ハイスクール・フリート~自衛艦隊 彼の地にて斯く戦えり~   作:Honorific88

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音速の稲妻

航海開始2日目 1300

硫黄島沖西100km

特殊作戦艦隊 旗艦いぶき

 

訓練のために出港した艦隊は現在哨戒および訓練のために艦載機を発艦させようとしている。

サイドエレベーターからは対潜哨戒機のSH-60Kが登ってきており、甲板上では既に3機のSH-60Kが発艦準備を終えてエンジンをスタートするのみとなっている。

このSH-60Kはむこうの人たちも見たことがあるがこのあとに離陸させるあれに関しては、見たら腰を抜かすに違いない。

登りきったサイドエレベーターに乗っているSH-60Kも牽引車に引っ張られて発艦位置に移動していく。

全艦が発艦準備を終えると第5分隊(航空科)の士官が艦長に発艦準備完了の報告をする。

艦長が発艦許可を出すとそれぞれがエンジンをスタートさせローターの回転率を増やしてゆき、後方から順に発艦して各自の行動を開始する。

SH-60kが発艦作業しているうちにサイドエレベーターは再び新たな艦載機を載せて上昇してくる。

 

「艦長」

 

サイドエレベーターが登ってきているのを確認しつつ第5分隊の士官と話している艦長を呼ぶ

 

「どうかしましたか、司令」

「あちら側の方々にこれから我々の特殊な装備が発艦するので情報秘匿の指示をお願いしたい」

「・・・何故情報秘匿を行う必要があるのでしょうか」

「これから発艦する機体はこの世界においては最も理解できないものだろう・・・。つまり彼らから上に伝わるとどうなるだろうか?」

「・・・研究のためにその装備を取り上げる・・・ですか?」

「それだけではない。仮に完成したとしてもそれを操縦する人間が必要になるし完成品が完璧なコピーでなく欠陥品である可能性もある。そんな状態のもので操縦資格試験などの訓練を行うとどうなるかわかるだろう?」

「最悪、その機体に乗っていた搭乗員は死亡。それに乗じて我々のことをよく思わない連中がここぞとばかりに我々を叩く」

「そうだ。そのためにも情報秘匿は重要なことだと考える」

「了解しました。それではあちら側にこれから発艦する機体についての情報秘匿を連絡します」

「頼んだ」

 

この会話が本当に怒れなければ一番いいのだが、はたしてそううまくいくものであろうか・・・

 

 

                                                                                        いぶき搭載機SH-60K 1番機“シーホーク01”

 

シーホーク01は予定の航路を通りいぶきの前方20kmにて対潜警戒任務についているが、あと数分異常がなければ訓練に移行するだろう。

 

『対水上レーダー目標探知。数1、前方約30mile』

 

探知の報告をした搭乗員の言葉に少し疑いを持つ

 

「それは事実か?」

『本当です。西之島方面へ航行中』

 

西之島方向ということは演習艦だろうか・・・

 

「とりあえず報告する・・・・こちらシーホーク01。水上レーダー探知。数1、西ノ島方面に航行中」

『こちら、いぶきCIC。データリンクにて確認した。IFF応答無しにつき所属確認を行う。シーホーク01は予定航路を飛行せよ。所属確認はピーコック隊が行う』

「シーホーク01、了解。引き続き予定航路を飛行する」

 

ピーコック隊が来るなら問題ないだろうからこのまま任務を続けるとしよう。

 

 

 

                                                                                        いぶき甲板 発艦位置 F-35JB “ピーコック03”

 

隊長機がサイドエレベーターで登って行きいざ自分の番になろうとしたとき通信が入る

 

『こちら管制。ピーコック01。訓練前に任務が入った。本艦前方70km地点にて所属不明艦を発見。ピーコック、貴隊はこれの所属を確認し報告した上で訓練を開始せよ』

『Peacock01, wilco(了解).』

『Peacock01, you are first in line.』

『Peacock01, roger.』

 

隊長機が管制と通信しているうちにサイドエレベーターに乗って甲板上に出るために登り始めたのでこの時間で離陸するために各種動作のチェックを始める。

はじめに機体の各種操作を確認するために操縦桿を握り縦横に倒し、ラダーを左右交互に踏み込む。F-15のように油圧操作ではなく電子制御のため動かしたい方向に力をかけるだけで操作できるのでゲームのような操作感覚だ。

次にフラップの動作だ。F-35JBはVTOLのためフラップは必要ないように感じるが着艦前のアプローチには必要になってくるので必ずチェックをしなくてはならない。

これらの確認を行っているうちに上部甲板に登り、発艦準備位置に移動させられる。

隊長機が発艦するタイミングでエンジンスタターのスイッチを押す。現代の戦闘機はスイッチ一つでエンジンをつけられるようになったため様々な手順を踏まなくてはエンジンをつけられないF-15のような戦闘機よりもスクランブル発進にかかる時間は短くなってくると言っても過言ではないだろう。

エンジンの回転率、排気温度の異常がないことを確認したところで2番機が発艦したので発艦位置に移動する。現代の空母では一般的(米海軍および一部の海軍空母を除く)のスキージャンプ式の発艦装置をいぶきは採用しており、いぶきの他には中国の保有するロシアの中古空母遼寧やイギリス海軍の空母クイーン・エリザベス級などが採用している。

さて、この機体も発艦位置についたことだ。所属不明艦の様子でも確認しにいくとしよう。

 

 

                                                                                        特殊作戦艦隊 弁天

 

「艦長。いぶきから通信でこれから見られるモノについては貴艦乗組員に対して情報秘匿を要求する、とのことですがどうしますか」

「・・・あのお人好しの奴らが秘匿しろというくらいのもんなんだからよっぽど重要な装備なのだろう。だとすればこちらは応じるのが当たり前のことだ。全艦に通達。これから見ることになるいぶきの装備に関しては情報秘匿を命ずる」

「了解しました」

 

あのいぶきがああいうくらいなのだからこの世界には存在するわけのない装備であることは想像に固くない

そう考えているといぶきの方向から耳をつんざくような轟音が鳴り響くと同時に何かが飛び立つ。それはあっという間に小さくなっていき見えなくなる頃合でさっきと同じような轟音が再び鳴り響く。それをもう1度繰り返したあとはしばらく同様の轟音がなることはなかった。

 

 

                                                                                        “ピーコック01”

 

「Peacock01, approaching area. 」

(ピーコック01、まもなく現場海域に到着)

 

『This is Ibuki CIC. Peacock01, contact unknown ship, target heading 190. 目視確認急げ。』

(こちらいぶきCIC。ピーコック01、所属不明艦は方位190にいる。)

 

「Peacock01 copy, heading 1-9-0.」

(ピーコック01了解)

『ツー』

『スリー』

 

いぶきCICの指示に沿って旋回ししばらくすると対地レーダーに反応が1つ。CICから指示された目標とはこれのことだろう。

 

「Peacock01, target insight.」

 

報告すると同時に不明艦の情報を機体下に搭載されているガンカメラで撮影しCICに送信する。見た目は陽炎型駆逐艦だが、赤い帯状の塗装をした陽炎型なんて見たこともないし排煙塔のところにどこか見たことのあるようなマークが見て取れたがどのようなものかまでは流石に分からない。

 

『Peacock01, RTB. Unknown ship is Harekaze, this is belonging to Yokosuka girls high school.』

「Peacock, mission complete. RTB.」

 

所属不明艦と思われた艦艇は横須賀女子海洋学校所属の晴風だったらしい。どうりで見たことがあると思ったが出港時に見ていたのだなと今更ながら理解する。

CICからの帰還命令が出たので帰投する。




時間をかけて書いていきましたが時間がかかりすぎて全然進んでいませんね・・・
本当に申し訳なく思ってはいますがいろいろ忙しいのですよ?
まぁ~来年はこれよりも更新速度が遅くなると思うので今年のうちにやれるだけやっていこうと思います

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