マクロスΔ 黒き翼   作:リゼルタイプC

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明けましておめでとうございます。



→遅すぎるわ!!!!

はい、申し訳なかったです。昨年末にもう1話は投稿したいと言ったのにできませんでした。

なので今回は一気にいきます。


第14話 宣戦布告

惑星『ウィンダミア』

帰還していた空中騎士団のメンバーが揃っていた。

 

「思い知らせてやる・・・!我らの恨みを!握り潰してやる・・・!地球人を・・・!ワルキューレを・・・!」

 

地球人に対して激しき憎しみをの言葉を向けるのはボーグ・コンファールト。彼の激しすぎる憎しみには理由があった。

 

「心を乱すなボーグ。」

「マスターヘルマン。」

「よせ。もうマスターではない。私とて先の作戦で翼を抜かれている。鈍ってしまったものだ。」

「先の作戦で、我らの邪魔をしたあの黒い奴はなんなのでしょうか?」

「わからん。だが、我らのすべきことは一つだ。」

「我らの翼は風の歌と共に・・・」

 

 

「素晴らしい・・・。遺跡の共鳴が強まっている。」

「ハインツ様!」

 

ロイドは声を上げ、駆け寄ろうとしたが急に誰かが遺跡内部に入ってきた事に注意をそらされた。そこにいたのは『ダーウェントの白騎士』だった。

 

「キース兄様」

「大いなる風の力を我らの翼に。王子の風のその歌で。」

 

 

SIDE OUT

 

『ワルキューレの新星、フレイア・ヴィオン!そのデビューステージが明日、惑星ランドールでのワクチンライブと大決定』

 

いよいよ、ハヤテとフレイアがデビューする。今俺達が行っている訓練と言えば、ライブでのスタントフォーメーションだ。一応観客に見せても文句のない仕上がりにはなっている。そして、明日のワクチンライブを控えた今日、『裸喰娘娘』で歓迎会が行われた。『裸喰娘娘』の看板がフレイアを全面に押し出し、俺とハヤテが完全にオマケ状態になったのはご愛敬だろう。多分、俺がチャックでもそうすると思うし。

 

「えー、うわっと!?」

「と、いうわけで、フレフレとハヤハヤ、ルシルシのデビューをお祝いしてー!かんぱーい!」

「ようこそ!ケイオスへ!!」

 

アーネスト艦長のありがたーい(?)演説はマキナとオペレータのニナ・オブライエンの歓迎の言葉に遮られた。

 

「フレイア・ヴィオン!命懸けで頑張ります!!」

「相変わらず大げさ・・・」

「ですね。」

 

俺とハヤテはフレイアの言葉に苦笑していた。

 

「ではでは期待のルーキー達からも一言ずつ!」

「はぁ!?」

「んな急に!?」

 

チャックの無茶ぶり(?)に揃って抗議の声をあげるが、

 

「フレイアちゃんだって言いきったんだぞー。男ならビシッと決めろー!」

「この野郎・・・ハヤテ・インメルマンだ。デルタ6をもらったからには全力でやってやんよー!」

「完全に投げやりですね。ルシウス・ペンドラゴンです。だいぶ前からお世話になってますが宜しくお願いします!」

「つまんねーぞ!そんな自己紹介!」

「そーだそーだ」

「あはは!!」

 

その日は大いに笑った。久々に大笑いしたような気がする。『オーブ』ではこんな機会が滅多になかった。2年の復興期間、その後の『地球連合軍』の主要国による『プラント』への宣戦布告。俺がいた世界では緊張感が絶えない日々ではあった。

 

「ワ・・・ワクチンライブか・・・。」

 

緊張した面持ちでフレイアさんが呟いた。

 

「随分と急な決定でしたね。フレイアさんが参入して直なんて。」

「ランドール自治政府からの要請。最近ヴァールの発生危険率が上がってきたからって。」

「でもそもそもなんでライブなんだ?録音して放送とかじゃ駄目なのかよ?」

「確かに。こういう言い方はなんですが、俺がいた戦場においては完全に場違いです。『ワルキューレ』の皆さんの事を疑う訳ではありませんが、護衛作戦が加わることは暴徒兵鎮圧戦であろうと味方に余計な負担を強いています。」

 

『ワルキューレ』という非戦闘員を護衛しながら暴徒兵と戦う。先の戦闘では所属不明の戦闘機部隊まで出てきた。直衛であるデルタ小隊にいらない負担を強いている気がするのだが。

 

「私達が歌うと『生体フォールド波』っていうのが発生するの。んで、それが『ヴァール』に効くんだけど、録音したりデータ化したりすると効力激減。」

「「「へー。」」」

 

「やっぱり、生が一番。」

 

生クラゲを頬張りながら恍惚とした表情を浮かべるハッカー兼歌姫。一瞬何が起こったか分からない沈黙が流れたが。

 

「レイナさん。俺が注文した生クラゲもよかったら「いる。」・・・はい。」

 

小さいしかし強い回答に俺は素直に献上した。

 

「一応私達も防御兵器はあるわ。私達が操っていた三角状のドローンがあったでしょ?」

「ええ、確かにありました。」

「ドローンで防御兵器になるからね。一応ルシルシ以外の機体には全部付いているんだけど。」

「そういえばなんでルシはYF-29B(パーツィバル)のままなんだ?VF-31(ジークフリード)に乗り替えてもいいだろうに。」

「デルタ小隊用のVF-31に積まれているのはフォールドカーボンじゃなくフォールドクォーツ。希少なものだから用意に時間がかかるの。さらにデルタ小隊用機は火力を極力抑えられ、各パイロットに合わせたチューニングが施される。」

「『ワルキューレ』との連携を重視されるからそれぐらいの改造は基本。」

「フォールドクォーツの希少性を考えると量産は難しいのでしょう。ハヤテの機体の準備が間に合って良かったと思いますね。ワクチンライブまでに間に合うのが1機だけだったので、一人だけVF-31(カイロス)じゃしまりが悪いでしょう。」

「確かに。」

 

4機のVF-31(ジークフリード)YF-29B(パーツィバル)が1機、さらにそこにVF-31(カイロス)が加わってしまえばまとまりが無いと苦情が殺到すること間違いなしだ。

 

「ねぇ。ハヤテ達も歌うの?」

「いや俺とルシはエアショーをするんだと。」

 

ハヤテは頬についたご飯を取ってやりながらそう答えた。

 

「例のアンノウンが現れる可能性があります。気を抜かず私の指示に従うように!」

「・・・ほいなほいな。」

「あー!それもしかして私の真似!?」

「さぁね~・・・」

 

俺はその光景に頬が緩ませながら、美雲さん達と話しをしながら夕食を進めた。

 

SIDE OUT

 

 

アラド SIDE

 

「で?レディMは何だって?」

「フレイアの能力が安定するのを待っている時間はないって。」

 

カナメさんと話しをしながら俺は急遽決まったライブに不安感を拭い切れなかった。

 

「荒療治か・・・フォールドレセプターの話は?」

「今はまだ・・・ハヤテ君には?」

「こっちもまだだ。」

 

俺はまだハヤテにその事を告げる気はまだできずにいた。

 

 

「やっぱりいい雰囲気ですねぇ~」

「もう付き合っちゃえばいいのに」

(↑外野な為、アラド隊長とカナメさんには聞こえていません。)

 

 

 

するとメッサーが店からでて行こうとしていた。

 

「もう戻るのか?」

「たまにはゆっくりしていったら?」

 

俺とカナメさんはそう言葉をかけるが

 

「いえ、基地で待機しています。」

「・・・そうか。」

「お疲れさま!」

 

メッサーは相変わらずの真面目さだった。

 

 

SIDE OUT

 

 

ハヤテ SIDE

 

宴会はお開きとなり、俺はフレイアとマキナ、レイナと一緒に外に出て海風に当たっていたが。

「うう・・・お腹が・・ゴリゴリ・・・」

「ったく、ほら。食い過ぎだっつーの。」

 

俺は呆れるの隠せずにフレイアにアップルジュースを渡した。

 

「う~ん!あぷじゅー!」

「アップルジュースな。」

「ラグナにも慣れたみたいね。」

「ほいな!」

「なんだか私の村に似とる気がするんよ。」

「それってウィンダミアの?」

「風がすっごく気持ちよくって、空も大地も真っ白で雪が積もって林檎畑があって。」

 

フレイアの言葉に俺達は首を傾げてしまい、たまらずマキナとレイナから

 

「あんまり・・・」

「似てる要素無いけど。」

「え・・・ほんとだ。何でかね?」

 

フレイアは少し考えてそう答えたが。

 

「故郷か・・・」

 

母親を亡くして家を飛び出して各地を放浪していた俺にはその言葉がやはりピンとこなかった。とそこで

 

「あれ?そういやルシは?」

 

「「「・・・あれ?」」」

 

この会のもう一人の主役の姿がなかった。

 

 

SIDE OUT

 

 

俺は部屋に戻り休もうとしていたが、急に美雲さんがやってきていた。

 

「ここがあなたの部屋ね。向こうでも思ったけどあまりに殺風景じゃない?」

「ここに移ってまだ数日ですよ。何を期待してたんです?」

 

美雲さんの言葉に俺はそう答えた。

 

「良い眺めね。海風も気持ちいい。」

「確かに良い風ですね。しかしどうしたんです?急に俺の部屋なんかに来て?」

 

美雲さんが窓から海を眺めているのを後目に、俺はベッドに座り、美雲さんに問いかけた。

 

「ねぇ」

「はい?」

「・・・人は何故?私は何故歌を?歌っているの?」

「?」

「あなたはこの問に答えられる?」

「・・・」

 

俺はベッドに横になりながらその問を考えた。

 

「『願い』かな?」

「願い?」

「人は夢を願い、安息を願います。この二つだけでは無いですけど。願いを歌に乗せる。俺はそういう風に思えますね。」

「・・・」

 

美雲さんの問にそう答えたが、美雲さんからの返事はなかった。

 

「・・・?あの?」

「えい」

「ごほ!!」

 

あろうことかこの人、俺の上にダイブしてきた!

 

「ねぇ大丈夫?」

「ごほ!!げほ!!な・・・なんとか!!」

「じゃあさっきの問の続き。あなたの願いは?」

「げっほ!・・・はぁ・・・えっと、俺の願いですか?」

「ええ。」

「・・・・・・」

 

俺はこの言葉に詰まってしまったが、美雲さんはさして問題としてなく。

 

「いつか教えてね?」

「・・・わかりました。」

 

美雲さんは俺に抱き着いたまま瞳を閉じた。

 

「3日後のワクチンライブ。よろしくね?お休み。」

「こちらこそ。・・・って!!」

 

ちょっと美雲さん!?あなたこのまま寝る気!?

 

「スー。スー。」

「マジか?」

 

抱き着いたまま寝ちゃいましたよ。この人。

 

「・・・お休みなさい、美雲さん。」

「ん」

 

俺は美雲さんに毛布をかぶしてから目を閉じた。不思議と美雲さんから安らぎを貰ったような感じがした。

 

翌朝、起こしに来たチャックから悲鳴が上がったのは言うまでもない。

 

 

3日後

ついに惑星ランドールでのワクチンライブが行われる。

早朝、『アイテール』の格納庫に到着した俺と美雲さんの正面からマキナさんとレイナさんがやってきた。

 

「おはよークモクモにルシルシ。」

「おはよー。」

「おはようございます。」

「おはよう、二人共。」

 

挨拶を返すとマキナさんから二つの紙袋を渡された。

 

「はいこれ。」

「?なんです、これ?」

「開けてみて。」

 

言われた通り開けてみると自分には懐かしいものがあった。

 

「『オーブ』の時のパイロットスーツ・・・」

「それから、ルシ用に作ってもらった新しいパイロットスーツ。」

「前のパイロットスーツは私達が使うデータ通信を入れておいたから、今まで通りに使えるよ。ただ、EX-ギアシステムには対応してないから、EX-ギア対応機には乗れないけど。」

「構いませんよ。ありがとうございます。」

 

肩のマークは『オーブ連合首長国』から『ケイオス』のロゴに変更されていた。以前にはなかったが、所々に濃紫が追加されていた。

それから新しいVF用のパイロットスーツの方は白と黒をツートーンだが、こちらも所々に濃紫が載っていた。

 

「新しいパイロットスーツね。着替えて見せてみて。」

 

美雲さんからの要望で俺は直にロッカーで着替え出てきた。

 

「「・・・おおう。」」

「あらあら。」

 

マキナさんとレイナさん?その反応はなんですか?あと美雲さんも。

 

「えっと、何か変ですか?」

 

その問いかけに

 

「「・・・・・・(ブンブンブン)」」

 

激しく首を横に振るマキナさんとレイナさん。

 

「似合い過ぎ。」

「なんか紫が入ったから余計にクモクモの騎士って感じ。」

「私だけの騎士。いいわね。」

 

マキナさんとレイナさんは感想を言ってくれるのだが。美雲さん、何故にうっとりとした表情に?

 

「さてさてそれじゃ格納庫に再びレッツ・ゴー!」

 

マキナさんの言葉で俺達は再び格納庫に向かった。

 

SIDE OUT

 

 

ハヤテ SIDE

 

目の前にある青に塗られた前進翼機に俺は興奮を抑え切れなかった。

 

「こいつか・・・いい感じだ!」

「VF-31 『ジークフリード』。慣性制御システム標準装備の最新鋭機。お前にゃ勿体無い機体だ。」

 

その言葉に俺は頬がニヤついてくるのが抑えられなかった。

 

「それから俺達からの入隊祝いだ。」

 

その言葉に映像端末が渡された。マキナが映っている。

『やっほ~。AIサポートが嫌いなハヤハヤ用に私達皆でジクフリちゃんをチューンナップしておきました~!』

『これでヘルメット被る必要・・・』

『『なし!』』

『でもでも、いざとなったらちゃんとEX-ギアシステムを使うんだぞ!』

 

そこで映像は切れたが。

 

「ありがてぇ!」

「思いっきし飛ばしてきな!」

 

とそこへある人物が音楽を聞きながら歩いてきた。

 

「よっフレイア。」

 

だが気付いた様子がない。

 

「お~い!」

 

「わ!?~ハヤテ・・・」

「何だ?初ステージにびびってんのか?・・・ん?それ『アル・シャハル』でも持ってたよな。お守りか?」

「うん。子供の頃ウィンダミアに来てた地球人に貰ったんよ。これで外の音楽を知ることができた。『リン・ミンメイ』『ファイヤーボンバー』『シェリル・ノーム』『ランカ・リー』『ミーナ・フォルテ』・・・そして『ワルキューレ』も」

 

顔が引きつった状態がこちらでも丸分り

 

「かっこいいって思った。自分もこんな風になりたいって思った。でも・・・」

「らしくねーぞ。命懸けで飛べば飛べる!だろ?」

 

フレイアが言っていた言葉をそのまま返して気合を入れさせる。

 

「・・・そやね。うん!飛べば飛べる!」

 

フレイアの顔にいつもの顔が戻ったような気がした。

 

「人生30年!考えとる暇があったら飛び続けんとね~!あんがと~ハヤハヤ!」

「ハヤハヤじゃねぇつーの。」

 

「ウィンダミア人は身体能力の高さと引き換えに短命な種族。平均寿命は30年・・・。」

「あの顔を見てると何だかピンとこねーがな。」

「ん?ってなんだこりゃ?」

 

俺の機体の隣にあるYF-29Bが目に入ったが以前とは色が違うしそれに。

 

「おいおいおいおい・・・」

 

機体に背負うそのシンボルマークを見て絶句した。

 

 

SIDE OUT

 

 

俺達は格納庫についたが、俺が使う機体にハヤテ達が覗いていた。

 

「あれ?ハヤテ達どうしたんだろう?」

「あらー気づいちゃったか。」

「しょうがない。気付く人は気付くよ。」

「そうだね。じゃ~機体にご案内~。」

 

俺達はYF-29Bに近づいたが途中で気付いた。機体の青だった箇所がパイロットスーツと同じ濃紫に変更されていた。そしてその機体の背負いしシンボルは正しく騎士だった。蒼き外装に銀色の鎧。赤いマントを翻し、白に輝く槍を携える金髪碧眼の女騎士。

 

「槍を携えし騎士・・・。」

「誰だ?こんなシンボルを考えたのは?」

「私よ。」

「美雲さんが・・・。」

「お聞きしますけどこれの元ネタは?」

「円卓の騎士王から。」

 

さも当然のように美雲さんは言った。

アーサー王の伝説。それくらいは俺も幼少のころ物語で聞いた事がある。

 

『最果てに輝ける槍』(ロンゴミニアド)をもった騎士王。『エクスカリバー』でもよかったんだけどそれだとVF-19と被るからやめたの。」

 

そう語る美雲さんは自分の事のように嬉しそうだった。

 

「えっと、ありがとうございます。」

 

俺はそう言い美雲さん達と別れ、デルタ小隊のブリーフィングへと突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星『ボルドール』

この惑星でいよいよライブが始まる。

俺達デルタ小隊は先行してワルキューレの登場を盛り上げる。

 

「デルタ1より各機へ。展開!」

 

合図と共にスモークを炊きながらダイヤモンド編隊で飛行していたデルタ小隊が更に横へと広がる。

 

「ホント!いい感じ!」

 

ハヤテの言葉が聞こえてきた。俺達の後ろに下がったワルキューレ専用の輸送機が下降し

、その輸送機から彼女達が飛び降りてくる。ライブの本番が始まる。

 

 

 

 

 

 

ワルキューレの登場だ。

 

 

「歌は、愛!!」

「歌は、希望!!」

「歌は、命!!」

「歌は、神秘!!」

「歌は!元気!!」

 

 

「聞かせてあげる!!女神の歌を!!!」

 

「「「「超時空ヴィーナス!!!ワルキューレ!!!!」」」」

 

「ワ、ワ、ワルキューレ!」

 

フレイアさん、ガッチガチですね。

ライブ上空を飛行しながら俺はヘルメット内のヘッドホンに耳を傾けていた。

 

「改めまして新メンバーを紹介します!」

「ウ、ウィンダミアから来ました林檎大好きフレイア・ヴィオン14歳!よ・・・よろしくお願いしにゃす!」

 

・・・にゃすって?噛んだの?

 

「まずはこの曲!『不確定性☆COSMIC MOVEMENT』!」

 

ライブは順調だった。スタント飛行は初めてだったが今のところ不安はない。が

 

「さっきからなんだ?この嫌な気配。」

 

俺はさっきから何かに見張られている感じが付きまとっていた。

 

「ハヤテ!勝手に!」

 

ハヤテがフォーメーションを抜け出しミラージュさんの前に割り込んだ。それだけでは飽き足らず、ガウォーク・バトロイドを使い、客席の上で踊り始めた。

 

「ミラージュさん、そのままフォローを。二人の穴はこちらで埋めます。」

「頼みます。デルタ5。」

 

とっさに俺はフォーメーションを変更し、三角編隊からダイヤモンド編隊へと変えた。

 

「インメルマンダンスってか」

 

アラド隊長は呆れ声を隠せない様子でつぶやいた。

 

「ヴァール発生危険率48に低下!」

「フレイア。フォールドレセプター、ノーアクティブ。」

 

通信状況ではヴァールの方は順調にワクチンが作用しているみたいだ。

 

「デルタ5よりデルタ1へ。」

「デルタ5へ。どうした?」

「さっきから嫌な気配がします。何かに見張られている。」

「ルシ。考え過ぎなんじゃねぇか?」

「だといいけど。」

 

『アイテールよりデルタ1へ。アンノウン衛星軌道へ出現。大気圏へ突入してきます。』

 

「奴等か!?」

「やっぱりか。『ファブニール』6機きます」

 

俺は小さくぼやきガウォークに変形してアンノウンが現れた方角に向けた。相手側の機体、識別の為、『ファブニール』と呼称していたがそれらの機体がドローン、いやゴーストを分離したが、あのゴーストの形状は。

 

「あれは、まずい!」

 

俺が妨害の為、前に出て対応しようとしたが一歩遅く相手ゴーストからジャミング波が発せられ、こちらのドローンが落下していく。

 

「こっちの事は研究済みか・・・」

「敵ジャミング攻撃でフォールド波増幅システムが・・・」

「ミサイル!!」

 

ワルキューレに対してミサイルが放たれるが俺達が割って入る。

 

「市民とワルキューレは俺達が守る!」

 

皆ガウォークに変形し、弾幕を張ってミサイルを全弾落とす。

 

「ミサイル全弾撃破。先行して敵機にエンゲー・・・?」

 

後方にアラート?

 

「IFFは?」

「新手!?いえ・・・新統合軍です!」

「おお、我が愛しの援軍。」

 

少しは楽ができるか?が、歌が聞こえてきた?

 

「今なにか?」

「何か・・・声が聞こえるような・・・。」

「私達の他に誰かが歌を?」

 

ちょっと待て?今新統合軍の奴等こちらに対して爆撃コースを取って

 

「うお!?」

「新統合軍が攻撃!?」

 

ちぃ!?

 

「まさか奴等ヴァールに!?デルタ3!確認を!」

「ウーラ・サー!セイジ指数93.5%!?皆ヴァールに!」

「しかし、ヴァールが編隊を組んで攻撃してくるなんてありえない!」

「タネは分かりませんが、こちらに対しての攻撃行為ははっきりしています!IFF修正を!」

「止むを得んか・・・攻撃開始!市民を、ワルキューレを守るぞ!」

 

俺はその命令に従い、AIに対してIFFの修正を掛ける。

 

「攻撃だって!?」

「相手は味方じゃん!」

「正気を失ってるだけかもしれません!」

「それがどうした!たとえそうだとしても今は敵だ!命を懸けて守ることが俺達の任務!それは新統合軍のパイロットも同じ!彼らも覚悟はできているはずだ!」

「デルタ5よりデルタ1へ。先行して新統合軍機を相手します。『ファブニール』は自分以外で対応を!」

「デルタ1より、了解した。」

 

そう言い、俺は新統合軍機の群れの中に突入した。

 

「1・・・2・・・3、4、5、6!」

「あれは・・・アル・シャハルにいた・・・」

 

 

メッサー中尉が1機の『ファブニール』に対して相対していたが俺は一瞬だけ確認しただけで直に新統合軍機の武装解除に向き直した。

 

 

 

 

 

 

 

10機程を張り倒した(武装解除)頃、事態が動いた。

ワルキューレの歌が辺りを響かせ始めたのだ。

 

「こいつら歌で・・・!」

「フォールドレセプトアクティブ!」

「あの二人増幅装置無しで!」

「互いの歌を刺激し合ってる!」

 

流石はエースボーカル。

徐々にだが、周辺の新統合軍機の動きが鈍くなり始めた。

 

「流石は美雲さん。」

 

すごかった。

もはやそれ以外に表す言葉が見つからない程だ。

 

「新統合軍機の抵抗収束。」

「よし!ルシもこっちに戻れ!後は『ファブニール』を!」

「アラド少佐!やられた!」

「え?」

「アイテールが!?」

「いや、陽動作戦だ!君達が戦ってる間に惑星ボルドールの首都が敵軍に陥落された!」

 

やってくれる!

俺はギリッと歯を食いしばりながらアーネスト艦長の報告を聞いた。そこへ

 

「!?デルタ5より各機へ『ファブニール』が反転!」

 

『ファブニール』の群れは集まり、機体表面に模様を描きながら、スモークを吹かしている。

 

「あの紋章・・・」

「やはり・・・空中騎士団!」

 

空中騎士団?

聞いたことがなかった。

『ファブニール』はスモーク上にある紋章を出しながら、変形した。こちらでいうところのバトロイドの形態に。

俺はバトロイドに変形してその場に留まる。すると敵機の背後に映像が映り、そこの人物が言葉を発した。

 

 

『ブリージンガル球状星団並びに、全銀河に告げる!私はウィンダミア王国宰相、ロイド・ブレーム!』

 

!?

ウィンダミアって!?

 

「ウィンダミアって。」

「それってフレイアの・・・。」

 

ハヤテとミラージュさんも困惑から抜け出せずに小さく言葉を呟くが、そのような事等お構いなしに映像の男性は言葉を繋ぐ。

 

『全てのプロトカルチャーの子らよ。我がウィンダミア王国は大いなる風とグラミア・ネーリッヒ・ウィンダミア王の名の元に新統合政府に対し、宣戦を布告する!』

 

「どうして・・・?」

 

フレイアさんが小さくつぶやく。

だが、俺は映像の男性に対して敵対心を抱かずにはいられなかった。

 




ルシウスの歌の解釈に関しては自分の解釈を入れています。

あくまでも個人的な解釈ですので、歌に関しての解釈は様々な捉え方があると思います。





話は変わりますが、休日に中古店に行く機会があったので行った所、1/72スケールのVF-25Gのトルネード装備が売ってました。
金額が高かったけど買いました。まだ作って無いけど。

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