マクロスΔ 黒き翼   作:リゼルタイプC

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遅くなりました。

仕事が忙しい。


第21話 足りない物

キース SIDE

 

キース・エアロ・ウィンダミアは目の前の光景が信じられなかった。『死神』相手に対して必殺の一撃を確実に与えた。避けれる距離ではなかったが、避けたというのであればまだわかる。だが、それだけだ。相手の機体は、ピンポイントバリアがバトロイド形態でしか展開が不可能だったはず。エネルギー転換装甲も貫通するだけのエネルギーをつぎ込んだ。だから防ぐことも出来なかったはずだ。

 

だが、今の目の前の光景はどうだ。

 

『死神』の代わりに目の前にいるのは『黒騎士』。

 

その機体はバトロイドの形態のままナイフを抜刀している。『そのナイフでこちらの一撃を弾いた』という事実に信じられなかった。

 

「(ありえん!!!ナイフでビームで弾くなどと!!!!)」

 

その機体は黄金の光を纏いながらこちらにナイフを振りかぶってきた。

 

SIDE OUT

 

 

ヘルメットを通して聞こえる『AXIA』はいつの間にかソロからデュエットへと変わっていた。デュエットを歌う二人は手を繋ぎながら共に空に向かって歌っていた。

 

美雲さんとカナメさん。

 

一人はかつて自分が救った人の為に。

一人は自分が愛する恋人の為に。

 

「レセプター数値が・・・急激上昇中。」

 

レイナはモニターを呼び出して、二人のレセプター数値を計測した結果、先ほどより遥かに強い数値が計測されていた。

 

「メサメサ・・・・ルシルシ・・・。」

 

 

 

その歌声を耳に俺は眼前の敵を見据えている。自身が操る機体には右手のナイフがある。そのまま敵機に向かって振り下ろした。が、躱される。

 

しかし不思議な感覚だった。全ての神経が研ぎ澄まされていた。相手の機体の装甲の傷がモニター越しでも見えるぐらいだった。それに

 

「(下側から2機。)」

 

不思議と感覚が拡張されている雰囲気だった。レーダーを見なくても相手の居場所が分かる程だ。下側から撃ってくる2機を躱し、俺は1射し、右側の機体の左翼を撃ち抜く。

 

―――ぐっ!?何だ、この力は!?

 

1機がミサイルを連射するところを確認し、エンジンをカットしわざとバランスを崩す。目の前をミサイルが通り過ぎる。

 

―――はっ?

 

ミサイルが横を通り過ぎるのを後目に下側から1射して更に別の機体の左翼を撃ち抜く。バトロイド形態において利点になるのは、その場に留まっての360度全方位への対応ができる。

 

「(だが、腐っても騎士団ということか、こちらの一撃を紙一重で全て交わしている。)」

 

コクピットを狙っているはずなのにその一撃を貰ってないのは敵が相当の技量をもっていることにほかならない。

 

―――馬鹿な!?何だ!?あの動きは!?

 

あの動きって、人型兵器の利点を利用しているだけだが。それにしても、近接戦闘の間合いが狭すぎるのが不満だった。

 

「(フラガラッハが欲しい。)」

 

『ノワール・ストライカー』に搭載されている対艦刀が手元にあればまだうまく戦えたのだが、文句を言ったってしょうがない。

 

敵は後3機。今は俺が一人で相手しているようなもんだ。

しかし―――

 

「(不思議と負ける気がしない。)」

 

更に1射。敵のノーズ部分を破損させる。コクピットに近かったはずなのに相手は直に離脱した。

残り3機。少し遠いが、腰だめでライフルを放つ。エンジン部分の装甲が剥げる。破損を示すかのように黒煙が出た。そのまま、離脱した。

残り2機。『ワルキューレ』を狙う輩がいたのでそのまま下向きに1射。腕を吹き飛ばし、地に伏せさせる。そのまま敵は動かなくなったが、『ワルキューレ』の目の前にハヤテとミラージュさんがフォローへと入った。一旦そちらは任せていいだろう。

残りは白騎士だけ。なのだが、

 

―――全機帰投!!枝に戻る!!!

 

なのだが、相手は離脱行動へと入った。

敵編隊が完全に見えなくなるまで警戒態勢だったが、反転する様子もなく離脱した。それを確認した途端、あの不思議な感覚が無くなった。急ぎ俺達は『ワルキューレ』の無事を確認しようとしたが、彼女達はそのままワクチン・ライブへと移行を宣言した。

 

 

 

ライブが終わり、シャハル・シティの郊外に『アイテール』が着陸。デルタ小隊と『ワルキューレ』の面々を収容していく。収容後、ラグナへの帰路に就いた。

 

 

 

「無茶し過ぎ!!!!何を考えてんの!!!!!」

 

ブランシェット特務少佐の怒鳴り声を聞きながら、機体から降り美雲さんの傍に駆け寄る。

 

「美雲さん。大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫。」

 

美雲さんは顔の汚れは拭いていたが髪の汚れはまだ取っていなかった。

 

「あなたの体の状態はヴァールが再発して危険すぎるのは自分でわかっているはずよ!!!」

「・・・・すみません。」

「そこの2名!!!メッサー中尉を拘束!!!直ぐに精密検査!!!保安要員は私の部屋の前で待機!!!24時間体制で監視!!!」

 

残念ながら、ブランシェット特務少佐を止めるのは不可能だった。

 

「止めないの?」

「残念ながら、ブランシェット少佐の言い分は正しいです。今は従うしかありません。」

 

アラド隊長や他のメンバーが少佐を止めようとするが、完全に論破されて従わざるを得なくなった。カナメさんも同様で拘束されたメッサー中尉を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

デルタ小隊と『ワルキューレ』のメンバーには一時休息が言い渡された。

俺は『アイテール』の自室のベッドで横になり、体を休めていた。傍にはちゃっかり入ってきた恋人の姿。正直心安らぐ時間ではある。

ただまぁ、二つ問題があるとすれば。

 

「美雲さん?」

「なぁにぃ?」

 

その返事がものすごく近いのである。簡単にいえば、首の直ぐ下あたりから、俺は仰向けで転がっていたが、その上に乗っかっている形だ。

まぁ、以前にも同様なことがあったから、乗るくらいならなんら問題ない。

 

 

問題なのは・・・・二点程。一点目は・・・・・。

 

 

ベッドの傍に脱ぎ散らかした服が散乱していること。

上の一文で全て察することができるであろう。『ワルキューレ』の美雲さん専用の服だ。ちなみに上の服と下のスカートまで。靴もある。下着まであるのが何とも言えない。

俺の服も上のジャケットとズボンまで脱がされていた。

下着は脱いでません。絶対に。

 

次いで二点目は・・・・・・。

これは今の俺達の体勢がどうなっているかでわかるであろう。まぁ、簡単にいえば。

 

・・・・・・・・・・絡まっている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・盛大に絡まっている。

 

 

こっちの身動きが取れないぐらいに。こっちの体に絡んでいた。

そんな訳で、女性が持つ独特の物がこちらの五感の内、四つ(味覚以外)を支配していた。

ただまぁ、あの時は俺も彼女を失うかもしれない焦燥感に駆られてしまった。だからかもしれない。俺も美雲さんの背に手をまわしていた。

 

「正直、落ち着く。」

「ですね。俺もそうです。」

 

恋仲となり、直ぐにそれが戦死で無くなりましたでは人生最低最悪な汚点をつけるところだ。

しばらくの間、そうして抱き合っていると。

 

「カナメ。強かったわ。」

「『ワルキューレ』同士のデュエット。とてもよかったですよ。」

「ありがとう。」

 

美雲さんは嬉しそうに笑った。

 

「あの時・・・。」

「???」

「・・・遺跡の中でだれかを見たような気がする。」

「・・・・・・状況から察するとウィンダミア側の・・・。」

「そう。小さい男の子だったわ。」

 

美雲さんはそういい、俺にまわしている腕の力を少し強めた。

 

「あの時のことを思い出すと、・・・・・少し、怖いと思った。」

「相手の、・・・『あの歌』を歌っている担い手にですか?」

「違う。遺跡と繋がる私自身に。」

「・・・・・・・・」

 

俺も少しだけ腕の力を強めた。

そのまま互いに何も言わず時が流れていった。

 

 

 

翌日の夕刻。

あの空戦から、1日半が経過した。

ブランシェット特務少佐からの伝令で、メッサー中尉を除くデルタ小隊と『ワルキューレ』の面々は、『アイテール』内のブリーフィング・ルーム内にいた。艦長や、オペレータの面々もだ。ただ雰囲気はいつもより重い。

 

「・・・・メッサー君。」

 

カナメさんが、中尉の名を呟く。まだ、メッサー中尉はブランシェット特務少佐の手からは解放されてはいなかった。

俺の肩に持たれたまま扉のほうを見ていた美雲さんが、こちらに問う。

 

「どう思う?」

「正直予想がつかないです。」

 

精密検査次第ではこのまま拘束状態を継続なんてこともあり得るからだ。

 

「待たせたわね。」

 

ブランシェット特務少佐が入ってきた。メッサー中尉もだ。

 

「メッサー君!!!」

「カナメさん。ご迷惑をお掛けしました。」

「ううん。いいの。」

 

カナメさんがメッサー中尉に抱き付き、心底泣きそうな顔になっていた。

 

「そのままでいいから聞いて。」

 

メッサー中尉の検査結果が発表される。

 

「彼の状態だけど、結論から言って完全にヴァール化を引き起こすフォールド細菌に対する抗体を得た状態になっているわ。つまり、ヴァール化は今後再発する可能性が限りなくゼロに近いというのが結論よ。」

 

ブリーフィング・ルームの雰囲気が一気に明るくなった。

 

「抗体を持ったってことは、先の戦闘が影響しているのか?」

「そう考えるのが妥当。さらにこれを見て頂戴。」

 

少佐は端末を操作し、ある画像をこちらに見せてきた。それは人体図であり、ピンクの点が全身に存在していた。

 

「これは先の戦闘前に検査した時の、中尉が感染していたフォールド細菌の分布図。人体の神経系に所かまわず、そして脳にも感染している状態だった。それが・・・。」

 

さらに端末を操作して新たな画像を呼び出した。それも人体図であり、今度のはピンクの点は小腸部に完全に集中していた。

 

「これが、1日前の分布図。神経系へ感染していたフォールド細菌が移動し、小腸へと定着した。更にこのフォールド細菌も毒素は発生せず、人体の免疫機能が細菌のヴァール化に対する抗体を作りあげた。だから、よほどのことが無い限りは大丈夫だと思うわよ。」

「・・・・・っ、良かった。本当に良かった。」

「ありがとうございます。お前達にも迷惑をかけた。」

 

カナメさんはメッサー中尉に抱きついたまま涙を流し、安堵の息をついていた。メッサー中尉も礼を言って場は更に和やかになっていた。

 

「『レディM』に連絡をしたのかね?」

「もう連絡したわ。で、先ほど通達があってね。≪メッサー・イーレフェルト中尉のヴァール化が完全に収まっているのであれば、転属命令を取り消し再度『デルタ小隊』副隊長に任ずる≫って。ついさっきだから、今頃艦長の端末にも同様の命令書が届いてるんじゃない?」

 

艦長からの問いかけに少佐はそう答えた。

 

「私からの用事はこれで終わり。じゃあ後は隊長にお任せするわ。」

 

少佐はそう言い、部屋を出て行った。

 

「なら、メッサー。今日から三日間は休暇をとっとけ。」

「いえ、しかし。」

「既にお前さんは1回命令違反を犯してるんだ。その懲罰代わりだ。カナメさん。監視をお願いできるかね?なんだったら町に遊びに今から行ってもかまわんから。」

「はい。任されました。行こっか、メッサー君。」

「・・・・・はい。」

 

結局、カナメさんに逆らえずメッサー中尉は連れて行かれた。

 

「いや~~~~。よかったよかった。」

「やっぱり、人生ハッピーが一番。」

「そやね~~~。」

「これで二組目のカップル成立かしら?」

 

マキナさん、レイナさん、フレイアさん、美雲さん。

やはりリーダーの恋路を応援したいのだろう。

 

「いやはや、こうなるとはな。予想外もいいところだぜ。」

「ですが、喜ばしいことですよ。エースの復帰は。」

「だな。俺もそう思う。」

「・・・・・今度メイクの仕方を教えてもらおうかな。」

「・・・・・くぅ、チキショー。」

 

アラド隊長と俺、ハヤテは素直にメッサー中尉のデルタ小隊復帰を歓迎していたが。後のミラージュさんとチャックは何やら思うところがあるようだ。

 

 

 

その後、俺は隊長と艦長から呼ばれてブリッジに来ていた。

 

「メッサーのデルタ小隊復帰はもちろん歓迎すべきことだが、残念ながら現状でもぎりぎり騎士団相手に対抗できているってところだ。デルタ小隊の更なる戦力強化も必要だろう。」

「強化?増加ではなく?」

「ルシウスの言うとおり増加も必要だがな、もし人を引っ張ってくるならアルファかベータの二隊どちらかからだ。だが、二小隊も共に人員編成はギリギリだ。じゃあ、新統合軍からだ、と言いたいが、新統合軍の兵士では現状は使いもんにならん。」

「そんな事情で、増加の手は使えない。代わりに強化を行うことになるんだが」

「そこで、強化の為に少しばかり訓練の組み合わせを変更することにした。明日からお前にも教官任務に加わってもらう。」

「はぁ!!!???冗談でしょう!!??寝言もたいがいにしてください!!半年も満たないVF乗りに教官役など勤まりますか!!」

 

どこの世界に入隊半年未満の新兵同然の兵士に教官任務をやれと言うのか。俺は声を荒げ、反論するが。

 

「あの時、お前は単機で空中騎士団の連中を圧倒してみせた。その腕を見込んで、この人配をしたんだ。今は少しでも他の三人の腕前を上げさせたいんだ。」

「それに事態は待ってはくれん。小隊の生存率を上げ、更に『ワルキューレ』達を護る為にも必要な処置だ。残念ながらお前に拒否権は無い。明日の訓練から行うぞ。」

「・・・・納得いきませんけど、分かりました。命令承諾します。」

 

頭では理解しても、感情は容易く納得できるものではなかった。

 

「俺からは以上だが、アーネスト。」

「ああ、二人共これを見てくれ。」

 

この星団の位置情報が載ったマップが表示された。

 

「これは?」

「現在までにウィンダミアに制圧されたプロトカルチャー遺跡の座標だ。そして、これが先の戦闘で歌が聞こえた場所。」

「遺跡のある星全てで聞こえたのか!?」

「いや・・・。」

「遺跡の無い惑星にも!!」

「更に解析の結果、球状星団に存在する全ての遺跡を繋ぐと星団の全惑星を包囲するフィールドが形成されることが分かった。」

「では、これは・・・。」

「ウィンダミアの真の狙いだろう。残るアル・シャハルの遺跡とラグナの遺跡が奪われたら球状星団80億人のマインドコントロールも可能になる。奴等は来るぞ。近い内に。」

「他の支部からの増援は!?」

「『レディM』に申請済みだ。間に合えばいいがな・・・。」

 

 

隊長と艦長との話を終え、一先ず俺は一旦寮に戻ることにした。明日からの訓練は先ずハヤテから俺は指導することになった。なったのだが。

 

「はぁ。」

 

思わずため息が出た。いくらなんでも無茶すぎる。戦力が足りてないのも分かる。そして映像から見て俺があの時、空中騎士団相手に完全に優位に立っていたことも理解した。

 

「いくらなんでもなぁ・・・・。」

 

だが、新兵同然の奴に教官をやれってのはどうなんだ?

俺はうまく感情が整理できないまま、『裸喰娘娘』の扉を開けた。

 

「・・・・・・お帰り。」

「あっ」

 

メッサー中尉の姿があった。隣には完全に酔いつぶれて寝ているカナメさんの姿があった。ただまぁ、カナメさん。幸せそうに寝るのはいいんだけどメッサー中尉に完全腕を絡ませて寝ていた。

 

「只今戻りました。これは何があったんで?」

「カナメさんの酒に付き合っていたら、完全に酔いつぶれてしまってな。」

「メッサー中尉は酔わないんで?」

「俺も相当量飲んでいるのは自覚しているんだが、なぜか酔いがこなくてな。」

 

俺は反対側の席に座り、メッサー中尉のグラスに酒を注ぐ。中尉はゆっくりと飲んでいたが、顔は普段と変わらない様子だった。呂律もはっきりとしている。

 

「お前はどうしたんだ?美雲さんとデートか?」

「残念ながら、隊長と艦長に呼ばれまして。」

「・・・・何があった?」

「デルタ小隊強化の一環として俺にも教官役をやれという命令でした。」

 

少しだけ、メッサー中尉は一瞬手を止めてこちらを見たが。

 

「誰から指導するんだ?」

「明日はハヤテです。明後日はミラージュさんとチャック。」

「・・・そうか。」

 

そう言って再度グラスを傾けて酒を煽る。

 

「未熟者はお前にとってどう感じる?」

「ハヤテに対して思うことですか?」

「言葉が悪かったな。正直言って奴はデルタ小隊の中では一番低い戦闘能力値を持つ。それを強化するには何が足りないと思う?」

 

ああ、なるほど。ハヤテに足りない物か。

 

「それなら簡単です。何もかもです。」

「・・・・・・」

「腕前を強化するには自分自身に覚悟が足りていません。」

「奴なりの覚悟は一応聞いた。≪戦争してるから自由に飛べない。なら戦争を終わらせてやる。戦争を終わらせて自由な空をこの手で掴み取ってやる≫だと。」

「・・・・・ハ~~~ヤ~~~テ~~~~・・・・。」

 

俺は思わず頭に手を当てる。

いくら何でも考えが甘すぎる。今の彼の立場は『ケイオス ラグナ第3飛行団所属デルタ小隊』のデルタ6。簡単にいえば、『軍人』の立場だ。軍人が変えられるのは、あくまでもその場の戦況のみ。戦争の流れ自体はそんな簡単に変えられるものではない。

 

「自分達が持っているのは、戦術のみしか持っていないというのが分かってるんですかね?」

「分かってないからあんな事を言うのだろう。簡単に戦況を変えられれば、苦労はしない。」

「ですね。戦争というものは『個』ではなく『群』でやることを知らないのかもしれません。」

 

ぐでーっと俺はテーブルの上に倒れ込んでしまう。

少し、オーブで行っていた強化訓練を行う必要があるかも。

 

「すまないが、明日から頼む。」

「・・・・了解です。」

 

俺はノロノロと立ち上がり、部屋へと戻った。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

メッサー SIDE

 

ルシウス少尉が部屋へと戻っていくが俺はまだ、テーブルについて酒を飲んでいた。

 

「・・・大丈夫かしら?」

「?起きてたんですか?カナメさん。」

 

俺はカナメさんにそういい、彼女のグラスに水を注ぐ。

 

「ありがとう。」

「いえ、さっきの質問ですが、恐らくは大丈夫だと思いますよ。ルシウス少尉は俺より歳が若いですが、戦争の必要な物が何なのかよくわかってます。」

「そう?」

「ええ。」

 

俺も簡単に言っているが、戦争の中で必要な物は実をいうと人それぞれだ。

 

「・・・・午後9時半。もうこんな時間なんだ。」

「そろそろカナメさんも寮に戻ったほうがいいでしょう。」

「・・・・・・送ってって。」

「はい。」

 

俺は、ザックに直に戻ることを伝えた後カナメさんを送りに店を出た。

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

翌朝、俺は予定通り、ハヤテの強化に勤しんでいた。

 

「左旋回が甘い!!」

「うぉ!?」

 

ブザーが鳴り、シミュレータが終了する。

 

「ふぅ。」

「はぁはぁはぁ。」

 

俺は普通に息を吐いて立っていたが、ハヤテは完全にダウンしていた。

 

「次、レイナさん。」

「ほい、持ってきた。」

「って、まさか!?」

「EX-ギアの動力をカットして20周。これを45分で終わらせること。オーバーして、5分毎に1周追加。後、明日の『ワルキューレ』の夕食代はハヤテ持ちです。」

「ちょ!?まってくれ!?」

「文句を言う暇があったら、さっさとする。嫌なら、45分以内に終わらせればいい。」

 

レイナさんがEX-ギアに押し込み、動力をカットする。

 

「ぐっ!!」

「今から45分間です。俺は次のシミュレータの準備をしますから。」

 

俺はそういい、整備班に監視を頼んでシミュレータ室に入る。

 

 

 

 

それから、夕刻。

ハヤテがどうなったかというと。

 

「はぁーーーー、はぁーーーー、はぁーーーーー。」

 

完全にダウンしていた。

寮に連れて帰り、夕食を取ろうとする。

 

「よかったですね。明日の夕食は奢らずに済みましたよ。」

「はぁーーーー。今の状態で言われても、はぁーーーー。嬉しく、はぁーーーー。ない、はぁーーーー。」

 

息切れしながら、返事をする。しばらくして。

 

「なぁ、ルシ。」

「なんです?」

「俺に足りない物ってなんだ?」

「何もかも。」

 

ハヤテは顔が不貞腐れた感じになっていた。

 

「一般兵ぐらいの耐久力はついたみたいですか、残念ながら『VF-31』の戦闘機動に耐えられる程の胆力が足りてない。簡単に言えば機体が発揮できる出力が発揮できないということ。」

「・・・・・。」

「戦闘機動も他のデルタ小隊隊員より低い。座学も必要な知識です。その知識をないがしろにしては自分がしたい機動をやろうとしてもうまくできませんよ。」

「・・・・・。」

「前にメッサー中尉に、戦争を終わらせてやると発言したみたいですが、今の君にはそのような力はありません。戦争を終わらせるという発言ができるのは、『一騎当千の力』を持つ者。そして本気で戦争をしている世界と向き合うことのできる強者です。」

 

そう。無理ないかもしれないが、思い違いをしているのだ。ハヤテには悪いが、厳しくいう必要がある。

 

「簡単に戦争がなくすことができれば、軍人という物はいりません。」

「・・・・・。それでも俺は戦争を終わらせて、自由に飛べる空を掴みたいと思う。」

 

ハヤテはそういうが、

 

「その想いを抱くのが間違いです。」

「なんだと!?」

「君は可変戦闘機のパイロットです。そして『デルタ小隊はワルキューレを守護するという役割を負っています。君がまず持つべきは『自分自身が傷ついてもワルキューレを護る』という覚悟です。自身の事は二の次です。」

「うっ。」

 

ハヤテは反論できず沈黙してしまった。

 

「もう少し考えなさい。そのような覚悟の考え方では必ず落ちます。」

 

ウィンダミア側の騎士達がもつのは恐らくは憎しみだろう。

メッサー中尉はカナメさんを護る為。

チャックは兄弟を護る為。

 

アラド隊長とミラージュさんは分からないが、理由はあるだろう。

 

「じゃあ、ルシお前の戦う理由は?」

「決まっています。」

 

―――最愛の人(美雲さん)を護るためだ。

 

 




ルシウスのハヤテに対する説教は、アニメを見て自分が思ったことでした。

覚悟にしては甘すぎるよな感じしています。

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