モンスターの生態   作:湯たぽん

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今回はモンスターハンターの新作、ワールドから新大陸のお話です。やはり面白いですねーモンハン。


その10 環境生物の生態

現場には、いくつも手がかりが残されていた。

 

まず、被害者。

 

「・・・・にゃふ・・・・・・・・」

 

オトモ猫のジール。ふわっふわの爛輝龍の毛皮に身を包んだこの猫は、以前から十分な経験を積んだ歴戦の強者だったが、新大陸に降りたってからはさらに強靭さを増し、不死身かとも思えるタフネスぶりを発揮していた。

 

そんな頑丈折り紙つきのジールが今、短い前肢を精一杯伸ばして自分の後頭部を押さえうずくまっている。いやもうほとんど倒れている。よほどの打撃だったようだ。

倒れていたのはジールの主人、デル・フィーニウムのマイルーム。平和なはずの自宅で被害者を襲った凶器は、そのすぐ近くに落ちていた。

 

「・・・・弾?・・・・ですニャ」

 

拳大の丸い塊。よく整理されたマイルームの片隅で、ジールとこの塊。位置関係から考えて、この弾(?)がジールの巨大なタンコブを作り上げた元凶であることは間違いない。

 

「ふむ。これは事件、ですかニャ。」

 

一生懸命ダンディーを気取るため、どこから取り出したのか火の点いていないパイプを咥えネコノフは呟いた。

 

彼こそはオトモ界に広く知られた(という彼の脳内設定の)名探偵、マスター・ネコノフなのだ。主人の友人のマイルームに遊びに来たところ、この現場に出くわした。

 

「では犯人は誰ですかニャ、マスター?」

 

ネコノフの後ろから声を上げたのは、共に遊びに来ていたオトモ猫のハクビ。器用にもネコノフの脳内設定に同調し、名探偵のアシスタント役を演じ始めた。

彼らオトモ猫はこのような"ごっこ遊び"をよく好む。突然の展開にも即座に反応し自然と寸劇が始まるのだが。

 

「ニャ・・・・良いから・・・・助けて欲しいニャ・・・・」

 

基本的には空気を読まない。今回も倒れたままのジールは放置でそれ以外の現場を検証しはじめた。

 

「ハクビめが考えますに、またジールのヤツが何かやらかして、ご主人のデル・フィーニウム氏にド突かれたと考えるのが自然ではニャいかと」

 

一本指を立てて、あくまでも軽薄そうにハクビ。対してネコノフは、重々しい雰囲気を出そうとゆっくりと首をめぐらせて、マイルーム全体を観察していた。

 

「いやいや、よく観察してみたまえハクビ君。デル氏は確かにボウガンも使うが、この装備架台に立て掛けてあるのはチャージアックス。凶器と見られるこの弾がデル氏から放たれた可能性は低いニ・・・・低いな」

 

頑張って語尾のニャを消そうとしているネコノフ。ハクビは軽薄なキャラのままに大袈裟に頷き、マイルーム内を観察しはじめた。

 

「おぉ、さすがはマスター・ネコノフ。しかし他に犯人といえば、マイルームには・・・・ミチビキウサギと、ドス白金魚と、フワフワクイナ。ユラユラに、ツチノコもいるんですニャあ」

 

「オトモ道具は壷爆弾、だニ・・・・だな」

 

名推理を始める(つもりの)ネコノフは、ベッドから扉前、暖炉前、池とゆっくり観察しながら歩き・・・・

 

そして、ユラユラの前でぴたりと止まった。

 

「ニャ・・・・なんだか、このあたり涼しくニャいか?」

 

ユラユラは、ぱっと見は花のような形のヘビの一種である。茎ともいえる細長いボディが地面から伸びており、頭には花びらのようなヒレが四方に広がり、風になびくように前後左右にゆらゆらゆらゆらと揺れる。庭や壷に活けて楽しむ、人気の環境生物だ。

そのユラユラのまわりが、明らかに他と比べ冷えている。よく見るとユラユラの口から白い冷気が出ているではないか。

 

「こ、これは・・・・!?」

 

相変わらず頭を押さえてうずくまっているジールを無視して、ネコノフ達が驚いていると。

 

「どうだーネコノフ。ユラユラクーラー凄いだろー」

 

いつの間にか部屋に戻ってきていた部屋の主が、なんとも緊張感のない声をかけてきた。

 

「デ・・・・デルさん!?ユラユラクーラーってなんなのニャ!?」

 

「いやそれよかジールが倒れてるのニャ!犯人は!?」

 

ネコノフとハクビが口々にまくし立てるなか、倒れているジールの主人であり、ハンターであるデル・フィーニウムは架台に立て掛けてあるチャージアックスを手に取り、なおも緊張感のない声をジールに向けた。

 

「あー、またやったねジール。気を付けてって言ってるでしょうに」

 

「ご、ご主人・・・・アレ早く片付けて欲しいニャ・・・・」

 

ピクピクと、細かく震えながら主人に訴えるジール。どうやら被害者自身が犯人を分かっているようだ。

 

「アレってニャに!?というかユラユラクーラーもなんか気になるニャ!!」

 

さらに興奮するネコノフとハクビに対して、デルはなおも朗らかに返す。

 

「レイギエナと一緒に捕まえたからさー、風漂竜の冷気を体内にたっぷり取り込んだみたいだよ」

 

「!ニャんですかその生態!?」

 

「別の日に、色ちがいのレアなユラユラクイーンも捕まえたんだけど。近くに居たオドガロンに裂傷状態にされてたみたいで、冷気のかわりにたまに血を吐くんだよねー」

 

「!?ニャにそれ怖いッ」

 

「昨日部屋を掃除したから今は居ないけど、カッパーカラッパを置いとくとゴミをカッパラってってくれるから便利だよー」

 

「ニャんて使い道をっ!?」

 

デルの言葉にネコノフ、ハクビが交互に叫んでいると、例によって緊張感なくネコノフの背後を指差し、デルが警告を発した。

 

「あーネコノフ。そこ、後ろ危ないよー」

 

「へ?」

 

 

 

ヒュゴゥッッ!

 

 

 

ネコノフが振り向いたすぐ横を、何かが凄まじい勢いで通りすぎた。

 

「た・・・・たたた弾・・・・ほ、砲弾・・・・」

 

ネコノフが総毛立っている隣で、ハクビが呆けている。ころころころ、と転がって戻ってきたのは、先ほどジールが倒れていた場所で見付けたのと同じ弾だった。

 

「お、僕の声で助かったねー」

 

変わらぬ声音でデル。無責任である。

 

砲弾が飛んできた先へ視線をやると、その先には。

 

 

 

ツチノコがいた。

 

 

 

平べったい身体を持ち上げて、尻尾だけで器用に立ち上がっていた。口を大きく開けてこちらを向いている。つまり、あの砲弾は・・・・

 

 

 

「マム・タロトの黄金洞窟で見付けたんだよ。設置武器の大砲のそばにいたから・・・・」

 

デルの声は、最後まで能天気だった。

 

 

 

「大砲の生態身に付けて口から砲弾出すようになったみたいだねーそのツチノコ」

 

「ンなバカな生態あるかぁッッッ!!!」

 

大きなたんこぶを頭から生やしたまま、倒れていたジールまで起き上がり、オトモ三匹はこの日一番の叫び声をあげた。

 




ちなみにレイギエナは氷属性攻撃を持つ飛竜。オドガロンは裂傷状態にする攻撃をしてきます。裂傷状態になると出血が止まらず、動く度に体力が減る状態異常です。マム・タロトを相手にした時は通り道に大砲を設置して闘う、ラオシャンロンのような戦い方でした。

モンスターハンターでは、過去作でもモンスターとハンターが必死に戦っている横で、亀やフンコロガシがのんびり歩き回っていたりしていました。G級モンスターに襲われながらフンコロガシの観察に夢中になり、オトモのオモチやマツリに怒られたものです。
ワールドでは、そんなモンスター以外の生物を投網で捕獲した場合、マイルームに住まわせる事が出来るのです。可愛かったり気持ち悪かったり、色々いますよ。

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