ハイスクール・フリート~自衛艦隊 彼の地にて斯く戦えり~   作:Honorific88

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夢を持って新入生の少女たちは校門をくぐってゆく。
この先に起こるでろうことを知らずに・・・・


第1章  始まりは突然に
少女たちと転生自衛官の交わり


真新しい制服を身に付けバナナを片手に食べながらスキッパーで水上を駆ける少女、岬明乃はこれから迎える入学式に心躍らせていた3ヶ月前の入学試験で彼女の入試に対する自身は皆無。正直山が当たればいいくらいの感覚で筆記試験と実技試験を受けたところものの見事に山があたり入試に合格したのだ。それも彼女が行くのは関東圏内でもトップレベルで倍率の高い高校で女の子の憧れの職業であるブルーマーメイドの養成学校なのだからじしんが皆無であっても仕方がないのかもしれない。

横須賀にある学校のスキッパー係留所用の埠頭にスキッパーを止めてから埠頭に上がる。近年はフロート都市も増えてきたためこの学校もフロート艦だが埠頭に関してはコンクリートで出来ている為そのことを不思議に思いながら岬は校門に向かう。これから過ごす学び舎を興味深そうに眺めながら歩いていくと三毛猫がこっちを向いて座っていたのでそこに駆け寄って座り込むと笑って

「こんなところに三毛猫がいるんだ~」

と楽しそうな声で触れようとすると逃げ出してしまったのだが偶然すぐそこを歩いていた生徒が過剰に反応した為岬も同じように驚いてしまった。その反応した生徒は

「なんでこんなところに猫がいるんだ・・・」

といったので罪悪感から

「ごめんね?私があの猫を脅かしちゃったから」

と謝りながら立ち上がろうとすると足元に自分がおいていたバナナの皮がありそれを踏んであたかもギャグマンガのように滑ると謝ろうとした生徒にぶつかる。ぶつかったおかげで岬は埠頭から落ちずに済んだが目の前では海に落ち用としている生徒が居る。あ、と気付いた時にはもう遅かったのだが走り込んできたスーツの人が落ちようとしていた生徒の手を握ると引っ張り落ちるのを防いだ。

「君、大丈夫かい?」

女性にはいないであろう深く体に響くような声でその人は聞く。岬がその人の顔を見るとここにはいないであろうはずの男の人だった。

「はい・・・あの、ありがとうございます・・・」

「構わないさ。それよりも入学前に海に落ちたりしなくてよかった。そんなことになったら新しい制服が大変なことになるからね」

そう言って男の人は笑うっていると後ろから女性の声が聞こえる

「上里君!いきなり走ってどうしたの!?」

この男の人の名前らしい-------と聞くと

「ここにいる生徒が物の見事にバナナの皮で滑ってそのとばっちりで海に落ちそうになっていた生徒引き上げたんだよ・・・ってか損だけのことで叫ぶなよ」

「う、うるさいわね!びっくりしただけよ」

そんなことを言い合っていたが我に帰ったのか咳払いをするとこっちに振り向いて

「失礼したわね。それじゃ私たちは用事があるからもう行くけどあなたたちも入学式に遅れないようにね。それじゃ」

とそれだけ言って上里さんを引っ張って校門を通り入学式会場の武蔵の停泊する埠頭の方に向かっていく。

しばらくほうけていたがどちらともなく吹き出すと二人して笑っていた。そのままさっきのことなどなかったように武蔵へと向かっていく。

 

 

入学式は武蔵の前甲板で行われている。超弩級戦艦らしく大型の砲塔が目立つがそんなのは気にせずに入学式は続く。校長祝辞では校長は「穏やかな波は良い船乗りを育てない」といったが確かにそのとおりだと少なからず俺は思っている。困難が目の前に立ちはだかりそれを乗り越えてこそ人は成長するのだということを示している言葉だと考えているが事実そうなのかどうか俺は知らない。入学式の最後に予定されていた各クラスの教員紹介上級クラスの武蔵から順に発表されていき最後に晴風が紹介される紹介の時は生徒の前に出るのが基本のため俺も前に出たのだがあちらこちらから疑問の声が上がる。それも当然で、俺以外の教員は全員が女性。女子高の中で男性教員が一人だけだったらそれは疑問の声も上がるだろう。スピーカーから教員紹介が行われる。

「航洋艦晴風。担任、上里勇樹三等監察官。副担任北里舞子二等監察官。共に安全監督室、沿岸警備艦さるしま、航海科所属」

正規のブルーマーメイドであることを聞いた新入生はさらに驚きの声を上げるがすぐに収まり教員紹介が終わり入学式の全てが終了した。

解散の掛け声がかかると新入生たちは自分の配属艦と役職を確認するべく掲示板と資料を確認する。その様子を横目に見ながら担当の晴風に移動する。晴風は駆逐艦陽炎型であるが実際には存在しなかった艦なのでこちらの世界だけのものだろうと考える。

教官室はどの船にも1室で2人部屋であるため俺と上里が一緒にこの部屋で過ごすことになる。部屋は10畳ほどで引き出し型のイスとテーブル、本棚、ベッド、クローゼットがある以外は何もない簡素な部屋である。部屋についた二人はクローゼットに自分の荷物を直し今後の行動を確認するとお互いに少し落ち着いたらしく

「そういえば上里君に造船についての意見書が来ていたわ」

「レーダーとミサイルについてだろう?レーダーのFCS-3については“あさひ”のものを取り出してコピーすればいいと思うんだけどな・・・電気機器に関してはこっちのものを流用しても十分だろうし。ミサイルは・・・まるまるコピーしかやりようかないんだよなー。そもそも俺は兵器担当じゃないから俺に聞かずに1科(砲雷科)に聞いて欲しいんだけどな」

そんな風に愚痴をこぼしながら上里は卓上の本棚に持ち込んだ書類を収めてゆく傍らで送られてきた意見書に目を通してゆく。全て目を通した上でタブレットPCを起動し意見書を送ってきた造船会社の担当部署にこちらの意見を書き込み送信する。送信を終えてたタブレットPCを起動させたまま閉じて時計を見ると既に教室集合時間の2分前になっていた。

「そろそろ時間だし教室にいくか?」

「ええ」

とお互いに一言交わして部屋を出て艦内の教室に向かう。

流石に軍艦ということもあってか艦内にはホコリ1つ落ちていないことを見るに以前この艦を使っていた者たちがしっかりと清掃したらしく途中には『ようこそ!晴風へ』という自作の垂れ幕がかかっている。

以前使っていた人たちがここまでしっかり清掃していたなら俺たちの清掃レベルまで持ってきてやれば十分だろう。

これから会う生徒たちへの指導について考えているうちに目的地の教室へとついた。

担任ということで俺が先導して教室に入り教壇の前で立ち止まり生徒の方を向いてひとりひとりの顔を瞬時に確認してから口を開く

「艦長、号令を」

上里の一声を聞いて茶髪の少女は号令をかける

「起立。・・・礼!」

新入生であるためかバラバラに起立したのだが初めてではあるにしろそれなりには揃っていたので及第点といったところだろう。

「よろしい。着席」

着席に関しては起立よりも揃っている。それを受けて上里は改めて生徒一人ひとりの顔を確認して話し始める。

「初めに、皆さんご入学おめでとうございます。今年1年間君たち航洋艦晴風クラスの担任を務める上里勇樹三等監察官です。入学式で紹介があったとおり安全監督室沿岸監視艦さるしま航海科に所属しています。そのため基本的にはブリッジにいますが必要に応じて各科の指導を行っていきますのでよろしくお願いします。次に副担任」

北里は俺と入れ替わる形で教壇の前に立ち明るい表情で

「皆さんご入学おめでとうございます。副担任の北里舞子二盗監察官です。初めに勘違いしてそうだから言っておくけど・・・」

そうやって北里は間を溜めると爆弾を投下してくれやがった。

「彼、見たとおり男でみんな怖いと思ってるかもしれないけど・・実は先まで君たちの顔を必死に覚えようとしてラッタル踏み外してたんだよ?」

「何ばらしてくれちゃってんだバカ野郎!!」

実際に上里は生徒情報のファイルを見ながら生徒のことを覚えようと必死で晴風に乗艦し用としたのだがファイルを見すぎて足元をろくに確認していなかったために物の見事にラッタルを踏み外したのだった。

そのことを知った生徒たちは驚きの声を上げて上里を見ると何やら諦めたような表情で北里を見ている。その視線に築いた北里は上里をみてニヤリと笑い再び生徒の方を振り向いて

「私たちは初めて教官という立場に立つので迷惑をかけることが多いかもしれませんが、まずはここにいるみんなで頑張って演習を終わらせていきましょう!」

先ほどの北里の爆弾投下のおかげか明るい雰囲気で北里の挨拶は終わった。

「・・・というわけでこのふたりで今年1年間君たちを指導していくんでよろしく。それとあんなことを言われちゃ何とも言えないからなぁ・・・とりあえず最後にこれだけ言わせてもらおうと思う。これから向かう道の中に上下関係なんて関係なく意見を言い合わなくてはならないことがある。その時に互いにしっかりと意見を言い合える船を俺は目指していきたいと思ってるから、その時は君たちもそれに答えて欲しい。・・・それじゃちょっと重くなっちゃったけど出港準備に入ろうか。艦長、号令を」

「起立・・・礼!」

「各自出港準備。解散」

最後に指示を出して北里とともに教室を出て一旦教官室に向かおうとすると後ろから茶髪の少女(艦長)が走ってきた。名前は確か岬明乃だったと記憶している。

岬は上里に近づくと彼を呼び止めこう質問した。

「教官。どうして私が艦長なのでしょうか・・・私より艦長にふさわしい人がたくさんいたのに・・・」

要は何故自分のような人が艦長になったのか理解できなかったため人事の理由を知っているであろう教官の自分のもとに来たということか。

「・・・では聞くが岬艦長。艦長とはどんな人物であると君は考えるのかい?」

その質問の意味をよく理解できていなさそうだったが少し考えてこう返した。

「それは・・・えーっと・・・船の中のお父さんみたいな・・・あの!船の仲間は家族なので!」

なかなか大きなイメージだなと考えつつ北里は笑いなが返す

「それならそうなれるように頑張ればいいのさ。岬艦長の考えるような艦長に・・・」

そう言って艦橋に向かう。

 

                 *

 

早めに艦橋に来ていた上里と北里はタブPCで積載品の確認を行っていた。内容は主に食料や真水、燃料、弾薬である。現状では12.7cm連装砲3門、61cm4連装魚雷発射管2門、爆雷投下機2機。25mm単装機銃4門の武装を搭載している。食料は補給艦間宮に合流予定の1週間分、真水は2日分をタンクに入れており順次海水を真水に変えてから使用する形になっている。

確認を終えた時点で艦長を含めた4人となぜか猫1匹が艦橋に上がってきた。

「あ、教官。もういらっしゃってたんですね」

初めに口を開いたのは黒髪ロング、副長の宗谷ましろ。

「ああ、積載品の確認をしていたんだ。航海において積載品の量は重要になる。特に航洋艦のような小型の艦艇には特にな・・・補給までは物資の補給は不可能だからな」

その言葉を聞いた北里は

「お?教官らしいことを言うわね」

又しても茶化して来たのでもっていたタブPCで頭を軽くたたく。

「馬鹿なこと言ってないで、てめーは出港準備の手伝いをしようとは思わんのか?」

「ない!」

今度は拳骨で殴る。

「ったい!?」

痛そうに頭を抱えている北里をほっといて上里は改めて自己紹介をする

「改めて担任の上里だ。主に航海科を担当するのでよろしく。そんじゃそこでうずくまってるバカはほっといてなんか宗谷がオレに向かって“猫を追い出して欲しい”みたいな視線を向けられているけど、ねずみ対策のためと時間的な問題で諦めてもらうのでまずはそれぞれ自己紹介をしようか」

ということで上里から時計回りに自己紹介をする。

元気よく

「艦長の岬明乃です。よろしくね」

少し落ち込んだ様子で

「副長の宗谷ましろだ」

それを固めに見て笑いながら

「水雷委員の西崎芽衣よ」

そこまで言ったところで右舷デッキの方から走ってくる足音が聞こえたのでそちらの方を見ると艦橋に入ってきた。息ついたまま自己紹介をする。

「はぁ、はぁ・・・航海長の知床鈴です。えっと・・・あなたは?」

知床が見た方向にいるのは先程から何も喋っていないショートカットの白い髪をした子だった。

「うっ・・うっ・・・」

なにか喋ろうとしているようだが上手く言葉にできないような感じがする

「砲術委員の立石志麻さんだよね?」

「うい!」

どうやら極度の人見知りらしいがうまく言葉に出来だけらしくコミュニケーションには苦労するだろうが問題はないだろうと考えていた頃に出港を知らせる鐘が鳴った。それに驚いた岬は俺のほうを向いて

「出港時間になったので出稿準備に入ります」

「了解。初仕事だ、失敗してもいいから気楽にいけ」

「はい!・・・総員持ち場について。出港準備!」

俺に出港していいかの指示を仰いだ岬に出港許可を出した。岬はそれに頷き返し艦首の方向を向いて指示を出す。

「前部員、描鎖詰め方。出港用意。錨を上げー」

艦首で錨が上げられてゆくのを確認したラッパ手の万里小路がラッパを吹くがお世辞でもうまいと言えるようなレベルのものではなかった。

これは俺が教えてやったほうが良さそうだな・・・

心中でそんなことを考えていたが前甲板でラッパに気を取られていた等松が青旗を上げて用意よしも知らせる。

「両舷前進微速、150度ヨーソロー。晴風出港!」

『両舷前進微そ~く』

機関室につながる伝声管から威勢のいい声が帰ってきた。恐らく機関長の柳原麻侖だろう。

埠頭からある程度離れたところで岬はさらに指示を出す。

「・・・航海長操艦」

「「「「航海長操艦」」」」

その場にいる全員の複勝を確認しさらに指示を出す

「両舷前進原速、赤黒なし。進路150度」

「いただきました航海長。両舷前進原速、赤黒なし。進路150度」

岬の指示を復唱しその通りに操艦を始めた航海長の技量を見て(初めてなんだよな?)少々舌を巻きつつ

「よろしい。演習集合地点までの操艦もそのまま頑張ってくれ。艦長は1700までに夜間当直のシフトを各科ごとに組み上げてくれ。もちろん俺と北里も入る」

「分かりました。それじゃ教官は何科なんですか?」

「・・・俺は主計科じゃなければどこでもOKだが・・・ここでしれっと眠りかぶっているバカに関しては航海科でいいだろう。どうせそれしかできまい」

そう話していると晴風の横に巨大な艦影が姿を現した。

上里の元の世界でも有名な大和型戦艦2番艦の武蔵で武蔵艦橋のから手を振っている少女がいた。今年度新入生主席の武蔵艦長知名もえかだ。それに気づいた岬は知名に向かって手を振り返した。さらにその奥からは武蔵には劣るが巨大な全通甲板の艦艇とそれに続く7隻の艦艇は徐々にではあるが学生の艦隊を追い越してゆく。

俺と北里以外のメンバーは驚きの顔で見たこともない全通甲板の艦艇を見つめる。

「何、あれ・・・」

そんなつぶやきに答えるように上里が口を開く

「ブルーマーメイド安全監督室に発足した特殊作戦艦隊群の艦艇だ。あの平べったい艦艇が旗艦の“いぶき”。今回は最近太平洋に出没している海賊の対処のために出港するらしい」

そのことに又しても驚くが岬が

「教官はあの艦艇について詳しんですね?」

と質問すると苦笑いしながら

「実は3年前までは俺はあそこの艦隊に航海科として配属されてたんだ。その時の同期からいろいろ聞いたってわけさ」

「「「「へ~」」」」

意外そうな顔をするクルーを見回してから

「とりあえず実習は始まったんだ。これから頑張って行くぞ!」

「「「「「おー!!」」」」」

 




えーっと、とりあえずむちゃくちゃ長くなってしまいました・・・
初めての6000文字声ですので何とも言えない感じですがやりきった感じはあります。
アニメ本編編が今回から始まりましたがストーリー展開に関してはオリジナル展開(そりゃいぶきとかが出てくるから当然ではあるのが)となっていますがある程度は原作通りの物語にしていきたいと思っているのでどうぞよろしくお願いします!

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