私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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GOD EATER
適合試験~三日目まで


 西暦2050年頃から、彼らは突然現れた。

 

  アラガミ。生物、無生物問わずに文字通り何でも喰らう異形の化物達。

 

  勿論人類は彼らを排除しようとしたが、通常の兵器はほとんど効かずにみるみるうちに喰われていき、抵抗むなしく人々は滅亡まで追い込まれた。

 

 フェンリルと呼ばれる組織がアラガミを形成するオラクル細胞を用いた兵装――神機を開発しなければ、この地球から人という存在は根絶やしにされていただろう。目には目を、歯には歯を、アラガミにはアラガミを。その効力は正しく抜群だった。

 

  神機を扱い、全てを喰らうアラガミを逆に喰らい返す者――ゴッドイーター。常に死と隣り合わせの戦場に身を置く普通ならばなりたくない職業に、私は就こうとしていた。

 

 

 正確には、半ば強制的に就かされるところだが。なんでもゴッドイーターの資質を持つ人はよっぽどの理由がない限りはアラガミと戦わなければならない義務がある、とのこと。

 

  そんな資質を持った覚えはないし、義務って飾っても少しでも有能な肉盾が欲しいだけなんだろう。断れる理由がなかった私は、結局こうして神機の適合試験に赴いているわけだが……。

 

 目の前には、あからさまに嫌な予感がする機械と自身が扱うであろう神機が用意されている。本当にやらなければならないのだろうか。躊躇っていると急かすような指示がスピーカーから聞こえてきたので、渋々それに従う。

 

  神機の柄を握る。すると突然機械の上部が降りてきて手首を包んだ。次に、そこから想像を絶するほどの激痛が襲ってきた。

 

痛い、痛い、痛い痛い痛い。だから嫌だったんだもうやだおうちかえりたい。

 

  だが、無様な醜態を晒すのは勘弁願いたいので何とか必死に涙を堪えてまで我慢する。だんだん痛みが引いていくのと同時に機械が上がっていくと、手首には赤い腕輪が装着されていた。そして、神機からうねうねとした気色悪い触手が出てきて腕輪と接触した瞬間、身体全体に力が沸き上がるのが感じ取れた。

 

……ああ、本当に。私は今日からゴッドイーターとして働かなければならないのだなあ。

 

 

天井を虚ろな目で見上げ、私は適合試験を終えた。

 

 

 

配属一日目

 

 今日から私こと筒井マモルはフェンリル極東支部第一部隊に配属されることになった。ゴッドイーターは死神と腕を組んでスキップするような職業だから、いつどこでどのように死ぬか全く分からない。よって、このように日記をつけて自身の生きた証を残しておくことにしようと思う。

 

  生きた証と大袈裟に書いているが、要するにただの自己満足でありストレス解消にもなるかもしれない至って普通の日記にするつもりだ。誰かに見つかっても問題ないような……というより、日記は誰かに見られるものだろうからそうするしかない。少なくとも私がプレイしたゲームではお約束なのだ。

 

 フェンリル極東支部……施設名称『アナグラ』にやってきた私だったが、銃身と刀身を切り替えられる神機を扱える新型ということで周りから視線を向けられた。私が新型だなんて初耳なのだが……いや、説明を殆ど無視していたのが原因だろうか……よし誰も悪くないことにしよう。つまり私も悪くない。

 

  同じ時期にゴッドイーターになった新型の茶髪の少女がいたおかげで羞恥心が半分になったのは感謝すべきだろう。確か名前は神薙ユイと言ったか……あと、銃身の旧型を扱う藤木コウタというバンダナをつけた明るい少年のお陰で暗い雰囲気が少なからず晴れたことにお礼をしなければ。

 

  適合試験を終え、片目が髪で隠れている雨宮ツバキさん……教官と顔を合わせた後、メディカルチェックを受けた。その時支部長のヨハネス・フォン・シックザールさん、ペイラー榊博士とも顔を合わせ、エイジス計画を完成させることが極東支部の目標だと言い渡された。楽園だなんだのと少し胡散臭い感じがしたのだが、上司の考えなんて有象無象の私が考えることではないなと説明は殆ど左から右に聞き流していた。

 

  メディカルチェック……三時間の睡眠を終え、私は神機の訓練を受けた。早いのではないかとツバキ教官から言われたが、生き残るためには早々に実力をつけなければならない。さっさと神機の扱いに慣れて生存率を高めていかなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴッドイーターの身体能力は思ったよりも楽しかった。高く飛べる、身体が軽い、ステップ楽しい。神機はぶんぶんと振り回せるし、これならとバク宙を試みてみたらあっさり出来たのだから愉快で仕方がない。

 

  柄にもなくテンションが高かったものだから、小型のダミーアラガミを何度も何体も切り刻んでしまった。刀身と銃身にも種類があるから一通り使用してみたが、しっくり来たのはロングブレードとブラストの組み合わせだ。他の種類も悪くは無いが、これが一番私のスタイルと合う。

訓練を終えてツバキ教官と話した時、やけに「期待している」だとか「アクロバティックだな」とか言われたが、ゴッドイーターの動きってこれが普通じゃないのだろうか。まだまだわからないことばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配属二日目

 

 

 

  朝は友人であるユイとコウタとで話に花を咲かせた。

適合試験の辛さや、訓練の話、身体能力の向上など皆考えている事は大抵同じなようだ。

 

  しかし、私が適合試験の痛みを語ると二人は揃って疑うような表情をしていた。何でも、噂では私がその時痛みを感じていなかったという噂が流れているらしいのだ。一体私を何だと思っているのか……確かに表情が表に出にくいと散々言われたことはあるが、流石にあれだけの痛みで平気なわけがないだろうに。

 

  訓練は思ったよりも楽だったな、と伝えると二人はまたしても訝しむような視線を向けてきた。ゴッドイーターの運動力ならあれくらい楽なのでは……と疑問に思ったが、そうそう慣れるものではないと返答された。確かにそうだ、そう考えると私が早く慣れることが出来たのは幸運だろう。

 

  話を終え、昼食を食べ終えた頃に私とユイは最終訓練として実際に戦場に向かってアラガミを討伐することを伝えられた。第一部隊の隊長である雨宮リンドウさんと、美人の一言に尽きる橘サクヤさんと顔を合わせ、リンドウ隊長が同伴するアラガミ討伐のクエストを受けることとなった。

 

  いい加減そうな人だが大丈夫だろうかと少し不安を抱いていたが、人当たりはいいようでなんとなく信頼できる人だと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  贖罪の町と呼ばれる場所についた私達に、リンドウ隊長は三つ……ではなく四つの命令を与えた。

 

 死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。運がよければ不意をついてぶっ殺せ。

 

  それだけで私はリンドウ隊長のイメージが改められた。ユイにセクハラしようとしてた馬鹿馬鹿しい人と思っていた数分前の私に少し説教をしたいと思うくらいには。

いやでも、それはそれ、これはこれなのか。

 

 

  ……とにかく、実地演習としてやってきた私達は二匹のオウガテイルを一人一匹ずつ相手にすることとなった。

 

  ユイの神機はショートにスナイパーと言った、ヒットアンドアウェイ気味の組み合わせだ。初手にスナイパーでオウガテイルの頭を狙ってレーザーを連発、弱ったところをショートでサクサクしてあっという間に倒してしまった。文面で伝えきれないのが悲しいくらいの手際で、これが天才かと身震いするほどだ。

 

 

  対して私はロングとブラスト……遠くから攻撃することを全く考えていない近距離特化。恐怖心は拭えなかったが、手早くすませば問題ないと駆け出した。

 

  相手がこちらに気づいたと同時に刀身を振るいながら滑り込む。肉を切り裂く感触が直に伝わり、鬼の面が口を開けてこちらを振り向いたところで更にステップを踏みながら刀身を振るう。怯んだ隙に捕食を決め込み、黒いアレにオウガテイルの身体を噛ませたまま空中にぶんなげる。重力に従って落ちてくるオウガテイルが私を飲み込もうと口をぱかーっと開けていたものだから、思わずブラストの銃身を突っ込んで爆発……オウガテイルは汚い花火と化した。

 

  まあ、初陣としては悪くなかっただろう。特に疲労もないし傷もない、これくらいが普通のゴッドイーターのペースに相応しい。辛うじて残った身体から素材をもぐもぐして二人の元へと戻った時、怪奇を含んだ目で見られていたのは気のせいに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  サカキ博士からアラガミがどう生まれたかなどの講義を受けた。興味もないし何を言っているのかほとんどさっぱりだったから私はほとんど聞き流していた。ゴッドイーターって体を動かすだけでいいんじゃないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の任務は嘆きの平原……大きな竜巻が視認できる場所で、私とユイはサクヤさんに遠距離支援を交えた戦闘の方法を教えてもらった。射線に入らずに遠距離が届く範囲で戦うことが重要らしい。今回サクヤさんは指示に集中し、私が近接、ユイが支援に回った。私の神機の組み合わせ上そうなるのは仕方ないが。

 

  討伐対象はコクーンメイデン。直立不動の棺のアラガミだった。目が合った瞬間弾を飛ばしてきたので、ブラストの爆発弾で相殺した後勢い良く切りかかる。後方に回って銃身に変更、爆発弾を更に二発打ち込むと同時に正面から放たれたレーザーがコクーンメイデンの頭を打ち抜き、動かなくなった。

 

  素材をもぐもぐし、オラクルを貯めるために死体を切り刻んでいたら二人からドン引きされた。生き残るためには仕方が無いのだ。

 

 

  もう一匹のコクーンメイデンも難なく倒したのだが、私だけサクヤさんから注意を受けた。接近しすぎだとか、爆発弾はそういう使い方じゃないと少し怒られた。「確かに、言われてみれば放射弾の方が勢いを殺せますね」と答えたらデコピンを受けた。解せぬ。

 

 

  ちなみにユイはとても褒められていた。うん、良いことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  私達新型の今日最後の任務は鉄塔の森でのベテランゴッドイーター二人と共同しての小型アラガミの討伐だった。サングラスをかけた一見偉そうな雰囲気に身を包んだエリック・デア=フォーゲルヴァイデさん、誰も寄せ付けませんオーラを醸し出す支部長の息子であるソーマ・フォン・シックザールさん。どちらもベテランで、実力は物凄いらしい。特に後者のソーマさんは死神と呼ばれているそうで、その由来は知らないけどきっと強い人なんだろうなあと思った。小学生並と言われそうだがそう感じたのだから仕方がない。

 

  エリックさんがこちらに話しかけて来ようとした時、視界の端でアラガミ――オウガテイルが何か不吉なスタンバイをしていたので何時でも神機を振るえるよう構えた。

その瞬間、がぱっと口を開けてこちらにジャンプしてくるオウガテイル。「エリック上田!」という言葉がソーマさんから発せられ、エリックさんは日本人だったのだろうかと頭の隅でそんな疑問を抱いた。エリックさんを狙っていたオウガテイルを神機を投げつけて串刺しにした後、エリックさんに日本人なのかどうかを尋ねたら慌てた様子で否定された。流石に偽名の線はなかったが、慌てるほど否定することを尋ねてしまったのだろうか。

 

 

  口から下半身まで突き抜けた神機を回収、素材をもぐもぐさせている途中にソーマさんから軽いげんこつを頂いた。神機を投げるなんて何を考えていると怒った様子で言われた。なるほど、神機の紛失も有りうるから闇雲に投げてはいけないのか。そう思って「すみません、今度からワイヤーとかつけておきます」と謝ったら大きなため息をつかれた。何故だ。

 

  エリックさんは私に感謝の言葉と無礼な発言をしてすまないといったイメージを一転させる紳士的な態度をとってくれた為、私の中の彼の株は上がった。もちろん、私は普通の性癖なので男に友情以外のものは湧かないが。

 

  ユイに「自分を守る武器が離れるのは危ない」と叱られてしまい、「ゴッドイーターだから身体能力だけでも倒せるんじゃないですか」と反論したら目が笑っていない表情を向けられた。ソーマさんからもギロりと睨まれた。私は即座に土下座した。

 

  軽いアクシデントはあったものの、小型アラガミの討伐は完了。帰投する際に時間があったのでブラストで放射や爆発を用いて遊んでいた。私は全属性のバレットを用意しているもののブラストに合わせるために放射と爆発の、なんの加工もしていない弾を使っている。バレットエディットは無限の可能性を秘めているというが、頭の悪い私には少し合わないものなのだ。下手にいじるより普通に使った方が良い、触らぬ神に祟なしである。

 

  遊んでいるところが見つかった時、三人は唖然とした様子で私を見た後、揃ってため息をつかれた。ほわい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配属三日目

 

 

 

 

 

 今日一番の依頼はコウタ、ユイの同期メンバーと共に行う中型アラガミ――コンゴウの討伐だった。

 

 猿のようなアラガミで、耳がとても良い。新型の場合刀身から銃身に変形した際の音もキャッチするため、注意が必要だ……と、データベースの情報に乗っていた為姿が確認できるまでは刀身のみで行動していた。

 

  鎮魂の廃寺。雪も積もっており、天気も何も無いなと少し身震いする。周囲にいた邪魔なオウガテイルを一人ずつで掃除し、廃寺の中にいたコンゴウと交戦した。

 

  私が第一に走り出し、ユイとコウタがバレットを放つ。そのどちらもコンゴウの面狙いで容赦がないなあと横目で流しながら、続けて頭に刀身をぶつける。血しぶきと共に面がわれ、闇雲に振るってきた豪腕をステップで回避。勢いを乗せたまま移動攻撃で足、尻尾、背中を素早く切りつける。前線に出てきたユイと息を合わせ足を集中的に狙って斬撃を繰り出し、転んだところをコウタが連射してダメージを与えていく。もちろん、その隙を私たちが見逃すはずもなく、捕食――バースト状態になり胴体と尻尾の結合破壊を行った。最後の抵抗とばかりにコンゴウは自身を中心とした風を巻き起こしてきたが、私はジャンプし、それでも当たりそうだったので銃身に変形した後爆発で身体を浮かせ、上空からの奇襲で一気に首めがけて刀身を振り下ろす。重く、確かな手応えと共に、悲鳴を上げさせることもなくコンゴウの命を狩った。

 

  少し耐久力が高いだけのアラガミだったな、と軽く息をつく。私達がこれから戦うアラガミはこんな程度ではないのだ、頑張らなければ。コンゴウの胴体を捕食形態でもぐもぐさせていて、ふと二人の反応がないので振りむくと、どこか遠い目をしていた。具的的には、もうこいつひとりでいいんじゃないかなという感じの諦めの視線。一体何を言っているのだろうか、私は首を傾げるばかりだった。

 

 

 コンゴウを倒した後、私達が受けられる依頼の難易度が上がったといつもお世話になっているオペレーター、竹田ヒバリさんから教えられた。つまりは、受注できる依頼の数と自由度が上がったということだ。私は戦闘狂というわけではないが、アラガミの素材を使ってより強い武器が手に入るので積極的にアラガミ討伐の依頼を受けなければならないという使命感に駆られた。受注の際、ヒバリさんから「同行するメンバーの方は?」と尋ねられ「私一人です」と普通に答えたらとても焦っていた。依頼は特別な理由がなければ一人でも可能のはずなのだが……と困っているところにユイがやってきて、事情を説明すると「またか」と言いたげな瞳でため息をつかれた。幸せが逃げるぞ、と伝えると軽くキックされた。なんでだろう。

 

 結局、受けた依頼の殆どにユイを同行させてしまう羽目になった。私としてはありがたいのだが、ユイの都合を潰してしまったのが申し訳ない。全ての依頼を終えた後にユイに謝礼と謝罪をすると、気にしないでと微笑んでくれた。あなたが女神か、と口にするのは我慢した。そして神機も強化され、私の生存率はぐんと上がった気がしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記

早速職場で私が戦闘狂だとか人の皮をかぶったアラガミだとかいうなんとも見当違いな噂が立っている。何故だ。




プレイしたことはありますが記憶がおぼろげで所々抜けているかも……。
だいぶアクロバティックな動きしてます。ゲームの動きはほとんど考えてません、というよりほとんど忘れました。
日記とか書いたことないからこれでいいのかな……かなり単調な感じです。よろしくお願いします

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