ARIA †Rilanciare la Colore†   作:自分不器用ですから

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EXTRA STORY その優しき常緑樹に・・・

 

 

「・・・・・・・・?」

 

「起きた?お兄さん?」

 

「ラズリンティス・・・・・ここは・・・君の世界か・・・・」

 

目が覚めると寝ていたのは前にラズリンティスと出会った彼女達、フロマ

のいる世界で彼女が解放されたことで青のモノだけが世界の所々を染める。

 

「これは・・・?」

 

「新しいフロマがお兄さんの眼に干渉したんだよ・・・緑のフロマ」

 

どうやらまた別のフロマと会う資格を得たようでこの世界に呼ばれたようだ。

 

「あの時みたいに・・・『眼』の力を使って・・・・」

 

『眼』を発動すると薄らとではあるが発光色の緑が見えてきた。そして恐

らくは森の木らしきシルエットのところから1人の少女がこちらを見ている。

 

「あの子かい、ラズリンティス?」

 

「うん」

 

ラズリンティスと手を繋いで緑のフロマに歩み寄ってその場でしゃがみ込む。

 

「初めまして、緑のフロマ。僕はカイト、この子はラズリンティス、君が

 僕をここに呼んでくれたの?」

 

「・・・・・・・・」

 

だが言葉を発することなく、緑のフロマは突如として消えてしまった。

 

「あ・・あれ?」

 

辺りを見回してみるがどこにも彼女の姿は無かった。ラズリンティスが説明する。

 

「緑のフロマはね、とっても恥ずかしがり屋なんだ。前のご主人様の時も

 なかなか仲良くなれなくて・・・でも最後は仲良くなったよ?」

 

「そうなんだ、とりあえずは根気よく話しかけるしかないか」

 

それから僕達は手を繋いで森林地帯であろう場所を歩いていく。

 

「?・・なんだ、今、足に何か当たった気が?」

 

僕が足元を見てみると何かが薄らと見える。足・・・?人じゃない、これは

動物・・・?

 

「!?」

 

僕は気付いたその動物のようなものの周りにはあの色があってそれらの状況

からこれは怪我をしているか、最悪の状況になっている動物と推測した。

 

「この目を使ってもはっきり分からない・・・生きてるのか、この子は?」

 

だが隣にいたラズリンティスが服をぎゅっと掴んで僕を引き寄せてくる。

 

「お兄さん・・・この子は光が無くなってるよ・・・もう動かないよ」

 

「光が無い・・・?」

 

そして次第に目の解像度が上がったのか少し鮮明に見えてくる。そこにい

たのは血を流し、すでに眼から光が消えている動物だった。

震えているラズリンティスを抱きしめて落ち着かせてその場を離れようとする。

 

「(!緑のフロマ・・・・?)」

 

その動物の死体の横に緑のフロマが現れる。だが次の瞬間、動物の身体が

光って緑のフロマに吸い込まれていく。

 

「な・・何が・・・・?」

 

「・・・・・わたしに・・・・近づかないで・・・あなたも・・が消え――-」

 

言葉を最後まで言う前に彼女は消えてしまい、すぐにその場所に行ったが

緑のフロマの姿は見えない・・・だけど彼女がさっき言った言葉。

 

「(あなたも光が消え――――-)」

 

確かにそう言った。光が消えるってどういう意味なんだ?

だが僕はそこで気付いたことがあった。さっきまで動物の死体があったと

ころに一輪の花が咲いていた。

 

「これは・・・・」

 

「あのフロマはね・・とっても優しいんだ。でも自分の事をいちゃいけな

 い色だって想ってる・・・他の光を奪って生きているって想ってるの」

 

「いちゃいけない色・・・他の光を奪う・・・?」

 

『光を奪う』『光が消える』この表現について少し考えてみた。死んでし

まっていた動物らしきモノから出た光は緑のフロマに吸収されているよう

に見えたけどたぶん、彼女とラズリンティスが言っている『光』というの

は生命の『命』の事で『命を奪う』『命が消える』そう言いたいんだろう。

 

「でもこの花・・・なんていうんだろう・・・さっきの動物とオーラが同

 じ色をしている。というより何でいきなり花が・・・?」

 

そういってその花に触れると自分の頭の中にイメージ映像が流れてくる。

さっきの動物の光が形を変えてこの花へと変化していく、その映像だった。

 

「この花から感じる波動・・・とても力強くて生命に満ち満ちている・・・

 あの子の色も少し混ざってる。あの子の力・・・なんだよな」

 

その一輪の花を摘み取るとラズリンティスの頭に髪飾りとしてつけてみた。

 

「お兄さん、似合ってる・・・?」

 

「うん、とても似合ってる。それに君の色がもっと綺麗になった気がするよ」

 

彼女の色のオーラが前よりさらに純度を増したような気がしたのだがそれは彼

女も感じたようで頭の花飾りに触れるととても嬉しそうな顔になる。

 

「流れてくるよ、緑のフロマの優しいあったかさ・・・頭、撫でてくれてるよ」

 

もしかすると彼女は光を奪ってしまうことばかりを気にしていて自分が別の光

を生み出している事に気が付いていないのかもしれない。

ここで僕は彼女の原色となる『緑』の意味について考えてみる事にした。

 

「緑の意味?」

 

「うん、緑はね、『成長』『安全』って意味があったり、後は国の名誉や象徴を

 表す色でもあるんだ。後はね、緑は春を表す色とも言われてるよ」

 

「春?草や木、お花がいっぱいになる?」

 

「そうだよ。後は緑の事を実はある国では青って一緒の意味に言い換えたりするんだ」

 

「緑のフロマと一緒?」

 

「文化的なものもあるんだけれど青々としたっていう言い方もあるんだ」

 

ラズリンティスと手を繋ぎながら緑に由来する事項や知識などを話して聞かせ

る。今迄知らなかった事に彼女は眼を輝かせながら話を聞いていた。

 

「たぶんだけど緑のフロマは自分が消えそうな光をまたもう一度、この世界で

 光り輝ける存在にしているのが分からないんだと思う。自分が光を奪って犠

 牲の中で生き続けているのを自分がいらない色なんて表現したんだよ」

 

「緑のフロマも一緒にいれるよね?お話出来るよね?」

 

「ああ、もちろん。・・・・そろそろ出ておいで、ちょっとお話しよう」

 

「?」

 

振り返った先にいたのは木の後ろに隠れてこちらを見ていた緑のフロマだった。

そんな彼女にラズリンティスが歩み寄って手を差出した。

 

「お話しよ、お兄さんからいっぱいお話してもらったんだ」

 

「・・・・・・・でも」

 

「わたしは光を奪うから、かな?」

 

「・・・・・(コクコク)」

 

木に隠れながら俯く彼女の頭に触れる。だけれど今度は逃げずにそのままだ。

だが彼女は悲しそうな目で言葉を発する。

 

「・・・わたし・・何も生まない・・光を奪って・・・それで生き続ける冷たい存在」

 

そんな彼女にラズリンティスの頭に付けたさっきの花を見せる。

 

「見てみて、ラズリンティスの頭につけている花はね、君が生まれ変わらせた

 さっきの動物の光。とても綺麗な花に生まれ変わらせたんだ、君が」

 

「・・・・綺麗」

 

するとラズリンティスが自分の頭からその髪飾りを取ると緑のフロマの頭にそ

っとつけてあげた。その髪飾りに触れて足元の水たまりに自分の顔を映す。

 

「君は奪う存在じゃないよ。存在出来なくなってしまった光を君はまた別の生き

 る光にしてくれている・・・君はとても優しくて暖かい色だよ」

 

優しく頭を撫でながら微笑みかける。彼女はずっと花飾りを見つめている。

 

「お兄さん、お兄さん、緑のフロマにもお名前あげて、わたしみたいに」

 

「名前・・・・?」

 

「うん、いいよ。そうだな・・・・」

 

僕は緑の色の名称を頭に浮かべていいものがないかと思案する。僕が思いついた

のは古代ギリシャにおいて神の霊木として知られている常緑樹の1つである月桂

樹を表し神聖視されている名前『ロリエ』だった。

 

「それじゃ君の名前は『ロリエ』。永遠不滅を表す色、消えゆく光をまたこの世

 界で永遠に輝かせる命を繋ぐ色・・・どうかな?」

 

「ロリエ・・・・わたしの名前・・・・」

 

すると彼女の身体が光輝いて伸ばしてきた手を僕はとる。それと同時に『眼』の

力が発動して今まで不鮮明だった発光色の緑が青々とその色を表して周りに森が

生まれ、そこには動物達、植物達が生き生きしている。

 

「感じる・・・わたしの中にあった光が・・・世界に溢れてる・・・みんな、生

 まれ変わっていく・・・また新しい光に」

 

ロリエもラズリンティスと瓜二つの外観となって2人がしっかりと手を繋ぎあっ

て額をつけると嬉しそうな笑みを浮べてお互いに喜び合った。

 

「ラズリンティス・・・・お話・・・聞きたい」

 

「うん、いっぱいお話してあげるね」

 

2人はその場に座るとラズリンティスが僕に今まで教えられた話をロリエに話し

てあげていた。その話をとてもワクワクした顔で聞き入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかった・・・・緑のフロマも色を取り戻してくれた。ふふっ、いい笑顔だね」

 

(・・・・・う)

 

僕はその時、何かの声を聞いてふと辺りを見た。だがそこはさっきまでの森の中

ではなく、周りは数々の絵に囲まれた通路で奥に続いていた。

僕は誘われるようにその通路をずっと歩いていく、そして気付いたのは飾られて

いる絵の形式が形式としては最古と言われる技法で今は失われているモノだった。

失われているというのは再現する植物などもなく、再現出来ないという意味。

 

「ここは・・・・・」

 

開けた場所に出てそこには画材や古い資料、さらには包装布に包まれた絵もきち

んと棚にしまわれている。そして中央に天窓からの光で照らされている一枚の絵

を見つけてその絵に歩み寄ると僕は息を呑んだ。

 

「凄い・・・こんな技法見た事もない・・・本当にここにいるみたいだ・・・」

 

その絵には1人の女性が描かれていた。陶磁器のような肌と煌びやかな光を湛え

て透明感のあるホワイトシルバーの髪、そしてどこか聖母のような笑みを浮べ

た女性が描かれてていて僕が見たどの絵よりもずば抜けたモノだった。

 

「なんて綺麗で惹きこまれる絵なんだ・・・・・」

 

僕がその絵に触れた瞬間、また光に包まれて目を開けた時に映った光景は水の上

なんだろうけれどなんと表現したらいいのか、幻想的な色彩に包まれた空間に透

明度の高い水がその色を映して幻想的かつどこか悲哀的な雰囲気だった。

 

「なんだろう・・・・この胸を掴む様な悲しさ・・・すごく痛む・・・・」

 

「やっと・・・会えたね」

 

「!」

 

振り返った先にいたのはさっきの絵に描かれていた女性で実際にその人物が目の

前に現れてその可憐であり、端麗であり、清廉さがあり、僕は唖然とする。

 

「き・・君は・・・・」

 

「あの子達の前の主人・・・・あの子達から世界を消してしまった咎人」

 

「世界を消した・・・?どういう事なんだ」

 

「わたしの一族は色により創り、世界を創生する力を持っていた。世界を色で視

 て全てを総べていた人間・・・いえ、あの頃の一族は自分を神と思っていたの

 かもしれない・・・それが大きな過ちであるとも気付かず」

 

『世界を創生する力』というのは何となくだけど僕のこの『眼』の力なんではな

いかと思った。この『眼』はラズリンティス達の世界に色を与えて確かに彼女達

の世界を『創った』・・・だけど僕にもまだ理解出来ないレベルではある。

 

「そして怒りをかい、わたし達は色を奪われ、世界を創るどころか世界を視る事

 すらも出来なくなり・・・最後・・存在が消えた」

 

「色を奪われた・・・?もしかしてラズリンティス達の世界が白に塗りつぶされ

 ていたのはそのせいなのか」

 

「ラズリンティス・・・?青のフロマの事ね・・あの子は元気にしているの?」

 

「あ・・あぁ、元気にしてる。それにロリエ・・えっと君には緑のフロマってい

 えばいいかな、彼女もさっき打ち解ける事が出来たんだ」

 

「あの子が・・・わたしの時は仲良くなるまで時間が掛ったけれど・・・あなた

 は本当の意味で『創生の力』を使われるべき道に使ってくれているね」

 

「『創生の力』っていうのはこの『眼』の事・・・でいいんだよね?」

 

「ええ。でもまだその『眼』の力は戻ってはいないの・・・その『眼』はまだ色

 を『理解する力』、色を『生む力』だけまだ他にも力は眠っている」

 

そういって彼女が近づいてくると僕の頬に手を添えて背伸びをしてくると額に口

づけをしてくる。僕はいきなりの事にまったく反応が出来なかった。

 

「わたしに残った力ではそれくらいしか出来ないけれどあなたの『眼』にもう1

 つの力・・・『色を具現化する力』を与えたわ・・じきに必要になる」

 

「君は・・・一体・・・・?」

 

すると少し柔らかな笑みを浮べて彼女は名乗った。

 

「わたしはイオン・コローレ。『永遠なる色』、総てのフロマと通わせる事が

 出来た・・・『創生の姫君』と呼ばれていました」

 

「コローレ?僕と同じラストネームだ」

 

「わたしと同じ?あなたの名前を聞かせてもらってもいいですか?」

 

「僕の名前はカイト・F・コローレと言います。君と同じラストネームなんだ」

 

「わたしの世界で『コローレ』の名を持つモノは『創生の力』を持つ者の中で

 も最も神聖視された存在・・・わたしの一族だけが継いでいる名です」

 

「それっとどういう・・・・なっ・・・!」

 

しばらくすると周りの色がどんどん白に塗りつぶされていく。イオンの姿もみ

えなくなっていって最後に彼女が必死に訴えかける。

 

「あなたは・・・忘れないで!『創生の力』の意味を、今のあなたでいつづけて!」

 

「ちょっと待ってくれ!まだ話したいこ――――――――――――――-」

 

そこで僕の意識は途切れた。

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                    ・

「・・・・・ん―――――――-さ・ん――――-いさ!―――――おに・・ん!―――お兄さん!」

 

「・・・・・っ」

 

僕が目を覚ますと目の前には心配そうに僕を見つめている。

 

「大丈夫・・・?大丈夫・・・・?」

 

ロリエが泣きそうな顔で僕を見上げてぎゅっと服を掴んでくる。どうやらかなり

心配させてしまったらしい、安心させるようにそっと抱き寄せた。

 

「大丈夫だよ、ロリエ。心配させてごめんね」

 

「わたしも心配したよ、すっごく心配したよ・・・・!」

 

「うん、ありがとう。ラズリンティスも心配かけてごめんね、もう大丈夫だよ」

 

「「♪」」

 

抱き寄せた2人は途端に嬉しそうな顔になって笑みを浮べている。僕はほっとし

たのだが頭に浮かんだのはさっきの少女『イオン』の事だった。

僕と同じ『コローレ』のラストネーム・・・そして彼女の一族と世界では神聖視

され特別な意味を持っている言葉・・・僕がこの力を受け取った事も関係があるのか。

 

「あっ・・・お兄さん、そろそろお別れだよ?」

 

「お別れ・・・」

 

ちょっとさびしそうに顔を俯かせるロリエの頭を撫でながら言った。

 

「お別れって言っても『眼』を使えばいつでもお話出来るし、またお話しようね?」

 

「・・・・!うん♪」

 

よかった、笑ってくれた。そんな安心感と共に僕はまた意識を失っていった。

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「『カイト・F・コローレ・・・わたしと同じ『コローレ』の名を継ぐ男の子」

 

わたしはいつもと変わらないこの鎖された空間で長い年月の間会う事もなかった

別の人との出会いについて想いに耽っていた。

それに彼との接触の後にこの空間には『あるモノ』が落ちていたの。

 

「とても綺麗・・それに温かい絵・・・これが彼の絵・・・まだ未熟な力だとい

 うのに『眼』の力をとても引き出せている・・・不思議だね」

 

まだ彼の『創生の力』はわたしには満たないモノだけれどこの絵にかけている想

いは一族や他の力を持つ者達でも出来ない、とても優しく、穏やかで心を溶かす

ような別の力を感じさせるオーラに満ちてわたしの心もすっと満たしていく。

 

「これが彼が視て描いた世界・・・もっと見てみたい・・彼の絵を・・・・」

 

そんなわたしの願いを聞いてくれたのかその絵画帳には彼の絵が浮かび上がって

いき、わたしはその絵をずっと眺めていた。

彼ならあの子達の世界を取り戻してくれる・・・どこか確信めいたモノがわたし

の中には浮んでいた。わたしにも出来なかった『世界の創生』を。

 

 

そしてわたしはその絵画帳をしっかりと抱いてまた・・眠りに・・――――-。

 

 

 

 

 

 

 




次回、ARIA the STORY†Rilanciare la Colore†

第1話 ~まだ名もない物語~

夏祭りの夜・・・その関係は少しずつ変化していく・・・・。

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