提督の副業   作:きんにく同盟

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書いてみました。

最近、さむいですね


魔将の過去

 

 

太郎「こんなところで終わってたまるか・・・!!」

 

 戦力を整える為、太郎が降り立った鎮守府は自分の所と比較対象にならない程の大規模で最新鋭の装備品が数多く並んでいた。

 

 兄、改はきっと動いてくる。

 

 俺の幸せをつぶそうと動いてくるに違いない。

 

 

 

榛名「・・・・何で貴方が」

 

 

 

 彼女が居る。

 

 という事は、ここの提督は海軍の最高司令官。

 

 全ての提督を束ねる頂点。

 

 元帥、その人なのだ。

 

 かつての悪行三昧の男なのは艦娘にも知れ渡っているらしく、刺々しい目で降り立った太郎を見ている。

 

 隣に居る瑞鶴もソレを察したのか

 

瑞鶴「ねえ、頼る相手を間違えたんじゃない?」

 

 

太郎「頼る・・・?それは自分では何もできない奴の言葉だ。無能の戯言でしかないんだよ」

 

 

 そう俺は利用してやるんだ!

 

 周りの全てを利用して幸せになってやる・・・・

 

 ならなくてはいけないんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

教師「さて、この問題を・・・太郎!解いてもらおうか!」

 

太郎「・・・・んあ?」寝ぼけ眼

 

 太郎は机の中から教科書を取り出して黒板に書かれているページを開く

 

 

太郎「・・・21πr」

 

教師「チッ!!正解だ」

 

 

 太郎が座って眠る体勢に入ると周りの空気が悪いモノになっていく。

 

 

「嫌味な野郎だな」

「余裕なら学校来なければいいのに」

 

 

 

 物事にはすべてにおいて理由がある。

 例えば人の人格形成、これこそが最たるもので

 人格に難がある人というのは人生を歩む過程で歪んでしまうほどの出来事があったのだ。

 

 

 

 

 提督の副業  『魔将の過去』

 

 

 

 

 改の失踪後、太郎を取り巻く環境は一変した。

 

 父親が会社の風来坊と呼ばれるまでに転勤を繰り返す課に自ら進んで異動した。

 

 その理由は当然、改の捜索を含めてである。

 

 放任主義だけど身を案じるのは親としての意識なのだろう。

 

 

瑞鶴「タロちゃん。いつか迎えに来てね」

 

太郎「うん」

 

 

瑞鶴「約束覚えてるでしょ?」

 

太郎「うん」

 

瑞鶴「皆、改さんの事ばかりで・・・・タロちゃんの事を考えてないじゃない」

 

 

 そこから数年間、様々な学校を転々としてきた太郎。

 

 

おじさん「越してきたトコの餓鬼。生意気だったなあ・・・」

 

 

おばさん「川向の坊やが今まで凄く努力してきたのに飄々と成績上位者になって・・・・世の中、本当に平等じゃないわよねぇ」

 

 

教師「太郎、お前みたいな小賢しい奴が犯罪を犯すんだ。東京の連続通り魔も学校の成績は良かったらしいからな」

 

同級生「・・・悪い太郎。お母さんがお前と遊んじゃ駄目だって」

 

 

 これが当然の反応。

 人というのは異端を認めない生き物なのだ。

 

 これが今までまかり通ってきた理由は分からない。

 

 思えばさっちゃんと一緒に居た小学生時代はすべてが上手く行っていた。

 

 こんな考え方は嫌いだけど・・・

 

 彼女が幸福を呼び込む存在だったのかもしれない。

 

 

 人生を変えたのは高校三年生の時。

 

 

 学閥がある有名大学を前期で合格した太郎は入学するのみとなっていた。この時点では奨学金も決まっていたし、成績優秀者のみが入れる学生寮の入寮手続きも終わっていた矢先だった。

 

 

 春を前に控えた町の催し物があったのだが。

 

 器材がおいてある倉庫でボヤ騒ぎが起こった。経緯は分からないけど鎮火でもたついた結果、プロパンガスに燃え移り結構な大騒ぎになってしまったのだ。

 

 

 その犯人にされたのが、何の関係性もない太郎。

 

 

 町の人々にとって、真犯人など誰でもよく町民にとって憂さを晴らす道化が欲しかっただけだったのかもしれない。

 

 

 駐在の警察官は町出身で地元愛をこれでもかと持っている体育会系。

 

 

 意外かもしれないけど体育会系ほど性格は粘着質なのが多い。

 

 

警官「強情だな。どんな悪ガキでも泣きが入るんだぜ」

 

 

 

 警官は太郎の両親が多忙なのを知っていて

 

 親の迎が来るまでの間、そう途方もない長い間。

 

 太郎を尋問したが自白はしなかった。

 

 

 

警官「地域新聞で今回の事をデカデカと飾ってるよ・・・へぇ一面じゃないか」

 

 

 太郎に投げられた新聞には

 

 容疑者として太郎の実名が載っていた。

 

 

 こうなってしまえばもう終わり、今ではSNSが普及しているから正義の味方とやらがどんどん拡散されていくだろう。

 

 

 太郎の人生はここで終わった。

 

 無数の大人たちの悪意によってつぶされたのだ。

 

 

 

 

警官「でも優しいよな日本ってのは。どんな奴にも選択肢はあるんだ・・・少年院に入るか、海軍へ入るか。まあ勿論、罪を認めたうえでって言う条件の元にだがな」

 

 

 

 彼の選択は一つだけ

 

 

 

『放火をした悪ガキが改心してお国の役に立つために入隊する』

 

 

 

 身元を引き取りに来た軍服を着た無骨そうな漢は太郎を値踏みするように見た。

 

 

 

軍人「軟弱そうな男だな・・・どおりで卑劣な犯罪者の臭いがすると思った」

 

 

 漢の横に立つのは終始無言の女たちで中には子供もいた。後に彼女らは艦娘だと気が付くのだが太郎は何も知らない。

 

 ただただ黙って太郎を何の感情も持ってない目で見ていた。

 

 

太郎「・・・」

 

軍人「なにしてる早く護送車に乗らんか!!」腕を掴む

 

 

太郎「俺に触るなド低能・・・」

 

 

軍人「・・・・なんだとキサマ!!」

 

 

 太い腕を振り上げて太郎を殴る。

 

 通常なら吹っ飛んで失神するかというくらいの体格差にも関わらず踏みとどまって男をさらに鋭い眼光で睨みつける。

 

 

太郎「俺は将来、お前の上に立つ男だ」

 

 口の端から血を流しながらも気迫だけは衰えない。

 

 有無を言わせぬ空気に男が一瞬だけたじろぐ。

 

 

 そして無機物のような目を向ける艦娘たちに向かって憎悪を籠めた目を返して言う。

 

 

「・・・・負け犬が・・・」

 

 

 

 

 

 

 

  そして・・・・・・

 

 

 程なくして五月雨とともに元帥はやってくる。

 

 

 あの時の底すらない憎悪を押し殺す。

 

太郎「また来ちゃった元帥殿♡」

 

 

 

 改 執務室

 

 

改「残念だね。君ほどの戦艦が欲しかったのに・・・・」

 

 

 彼の前で優雅に座っているのは柔和な微笑みを浮かべた大和。

 

 出された茶を飲む動作にさえ気品を感じる。

 

 それを見ていた北上は「いやな感じだねぇ」と悪びれもなく言う。

 

 

 

改「何故、太郎をそこまで慕う?君自身、子馬鹿にしていたと聞いたんだがね」

 

 

大和「慕うなんて簡単な感情ではありませんよ」

 

 

 

 太郎はここに至るまでずっと気が付いてなかったが、太郎を引き取りに来た軍人の傍に居た艦娘たちの中には大和が居た。

 

 

 あの男に支配されてきた。

 

 戦場では最強と呼ばれた自分も知性の欠片もない男の前では無力でどうしようもなかった。

 

 

 そんな中、あの反骨精神が服を着ているような青年に会って侮辱されたのだ。

 

 

 

大和「本当に強いのって武力ではないんですよ」

 

 

改「なるほど」

 

 

大和「あの人は本当の強さを今でも持っている・・・」

 

 

 大和は純情な乙女の様に頬を染めて語る。

 

大和「あの時からずっと彼を追ってきました」

 

改「そして今となっては手を離れたと言った感じかな?」

 

 

大和 「離しません」笑顔

 

 

大和「何処へ行ったとしても必ず探し出しますから」

 

 

 変わらず笑顔のままで語る大和を前に改の表情も笑顔になっていく。

 

 

改「幸せ者だな太郎は」

 

大和「ええ本当に」

 

 

 二人で微笑ましいくらいに笑いあうのを見て改の艦娘たちはわずかに青ざめる。

 

 

日向「頭のネジがぶっ飛んでいるな・・・」

 

伊勢「そうね。本当に愛してるなら相応の態度をとればいいものを」

 

 

 そんな発言に対しても大和はニッコリと微笑む。

 

 

大和「それじゃ駄目なんですよ」

 

 

改「ほう・・・」

 

 

大和「あの人が心の底から私に屈服して初めて、私たちは対等な関係になれるんです」

 

 

大井「うわ・・・・」

北上「歪んでるねぇ」

 

 

 

 太郎が無様になっていく程

 

 貶められていく程。

 

 自分の物差しで測れるくらいになってきて初めて恋を始められる。

 

 

 

 本物の強さを持った男と恋人になれる。

 

 

 だからこそ太郎の言動を見逃してきた。

 

 どのような副業をして、いかほどの貯金があっても・・・・

 

 

 

 ひいては彼の全てを奪うために。

 

 

 

 

大和「お義兄さん。彼の全てを私だけにくれませんか?」

 

 

 かつての過去の闇が彼女の笑みを一層に深くし色香を感じさせる。

 

 それは妖艶そのもので、嵌ったら抜け出せない底なし沼なのは一目瞭然。

 

 

 

改「本当に愛は良いね・・・・・扱いやすくて」

 

 

 

 

 

 海軍全体を巻き込んだ内部紛争の火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?

よろしくお願します!

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