待たせて申し訳ない。
ハヤテSIDE
やはり厄日だ。
ぼやきつつ俺はフレイアと共にあのミラージュ・ファリーナ・ジーナスに言われた通りシェルターへと走っていた。だが、その前を爆風が襲いフレイアを庇いつつも倒れてしまう。既に周辺ではヴァール化した兵士が兵器を使いながら暴れまわっている。無事な道路等もはや無いに等しい状態であった。
もしかしたら、シェルターに行くのが遅すぎたのかもしれない。
嫌な予感に襲われながら俺は必至に逃げ道を探るがふさがっている道が多い。やっとシェルターを見つけるもそこに通ずるであろう階段もふさがっている。もう何度目なのだろうか?
「くそっ!このブロックのシェルターもだめだ!」
必死に逃げるもまた爆風が襲い、倒れてしまう。
「無事か?」
「うっうん・・・・?」
「♪~~~♪~~~♪~~~♪~~~♪~~~♪~~~♪~~~♪~~~」
フレイアの様子がおかしかった。
「おい?どうした?」
「虹色の、声・・・!」
なんじゃそりゃ?
とフレイアが見た方向を見ると一人の女性が立っていた。戦火の中を堂々と。臆することなく。
「やっと温まってきたみたいね。」
その女性は被っていた帽子を投げ捨てると髪の色が変化した。
「行くよ!It’s showtime!!!」
緑から紫へと。
「な!?」
続けて着ていた服も変化してまるでアイドルのライブ等で着るような衣装に。そして
「歌は、神秘!!」
その女性は決め台詞と共にあるガレキに降り立つ。
「やっぱり、美雲さん!!!」
「んぐぁ!!」
フレイア、こいつ!!
俺の頭を支えに立ち上がりやがった!!続けて戦闘機のエンジン音が聞こえてきた。4機の戦闘機群。それらの機体は小型の何かを射出した。と、そこからまた人が飛び降りてきた。その女性の衣装もまた変化して
「歌は、愛!!」
「歌は、希望!!」
「歌は、命!!」
「聞かせてあげる!!女神の歌を!!!」
それぞれ指を使って『W』を作り。
「「「「超時空ヴィーナス!!!ワルキューレ!!!!」」」」
戦場では不釣り合いなほど神々しいものだった。
SIDE OUT
アラド SIDE
空中に『W』の文字を4機がかりで作ると同時にワルキューレの歌が戦場に響き始めた。俺達は散開し、ヴァール化した兵士の武装を破壊していった。脚を狙い撃ち、腕を切り払い。
途中美雲さんが乗ってきたが、途中で気付いた。
(ルシウスを連れてくるべきだったか?)
と考えたもののやはりやめた。ルシウスがいて美雲さんの注意が散漫になったらなったで悲惨な結果を見ることになる。その間も次々と武装解除を行っていく。周りを見ると徐々に武装が解除されていないヴァール化の兵士達の動きが鈍くなるのが分かる。
「よし、歌が効いてきた!」
このままの勢いで!
ところがその途端にやな連絡がアーネスト艦長から齎された。
「アラド少佐、アンノウン数機がアル・シャハル守備隊を撃破!そちらに向かっている!」
「アンノウンだ~?」
その上空をみると確かに数機がこちらに向かっている。
「デルタ1より各機。上空より守備隊を突破したアンノウン機が接近中!デルタ小隊でこちらを相手するぞ!!」
「「「了解!!」」」
デルタ小隊の面々に命令を下し、一気に上昇する。3発のエンジンを持つダブルデルタ翼機。キャノピーは見当たらない。『VF-27』と同じくコクピットを装甲で覆っているのだろう。
しかし、速い。
「こいつ!!」
ミラージュが1機に迫っていくが。こっちの照準器に異常が走った。1機の表示が3機に分かれたのだ。
「何!?このジャミング!?」
他の機体にも同様のジャミングが働いたようだ。こんなジャミング装置みたことがない!それに両翼のエンジンポッドが分離した。違う、エンジンポッドじゃない。あれはこちらのゴーストと同じ兵器!明確な殺意を持ってこっちに迫ってくる!それにメッサーと対峙している奴のあの飛び方は!
「やはりあの飛び方は!・・・っ!」
一機が『ワルキューレ』に向かっていく!しまった!!間に合わない!!
「一機そっちに行ったぞ!!リーダー!!」
カナメ SIDE
「みんな!気をつけて!!」
アラド隊長の連絡から皆に注意を促すが、ところ構わずミサイルが飛んでくる!
「くっ!」
こちらに対して相当の恨みを持っているみたいね!
マキナやレイナ、美雲にも同様にミサイルが飛んできて吹き飛ばされてしまう。歌が途切れてしまい、再びヴァールが活性化して暴徒兵が暴れまわってしまう。しかし諦め切れる訳がない。私達は『ワルキューレ』なのだから。
「・・・・やってくれるじゃない!」
静かな呟きとともに美雲がドローンを使いガレキを吹き飛ばしながら『いけないボーダーライン』を歌う。
まだだ!まだやれる!!
「美雲?」
マキナに助け起こされながらレイナが呟く。
「大丈夫?さぁ私達も!!」
「「はい!!」」
2人で『W』の文字を作りながら歌を歌う。その時
「っ!!」
美雲が突如として上を見上げた。突如としての行動に私達は分からなかったがこの通信で直に分かった。
「デルタ小隊に『ワルキューレ』の各員に通達。先程増援を送った。1分以内に現場に到着する。連携して行動を行うように。」
「援軍って?・・・まさか!!」
私が上を見上げると、一機の前進翼機が遥か上空から180°ロールして上から下がってきて暴徒兵とアンノウン機と交戦に入った。
「・・・来てくれた。」
嬉しそうな美雲の声が少しだけ印象に残った。
SIDE OUT
俺は向かってくるレーザーとミサイルとかわしながらヴァール化した兵士に向かって次々とロックを掛ける。
「脚・・・腕・・・腕。」
ロックを掛けていく。掛け終わったものから次々と重量子ビームを放って行く。過たずロックした箇所を撃ち抜いていくが俺は顔を顰めた。
(ヤマト准将の案件じゃない?これ?)
相手を殺さず、武装のみ撃ち抜く。この戦法を得意とするのは俺が知っている中では一人しか知らない。
「YF-29!?」
「あんなレアな機体どこから!?」
「ルシウス!お前か!?」
ミラージュさん、チャックさん、アラド隊長から連絡が入ってくる。
「デルタ5、ルシウス・ペンドラゴン。アーネスト艦長の命令により現場に到着。これより援護に回り・・・!?」
その言葉は突如として撃ってきたアンノウンに阻まれた。俺は直に機体を反転させかわす。すれ違う直前にバトロイドに変形し、ガンポッドを放つ。瞬時にファイターに戻り後方を確認すると相手の左翼端部が火を吹いているのが分かる。
「あの敵機は新統合軍の!?」
「いや、違う!あんな機体見たことが無い!」
「ルシウス、アンノウンは敵機だ。確実に落とせ。」
「任務了解。」
俺は機体を翻し、アンノウンに迫る。2機同時に撃ちながら迫ってくるが俺はわずかに機体を傾けかわし、ガンポッドを連続して撃つ。2機は離れてこちらを挟み打ちにしていくが俺は慌てず片方に狙いを定めハイマニューバーミサイルを放つ。狙いを定めた機体はミサイルを避け、逃げていくが、もう1機がフォローに入る。ミサイルは全て落とされてしまうが、俺はそこを狙い撃つが敵も馬鹿じゃないし、避けられる。俺は機体を加速させ敵機に迫り重量子ビームをマシンガン状態で放つが。無人兵器を破壊するだけで本体を当てることができなかった。
「?敵機が?」
「撤退していく?」
「どういうことだ?」
「こちらチャック。敵機大気圏外に離脱。フォールドした。」
「こちらデルタ1。了解した。一旦着陸して『ワルキューレ』の面々の無事を確認する。」
「「「了解」」」
「こちらデルタ4。確認はお任せしてもよろしいでしょうか。」
「ミラージュ?どうかしたか?」
「ちょっと、無断で軍所有物を動かした阿呆に説教を。」
「あ~了解した。」
ミラージュさんが離れた箇所で降りた。
俺はアラド隊長、メッサー中尉、チャックと同じ地点降り、機体から離れた。
「ルシウス。さっき聞き損ねたがお前なんでここに?」
「アーネスト艦長からの命令です。待機命令を解除されて援軍として向かえと。」
「YF-29Bも?」
「同様です。」
「そうか。」
「YF-29Bをルシウスに搭乗するよう艦長に薦めたのは自分です。」
「メッサーお前が?まあ。アーネストが許可を出したんなら問題ないだろう。」
アラド隊長がその言葉で話しを終わらせ、カナメさんと話をし始めた。俺も続こうとしたが、ある人物が俺に近づいてきた。
「ルシ。」
「?美雲さん?」
美雲さんが近づいてきた。
・・・近づいて・・・。
・・・・・・・・・・・あれ?
「何してんですか?」
「・・・見てわからない?」
分かる。
分かるんだが。
その現実を認めたくない。つーか現実逃避したい。
おそらくお分かりであろう。
『ワルキューレ』のボーカルエースが、異世界から転移してきたデルタ小隊新入りデルタ5に抱きついている。ルシウスの首筋に美雲の顔がちょうどくる感じに。
「・・・・ル~シ~ウ~ス~。」
「美雲さん。うれしいのはわかるんだが。」
「・・・・」
「美雲大胆。」
「クモクモ、カ~ワ~イ~イ~」
「変われば変わるものね~」
デルタ小隊(1名除く)と『ワルキューレ』の面々は、その様子に十人十色のような感想を抱いた。
「美雲さん。」
「嬉しかったのよ。」
「???」
「あなたがここに来てくれたことに。私とあなたが同じところで共に歌えて戦えることに。」
そう言って美雲さんは俺の背に回している腕の力を少し強めた。俺は少し恥ずかしかったが、ヘルメットを持っていない左腕を美雲さんに回した。
「っ!ふふっ!」
美雲さんは本当に嬉しそうだった。
「とりあえず、美雲さん。」
「???」
「帰りましょう。エリシオンに。」
「そうね。帰りましょう。」
美雲さんにそう言い体を離した。
『ワルキューレ』の面々の無事を確認した俺達は一旦彼女らと別れ、それぞれの機体に向かい乗り込んだ。一路惑星『ラグナ』へと向かった。
帰路の最中、おれの中には不快な物が広がっていた。
あのアンノウンの機体郡。敵対行動は元よりヴァール化した兵士達を擁護するようなやり方を行っていた。つまり、何らかの関連性があると考えられる。
下手をしたらあのヴァール化した兵士達は何らかのクスリを盛られた状態なのかもしれない。
「戦いにルールなんてない。何をやろうが全て自国の利益となればそれでいい。ヴァール化した兵士達もそれに該当するのかもしれない。」
恐らく戦争になる。そのような思いを抱いて俺はラグナへと向かった。
戦闘描写は難しい。