マクロスΔ 黒き翼   作:リゼルタイプC

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迷いました。

盛大に迷いました。

この小説を書く為、繰り返しアニメ本編の11話を見て何度涙したことか。




第20話 閃光のAXIA

――メッサー・イーレフェルト中尉。貴官をララミス星系への転属。ララミス支部への同隊指導を命ずる――

 

それが、翌日メッサー中尉に告げられた内容だった。この命令書は『レディM』からだったので、流石のアーネスト艦長でも命令に従わざるをえなかった。

 

――。

 

メッサー中尉は、命令書を受諾し転属の準備の為、荷物をまとめていた。

 

「この状況下でデルタ小隊の戦力低下は本当に痛手だ。空中騎士団の騎士達の腕前に完全対応できているのはルシウス少尉のみ。あいつに負担が結構くるぞ。」

 

アーネスト艦長がこちらを見ながら、アラド隊長と話していた。

アラド隊長は溜め息をつきながら対応策を考えているようだった。

 

更に翌日。

いよいよ、ラグナでの祭りが始まった。

 

『クラゲ祭』

 

趣旨としてはラグナ星の海神様を称えるお祭りらしい。

俺はハヤテと共に、チャックの露店の準備を手伝っている状態だった。

 

「チャック。この荷物はこっちでいいですか?」

「おう。その隣に頼む。」

「いや~男の子が追加で二人もいるから準備が楽だわ。」

 

マリアンヌさんが酒瓶を持ってきて言った。

 

「夕方から祭りが開始されるから、そろそろ下ごしらえの準備だ。よろしく頼むぞ。」

「分かりました。」

 

ミラージュさんが返事し、ハヤテと一緒に下ごしらえを行っていく。俺はバーベキュー・グリルに炭を入れ、火を起こす。

 

「何個ぐらい準備していくんです?」

「とりあえず、100個。順次追加していく感じか。」

 

まぁ、そうだよな。売れたなら更に追加しないと。『ワルキューレ』の三人(マキナさん・レイナさん・フレイアさん)が売り上げに貢献してくれるらしいし。ただ・・・。

 

「チャック。俺はこの下ごしらえの準備までしか手伝えませんよ。」

「あれ?そうなの?予定あったのか?」

「まぁ。」

 

一応予定はある。約束を交わしてはいるから。

相手は・・・・・・・・・・聞くな。頼むから。

 

「・・・・・・・・・・誰と?」

「・・・・・・・・・・・・・わざわざ聞かないでください。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リア充め。」

 

チャックからドス黒いオーラが漂い始めた。ミラージュさんとハヤテは我関せず(本心:絶対関わりたくない、メンドクサイから。)で準備を黙々と行っていた。

 

「はいはい。お兄ちゃん。準備を急いで。」

「お、おい。マリアンヌ。」

「ルシ、あなたは家に帰って準備。」

 

マリアンヌさんが、チャックの背を押して準備を促しながら俺にそう告げた。

 

「何時から集まるかは知らないけど、しっかり準備しなさい。こっちの準備の手伝いしてもらったから汗臭いと思うわよ。シャワー浴びて綺麗にね。」

「わかりました。」

 

マリアンヌさんがウインクをしながらそう言い、俺は素直に従った。

寮に戻り、シャワーを浴び、この祭りの目玉をチェックしていく。そうこうしているうちに約束の時間になった。俺は白をベースとした所々に黒が入っているシャツに着替え、黒のジーンズ、同じく濃いグレーの七分丈の上着を羽織り、移動を始めた。

 

 

 

夕刻。

日は落ちかけていて夜になりかけているが、街はまだまだ明るい。

俺は約束の時間の30分前に待ち合わせた場所についた。

早かったと思ったが・・・。

 

「お待たせ。」

「いえ、こちらも・・・。」

 

彼女の姿を見かけた瞬間、言葉を失ってしまった。

髪を一つに結んで蒼くしているが、なによりその恰好で言葉を失った。

 

変装した蒼い髪と合わせたような青い浴衣だった。紅い帯を付けていた。

 

「・・・・・・・。」

「ちょっと反応してよ。もしかしてどこか変?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!?」

 

完全に呆けてしまっていた。

 

「・・・・・えっと似合ってます。完全に。非の打ち所がないです。」

「あら。ありがと。」

 

本当に嬉しそうな顔だった。少し頬を染めて微笑んでくれた。

 

「じゃあ行きますか。」

「ええ。エスコートはお願いね。」

 

俺は美雲さんと共に祭りを楽しむ為、街を歩いて行った。途中で何人かの人がこちらを指差して気付いたが、美雲さんの微笑み(?)により見なかったことにしたらしい。

露店等を見て回り、以前誓いを躱した公園についた。

 

「全てが初めての経験だったわ。2年前からここにいるけど祭りに来たのは初めてだった。」

「俺は久しぶりでしたね。俺も2年ぶりぐらいかな。」

 

オーブ侵攻後は完全に縁のない物だと気にもしなかったし、忘れていたと思う。『誰かと共に楽しむ』ということを。

 

「今日、この祭りに来れて本当に良かったと思います。美雲さん、ありがとうございます。」

「こちらこそ。あなたを誘って良かったと思う。」

 

互いに手を握り、お礼を言う。

 

「ねぇ、ちょっと来てほしいところがあるの。」

「付き合いますよ。どこにです?」

「プライベート・ビーチ」

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メッサー SIDE

 

「反応エンジンの調整が甘いですね。」

「アルファ小隊の奴か。後で言っておく。」

 

アラド隊長と共に『ヘーメラー』の甲板から飛び立つアルファ小隊の編隊を見ていたが、今の胸の内にあるのは自身の不甲斐なさと悔しさと。

 

「『自分は生きていていいのか。』そんなことばかり考えていました。そんな俺を・・・。」

 

あの日に死ねなかった後悔と、救ってくれたあの人への感謝と。

全てが無駄になってしまった。

 

「申し訳ありません。デルタ小隊を育て上げられないままこんなことに・・・。」

「心配すんな。クラゲの子、親は無くともすぐ泳ぐだ。それに、対抗手段は無いわけじゃない。」

「・・・・・・・。」

 

現状で、空中騎士団相手に完全に対抗できるのはルシウス少尉のみだけだ。あいつに負担が乗っかるが、あいつを見習って他の連中も腕を上げてほしいところだ。

 

「じゃあ、また明日な。」

「はい。」

 

アラド隊長と別れ、寮へと向かう。途中の部屋で荷物を取りに寄り道をしたが、まさか彼女と出会ってしまうとは。

 

「メッサー君!」

「カナメさん。」

 

俺はカナメさんと共にエレベーターに乗る。

 

「そっか。荷物の整理に。明日は皆でお見送りに行くからね。」

「・・・・お構いなく。」

 

ただ、この人を護る事が出来なくなるのは悔しかった。

寮へと続く道を二人で歩いていくと。

 

「あれ?」

「???」

 

寮の入り口付近で腕組みをしている未熟者がいた。

 

「何をしている。」

「あっと。えっと。その・・・。」

 

未熟者は言い淀んではいたが、祭りに来ないかという誘いだった。

以前の俺は多分断っていただろうが

 

「まさか本当に来るとはね。」

 

この地を離れる最後の思い出だろうと思い、奴の誘いに乗ることにした。

 

「お前達はもう俺の部下ではなくなるからな。」

「ああ?どういう意味だよ。」

「言った通りだ。」

「ちっ。最後までやな感じだな。」

 

奴の悪態が聞けなくなるのももうすぐか。

 

SIDE OUT

 

 

アラド SIDE

 

「メッサー抜きでやれるのか?」

「やれなくてもやれって言うんだろ。」

「ふっ。分かっているじゃねーか。」

「唯一の救いが、ルシウスが白騎士に対抗できる腕前に成長している点だな。他がまだだが。」

 

俺は一旦言葉を切り、少し飲んでから、気になっていることを聞いた。

 

「その後、遺跡の方はどうなんだ?」

「何の変哲もない、ただの石っころだとさ。ま、調査は続けてるが。」

 

敵が何の理由も無く、ここを襲うとは考えにくい。ましてや平均寿命が極端に短いウィンダミア人だ。短期決戦を行う為の準備を行っているのだろうが。狙いはやはり。

 

「敵の狙いは遺跡だ。この間のもあいつの偵察に来たに違いない。遺跡のない星も襲ったのはカモフラージュだろう。」

「・・・『レディM』からラグナとアル・シャハルの防衛を強化するよう通達があった。残る遺跡がある星はその二つだからな。」

 

戦力が欠けた状態でよく言うぜ。

だが、アル・シャハルか。

 

「アル・シャハル。ハヤテもフレイアもあそこにいたんだったな。ウィンダミアとは縁があるようだな。ハヤテ・インメルマンは。」

 

あの人の息子。ウィンダミアとの縁。切れて欲しいものだが、戦いに引き込んでしまった俺がその言葉を言う資格はないな。

 

「俺達もな。」

 

アーネストは杯を仰ぎ、一気に酒を飲みほしていく。

 

「言い忘れていた。もう一つ通達が入っていた。」

「なんだ?」

「『ストライクノワール』に関する通達だった。通達内容は、《現在の『ストライクノワール』の戦闘能力値を測定。我々側に有益と判断された場合、ルシウス・ペンドラゴン少尉をそのまま同機専属パイロットに指名。現在使用している『YF-29B』は予備機として保管。無益だった場合は、本体とストライカー両方を破壊せよ。》とのことだ。」

「・・・・・。」

 

ルシウスが嫌がりそうな命令を出してくるもんだ。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

「ここよ。」

 

周辺には大きめの岩が転がり、街からは完全に死角になっていた。

 

「静かでいいところですね。」

「ええ。」

「こんな所で何が?」

「もう少しだけ待って。その前に。」

 

美雲さんは前に来て、髪を解きそして言った。

 

「上の服、脱いで?」

「・・・・・・・・・・・・・・・はい???」

 

俺はそんな間の抜けた声を出した後、全力で拒否をしたが美雲さんの『お願い』に当然断れるはずもなく。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・脱ぎました。」

 

俺はすっごく恥ずかしそうに言ったが、美雲さんは俺より度胸があった。浴衣全部脱いでるし。

 

「じゃあ行こっか♪」

「・・・・・・・・・・・・/////////」

 

俺は可能な限り直視をしないように美雲さんと共に海へと入っていく。

 

完全に穏やかな海を泳ぎ、少しだけ沖寄りの地点で美雲さんが止まる。

 

「潜るけど、大丈夫?」

「ええ、行けますよ。」

 

共に海の中に潜っていく。少しだけ深いところを潜って行くと。

 

「(あれは・・・遺跡?)」

 

遺跡があった。以前アラド隊長が言っていた『アーグルパドラ遺跡』なのだろう。

 

「(すごい。)」

 

俺はその光景を見ていたが、不意に周りが耀き出した。

 

「(これは・・・?クラゲ?)」

 

クラゲが発光しながら、上へと上へと上がっていく。敵意は無く、唯々上へと上がっていく。その数はとても多い。

 

「(綺麗。)」

 

美雲さんが前に来て、微笑みを浮かべながら抱き着いてきた。俺も抱き返し、キスをする。美雲さんもキスで応えてくれた。手を繋ぎ絡めていく。左手を美雲さんの腰に回し、離れないようにする。

 

 

 

 

 

「(この瞬間に、感謝を。)」

「(私は、この人と共に歩みたい。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間がたった。二人で岸に上がり、岩場に体を預けて、空へと上がっていくクラゲ達を見上げていく。

 

「私はまだ、3年分の記憶しかないの。それ以前の記憶がないの。」

「・・・・・・・・。」

「たとえ記憶が無くても、歌うだけで満足していた。けれど、カナメやマキナ、レイナと出会い、デルタ小隊の人達と出会い、ハヤテとフレイアと出会い、そして・・・。」

 

美雲さんがこちらを見る。

 

「あなたと出会った。あなたと出会ったことで私の世界に初めて違う色が出来た。」

 

俺だってそうだ。

 

「美雲さん、あの時の事を覚えていますか。」

「・・・・『あなたには私の白鳥の羽衣を奪う男になって欲しい。』?」

「ええ。ただ、奪うだけではいずれ別れてしまいます。だから。」

 

一旦、言葉を切り。

 

 

 

 

 

 

 

「美雲さん。俺と共に歩んでくれますか。」

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、喜んで。」

 

美雲さんの微笑みは今までで一番の綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

「「あなたを知り、巡り会えた運命に感謝を。」」

 

 

 

 

 

「「ありがとう。」」

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メッサーSIDE

 

未熟者からの誘いに乗り、祭りに参加してたがあいつらがカナメさんと回るように言ってきた。この地における最後の思い出だろう。

 

「向こうでは訓練教官だっけ?」

「はい。自分の機体も持っていけることになりました。もう実戦で飛ぶことはないでしょうが。」

 

実戦は無い分死ぬ可能性は減るが、それでも自身の腕で救ってくれた人を護れないのは悔しい。自己満足だと言われようともだ。

考え事をしながら、海を見ていると街の明かりが消えていく。そろそろか。

 

クラゲが海から空へと上がっていく。それも1匹や2匹じゃない。大量のクラゲが空へと上がっていく。

年に一度、必ず9月の新月の日にクラゲは地上に上がり、卵を産む。

クラゲの産卵がその光景を生み出していく。この地での最後の思い出だ。カナメさんと共に来れたことには感謝だな。

 

「綺麗ね、メッサー君。」

「・・・カナメさん。これを。」

「何?『AXIA』・・・この曲!」

「俺の命を救ってくれた歌です。2年前自分を失いかけた俺をあなたが繋ぎ止めてくれた。あなたの歌があったから俺は生きることができた。」

 

俺はこの人の歌でこの地に来れた。この瞬間を見る事が出来た。

 

「本当に・・・ありがとうございました。」

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「敬礼!!」

 

メッサー中尉の移動日となった。甲板にはデルタ小隊、『ワルキューレ』のメンバー、整備班やオペレータ組だけでなく、アルファ小隊とベータ小隊のメンバーも見送りに来ていた。最後に一瞬だけカナメさんと目を合わせた後、メッサー中尉はララミス星系行の輸送機へと乗り込んで行った。輸送機が飛び立ち、完全に見えなくなった後もカナメさんはしばらくその場を動こず、ずっと輸送機が飛び去った後を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、事態はそんな別れの悲しみを拭いさる時間すら与える事を許さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星 『アル・シャハル』

「『アル・シャハル』でヴァール発生!!新たに配備された部隊も一瞬で敵のコントロール下に堕ちた!気を付けろ!!あの歌が響いている。」

「くそ!何なんだよ!?」

「前よりはっきりと聴こえやがる!!」

「プロトカルチャーの遺跡が、あの歌に反応しています。」

 

見れば確かに遺跡から青い光が漏れていた。歌姫達の輸送機も到着している制空権だけは確保しなければ。その為にも、目の前にいる空中騎士団を叩き落す。

 

「白騎士!!!!」

 

俺は白騎士に向かってビームとミサイルの連撃を放ち交戦していくがあっさりと躱される。

 

―――死神はいないが、黒騎士は脅威だ。先にやつからやる。

―――白騎士様!!

―――テオ!!ザオ!!私に続け!!!ボーグ!!お前は白騎士と共に黒騎士を!!!

―――はっ!!!大いなる風に懸けて!!!

 

俺は伝播してくる敵の声を元に、白騎士ともう1機と相対していくが、ツーマンセルの戦い方に苦戦を強いられた。

 

―――ボーグ!!右に回れ!!

―――はっ!!!

 

「くっ!!」

 

このままでは負ける!

俺は自身の焦りを必死に抑えつけながら、『ワルキューレ』に流れ弾が行かないように気を付けている。既に戦場には風の歌とせめぎ合う形で『ワルキューレ』の歌が響いている。だが。

 

 

 

 

ドックン

 

 

 

 

「!?」

 

ワルキューレの歌が止まった。それと同時に風の歌も止まった。

 

「『ワルキューレ』!?カナメさん!!どうしたんですか!?」

「美雲とフレイアが!!」

 

その答えを聞いて俺は一瞬息が止まったが。警報を聞いて直に立て直す。

 

「遺跡と干渉したみたいで!!息はあるけど意識が戻らないの!!!」

「直に物陰に隠れて!!デルタ1!!!直衛に回って!!!」

「ダメだ!!こっちも手一杯だ!!」

 

アラド隊長の言葉通りにハヤテが既に被弾し、ミラージュさんも同様に被弾している。アラド隊長とチャックで3機を同時に相手していた。俺は未だ白騎士ともう1機を撃破するに至っていない。

 

「くっそ!!」

 

このままでは全滅する。援軍も期待できない以上、今の手数で何とかするしかない。

 

―――この機を逃すな。っ!?来たか!

 

「この感じは!!」

 

上から新たなる機体が降りてきた。それと同時に白騎士が離脱し

 

 

「デルタ2、エンゲージ!!!」

「メッサー!?何のつもりだ!!!???」

「状況は聞きました。」

「無茶だ!!!」

「勝手な真似を!!!」

 

 

 

その機体は。

 

 

 

「まだ俺は・・・デルタ小隊の隊員です。」

 

 

 

白と黒の機体。

死神を背負いし、『VF-31F(ジークフリード)

パイロットは、メッサー・イーレフェルト中尉。

 

 

SIDE OUT

 

 

メッサー SIDE

 

ヴァール発生の報を輸送機の中で聞いたときは、もう居ても立っても居られない状態だった。例え、自身の寿命が削れようとも、あの人を護れなくなるのは嫌だった。『ワルキューレ』に迫る1機の『ドラケンⅢ』を機銃で撃ち落とし、更にもう1機迫るがシールドでその攻撃を防ぐ。キャノピーを開け、カナメさんの無事を確認する。

 

「カナメさん!!無事か!?」

「!?中尉!!」

「歌ってくれ、カナメさん。」

「!!メッサー君!!!」

「歌ってくれ!!俺がヴァールに成りきる前に!!!」

 

カナメさんは俺の様子に気づき、近寄ろうとするが、今のおれは危険過ぎる。

 

「カナメさん!」

 

俺の頼みにカナメさんは『ワルキューレ』のエースと次にレセプター数値の高い新人を見やるが、今の二人はとてもじゃないが歌える状態ではない。

 

 

 

 

「・・・わかったわ。メッサー君!!!」

「・・・・・・・・ありがとう。カナメさん。」

 

 

 

敬礼をし、キャノピーを閉じる。だが、耳にははっきり聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

あの日。

俺を救ってくれた、カナメさんの曲。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『AXIA』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

メッサー中尉が再度、交戦状態に入った。2機の『ドラケンⅢ』から放たれた4機のゴーストを2射で撃ち落とし、白騎士と交戦していく。

 

「この!!」

 

俺はとっさに推力を上げ2機に割り込もうとするが、それ以上の機動で2機は交戦していく。戦場に響くはカナメさんの声。

 

「あいつ・・・ヴァールになってまで。」

「力をコントロールしてるってのか。」

「・・・・なんて綺麗な。」

 

他のメンバーからそのような声が聞こえるが、俺にはそんな呑気に構えられなかった。次第に両者とも金色の光を纏いながら交戦していく

 

あのままではまずい。

 

言いようのない直感が操縦桿を突き動かしていた。

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

「ふふ、風が見える。」

 

 

 

 

「うう?」

「メッサー?」

 

 

 

 

「もらったーーーーー!!!!!」

 

ブースターとなっていたゴーストを吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちぃ!!死神!!!やはり貴様も風に乗るか!!!!」

 

マルチパーパスコンテナを落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルシ・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このまま・・・・。」

 

 

 

目の前に輝く光の風。その前に見える以前に見た金髪の男。

 

「風?うううぅぅぅおおおおおおおお!!!!!」

 

ライフルを連射するがゴーストに防がれた。

 

 

 

 

 

「あなたに・・・・。」

 

 

 

 

 

 

「死なせて・・・・。」

 

 

 

「ううぅぅあああああ!!!!」

 

必殺を込めた機銃を放つ。狙いはコクピット。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

負けた。この距離では外れないだろう。不思議とそのビームはゆっくりと進んでいく。俺は敗北を認め、静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・力を。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「たまるかーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

 

何かが弾けた音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのような怒鳴り声が聞こえ俺は目を開いたが、いつの間にか自身に迫っていたビームは消え、代わりに右上方に『YF-29B』のIFFが見えた。バトロイドの状態で何かを切ったような後ろ姿。その姿もどこか神々しく光が輝いていた。

 

 

 




賛否両論あるかと思いますが。どうかご容赦を。

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