ハイスクール・フリート~自衛艦隊 彼の地にて斯く戦えり~ 作:Honorific88
西之島沖 晴風艦橋
「で?こんなことになってしまっていると?」
「すみません・・・」
入学式を終えた後から始まった航海演習に向かっている途中の晴風だが、様々な問題(航海長が進路を間違えたり機関が停止したりなど)によって現時点で集合時刻を過ぎており巡航速度で進んでも3時間かかるため集合時刻から大幅に遅れ古庄艦長の指導が待っていると。
と言ってもこの晴風は試験艦(機関が新型の高温高圧缶で試験運用を行っている)のようなものだし学生は初めての航海だから多少の問題は大目に見てもらえるだろう。
それでも3時間もの遅刻となると怒られてしまっても仕方ないのかもしれない。
「ま、仕方がないさ。北里、猿島への報告はしたのか?」
「ええ、既に報告済みだけど・・・・」
「古庄艦長はお怒りか・・・?」
「・・・・(コクリ)」
ああ~これはまずいな。学生ならかなり早く説教は終わるだろうが教官となれば話は別だ。本来教官は生徒を導く必要があるのにこの遅刻はそれができていないという証拠になってしまう。つまり、生徒の倍の時間は指導を覚悟しておかなくてはならない。そう考えただけでもう今から憂鬱に感じるてしまうのは俺が悪いわけではないことを祈っておくことにしよう。それにもしもの時はもしもの時でしっかり反省していれば古庄艦長も許してくださるでしょうし?
「それじゃぁ航海長。進路このまま西ノ島沖に向けて航行し、異常があれば報告せよ。」
「了解」
その時、どこからか腹に響く低く轟くような音が聞こえてきた。どこかで昔聞いた・・・いや、この世界に来る前まではほぼ日常的だった音だ。この世界に存在するそんなものはといえば・・・
「・・・何なんだこの音は・・・」
「・・・総員、耳をふさいでおけ・・・」
言うのと同時に音のする方向に黒い斑点のようなものが見えた。それは少しづつ近づいてきて晴風の上空を通過飛行してゆき反転する。
「・・・やはり・・・F-35JBか!」
「・・・教官知ってるんですか?」
「ああ・・・・」
こいつが来るということはそれなりの距離のところにいぶきがいるということが分かる。理由はこっちが不審船と認識されたから・・・。
それならさっきの通過飛行で所属と艦名がわかっているはずだな。
『教官!護衛艦いぶきという船から通信が入っています!』
「わかった」
そう言って艦橋後方の無電電話をとる
「こちら晴風。いぶき送れ」
『こちらいぶき。感度良好。晴風は現在猿島に集合しているはずでは?何かあったのか?』
「こちら晴風。機関故障により集合時刻に遅刻した」
『了解』
そうやって受話器を下のところに戻そうとした時だ
『前方にさるしまを発見』
「さるしまが?なんでこんなところにいるの・・・?」
北里がつぶやくがそれもそのはずで本来ならば猿島は予定表ではこの時間帯は西ノ島沖にいて演習参加艦とともに演習の準備をしているはずだ。
イマイチ理由がわからないままさるしまは接近してくるが艦艇の所属上航行の優先権はさるしまにあるのでさるしまに進路を譲らなくてはならない。
「航海長、右へ回頭する。面舵へ5度、さるしまとの間隔200になり次第取舵へ5度」
「面舵へ5度」
知床が舵を切るとゆっくりと晴風が回頭する。それを見てさるしまは頭を抑えるように回頭してくる。
「おかしいな・・・左へ回頭する。取舵へ10度回頭」
「取舵へ10回頭」
「上里君。何かおかしいと思わない?」
「ああ、遅刻した艦艇に対してわざわざさるしまが出張る理由はないからな」
何かがおかしいんだ・・・・
さるしまの艦首部分が光ったと思ったが気のせいだろうか・・・・
そう思ったときに艦に衝撃が走り、海面には水柱が上がる。艦橋メンバーの血の気が下がる・・・
おいおい、まさかだよな?
『さるしま発砲!』
見張りの野間からの報告がきたのは予想どうりのことだった。
流石に旧帝国海軍の駆逐艦陽炎型と同型の晴風にインディペンサー級のさるしまに勝機はないし、下手をすればこっちは撃沈させられる可能性もある。今握っているのはいぶきとの通信を行っている受話器。やむを得ないか・・・
「こちら晴風、いぶき応答されたし!」
『こちらいぶき。どうかしたか?」』
「こちら晴風!さるしまより砲撃を受けた。救援を求む。繰り返す!さるしまより砲撃を受けた、救援を求む!」
『・・・それは事実か?』
「事実だ!現にデータリンクを確認すればわかるはずだ。すぐに確認してくれ!」
『・・・・確認した。こちらはみらいを送る。それまで攻撃を回避せよ』
「了解!」
いぶき艦隊との距離はそうとうはなれているはずだから当分救援は来ないだろう。それまではとにかく回避しつつ逃げるしかない。
「北里は学校に報告。最悪の場合さるしまを撃沈する恐れがあると報告してくれ!」
「わかった」
とにかくこの場は生きることに専念しなくてはいけない。この船に乗る俺の生徒が生きて丘の地踏ませるためは俺にできることを全力でするしかない・・・!
「取舵いっぱーい!180度回頭!最大戦速!とにかくこのまま逃げるぞ!」
正直に言えば機関が故障して止まったりしないかが不安だがとにかくできるだけ最大速力で逃げる以外方法がない。だからみらい。こいつらのために早く。ほんとに早く来てくれ!
またまた遅れてしまいましたが8月になれば多少は出せるようになると思うのでお願いします!