マクロスとは初めて見て聞いてあの巨体が戦艦でありVF部隊の母艦かと思っていたのだが、あれが更に分離・合体することに俺は驚きを隠せなかった。
デルタ小隊の母艦:『アイテール』
今俺はそこに帰還し、格納庫内に酸素が充填されるのを待ってヘルメットを取った。
「お疲れさん。」
「機付き長。御苦労様です。」
「どうだった?
「まだまだですね。未熟過ぎるのが分かります。それに久しぶりの戦闘だったんで勘が少し鈍ってる感じがします。」
「そうか?そのようには全然見えなかったけどな?」
「見てたんですか?」
「そりゃあ、ばっちりと。」
サムズアップされて何とも言えない気分になった。
「ルシウス。いや、ルシウス少尉。今からデブリーフィングだ。行くぞ。」
「メッサー中尉。了解です。すみませんが推進剤と弾薬を補充しておいてください。」
「あいよ。ついでにエンジン回りも点検しておくよ。こいつも久方ぶりの戦闘だったからな。」
「お願いします。」
俺は機付き長に頼み、メッサー中尉と共にブリーフィング・ルームへと向かった。
「遅れました。」
「いや、たった今全員来たところだ。それじゃ始める。」
「先の戦闘でやはり人為的な生体フォールド波の異常が検知されました。それに連動して先の機体。」
「関連性がある、と?」
「ゼロと考える方が異常です。ミラージュさん。」
俺はミラージュさんの質問にそう答えた。
「ルシウスの言うとおりだ。ミラージュ。だが問題は敵の小隊が何なのかだ。それに機体は見たことがない。」
「過去のデータベースにもヒットする機体はありません。ですが、外見上からVFシリーズの開発系統に共通する部分がありません。恐らく旧反統合同盟のSv系に付随するものと思われます。ただそれでもSv系の過去データベースとヒットする機体はないことから、断定は早計かと。」
「言えることはヴァールと並行して現れた新しい敵。その一点のみですね。」
「その通りだルシウス。現在諜報部が先の機体の出所についての調査を開始した。しばらくすれば何らかのアクションがあるだろう。他に何か気付いた点はないか?」
「私から1つ。シャハル・シティに降りてる時に何かしらの歌が聞こえたわ。」
「歌?」
「ええ。その歌が聞こえた直後にヴァールが発生した。何かしらの関連性があると見ていいわ。」
「確かに捨て置けない内容だな。わかった。他には何かないか?」
俺達は誰も発言はしなかった。
「無いようなら解散。各自戦闘後の報告書を提出するように。」
「「「了解」」」
「ウーラ・サー」
俺達はブリーフィング・ルームを出た。
アラドSIDE
デルタ小隊と『ワルキューレ』の面々が部屋から出て行ったあと俺とメッサー、カナメさんとで別件で話を行った。
「それで、見せたいものというのは?」
「こちらです。」
カナメさんは映像を表示させる。
「頭に光っているあれは・・・ルン。『ウィンダミア人』だな。」
「この子にフォールドレセプターが?」
「はい。それも異様に高い数値です。彼女の歌声に反応して美雲の数値まで上昇しています。」
「ほぉ。」
あの娘が歌うことでこちらまで相乗的に効果が上がるとは、フォールドレセプター関連はまだまだ解明しきれていないのかもな。もしくは別の関連性か。
「それからこちらが隊長が御依頼した件の内容です。」
もう調べきったのか。って、こいつは!?
カナメさんとメッサーに感づかれないように小さく呟く
「ハヤテ・インメルマンか。」
まさかあの人の血縁と出会うとはな。
SIDE OUT
シャワーを浴びてから、ミラージュさんとチャックの助けを借り報告書を書き上げ、俺は一旦休憩した。その間に、アイテールは惑星『ラグナ』へと帰還していた。ミラージュさんと共にアイテールの窓から『ラグナ』を見下ろしていた。
「もう帰還したのか。速いな。」
「30光年隣ですから。おまけにフォールド断層がないから、あっと言う間ですよ。」
「そうね。」
いつものように聞こえてきたのはヴォーカルエースの声。ミラージュさんはなぜかビクッとなった。ホントにどうしたんだ?
「機嫌が好さそうですね。美雲さん。」
「そうかしら?」
「はい。見て直に分かりました。」
「あら、嬉しいわね。少しは私の事が分かってくれたのね。」
「???」
機嫌が良さそうというよりかは嬉しそうだな。
「あの~~~」
「「???」」
「ルシはなんで分かったんですか?機嫌がいいって。」
「え?直感?」
「いや疑問符で答えられても。」
「機嫌がいいことは確かよ。新しい『ワルキューレ』のメンバーになりそうな娘が見つかったし。」
「新しい?」
「メンバー?」
「ええ。」
本当に嬉しそうだな。
惑星『ウィンダミア』
惑星中が雪で覆われており、『ラグナ』と同じくブリージンガル球状星団にある王政国家である。『ラグナ』とは800光年程離れており、フォールド断層に囲まれた宙域に位置している。その惑星にある戦闘機が降下してきた。『ラグナ』を襲撃した機体郡だった。
「白騎士様だー!」
「空中騎士団も!」
その直下での人々は歓声を上げていた。
『白騎士』。『空中騎士団』の中で突出した技量を持ったものに送られる称号だ。現在の称号を担っているのは『キース・エアロ・ウィンダミア』。王室の長氏だが、生母が側室であったがため王位継承権は無い。
そのウィンダミアの戦士は心中の不満を表に出さないまま、王宮である人物と対峙していた。
「ロイド。何故止めた?」
「目的は果たした。作戦自体に変更はなかったはずだが?」
「だが、叩ける時に叩くべきだ。我々には時間がないのだから。」
「分かっている。だが、ハインツ様の御身体のことも考えてほしい。だが、もう1つ理由がある。」
「???」
「これを見てほしい。」
ロイドと呼ばれた人物はキースにある画像データを表示させた。そこには『ラグナ』に漂っていたある機体があった。
「なんだ?これは?」
「我々と新統合軍側が使う兵器とは全く違う物だ。単なる人形と片付けるには少々捨て置けない。そしてこの機体に載っていたパイロットがデルタ小隊に入ったものと思われる。」
「思われる?」
「確定情報がまだ降りてこない。また、デルタ小隊の訓練に交じるVF-1EXが確認された。そのパイロットが先の戦闘に介入したYF-29なら?」
「先の情報よりも敵の戦力が増強されたと?」
「こちらはまだ実戦配備が先だと思っていたんだがな。だが先の戦闘で介入した。デルタ小隊の戦力が増えたのは確定だ。気をつけてほしい。」
「了解した。だが」
キースは背を向け
「偶には窓を開けることだ。ここには風が吹いていない。」
そう言いキースは部屋を出て行った。
三日後。
惑星『ラグナ』のケイオス マクロス・エリシオンでは『ワルキューレ』の新メンバーのオーディションが行われていた。
「この中からたった1人の新規メンバーを?」
「ええ、ですが条件があります。アイドルとしての資質はもちろんとして、フォールド・レセプターと呼ばれる因子を持っていることが条件として加わります。しかし、皆本当に分かっているのかしら?戦場で歌うということを・・・」
「だけど、皆カワイイから全員メンバーでもいいんじゃね?」
ミラージュさん、チャックと話をしながら俺はオーディション受付会場を眺めていた。とその時、
「ふぇぇぇ~~~~!!!オーディションを受けられんてどーいうこったね!?」
「「「???」」」
下から悲鳴が聞こえ受付を担当していたベス・マスカットに詰め寄っていた。
「あの子・・・」
「ミラージュ、知ってんの?」
「ええ。チャック、ルシ降りましょう。」
「了解。」
ミラージュさんは俺とチャックを引き連れて下の階へと降りた。
「あなた達。どうしてここに?」
「またあんたかよ。」
「もしかして、本当に苦情を・・・」
「そんな訳あるか!!俺はオマケだ。主に用件があるのはコイツ。どうやら、予選が有ることを知らなかったいみたいなんだ。あんたのコネでなんとかならない?」
「はぁ!?」
「お願いよ~~~。デルタ小隊の人~~~。」
俺とチャックは顔を引き攣らせながらそれを見ていた。
「なんとまぁ。」
「やっぱりミラージュさんって苦労人?」
「気づいたか?まぁ隊長が隊長だしね。濃い面々に囲まれてるからな。」
「人の事言えませんよ。しかしどうする・・・って?」
どうやら事態が進行したようだ。
「特別に許可が下りました。オーディションに参加しても良いそうです。」
「ホッホントかね!?」
「運の良い奴。」
「それからハヤテ・インメルマンさん?」
「?」
「デルタ小隊のアラド隊長がお会いしたと。」
「「え?」」
「隊長が?」
「俺に?」
どうやらまた一波乱ありそうな感じだ。
ハヤテSIDE
無事フレイアがオーディションを受けられるようになり俺はデルタ小隊の隊長と会うことになった。
「じゃ元気でな。」
「あの・・・ここまでいろいろ・・・」
「帰りの面倒は見ないからな。落ちたら自分でなんとかするんだな。」
「落ちんもん!風に乗れば飛べんだかんね~!」
そんなセリフを受けつつ、何となくだがあいつは受かるんじゃないかと思い、俺は受付の案内についていった。のだが。
「おいお前。」
「?」
「見ねぇ顔だな。ルーキーか?」
「まぁそんな感じで。」
知らず知らず俺はフライトデッキと思われる箇所で『Δ4』と描かれた赤紫の前進翼機を見ていた。とそこへ
「この間は見事な操縦だったな。デルタ小隊隊長アラド・メルダースだ。」
3人組の男が並んで立っていた。1人は受付会場であった銀髪の人物だ。あと2人の内、ポケットに手を突っ込んでいる人物がそう名乗った。
この人が、デルタ小隊の隊長。
「直に撃ち落とされましたけど。飛行機飛ばすのは初めてだったんで。」
「だが、バトロイドの操縦は手慣れてる。」
「ワークロイドは仕事で使ってたから。」
「なるほど。」
「随分転々としているようだな。惑星『リスタニア』『グレゴル』。その都度仕事も変わっている。」
「それが!?なんだよさっきから。そっちから呼び出しておいて。」
さっきからイライラする。用件があるならさっさと言いやがれ。
「貴様・・・」
「メッサー中尉。さすがに見ず知らずの相手から自身経歴を暴露されたら嫌な気分にもなります。アラド隊長用件を。」
「ああ。いやなに。その気があるならうちで飛んでもらおうかと思ったんだがな。」
俺が!?
「どうだった?空を飛んでみて?」
「どうだったって・・・」
正直あの時の感覚は言葉では表せそうになかった。
「落ちれば死ぬ。命懸けだ。だがそれでも飛び立つ。それが風を感じちまったもんの宿命だ。お前も風を感じたんだろう?後は飛ぶか飛ばないか。命を賭ける覚悟があるか。」
命を賭ける覚悟か。
俺はアラド隊長の問いかけに答えずに俺は少し離れ腕を広げながら少し甲板から突き出しているところに立ち、タイミングを計り、そして落ちた。
「お、おい!?」
アラド隊長から慌てた声が聞こえるが、俺は不思議と死が迫る感覚はなかった。
風が流れてくる。俺はその風に乗り無事甲板へと戻った。
「はっこいつ!」
「風に乗っただと!?」
「いい感じだ。」
俺はその感覚に妙な高揚感を覚えた。再度VFに近づき俺は手を当てた。
「軍隊は嫌いだ。」
「俺もだ。」
俺の言葉に隊長は答えた。
「人に指図されるのも。だから好きにやらせてもらう。」
「ご自由に。」
「アラド隊長。」
「いいんですか?」
「俺は・・・コイツで空を飛ぶ。」
SIDE OUT
俺はその光景を見ながら、ハヤテ・インメルマンが持つ才能に少しの羨ましさがあった。
あのジャンプは簡単に成功はしない。人の持つ感覚の高さ。タイミング。それを受ける勇気。様々な要素が絡みつく。コーディネーターでも才能が無い者は省かれる運命にある。
「やっぱり、羨ましいかな。」
俺は少しだけ微笑みながらこれから入るハヤテの実力に期待が持てた。とその時。
「離れろ!」
「あれ?ミラージュさん?」
「私の機体に・・・触るな!」
凄い剣幕だった。何があった?
フレイアの口調って難しい。