォールド先に高質量反応!急速接近!!』

 

なんだと!?

 

『敵艦フォールドします!!』

 

ブリッジから悲鳴染みた声が聞こえた。

 

「やられた!!」

「どうするんだよ!!??」

 

俺は歯ぎしりをし、ハヤテからは悲鳴が聞こえる。

 

「隊長!艦長に進言を!!」

 

メッサー大尉から

 

「分かっている!!艦長!!」

 

こちらの作戦は完全に崩壊した。今は急ぎ戻り、相手の作戦を遅延させるしかない。あの大質量の戦艦を破壊するには全小隊の火力を集中させても破壊できない。マクロスの火力を持ってして初めて破壊できる。

 

「なぁ、ルシウス。」

「?どうしました?」

 

チャックが話しかけてきた。

 

「新統合軍は反応弾を使うと思うか?」

「思いますね。」

「「・・・・・」」

「メッサー大尉とミラージュさんには悪いと思いますが、大きな組織となると大を生かす為に小を切り捨てます。どんな世界でもこれは言えることです。」

 

そう銀河中にいる新統合政府。そしてその軍隊。銀河の辺境の惑星間の諍いなんて気にもしてないかもしれない。

 

「それにこう言ってはなんですが、あの新統合軍の少佐、何か別の事をしでかすつもりだと思いますよ。」

「?別の事?」

 

であれば、あのようなことを態々告げに来る理由がない。

 

「それ以上無駄口を叩くな!全小隊機にフォールド・ブースターを付けて先にラグナへと飛ぶぞ!!」

「「「「「了解!!!」」」」」

 

虚空に飛び出し、再度フォールドする。

 

「これ以上やらせるか・・・!!!」

 

静かに怒りをため込み俺は先を急いだ。

 

 

 

 

ラグナについた時は駐屯していた『ケイオス』の部隊とウィンダミアの部隊が戦闘状態に突入していた。だが、ラグナ支部以外の機体はほとんどが『VF-171』。新型機を運用している空中騎士団にいい様にやられていた。

 

「アルファ・ベータ・ガンマ小隊は敵巨大戦艦を攻撃!デルタ小隊は白騎士達を引き付ける!!」

「「「「「了解!!」」」」」

 

俺は敵艦隊の攻撃を躱し、更に空中騎士団以外の『ドラケンⅢ』をはり倒す。そのままの勢いで大気圏へと突入する。

 

「大気圏突入開始!!」

 

他の小隊機も突入に成功したようだ。

 

「反応弾が爆発させられる前にさっさと終わらせてやる!!」

「!?白騎士!!」

 

俺はそのまま戦闘状態に突入した。

 

―――全機へまずは黒騎士を落とすぞ!!

 

いきなり、6機の矛先がこちらに向いた。ハヤテ達にはゴーストを分離してそれの相手をさせているようだ。

 

「いきなり6機が相手とは!!!」

 

俺は全速力で振り切りミサイルを放つが容易く躱される。

 

―――ザオ!!上から回れ!!

―――はっ!!

 

上から撃ってくる敵を躱し、更に重量子ビームを放つが避けられる。状況から『アイテール』が先行してこちらに戻ったことが伝えられるが

 

「ルシウス!!今援護に・・・・!?待てルシウスそれ以上は!!」

「直ちにその場から離脱しろ!!!こちらに戻るんだ!!!」

 

アラド隊長とメッサー中尉の声が聞こえるが

 

「とは言っても!!??」

 

連中の攻撃がしつこく離脱が出来ないでいた。

 

だが、

 

「!!!????」

 

直後敵が離脱し始めた。

 

「何が・・・・って!!??」

 

まずい!!!知らず知らずの内に遺跡に近づいていた!!!

その直後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラグナの蒼い海と空を戦略兵器の炎が焼いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルシーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

ヘルメットから悲痛な叫び声が聞こえた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

アラド SIDE

 

 

「離脱しろーーーーー!!!!」

 

声の許す限り張り上げた。まさか市民の避難が完了してない状態で起爆させるとは!!

俺はすぐさま通信を入れる。

 

「メッサー!!!???無事か!!??」

「こちらは大丈夫です!!各員報告を!!」

「デルタ3、OKだ!!!」

「デルタ4、無事です!!!」

「デルタ6、こっちも大丈夫だ!!!って!!??まずい!!!!」

「待て!!ルシウス中尉は!!??」

「ルシ!!!返事して!!!ルシ!!!!」

 

ルシウスの報告が届いてない。更に言えばヘルメットから美雲さんの悲痛な叫び声が聞こえる。

 

「こちらハヤテ!!たった今ルシの機体を回収した!!」

 

ハヤテの方を見ると確かにハヤテがルシウスの『YF-29B』を回収していた。所々装甲がはがれ、更に各エンジンのベクタード・ノズルがもぎ取られていた。

 

「ルシウスは無事か!!??」

「分からない!!おい、ルシしっかりしろ!!」

 

俺は最悪の可能性が頭に浮かぶが。

 

「おい、ルシ大丈夫か!!??」

「つぅ!!??なんとか!!」

 

少しの間気を失っていたみたいだった。はっきりとした声に俺は息を吐いた。

 

「ハヤテ少尉!!敵はこっちで引き受ける!!ルシウス機を『アイテール』へ!!」

「ミラージュ!!ハヤテのフォローに回れ!!チャック!!こっちの指揮下に入れ!!」

「「了解!!」」

「ウーラ・サー!!」

 

敵をハヤテ達から引きはがすべく、2機を連れて白騎士達との戦闘に突入した。

 

 

SIDE OUT

 

 

俺はハヤテに連れられた状態のまま『アイテール』へと向かった。

 

「ライフル損失!エネルギー転換装甲用キャパ損失!全ベクタード・ノズル全損!動力系・操縦系統オール・レッド!!くそ!!」

 

戦闘続行不可能。もはや『YF-29B』の戦闘能力は完全に消失していた。唯一の救いが自動消化装置が機能して延焼の危険が無くなったことだけだ。

 

「『アイテール』に着艦するぞ!!」

 

そのままの勢いでハヤテは『アイテール』に着艦する。俺はキャノピーを開ける。

 

「ルシ!!大丈夫か!!??」

「大丈夫だ!!」

 

こちらを美雲さんが見ていた。俺は無事を示すように軽く頷いてみせる。美雲さんはホッと息を吐き、こちらに向かって微笑んだ。

 

「ヒヤッとしたぜ!!まったく!!」

「肝を冷やしましたよ。」

「ごめん。助かりましたよ。」

 

 

ハヤテとミラージュさんに顔を向け無事をアピールするが。俺はその顔を引きつらせることになる。

 

「??どうした、ルシ?」

「ハヤテ、あれはなんです?」

「ん?・・・なんだありゃ!?」

 

そこにあったのは空に浮いている遺跡だった。それが、敵の巨大戦艦とドッキングしたのだ。

 

「「「敵戦艦とドッキングした!!??」」」

 

その直後だった。ウィンダミアの戦艦から風の歌が聞こえてきた。

 

「風の歌が・・・!!」

「いつもより強い!!」

 

俺でもわかる程、強烈な圧がこちらに響いてきた。

 

「!!??まずいぞ!!このままだと!!」

 

あんな近くで風の歌が響くということは!!

 

『デルタ1より全軍に告げる!緊急事態発生!!ラグナを放棄する!!』

「!!??くそ!!やっぱり!!」

「逃げるのかよ!!??」

 

ハヤテは納得がいかないと声を荒げるが。

 

「市民にヴァール化の兆候が表れた!!暴動が起これば被害は甚大なものとなる!!」

 

やはり、市民の中にも!!

 

「『ワルキューレ』の歌声で沈静化させつつ収容が完了した市民だけでもラグナから避難させる!!避難完了まで一歩も引くな!!以上!!」

 

異論は認められない。そんなことをしている暇などない。今は戦う時だ。

俺は壁に備え付けてある通信機へと走り、格納庫へと通信を繋げた。

 

「主任、『ノワール』の状態は!?」

「弾薬と推進剤の補充作業は完了したけど、試運転が終わってないぞ!!」

「試運転なんか要らない。飛べさえすりゃ合格ですよ!!」

「今の状態で爆発しても知らんからな!!??」

「とにかく出します!!準備してください!!」

 

通信を切りハヤテとミラージュさんに向き直す。

 

「ハヤテ!!ミラージュさん!!上がるぞ!!」

「「了解!!」」

 

その返事にハヤテとミラージュさんがそれぞれの機体に走り出す。そしてこちらを心配そうに見つめている『ワルキューレ』のエースに声を掛ける。

 

「美雲さん!!」

「・・・・・任せて!!」

 

俺と美雲さんは頷き合い、互いのやるべき事に戻る。

俺は一旦ロッカーへと戻り、オーブで使っていたパイロットスーツへと着替える。『ストライクノワール』に乗るんだったらやはりこのスーツでないと気が済まない。もちろん、ペンダントも忘れずに再度巻き直している。

 

 

 

 

 

 

 

着替え終え、移動しながらヘルメットを調整する。移動した先に待つのは主人を待つ灰色の機体。

コクピットに入り、ハッチを閉じ、システムを立ち上げる。

 

G.U.N.D.A.M. M.O.S.

RE BOOT SYSTEM

 

ヘルメットを通じて聞こえてくるのはこちらにとっては不利な情報ばかり。

 

G.U.N.D.A.M. M.O.S.

SYSTEM UPDATE

 

「俺が挑んだ戦いはいつだって不利な状況ばかりだ。」

 

今に始まったことではない。やるべきことは変わらない。

 

MOBILE SUIT OPERATION SYSTEM

///Version NV8-N099////

General

Unilateral

Neuro-Link

Dispersive

Autonomic

Maneuver

Synthesis System

 

「『ストライクノワール』、システム起動!!」

 

機体のデュアルアイセンサーに火が灯る。リフトで機体がカタパルトデッキまで持ち上げられる。

 

「!?ふえええぇぇぇぇ!?な、なんねコレ!!??」

 

フレイアさんがこちらを見てびっくりした声が上がる。そんな声等お構いなしに俺はスロットレバーを押す。機体から推進剤が噴出される。

 

「デルタ5、ルシウス中尉。発進許可降りました!!発進どうぞ!!」

「サンクス!!ルシウス・ペンドラゴン、デルタ5!『ストライクノワール』出る!!」

 

一気にフットペダルを踏み機体を加速させる。瞬時に飛び出し、空中へと飛翔する。機体のVPS装甲のスイッチを入れる。機体は色付き、戦場へと足を踏み入れる。

 

GAT-X105E+AQM/E-X09S

『ストライクノワール』

 

コズミック・イラの世界において裏舞台で活躍した機体はこうして時空を超えて別の空へと飛翔を果たす

 




次はストライクノワールを作ろうかな~~~。

YF-29Bのやられ方は安直すぎたかも

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