モンスターの生態   作:湯たぽん

8 / 35
狩り友のぱるぷんて☆はるさんに登場いただきました。
ありがとうございます!

うちどころが悪かったクマの話、という絵本がありますが、モンハン世界で同じことが起きると、多分こうなります。今回は前後編にわかれますが、それでも大した長さではないので、いつも通り狩りの合間に是非。


その8 うちどころの悪かったクマの話(前編)

ガツン!!

 

渾身のハンマーが大きな音を響かせた。

 

「今ニャっ!!」

 

と同時に、音の反対方向から

ネコの甲高い声が上がった。

 

「うん!!」

 

ハンマーの主、女ハンターのハルもこれに続く。

 

のけぞって後ろへ地響きを立てて倒れ伏したのは、

アオアシラだった。

頭に大きなトサカを持ち、紅兜と呼ばれる強種だ。

 

「ニャニャニャニャニャ・・・・!!!」

 

「はあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

爪のビーストコンボと、ハンマーの真溜めが

倒れたアオアシラに迫る。

最初の一撃が余程効いたのか、

完全に気絶してピクリとも動かない。

 

 

 

「ニャー!!」

 

最初に届いたのは、ハルの相棒、

オトモのパルの爪だった。

 

ザクッ・・・・

 

ビーストの鋭い爪が、ハンマーに狙われている頭を

避けてアオアシラの背中に突き立つ。

 

グオッ・・・・!

 

小さな刺激に起こされたのか、これまで少しの動きも

見せなかったアオアシラが飛び起きた。

がばっ・・・・と上体を起こし立ち上がり、直立する。

 

 

 

「ちっ・・・・、せいや!」

 

ボグッ!

 

一瞬遅れて、ハルのハンマー溜め攻撃が届いた。

狙った頭ではない事に小さく舌打ちしながら、

しかし力の解放を無理やり一瞬遅らせると、

のけぞったアオアシラの腹部に正確に当てた。

 

「浅いかっ!?」

 

とはいえ、狙った頭ではない。

急に直立したせいで届く高さでは

なくなってしまっていた。

怯ませられなかったので、

予想される反撃を転がる事で避け、

再びハンマーを構えたハル。

 

「・・・・?」

 

しかし反撃は来ず、攻撃目標であるアオアシラは

直立したままぼ~っとしている。

腹を強打したにも関わらず、

こちらに気付いてすらいないようだ。

 

 

 

(何故かスタンが一瞬で解けたし、

 そもそもスタンの最中

 ぴくりとも動かなかったし・・・・)

 

直立したアオアシラの周りを回り、

慎重に距離をはかりながら、

しかし果敢にもハンマーを構え力を溜め

ハルは状況を分析していた。

 

 

 

(とびきり特殊な、多分強力な固体と

 遭遇しちゃったみたいね・・・・!)

 

彼女らが闘っているのは紅兜アオアシラ。

発見から1年と経っていないにも関わらず、

発見事例、被害報告が爆発的に増えた新種だ。

凶暴そのもので、パワースピード共に高く

苛烈な攻撃をし続ける厄介なモンスター。

のはずだが先程ハンマーでスタンを取ってから、

様子がおかしい。

 

ぼ~っと直立したまま、ハンマーの溜め攻撃や

オトモの爪連撃をその腹に受け続けている。

 

 

 

・・・・グァ?

 

 

 

数秒間滅多打ちにされていたものの、

全く怯む事のなかったアオアシラ。

ようやく気が付いたのか、ハルのほうに向き直った。

 

「ご主人ッ!」

 

「分かってる!」

 

パルの警告の声に応えると、

ハルはアオアシラの視線を振り切るように

ローリングしハンマーを持ったまま動きを止めた。

 

グルルル・・・・

 

やはり、アオアシラはこちらを見続けている。

目の色から、怒り状態ではないのが見て取れるが

スタンする前とは違う、

何やら熱い視線のような気がする。

 

何にせよ。

 

(まともな固体ではない事は確か。

 今の棒立ちでかなりダメージは与えられているのも

 確かだから・・・・)

 

攻撃の手を一旦止め、ハルは冷静に状況を判断する。

 

(ここで深追いするのは賢明じゃない。

 休憩するだけの時間はさっきの

 ラッシュで稼いでるはず。

 ミスをけしてしない為にも、ここは様子を見る!)

 

「私が引き付ける!後ろから狙って!」

 

アオアシラの反対側にいる相棒に声を届かせる。

 

ニ゛ャアアアァァァァァ・・・・・!!!

 

言われるまでもなくそうするつもりだったのか、

ほぼ同時に雄叫びと爪の音が辺りに響き渡った。

 

 

 

グオ~ゥ・・・・グアッアウッ・・・・

 

しかし、切り刻まれている当のアオアシラはまったく動じていなかった。

お尻を斬られたい放題斬られているのに、

ハルから視線を外さずさらに

何やら語りかけるようにうめき声をあげ、

じりじり近づいてくる。

 

 

 

「な、何・・・・?」

 

アオアシラの異様な雰囲気に、後ずさりするハル。

敵背後からの爪攻撃は止んでいないものの、

正面のこちらからはいまだに

攻撃の糸口がつかめていない。

 

 

 

グォォ・・・・グァッ

 

 

 

「っ!?ご主人っ!」

 

パルの警告に身を委ねたのが幸いした。

先程まで穏やかに(?)ハルの方へ近づいてきていた

アオアシラが、突然攻撃に出たのだ。

予備動作無しで大きく踏み込み、

巨大な鉤爪の付いた両腕を左右同時に繰り出してきた。

相棒の声を聞いて考えるより先に

回避行動に出ていたハルは間一髪、

アオアシラの腕を逃れていた。

 

危うく逃れただけなのではあるが、

ローリングから起き上がったハルは

何故か嬉しそうにハンマーを構えなおした。

 

 

 

「ノーモーションの両腕攻撃・・・・

 見たこと無い行動だけど、

 でも攻撃してきてくれた方がやりやすいわよ。

 隙突きゃいいんだもん」

 

にやりと笑うハル。

しかし、アオアシラの向こう側から、

パルが慌てて走りよってきた。

 

「ダメにゃ、ご主人!こいつはヤバすぎる!

 逃げるにゃーっ!」

 

走ってきたそのままの勢いでハルの

首根っこに飛びつくと、構えを解かせて

しつこく同じ行動を繰り返すアオアシラに背を向けて、

自分の主人を引きずるように逃げ出した。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。