やはり私の男装生活はまちがっている。   作:空葬

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明らかに文章の書き方変わってるような気がする…。
では、ドゾー


指導者と労働者

陽乃さんと雪ノ下さんを宥め席に座らせるが、文化祭に向けての会議が一向に始まらない。

委員長である相模が時間になっても来ないのだ。

会議室に不満が飛び交う。

 

 

「委員長遅刻?何してるんだろうね?」

 

 

隣で陽乃さんがそう言った。

その顔はいつも通りのすまし顔…のはずだが、その裏で嫌なオーラを漂わせている。

まるでいい駒を見つけたかのように。

今飛び交っている不満なんかよりも恐怖した。

やだよ〜。この人の隣はやだよ〜。

早く家に帰ってかまくらと戯れたいよ〜。

 

 

「ごめんなさい、少し遅れました」

 

 

そう言い、入ってきたのは我らの委員長相模さん。

謝罪を口にしているが、その姿はいつも通りの形であり、謝罪の気持ちがあまり伝わってこなかった。

雪ノ下さんが怒りを感じているのか相模に問いかける。

 

 

「なぜ遅れたの?」

 

「いや、クラスの方手伝っててさ。文化祭だしクラスの方も大事じゃん」

 

「それならせめて今日の課題を」

 

「クラスを手伝って、か。へぇ〜」

 

 

陽乃さんが急に口を挟む。

その言葉とタイミングに雪ノ下さんは顔を歪める。

…うん、この人がいる時点で何となく知ってたよ。

 

 

「クラスの方を優先して会議に遅刻する委員長…」

 

「な、なんですか?何か文句でも?」

 

 

陽乃さんは相模さんに近づきながら威圧をかける。

相模さんも負けじと対抗するが、この人にとってそれは無意味に近い。

…いや、この人の手中に自分から入ったに近いのかな?

 

 

「…いや、いい心構えだと思ってさ♪やっぱりクラスの方も盛り上げていかないと、だよね!」

 

「え?…そ、そうですよね!」

 

 

陽乃さんの急な変化に相模さんは少し動揺するが、同意してくれていると理解したのか急に明るくなる。

んー、堕ちるの早かったなぁ。

 

 

「あ、忘れてた。私ここの卒業生なんだけど、文化祭を盛り上げるために参加してもいいかな?」

 

「あ、そうだったんですね。全然大丈夫ですよ〜」

 

「ちょっと相模さん。そんな軽はずみで決めては」

 

「いいじゃん、丁度困ってたんだし。それに文化祭を盛り上げてくれるなら問題ないでしょ?」

 

 

その言葉に雪ノ下さんは押し黙る。

嘲笑、それに似た顔を相模さんはは浮かべ、陽乃さんの方に笑顔を浮かべながら近寄る。

その姿は、私には順従な犬に見えてしまい、哀れんだ。

 

 

「あ、そうだ!クラスの方これからも手伝うこと多くなりそうだから私あまりここに来ないと思います。なので問題があれば」

 

「待って相模さん。それだと作業量が増えて間に合わなくなる可能性が出てくるから、あなたには」

 

「いいじゃん、そのために今まで急いで来たんでしょ?少しくらい大丈夫だって。それに…クラスの方も頑張らないと、ね」

 

 

さっきの陽乃さんの言葉で後押しされたのか、雪ノ下さんに強気で押してくる。

その態度にこれ以上言っても無駄と感じたのか、雪ノ下さんは一言、「そう」と呟き椅子に腰掛けた。

その状況を陽乃さんは笑って見ていた。

 

 

『最近心の底から笑ったことある?』

 

 

ふとショッピングモールの陽乃さんの一言を思い出した。

今、現状でそんなこと言われたらこう言い返すだろう。

あなたはどうなんですか?と

 

 

 

 

 

 

委員長、相模さんは案の定あの日以来会議室に来ることは稀となった。

そのやる気ない姿にどうでもよくなってきたのか作業する人が減っていった。

一人、また一人とドミノ倒しのように人が減っていき、最後には両手の指折でで数えれる程の人しか残っていなかった。

勿論、人が減るほど作業は他の人に移るのだが、当然間に合うはずもなく、作業はどんどん遅れていった。

 

 

「ほら、これが提出する分だ」

 

「ん、そこに置いといてくれ」

 

 

提出書類出しに来た葉山くんもこの状況に思わず苦笑い。

こんなに仕事するなんて聞いてないよ〜。

こうなったら元凶の陽乃さんにお詫びとしてハーゲンダッツ奢って貰っちゃうもん。小町の分も忘れずに、ね。

 

 

「大変そうだな…手伝おうか?」

 

「…すまん、マジで忙しいからお願いするわ。書類に目を通して問題なかったらこのハンコを押してくれないか?」

 

「…別にもっと大変そうなのでもいいんだが」

 

「やってみたらわかる。つまんなさすぎて途中で文字読むことを放棄するはずだから」

 

 

少なくとも私はそうでした。

それにしても…雪ノ下さん大丈夫かな?

体力ないはずなのに3人分の作業量を毎日こなしている。

そろそろ身体の心配をするべきだ。私はそう思い、今日の分を早めに終わらせ、雪ノ下さんに近づく。

 

 

「雪ノ下、お前大丈夫なのか?」

 

「…なにが?」

 

「いや、お前3人分はやってるだろ。そろそろ休まないと身体がもたないぞ?」

 

「…私の勝手よ」

 

 

この会話の間も雪ノ下さんはパソコンから目を離さず作業を続けていた。

私はため息を小さく吐き、雪ノ下さんの近くにポカリを置いてから近くにある書類の山の半分を持っていく。

…重い。

 

 

「ちょっと、勝手なことしないでくれる?」

 

「今日の作業が終わって暇だからやるんだよ。間に合わないんだろ?効率良くやった方がいいだろ?」

 

 

私はそう言い、自分の作業場に戻り、自らブルーライトの地獄へと戻っていった。

今日帰るときブルーライトカットの眼鏡買おうかな?

 

 

「…ありがと」

 

 

小さな呟きが聞こえたような気がしたが、私は気にせず作業を続けた。


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