私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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二十一日目~二十五日目

配属二十一日目

 

私の名前は筒井マモル。生まれた月は四月、日は四日。コウタよりも二つ年上の十七歳にも関わらず身長は負けている。女性のユイにまで負けていたら心は折れていたかもしれない。

昨日遅くまで起きていたせいですこぶる眠い。 二度寝したかったが案の定ユイがやってきて私から布団をかっさらった。よく朝からそのような元気が出るものだ……。

朝食まで作ってもらってる分申し訳なさが積もる為、私は渋々寝床から身を起こす他なかった。

ぷりーず、ぶれいくたいむ。

 

 

 

 

準備運動のアラガミ討伐を終えた後、私はペイラー博士にディスクを返しに行った。さっさと出ていきたかった私だったが、ペイラー博士にあるお願いごとをされた。なんでも、あるアラガミのコアを入手して欲しいとのこと。しかも他の皆には秘密で……出張中の支部長にさえ口外せずに、である。明らかに危険な雰囲気を漂わせるお願い……いや、私と博士の立場上それは命令といっても差し支えないだろう。落ちこぼれの隊長は辛い。

唯一の救いは第一部隊の切りこみ役として名を馳せているソーマさんが同じ任務を受けているというところだろうか。ちなみに切りこみ隊長は私とされている。確かにいの一番に私は敵に突っ込むものの、隊長というよりは無鉄砲だと思うのだが……どうにも周りが第一部隊の隊長だということで私を贔屓しているような気がする。

おっと、話が逸れてしまった。無意識に愚痴を書いてしまうあたり、ストレスがそこそこ溜まっていたようだ。このあとの任務で刀身をバスターブレードに変えてチャージクラッシュの爽快感を味わってこなければ。

ゴッドイーターの基盤となったと言えるソーマさん……仲良くしたいのは山々だが、果たしてあのクールが私のような邪魔者に構ってくれるだろうか。そうだ、丁度いいしバスターブレードの使い方を教わろう。そのついでに仲良くなればいいではないか。私にしてはなかなか良い案を導き出した、頑張らなければ。

 

 

 

 

私にはバスターは合わなかったようだ。これを扱い切れるソーマさんは本当に凄いと思う。

ロングの刀身よりもずっと重みがあるので、変形した銃身でもその重量は反映され空中にいられる時間が少なくなってしまった。空中でのチャージクラッシュが上手く決まったのはたったの二回で、戦闘ではあまり使えない。

ソーマさんの凄みの聞いた睨みはきっと私のバスターは実戦向けではないことを見抜き、非難していたのだろう。ちんちくりんのゴッドイーターが変に背伸びをすると痛い目にあう、そのことがよくわかる経験だった。

やはり、空中での緊急方向転換もできるロングが一番私には合っている。インパルスエッジは偉大である。

 

 

 

 

任務中の私へある指摘がされた。どうやら、私はユイとアリサよりも神機の形態変化を行うスピードが速いそうだ。そんなわけはないだろう、と三人揃ってやってみると、確かに私が一番速かった。二人が変形にかかった時間の半分程である。

恐らく空中でよく形態を切り替える為に慣れてしまったのだろう。普通の慣れではなく、もはや流れとして身体に染み込ませるように、だ。こんな私でも新型の二人よりも優れているところがあるのだなと感慨深い気持ちになった。

しかし、どうやら慣れているのはロングとブラストの組み合わせのみでありどちらかを変えてしまうとスピードが落ちてしまうようだ。だからバスターが合わなかったのか……。

他の種類を使う機会はなさそうだ、と二人に伝えると何故かがっくりとした様子で項垂れていた。どうやら私にそれらの効率的な使い方を享受してくれようとしていたようで、申し訳ない気持ちになった。

 

 

 

 

配属二十二日目

 

 

ペイラー博士に今度はチームで秘密の任務に出撃するよう命令された。通常任務として偽装してあるので、情報漏洩の心配はないとのこと。そこまでして何をしたいのだろうか……。

だがまあ、 物事の裏は大変複雑なので、とりあえず深くは考えずに任務に励むとしよう。偉い人の考えなんて私には分かりはしないのだから。

 

 

 

討伐対象であるアラガミのコアを抜こうとしたとき、何故か戦場である廃寺にペイラー博士がソーマさんを伴ってやってきた。コアを摘出せずに死骸を放置しろだなんて言うものだから、素材が取れないことに少し不満を抱きながらも渋々了承した。

しばらく待機していると、放置されていた死体の傍に一つの人影が現れた。それは人間とは思えないほど肌が白く、髪も色がない……黄色い瞳をもつ少女だった。片言の日本語で初対面の相手に「おなかすいた」ときたものだから、一気に気張っていた力が抜けてしまって思わず神機を取り落としそうになる。

断片的に聞いたペイラー博士の話だと偏食家だとかなんとか……状況的にアラガミを喰うのだろうか。

一度オウガテイルの肉を興味本位で(ブラストで)焼いて食べてみたらゲロまずかったのだが、よく食べれるものだ。勿論、食べたのは一人だったので誰にも怒られてはいない。遭難してサバイバル生活を送る時への対策として行ったのだが、どうせ他のみんなに止められるだろうからだ。危険ではあるが、不意の事故に対する生存率を高めるためには必要なことである。

詳細を説明するために博士と私達は少女を連れてアナグラへと帰投した。

ちなみに、少女は何故か私を避け気味だった。へこむ。

 

 

 

 

 

ペイラー博士が言うに、どうやらあの少女はアラガミだったようだ。アラガミを食べられるやつなんてアラガミくらいしかいないだろうと想定していた私はそこまで驚かなかったが、周りはオーバーリアクションをするほど驚愕していた。博士は何故かこちらをつまらなさそうな目で見ていたが……ふっ、私が驚くことなんてそうそうありはしないんだぜ。

そう余裕をこいてみたが、空腹のアラガミ少女はまずかろうとなんでもガブリするという言葉にちょっとびびってしまった。驚いていないからセーフ……だと思いたい。

何故アラガミがこうも整った人型をとっているかなどの説明を博士はしてくれていたが、私は少女と普通に接しようと試みていたのでほとんど話は聞いていなかった。強いていえば、博士がサクヤさんに近づいた時に小声で話しかけていたことには気づいたくらいだ。

少しの間接していたことが功をなしたのか、アラガミ少女は私を避ける様子はなくなった。努力の勝利である、友情はまだない。ふと気がつくと皆にジトーっとした目で見られていたのはなかなか苦しかった。

「ロリコン」と呟かれたのを私は否定したかったが、誰が発言したのかわからなかった為言葉が出せなかった。無念。

 

 

 

 

 

コウタと平和だった過去のことや家族について話した時、ふと私はどうだったのだろうと回帰することにした。

とはいうものの、実のところ過去のことはほとんど覚えていない。いつの間にかアラガミが蔓延るこの世界に存在していて、それを倒すゴッドイーターがいると知っていた。家族はいない……と思われる。あれやこれやと生きているうちに、気がつけばこうしてゴッドイーターとして働いているのだ。

今まで疑問に思ったことはないわけではないが、こうして日記で記してみると改めて自分が何者であるかが気になってくる。最も、ソーマさんのようにアラガミの因子が混じっているわけでもなければ、今日回収した少女のように実はアラガミでした……なんて可能性はほとんどないだろうが。

……まあ、今更過去を振り返ったところでどうにもなりはしないだろう、時間の無駄だ。

筒井マモル。生年月日は四月四日。十七歳。

私を織り成す最低限の情報さえあれば、私は私としてこうして生きていられるのだから。

 

 

 

 

 

配属二十四日目

 

 

今朝はアラガミ少女の名前をつけよう大会が開かれた。

主催者はペイラー博士、司会は私こと筒井マモル……なんて、もちろん大会なんて冗談だが。

名前をつける、という部分は本当だ。名付け親になる重要なことだったので、皆頭を悩ませたと思うのだが……一番はじめに口を開いたコウタのネーミングセンスには驚いた。

ノラミ。そう、ノラミだ。野良女と書いてノラミと読むに違いない。発言した瞬間、その場が凍りついたのは言うまでもないだろう。

私は単純に白っぽいのでシロとつけようかと考えていたのだが、アラガミ少女が自身で名乗ったことによって名付け会は終わりを迎えた。アラガミ少女の名前は、シオ……一文字違いだった。

 

 

 

 

シオは学習能力がなかなか高いらしい。「おっす」と挨拶してきた時は、おらご〇う、と続くのかと思った。

周りのメンバーが言葉をどんどんと幼いシオに教えていく中、私はその様子を見守っているだけだった。シオとアラガミの部位の何処が美味だとか良い解体方法の仕方などを話していただけで叱られ、話す機会が少し奪われてしまったのだ。アラガミ視点からの話を聞きたかったのだが……残念だ。

 

 

 

 

これまで貯めていたシオの食事用のコアが尽きたらしく、私とソーマさんにコウタ、そしてシオと共に任務……もとい食料確保に向かった。対象はシユウ堕天種……堕天種というのは元のアラガミから派生した色違いと思えば良いだろう。強さも異なるらしいが相手をしたところ大きく動きが変わっているところはない。両腕を根元から切り落としたら後はもう楽だった。

そしてシオが討伐したシユウ堕天種を食べようとしたとき、ソーマさんに一緒に食べないかと誘ってしまっていた。ソーマさんには偏食因子が混じっているためにアラガミであるシオが反応してしまったのだろう。「お前みたいな化け物と一緒にするな」と怒鳴り、シオが何かを伝える前に先に帰ってしまった。

混乱していたコウタに事情を説明した時、かなり心配した表情を浮かべていた。こういう優しいところがコウタの取り柄だと安堵もするが、逆につけこまれたりしないかと心配にもなってくる。

……何かあった時は隊長らしく、第一部隊の皆の相談には乗ってあげなければ。でないと最終的な生存率が落ちてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

配属二十五日目

 

 

 

ユイとアリサ、それにエリックさんという珍しいメンバーが加わって朝一番の任務に出かけていた。

内容は嘆きの平原でのコンゴウ堕天種一体の討伐と小型アラガミの残滅といった比較的簡単なもので、コンゴウのだらけた口に神機を突っ込み中身をぐちゃぐちゃに掻き回したらすぐに終わった。小型アラガミも一箇所に集めて爆発弾で一気に掃除し、任務は終了した……のだが、なぜか三人とも建物や岩肌の隅などをくまなく探していた。

理由を問うと、時々こういう場所に神機の素材となる鉱物や衣類を作る際にもちいる綿などが無事な状態で見つかるらしい。あらかた、アラガミから逃げた人々が落としたものなのだろう。今度からは私も探してみようと思う。

 

 

 

 

 

いつもの博士のラボにいくと、シオが謎の行動をしだした。

まずアリサの胸を軽く揉み、コウタの脇腹を叩き、ユイに抱きついた。その度に「ぷにぷに」とか「かちかち」とか感想を述べていて、特にアリサは恥ずかしそうだった。ユイの場合は「わかんない」らしい。

ちなみに、私へは手を握った際「これ以上はこわい」と嫌われていた。何故ですか。

ペイラー博士が言うには身体の構造……男性や女性の体つきの違いなどに興味を持ったというらしいが、私について尋ねるとなんとも言い難い表情で首を振った。

アラガミに怖いと言われるほどのことは何もしていないと思うのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は激怒した。

必ず、かの有名な第一部隊の女性を許しはしないと決意した。はじめから私には意味がわからなかった。何度も私は男だと言っているだろうに。

少し筆を握って落ち着いた。何があったのかをゆっくりと書いていくとしよう。

事の発端は、シオに服を着せて欲しいというペイラー博士の要望であった。今シオが身にまとっているのはただの布切れで、白いふとももや腕などが見事に露出しているのだ。ぎりぎり大切なラインは超えてはいないが、前の任務のように戦闘を行う時はどうなるかわからない。男の身である私にはとても良い提案だった。

そして、服を着せるのは性別上ユイ、アリサ、サクヤの三人である。よって、男である私にコウタ、ソーマさんはラボから退出しようとしたのだが、何故か私だけ残るように異性三人から言われたのだ。私が残らなければならない理由に心当たりはなかったが、恐らく隊長だからかな? と深くは考えなかった。

 

今思えば、あの時三人が浮かべていた邪悪な笑みに気づくべきだったと後悔している。

 

 

シオと、何故か私も奥の部屋に三人と共に入っていき、アリサとサクヤがシオに服を着せようと選んでいるところにユイがにやにやしながら私の元へとやってきた。

その手には一着の衣類が用意されており、疑問符を浮かべ続ける私に一言。

「これ、着てみてよ」

その言葉を理解するのに私は数秒を要し、思わず声を上げていた。断固拒否するつもりではあったが、一応理由を尋ねてみると「シオが服を着る助けになるから」と言われたのだ。お揃いの服のようで、私が着たら仲間意識で着るのではないかと推測したらしい。

そう言われて、第一部隊の隊長である私は悩んだ。男のプライドを捨てて服を着るか、それとも責任等を無視してでも男の威厳を守るか。私が着たら全員がその気持ち悪さに吐くかもしれないと抗議しても大丈夫と一貫され、「シオの為だから」と更に言われた私にはもはや逃げ道は無かった。

そして、渋々それを着用しくし等で外見を整えられた数秒後シオがあまりに服が嫌だったせいで壁を破壊して逃げ出したのだ。私の苦悩が泡となって消し飛んだ瞬間である。

唖然としていた私に博士が「君は誰だい?」とか抜かしてきたので、思わずボディーブローをぶち込んでしまった。我に返った瞬間クビにならないかと慌てたが、それよりも早くシオを追って欲しいとのことで急いで神機をもって向かうことになる。

 

そこで私は後悔する。……この時、私の脳内では退職の危機が巡り巡っていた為に自分の容姿が女装したままであることを忘れてしまっていたことを。

 

シオはソーマさんの手によって回収されたものの、出発前にロビーでターミナルを弄っていたせいで、アナグラに現れた謎の少女として私の女装姿が噂になっていた。美少女とかぬかす人の頭はおかしいどころか狂ってるのではないかと疑った。

醜態を晒してしまっても部屋にひきこもらなかった私を誰か褒めてほしい。代わりに、余っていた任務を片っ端から受けてアラガミに八つ当たりしていたが。ようやく精神が落ち着いた頃にタイミングを計っていたらしい女性陣から謝罪された。

勿論、あんなことを書いてはいても元々許すつもりではあったが、ユイとアリサが涙目だったので地味にダメージを負ってしまった。不意の追撃である。私が何をしたというのか。

その最後に「でも男じゃないと思うほど可愛かったよ」とコウタが茶化してきたのでコブラツイストを決めてやった。

 

 

 

……もしかして、未だ私の部屋にあるエリックさんからもらったこの女性ものの衣類たちは………。………明日、全部焼却してしまってもよいだろうか。

 

 

 

追記

繰り返すが、私は正真正銘の男である。

もしこれを読んでいるのが記憶を失っている私か第三者なのであればそこを誤解してはいけない。

……隠し場所を変えた方が良いだろうか。




今回は女装か(シオの登場回でした。
人物の外見等の描写は少なめなので、ゴッドイーター未プレイの方には伝わりにくいかと思います、申し訳ないです。でもシオは可愛い(アラガミの)女の子です。
ちなみに。女装姿の主人公は客観的に見ても可愛い部類に入っていることとなってます。苦手な方はすみません。

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