神聖モテモテSS王国……それは書き手誰もが夢見る究極のSS
これは、それを目指す一組の親子の物語である。

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本作はながいけん著・神聖モテモテ王国の二次創作作品となります。
原作を知らないと読んでもさっぱり分かりません。作者も何を書いたのか分かりません。
まあとりあえず、頭空っぽの方が夢詰め込めると影山ヒロノブも言っていたので
大らかな気持ちで読んでもらえればと思うんじゃよ。


第一話 転生すればいいらしい

 小説投稿サイトが乱立し、二次創作界隈が創造性の限界を露呈しつつある今、

 人々は新しい小説の形を望んでいる―――

 

 大いなる千年王国、書き手ならば誰もが夢見た絶対王政。

 今、歴史的実験が一組の親子によって進められようとしていた。

 俺たちの理想郷(某サイトの俗称にあらず)。それは―――

 

 

 神聖モテモテSS王国 

 第一話「転生すればいいらしい」

 

 

 ちゃぶ台を叩く音がアパートの一室に響いた。

「何が神聖モテモテSS王国だ! そんなもの『モテモテ王国 SS』で作品数が100以上引っかかってから言え!」

 トンカツとみそ汁とご飯が用意された食卓に、二人の男がいた。

 奇妙な二人であった。一人は若い、自宅なのに詰襟の学生服に身を包んだ丸刈りの学生。

その瞳は分厚い眼鏡で隠れているが、激昂しているのは明らかだ。

 

 そしてもう一人、外見の説明が困難なレベルで珍妙な男。

 一言で表現するなら『上半身のみジオン軍の軍服を着た、下半身パンツ一丁の中高年』とでも言うべきだろうか。だが、それだけでは彼の珍妙さの半分も言い表せていない。

 頭部は異様に大きく、銀色のヘルメットを被り、そのヘルメットの頭頂部には赤色灯。両サイドには黄色いドリルめいた耳当てが装着されている。

 手足は逆に異様に細く、そもそも関節があるのか疑わしいくねくねとした動きを見せ、眼前のトンカツを常時半開きの口に運んでいる。

 軍服の上からは赤マント、国家元首めいた襷を肩から掛けている。しかし豪奢な上半身とは対照的に下半身は白いブリーフ一枚。靴下すら履いていない。

 この人間かどうかすら怪しい男の名は、自称「ファーザー」。眼鏡の学生の父を自称し、彼を「オンナスキー」と呼んで共に暮らす謎の存在である。

 

「オンナスキー、何故モテモテ王国SSが少ないかと言うと……何かの陰謀じゃよ!」

「ハッピーな生き様晒してんじゃねえ!」

 オンナスキーの鉄拳が飛んだ。壁に叩き付けられるファーザー。

 これは決してドメスティック・バイオレンスの一風景ではない。

 こうしないとファーザーは止まらないという、オンナスキーの学習した対処法なのだ。

「実際にgoogle検索してみてどうなった!? 作品知名度に対してクロスオーバーものの三作品しか書かれていないんだぞ!」

 

「フッ……あんぽんたん……お気に入り数千件、UA数数十万人のモテモテ王国SSの作成は、神に託された大事業なんじゃよー。カッコいいセンスを持つワシら二人に……」

 殴られたファーザーは特に堪えた様子もなく立ち上がり、口の横に手を寄せていかにも「美味い話」をするかのようにオンナスキーに囁いた。

「お主は光輝く伝説の書き手。オリ主がナオン(女の子のファーザー的表現。なお失恋したナオンはフラレナオンと呼び彼の中のエジソンが命名した)だらけのラブライブ界や戦車道界隈に投入してモテモテになるだけのSSで赤評価を得られる念能力者じゃよー」

「………」

「あとワシは謎の宇宙人じゃあ。23の秘密があるんじゃよー!」

 どうやら彼に取っては決め台詞だったらしく、良い笑顔をオンナスキーに向けた。

「もういい死ね!」

 突然オンナスキーは立ち上がり、ファーザーの襟首を掴んで締め上げた。眼鏡の隙間から涙を流しながらファーザーに言う。

「た、助けてえ」

「モテモテ王国SSとかそんなモンはどうでもいい! ぼくはただ一度でもランキングに入りたいだけだあ!」

「ご、ごめんなさい」

 意外と素直にファーザーは謝罪した。締め上げられたままオンナスキーを説得する。

「とりあえず早く離すのじゃよー。今回の作戦はもう用意しているのじゃよー!」

「……作戦?」

 

「良いかね、オンナスキー殿。人気を得るには何といっても憑依転生じゃよー」

 締め上げを解かれ、ファーザーは再びトンカツを食べつつ言った。

「憑依転生?」

「フッ、神様がミスで死なせてくれれば別世界の既存キャラに生まれ変わらせてくれる、画期的コンティニューシステムじゃよー」

「なるほど。その世界の立場や能力を得たまま意識だけ向こうの世界に行けるのか。それなら新能力を考える必要も努力の必要も無い。読者の全能欲求を満たせそうだ」

「さて……という訳で貴様、ワシを殺しなさい」

 ファーザーは突然、当たり前のように自分の殺害をオンナスキーに指令した。

「え?」

「だって死なないと神様に会えんじゃろ?」

「お前、そもそも死ぬのかなあ? とりあえずやってみるけど、後で復活してから僕を殺そうとするなよ?」

「………」

「返事はどうした!?」 

 

 【全力でファーザーを殴ってみた】

 

「……やや?」

 数分後、ファーザーは何やら雲の上らしきところにいた。

「フム、どうやらオンナスキーは無事ワシの殺害に成功したようじゃなー」

 周囲の状況を確認してオンナスキーの不在を確かめると、ファーザーはそれまでとは異なる邪悪な笑みを浮かべた。

「フフン……オンナスキーは気付いておらんかったか。この作戦の目的がオンナスキーの作品を人気作にするものではなく、ワシが憑依転生先のナオンとR-15タグで納まりきらぬ事をするためのものだったのをな。君は良い友人じゃったが、君の眼鏡がいけないのだよ」

 赤い彗星めいたセリフを呟き、ファーザーはその場で待った。やがて雲を割り、白髪の巨大な老人が姿を顕した。

「ハァー!? デウスエクスマキナ!?」

「……汝の望む先を言うが良い」

 失礼な事を言うファーザーの言葉を聞いているのかいないのか、眼前の神は文字通り機械めいた口調で尋ねてきた。ヘコヘコと頭を下げて懇願するファーザー。

「あ、あのー、ワシがワシよりもっと強くて、ナオンが沢山いて、そのナオンに色々な10連コンボを決められるような世界に行きたいにゃー」

「その願い、聞き届けたり!」

 神の手が上がる。するとファーザーの足元がパカリと開き、一瞬の後にその体は何も見えぬ暗黒の中へと飲み込まれていった。

「ゲエエ、ボッシュート!? ギャワァァァァァ……!?」

 

 

「………ウーン、ムニャムニャ」ファーザーは膝立ちの姿勢で眠っている自分に気が付き、眼を開けた。自分の顔を触り、手足を見る。今までのか細い身体とはまるで別の、力強いエネルギーが体に満ち溢れている。「フムフム。どうやら神の奴上手くやってくれたみたいだにゃー。しかし、何だか地の文と台詞が混じって変な感じなのは何故なんじゃろか?」

 

 

周辺を見回す。冷たい霧雨が降り、ファーザー(?)の体を濡らす。ここはビルの屋上のようだ。眼下には様々なネオンが瞬き、夜の街を照らしている。ファーザーはビルから飛び降りてみた。この体を試そうと思ったのだ。果たしてその体は自然に身についていた体術によるものか、音も無くアスファルトに着地した。無論、無傷だ。

 

 

「ガハハ、こいつはご機嫌なボディを手に入れたものじゃぜい」嬉しそうにファーザーは言うと、その目を邪悪に輝かせた。「グヘヘ……この力ならば普段はワシの作戦を妨害する犬やヤクザや警察も怖くないんじゃよー」「その程度の手合いを恐れる者がよくニンジャを名乗る。シックス・ゲイツ、言う程の者たちではないようだな」

 

 

「ハ?」突然の頭上からの声。見上げると、ファーザーが先ほどまでいた場所にひとつの赤黒い影が立っている。その影は静かに両手を合わせるとファーザーにアイサツを行った。「ドーモ、はじめまして。ニンジャスレイヤーです」そう言われたファーザーは無意識に同じように手を合わせていた。

 

 

「(エート、この場合はこっちもアイサツを返すんじゃな)」宿主の脳内の記憶を辿りつつファーザーは自分がすべき行動を模索した。大丈夫、今の自分は元の世界の自分より遥かに強い。相手が誰であれ負けないはずだ。ファーザーは自分のこの世界での名前を探り当て、アイサツを返した。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。バンディットです」

 

 

【作品名「ネオサイタマに転生したらバンディット=サンだった件について」】

 

 

「ギャワ―――!」

 元のアパートの中で、頭から血を流したままファーザーは跳ね起きた。その横で平然とトンカツを食べているオンナスキーがそちらを見た。

「……早かったな」

「10連コンボをするつもりが、ブロッキングから逆に10連コンボを食らって爆発四散したんじゃよー! ネオサイタマは流石にサツバツ過ぎるんじゃよー!」

 

 モテモテSS王国を目指す二人の物語は、まだまだ続く……のか?



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