今回はストーリーのごくごく一部ですがネタバレを含みます。ストーリーをクリアしさらにもう少しゲームを進めたプレイヤーにしか理解出来ない内容が多分にありますのでご注意下さい
調査拠点エルガドにて。報せを聞いて駆けつけてきた研究員、バハリは。眼の前にある衝撃の光景が意味するコトの重大さに1人勝手に打ちのめされ、呆然と立ち尽くしていた。
「ヤドカリは…」
たっぷり数分間固まった後、バハリは彼ら竜人族の特徴でもある4本指の掌でボサボサに逆立った自分の髪をゆっくりと撫でつけながら独り言をはじめた。
「…排泄物…まぁつまりウンチだね…を背負っている殻の中にそのまま出すという。近しい種であるショウグンギザミも、同じ生態を持っているんだけど…」
「え、何いきなり汚い話はじめてンの?」
横から素早くツッコミを入れる者が居た。バハリが立ち尽くしていた数分間は声をかけることなく武具の手入れをしていたが、気になる話をし始めた途端食いついてくる。このノエルという女ハンターはマイペースさと好奇心の強さで言えばバハリと同等くらいであろう、と周りからは評されていた。
「血や骨、牙や鱗など"傀異強化素材"は全てモンスターの体内でキュリアの影響を受けたモノ…そう思ってた」
バハリもバハリでマイペース。ノエルのツッコミを完全に無視して独り言を続ける。
「でも、違った…1つだけ、傀異強化素材の中に体内生成じゃないモノがあったんだ…」
バハリが髪をいじるのをやめ、伸ばした手の先にあったのは。さすがに気になったノエルも同じ方を向いた。つい先程ノエル自身が討伐してきた傀異ショウグンギザミの収穫素材が無造作に置かれていた。
「"傀異化した重殻"…と…ぇ何ソレ」
紅く輝く甲殻の欠片、傀異化した重殻は国を襲った大災害の根源である、噛生虫キュリアの強力な生体エネルギーを宿したショウグンギザミからノエルによって剥ぎ取られてきた。モンスターに寄生するキュリアは宿主が討伐されると例外無く一緒に死んでしまう。傀異化素材はキュリアが残したエネルギーのみを持った何とも都合の良い素材だった…のだが
「重殻に…キュリアがくっついて来ちゃってるね」
これまであり得なかった事が、起きていた。剥ぎ取ってきた本人のノエルも気付かなかった程の大きさだったが、虫ほどの大きさのモノが殻に喰い付いたままニョロニョロとうごめいていた。ウインナーに羽根が生えたような姿、キュリアだ。
「ショウグンギザミが背負った殻は体内生成じゃない…でも同化しているからキュリアの影響も受ける…でもでも本体とは違うから殻に喰い付いたキュリアだけは宿主が死んでも生き残る可能性があった…のかな…?」
バハリの独り言考察でなんとなく事態を察したノエルは、小さなキュリアに興味を持ち始めた。気軽に自分が剥ぎ取ってきた重殻を手に取り、キュリアをちょんちょんとつつく。赤い円筒形の身体の先端には鋭い牙が並んだ口があるが、爪先ほどの大きさになってしまった今では噛まれても問題はないだろう。
「もし噛まれて傲血やられになったらバハリ君を殴って回復するネ」
「やめてね?」
「じゃあウナバラさん殴ろ」
「それならいっか?」
マイペース同士妙なやり取りをするノエルとバハリ。こうなってしまうとツッコミ不在である。とはいえノエルにつつかれまくっている小さなキュリアは噛みついてくる様子はなく、こちらもマイペースにニョロニョロしていた。
「ふ〜ん…なんか可愛く見えてきたカモ」
ノエルはキュリアに対して少し愛着が湧いてきたようだ。傀異化した重殻ごとキュリアを持ち上げると、バハリの方を向いた。
「飼っちゃダメ?」
突拍子もない事を言い出すが、もともとが突拍子もない奇跡的な出来事である。バハリは腕組みをすると悩ましい声をあげた。
「う〜ん…傀異強化素材にくっついて生き残れた、と考えれば…傀異強化素材か精気琥珀で作ったハウスに入れとけば飼育可能だったりしないかな…」
傀異化モンスターを討伐した時にのみ手に入るモノを列挙するバハリ。ノエルほどの凄腕ハンターであればどちらも安定供給する事はできるはず。
「マカ錬金の壺に入れとけば神おま出してくれたりしないカナ?」
「それだッッ!」
キュリアのエネルギーが活性化した状態が保たれるマカ錬金の中であれば飼育が出来る可能性はある。ノエルが望む神性能の護石が出る可能性とは全く別の話だが、バハリはそんな事気にするはずもなく、その場にそれをツッコむ者は居なかった。
ショウグンギザミの殻を破壊すると、なんかプリっとしたお尻が出てきます。お尻の穴も見えるので、狩友ノエルさんとキモいね〜などと言いながら遊んでたらいつの間にかお話が出来てました。