では、ドゾー
戸塚君と会う約束をしていたがすぐに行くことが出来ず、遅れることをメールで送った後、さっきまでいた自動販売機の前まで戻って来た。
「…で、話って何だ?」
「…その前に訊いていいかしら?」
何を訊くのかわからないけど首を縦に振る。
「貴方の部屋はあそこなのかしら?もしそうだとしたら何やらかしたの?」
…あ、そういえばあそこって教師用の部屋のとこだっけ?
理由は考えてあったし大丈夫なんだけどね。
「少し見られたくないものあってな…人と同じ部屋とかはあまり好きじゃないんだ」
「…そう、悪いこと聞いたわね。忘れてちょうだい」
由比ヶ浜さんにも似たような事言ったっけ?
罪悪感がその時と同じくらい出てるんだけど。
「話逸らしてしまったわね。依頼はどんな感じ?」
「ん?ああ、可もなく不可もなくって感じじゃねえか?まあ悪いようには見えなかったけどな」
「…悪いわね、私は別のクラスだから全然手伝えなくて」
雪ノ下さんの顔は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
…私も何もしてないなんて言えない
「…そういえばお前ここに本当は何しに来たんだ?俺が居ることを予測したわけじゃないだろ」
「当たり前でしょう…あそこのお土産コーナーの商品を見に来たのよ」
誰に買って帰るのだろう?なんて考えていると質問を問いかけられた。
「そういうあなたは何してたのよ。一人で勝手にソファの上で悶えていたじゃない」
「…気にすんな、俺なりに色々な」
恥ずかしさのあまり顔を逸らしてしまう。
こら、くすくす笑うんじゃない。
「貴方にも羞恥心があったのね」
「…ほっとけ」
雪ノ下さんはそれを聞き満足したのか片手を上げて自分の部屋へと戻っていった。
…戸塚君とこ行こ。
というわけで待ち合わせの場所、というよりおなじみとなってしまった自動販売機の前で戸塚君を待ってたんだけど…
「何でお前が来たんだ?」
「っべー、ヒキタニくんまじ辛辣ってやつっしょ!」
目の前には戸塚君ではなく戸部君が居た。
「いやー、麻雀で負けちゃってさー。罰ゲームっつーか?ジュースの買い出しなんだよなー」
「はぁ」
「あ、忘れてた!」
戸部は自動販売機から私の方に体を向けて二カッと笑い
「ヒキタニくんナイスアシストっつーか?そのお礼っつーか?」
…
「…別に何もしてねーだろ。礼を言うなら一番働いている由比ヶ浜に言え」
「あー、それはモチなんだけど。やっぱお礼くらいはさ。おかげで告る決心も付いたっつーか?」
…なんで?
「お前はさ」
「ん?どしたん?」
「俺の噂、一度は聞いただろ。何で俺を信用できる?」
戸部はそれを訊かれると苦笑いして
「いやー、実際半信半疑っつーか?まだ全部信じきれないんだよなー」
でも、と続け
「合宿で一人の女の子助けたっしょ?しかも一人でさ。だから悪い奴じゃないっていうのは分かるんだよなー」
「…別に、たまたまだろ」
「まあ、頼りになるってのは分かるから?明日もオナシャス!」
そう言って戸部君は缶ジュースを持って走っていった。
…違う
「ごめん!ちょっと遅れちゃった!…比企谷さん?」
私は、そんなにいい人なんかじゃない。
バカで、臆病で、後先も考えることもできない
「比企谷さん!」
「!ああ、ごめん。あと比企谷さんじゃなくて一応比企谷君でお願い。誰か見てるかもしれないからね」
「それより何考えてたの?少し悲しそうな目してたよ?」
「大丈夫大丈夫。あそこで話そっか」
私は悲しい顔を表に出さないよう気を張りながら戸塚君と話し合った。
それは楽しく、先ほどの暗い雰囲気は消え去った。
でも、胸のもやもやは消えなかった。