やはり俺がラブライブの世界に異世界転移するのはまちがっている。   作:ちい太

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三話:十二月後半に投稿予定(やや前後いたします。)

※後書きにて謝ったりお礼したりしてるよ。見なくてもいいものです。ちょっと大事なことも言ってるかも

だれかコメントしてくれませぬか。寂しくて泣きそうです。


巧まずして、彼と彼女らは引かれ合う。

何のことかも分からずいきなり呼び出された職員室。

音ノ木坂学院の生徒指導担当であるらしいこれまた顔の整った美人な先生は呆れたといった様子で俺を冷冷たる目で見ていた。何この世界、顔立ちが良い人間しかいないの?

 

「比企谷。なんだこの作文は」

 

「え?いや分からないですけど」

 

「そんな下らない嘘はいい。今日呼び出したのはこのお前の作文のことでだ」

 

今にも溜息を吐き出しそうな先生に対し、何のことかもわからない俺の目にその作文の文字が入る。

書いてあるのは職業希望調査のことのようだが、生憎俺はこんなもの書いた覚えがない。

何とか抗弁しなければと口を開く。

 

「待ってください先生。本当に俺はそんな作文を見た覚えもましてや書いた覚えなんてないです」

 

「まだそんな意味のない嘘をつくか。どう見てもここにお前の名前が書いてあるだろう」

 

こんな生徒を何人も相手してきて慣れてしまったのか先生はご丁寧に名前のところを指で示す。

た、確かに俺の名前でその上筆跡まで俺のだ……。

しかし、俺は全く書いた覚えがないので少し真面目に潜考するとこれは元のこの世界の俺が書いたものではないかと考えがついた。

さすが俺、と自分の高スペックさに浸っていると先生が手のひらを眼の前でひらひらさせてきた。

鬼教官だと俺の中で名高い独身女性平塚先生を思い出し、てっきり張り手が飛んでくると思ってしまった俺は仰け反り一歩後ずさりしかける。 一日で恐怖を埋め込むとかあの先生怖すぎだろ。

 

「おい比企谷。聞いているのか?」

 

「あ、あぁ、すいません。ちゃんと聞いてます。それでその作文がどうかしたんですか?」

 

ここで「もう一人の俺が書いたものです」と言えたらなんて全くもって意味のないことを考えるのはタブーだ。八幡的美学その1.後悔し、悩むものに明日はなし、だ。まぁ、明日が明るい日だったことなんてないけど。

 

「ん?自分が書いたと認めたのか?まぁそれならそれで良い。それでこの作文の内容についてだが、このふざけた内容は何だ?」

 

口調だけ平塚先生にどこか似ている先生はまたも見てほしい箇所を指で指し示した。

[職業希望調査について……]

 

希望する職業……専業主夫

理由……

人は基本、自己利益のために行動するものである。

職業といえば大半は会社で働くことを思い浮かべるだろう。

しかし労働というものは多大にリスクを伴うものである。

最近は凄惨たる面持ちを持つ者の集合体、もとい会社への女性進出が当たり前となってきている。それに合わせて数多くの条約が結ばれてきているがその条約の多くは女性への差別撤廃が主なところである。

しかし、彼女ら女性のほとんどはそれらの条約を正に武器のように扱い我々男性を追い詰めてきているのだ。もう男女平等など夢のまた夢のまた夢である。

例を挙げよう。彼女らは男性が何か気に触ることをすればそれを直ちに「〜ハラスメント」と呼ぶ。

男女平等を歌いし者共に限って女性限定の〇〇という文字にはほとんどなんの批判も起こしはしない。

彼女らのいう男女平等とは言ってしまえば女性の権利をそのままに男性の権利を貪り取るものなのだ。つまりは、自分らの受益のためならばそれこそ美味い樹液を吸うように何もかも奪い取ってしまうということである。結局は御都合主義でしかない。

ならば、そんな悪でしかないものは糾弾されるべきだ。

だが、彼女らの創り上げた幻想のような社会はそれを断じて認めない。

よって男性にはその幻想に取り込まれるか、戦略的撤退しか選択肢がないのである。

そして、私はこのどちらかの選択肢の中で、後者を選ぶ。なぜなら、その幻想に取り込まれるということは変化していく社会のルールに頭を下げ、媚びへつらう行為であるからだ。

従って以上の理由から希望する職業を専業主夫ということとする。

 

 

みたいなことが書いてあった。

うん、あれだね。なんかすごく恥ずかしい。家族に日記を見られるような恥ずかしさがある。別に先生身内じゃないけど。

俺が恥ずかしさのあまり少し顔を伏せると、先生の左手薬指にキラッと光る何か、というか指輪が見えた。このほとんど後ろに手を回しているような位置からしてよほど見られたくないものなのだろうか。

何故か(と言うと失礼かもしれないが)意外だったので数瞬の間見つめてしまっていた。

すると先生はそれに気づいたようでシュバッと効果音が出そうな素早さで完全に手を後ろに回す。

 

「どうしたんすか、先生」

 

と言いつつも、もとよりもう気がついているのは皆さんご存知のことである。

 

「いや、なんでもない。それよりもだ、比企谷。職業選択というのはだな」

 

「先生ご結婚なさってたんですね」

 

先生のありがたいお話が始まろうとしたその瞬間俺はなんとなくその言葉を口にした。

少し独身の平塚先生を思って泣き頻るような気持ちがあったかもしれないしなかったかもしれない。

「な、何を言ってる比企谷!も、もういい、この作文は書き直しだ!ほら早く出ろ!」

 

俺に煽られて顔を正に林檎のように真っ赤にした先生は俺の背中を押し外へと押し出す。かわいいけど先生、このラブコメ要素いる?しかもそんなに恥ずかしがることはない。恥ずかしがるのはどちらかといえば平塚先生のほうだろう。

余りに弱々しく押される背中になんだか寒気がした。うむ、この話はやめておこう。

「一週間待つ。それまでには書き直してこい……」

 

もう恥ずかしさで今にも涙を流しそうな先生は隠れるようにドアを閉めようとする。

そんな先生を見てしまうと悪戯心が働いてまだ少し追及しようと思ってしまう。

しかしこのままではラブコメ的に考えて先生ルート直行間違いなしになってしまうのですんでのところで口を噤む。まぁ先生既婚者だけどね。

人妻ってもう響きだけであれだよね、と考えながら自分の教室へと続くやたら長い廊下を歩く。

そんな長い廊下を歩いていると、ぼっちとしては「考える」ことにリソースを割くしかすることがない。

 

……長い一生の中で二つ高校を経験するというのは中々ないことであるだろう。

その経験の中でこの世界の音ノ木坂学院という学校は少しばかり異様であった。

周りを見渡せばどこを見ても女子だらけ。正に俺も歩けば女子に引かれる、である。引かれちゃうのかよ。

それでも、男子がいないというわけではもちろんない。全体の3割程度であろうか、少数だが存在している。

その中で時折見かけるハーレムまがいの集団。中心にいる男子が布団が吹っ飛んだ並のなんの面白みもない冗談を次々発せば、ドッと笑いがおき超おもしろ〜いなんていう歓声が飛び交う。あれが青春というやつなのだろう。

 

「ふっ」

 

つい、声が出てしまった。なんて上手な演技。演劇部にでも入ればいいのに。

こんなものは妬みでも嫉みでもなんでもなくて本気で詰まらない、すなわち眇たるものであるので、流れている空気は気を最大限まで使った元気玉と言っても差し支えないものだろう。

俺らのようなスクールカーストの低い弱者はあんな奴らに頭をさげる、言い換えて倒されてしまうことからもこの推察は間違っていないだろう。

そんな青春分析を行っていると、正にそのハーレムまがいの集団が廊下にアホみたいな数掲示されているプリントの一つに釘付けになっていた。

そのプリントに書かれているのは、ラブライブというアニメを見た奴なら誰でもわかる音ノ木坂学院廃校のお知らせである。そもそも、ラブライブというアニメは学校を廃校から救う9人の少女の物語を追うといったものである。

やっと貼り出されたこの大きな廃校の文字は物語を少しづつ、動き出させるのである。

俺はマジヤベ〜とか言っている彼らから目を離し、プリントを置くためにに自分の教室へと足を踏み入れた。

教室の中は、意外にも廃校の話はされておらず、先程のプリントが貼り出されたばかりであることがわかる。ジェバンニ並に働いた誰かにお疲れ様の言葉を念じる。

まだ何も知らないであろうクラスの奴らは黒板の方を注視していたのでつられて俺も黒板に目を向ける。

なんだろうかと眉を少し細めると、黒板にはもうすぐ行われるらしい少しばかり濃ゆく書れた全校集会の文字。これから廃校についての詳しい話が執り行われるのだろう。

時計を見てみても15分前とまだ少し時間は早い。しかし、先に行っていても別に悪いなんてことはないだろう。各自で早めに行動!って書いてあるしな。

当たり前のように存在している彼女らアニメキャラクターはそのままアニメから出てきているみたいで現実味が全くと言っていいほどない。

そんな情景を横目に見て苦笑をもらしつつも机の中に俺の作文を放り込む。

別に目の前まで近づいたらいい匂いがして動揺したとかそんな事実は微塵もない。

誰しもにとって、活発さも思いやりも脳トロボイスも全てが勘違いの種でしかないのだ。

 

× × ×

 

途中少し道に迷ったせいで結局は周りのギャイギャイ騒いでいる集団と同じくらいの時間になってしまった。

この自分とは毛ほども合いそうにない空気で自分の足は普段の2倍速はあるのではと思わせるくらい早く動く。高いエサをやれば動きの速いウチのかまくら並みである。ちなみにかまくらとはウチの飼い猫の名前である。

それはさておき、どこの学校もおきまりは同じなようでまだ集会の始まらない講堂の中は喧騒に包まれていた。

空気を読むのが上手い方だと自負している俺は自分の席であろう所へドカッと座る。マジ空気を読みすぎて空気になってしまうレベル。

そんなthe best of 空気の俺の隣に誰かが座ってきた。

一個一個が淀みを感じさせない所作でその淑やかな所作は少し雪ノ下を思いださせる。どことは言わないが似ているしな、どことは言わないが。

話を戻すが、俺はその大和撫子と形容していいであろう彼女を知っている。

昨日天性のいい子さを発揮した高坂穂乃果の幼馴染、園田海未である。

透明度の高い山吹色、と表現すればいいのだろうかそんな色の目は吸い込まれてしまいそうなくらいに大きい。

髪も青みがかった色合いの長髪でよく似合っている。

アニメでは彼女なりの思いやりで不真面目な穂乃果を厳しく叱咤するようなそんなキャラだ。

ちなみにラブライブというアニメの中での二大顔芸担当とも言われたりしている。もう一人と出会うかはわからないが。

 しかし、なんとも奇妙である。

クラスの人数は少なくとも30人はいるであろうに、隣に海未が座ってくるというのはなんと御都合主義なことだろうか。

こんないきなりのラブコメ的展開についていけるほど俺はリア充生活を送っていない。

今の状況を詩的に表現するならば俺と彼女だけ時間が止まっているような気がした、とかそんなところであろう。

しかしあろうことか海未は、そんな時が止まったような雰囲気を壊してもの哀しげな垂れた眉を見せながら話しかけてきた。

 

「あ、あの初めまして、高坂穂乃果の幼馴染の園田海未と申します。この集会が終わってから少しお話があるのですが、よろしいでしょうか」

 

「え?あ、お、おう。別に構わんが」

 

一番初めの言葉が詰まるのは、人と話すのが苦手な証拠である。ソースは俺。

まぁそれは置いといて話というのはなんだろうか。自己紹介で穂乃果のことを出されても挨拶をしたというだけで接点があるわけではないのだが。

 そんな風に話の内容を推測していると、それをぶった切るように静かにしろという旨の教師の声がかかる。

 集会は段取り良く進んでいき、この学校の理事長である南理事長が本題の廃校のお話を始める。

なぜ名前を知っているか。

それは穂乃果にはもう一人の幼馴染であることり、という女子がいるのだが、理事長はそのことりの母なのだ。理事長が母ちゃんとか学校で無駄に視線が集まりそうだが大丈夫だろうか。

ちなみに例に漏れず彼女も美少女である。

海未と会ってしまったし、もしかしたら彼女とも出会ってしまうかもしれない。

 話を聞かず、上の空でも時間は進む。つつがなく行われたらしい集会はもうすぐ終わろうとしていた。

そんな時に、ボーッと遠くを見ている俺の隣で先程から隣でそわそわしているやつがいた。

もちろん、海未である。わかるぞ、話すのが苦手だと話の切り出し方がわからないよな。

まぁ、海未の場合は異性に対してだけであろうが。

 俺が己のコミュ力に毒気に当てられたようになっているといつの間にか集会は終わってしまったようで、意を決したのか海未がスッと息を吸う。嫌いな俺と話すのに勇気がいるのかとかそんなことを考えてしまうからその顔はやめてほしい。え?本当にそうじゃないよね……。

 

「あの、比企谷さん」

 

「おう。えと、話って何のことだ。」

 

今までの経験から、ついネガティヴになってしまったが海未のことだし大丈夫だろう。

……多分。

 

「あ、はい。話というのは穂乃果のことなのですが……」

 

「え?」

 

あまりに予期に反した話にもう一度聞き返してしまった。

俺の知らない間にいつのまにか俺との接点ができていたのかもしれない。何それ怖い。

どの位怖いかっていうと優しい雪ノ下並。これ本人に言ったら確実に瞬殺されそうだな。

いや、逆にゆっくりと苦しませてからかもしれない。あいつ、正に氷そのものって感じだしな。

 俺のくだらない考えとは正反対になおも海未は申し訳なさそうに口を開く。だからその顔はやめてほしい、特にその潤んだ目。

 

「……ですから、私の幼馴染の高坂穂乃果のことでお話があるのです。」

 

「え、でも俺と高坂って話したことそんなにないよな」

 

そんなにどころか挨拶一回しか交わしたことないけどな。

 

「その、申し上げにくいのですが先程比企谷さんが教室に来た時、プリントを落としていかれたのですが、穂乃果がそれを見てしまいまして……」

 

「え、あの作文がか……」

 

一般人の思考からいってあの作文を見れば、引くか貶すかのどちらかであろう。

しかし、穂乃果が俺に対して嫌悪感を持ったからといってわざわざ伝えに来る必要性があるだろうか。

穂乃果に嫌われて可哀想です、とかいくら何でもそんなことはないだろう。

 

「ええ、幼馴染とはいえ流石に瞬間的に止めることはできませんでした。私の方から、次は無いように言っておくつもりです」

 

そう言って俺に対して少し頭をさげる。……何だかいたずらっ子のお母さんみたいだな。親子に見えるほど仲が深いとも取れなくはないのでので別段間違っていないかもしれないが。

 

「いや、見られたっていうのは全然気にして無いんだが、他に何かあるのか?伝えに来ただけっていう訳じゃないんだろ?」

 

「はい。その、話っていうのはこれから穂乃果が比企谷さんに迷惑をかけるかもしれないということを伝えたかったのです」

 

「迷惑?どうやったらそういう結論に至るんだ?」

 

まさか穂乃果に延々とイジられるのだろうか。我の業界ではご褒美ではありません。だって過去のあれこれが勝手に浮かんでくるし。

 

「先程穂乃果が比企谷さんのプリントを見たって言いましたよね。その時に穂乃果が目を輝かせていたのです。これは幼馴染の勘なのですが、多分穂乃果のことですから、突拍子も無いことを言い出すはずです。そして、そうなれば確実に比企谷さんに少しは迷惑がかかってしまうでしょう」

 

なんか予言みたいなことを言い出したぞ……。幼馴染とやらはお互いのことが何でもわかってしまうらしい。

というか、もし海未の言う通りのことになればそれはもう世界が俺を弄んでいるとしか考えられない。またも俺を勘違いさせようとしているのだ。

しかし、訓練されたぼっちは、二度も同じ手にはかからない。

どうしようが、俺はもう変わったりなどしないのだ。

 

「まぁ、大丈夫だろ。聞く限り、確実にそうなるとは限らないみたいだしな」

 

「そうだといいのですが……」

 

まぁアニメでの海未の性格を加味すれば、なおのこと確率は下がる。

俺はわざわざありがとな、と言葉をかけ一足先に講堂から出る。

 厳しい現実を知っている俺だからこそわかる。

世界は都合よくなんてできていない。

人は一人一人の役者で、ぼっちの役を与えられた俺は何時までも変わらない。

人生に配役変更は認められないのだ。

可愛いリア充な彼女らの部活は傍から見てる方が俺には合っている。

何故ならせいぜい頑張っても、俺は一瞬モブBになれるかなれないかぐらいなのだから。

 誰だろうか、人は皆人生の主人公とか言った奴は。

必死でラブコメの神様を呪いつつ、俺は講堂を後にした。

 

 

× × ×

 

一言で言えば、海未の言ったことは本当になった。いや、なってしまった。

 講堂から戻った後、保健室から戻ってきたらしい穂乃果は早々に盛大な勘違いを披露していた。

まぁ、そんな声も可愛いとか思ったりしないこともないかなぁとかそんなことは置いといて今は昼休みが終わってもう6限目。

もう少しで帰れるといったところであり、いつもの俺ならば少しは喜びの気持ちが出てくる頃合なのだが、今日ばかりはそうはいかない。

 深く突き刺さるような後ろからの視線。予想してもしなくても、事実、これは穂乃果の視線である。

 くそっ、安易にラブコメの神様を呪ったせいだ。このせいで今日から神を信じるしかなくなってしまった。神様でもなければ、こんなあり得ないことを起こせるはずが無いだろう。

 存外美少女からの視線はきつく、息をつく暇もない。

もとよりぼっちとは繊細なもので、少しの事で古傷が開いてしまうことがある。

更に、俺は一人を好んでいるので他人からの視線はちょっぴり気になってしまうものなのだ。

 唐突におきまりの音でチャイムが鳴る。苦手な数学だったことも相まって、授業の内容など、これっぽっちも頭に入っていなかった。

号令さんが掛け声をかけ、授業は終わりを迎える。空気は一変し、弛緩した空気が流れ始める。

もう俺にとってこのチャイムは試合開始のゴングにしか聞こえなかった。ツーラウンド目の開始である。

 

「ねぇ!比企谷君!ここが廃校になるの、嫌だよね!」

 

すぐさま俺の目の前に回り込んで、穂乃果は言う。近いよ、近い……。

俺は穂乃果と同じくらいの速さで視線を下げる。

これはパタパタと揺れるスカートを凝視するためではなく、視線を合わせないためにしていることだということをここに誓っておきたい。

 

「穂乃果ちゃ〜ん、無理に誘うのはダメだよ〜」

 

1ラウンド目と同じ切り出し方をしてきた穂乃果を止めたのはことりだった。

ポワポワしている彼女は声も仕草も全てがポワポワしている。

今だって穂乃果を止めに入っているが、言い方が優しすぎて穂乃果を止めるには戦力が足りなさすぎる。

 そんな彼女の名前は南ことり。この学校の理事長の娘さんである。

彼女はこのラブライブというアニメのキャラクター達の中でも一二を争う癒し系キャラだ。脳トロボイスと呼ばれる声で、人を瞬く間に骨抜きにする。

あざとさなしでこれを天然でしてしまうところが彼女の特徴であり、怖いところだ。

ちなみに結構でかい。

 俺がそんな男子中学生と同等の思考を行おうとしていると、今度は海未までもが話に入ってきた。

こちらを一瞥した後申し訳なさそうな顔をして、ことりと一緒に穂乃果を止めに入る。だからそんな顔すんなよ。

「そうですよ穂乃果!しつこく誘ってはいけません。迷惑をかけてはいけないと言ったでしょう」

 

俺が前の休み時間、穂乃果の勧誘に耐えかねて脱出した時、そんなこと言ってたのか。

あまり他人に興味のない俺だが、常に他人を思いやる海未に少し感心し、少し心配をしてしまう。疲れてしまわないのだろうか。俺とか他人を思いやったら、今までの経験から言って逆に引かれちゃうしな。ありがた迷惑というやつである。

 みんなは自分の適所をしっかりと把握しよう!なんか泣けてきたな……。

当然だが誰も俺の思考は汲み取れるはずもなく、穂乃果は海未からの言葉を返す。

 

「え〜!でも比企谷君いたら絶対頼りになるよ〜!」

 

「それはそうかもしれませんが、とにかく!迷惑をかけてはダメです」

 

何故か穂乃果から胃が痛くなるほどの信頼を受けているが正直困ってしまう。

信頼は大きければ大きいほど、失敗した時の失望は比例して大きくなる。とても危ういものなのだ。

しかし今までに信頼された試しがないので、体験談を話すことができないのが物悲しいところである。

するとツーラウンド目を終わらせるガラッという音が大きく耳に届く。

 

「ほら〜!みんな座れ〜!HR始めるぞ〜!」

 

更に、間延びした大きな声が教室中に広がると生徒たちは次々と席についていく。

穂乃果たちもそれに合わせて(穂乃果は渋々といった様子だったが)席に戻る。

 ラブコメの神様は変な所だけ厳しく、スカートは一度も翻ることはなかった。

今日の集会のように淡々と進んでいくHR。

 今度は視線がこちらに向けられる様子はない。もしかして、もう諦めたのだろうか。

他人に関わられるのは嫌だが、スパッとどこかへ行ってしまうと変な虚無感のようなものを感じる。ぼっちのというか俺のめんどくさい所かもしれない。

まぁ最初から関わるつもりはなかった訳で、結局は結果オーライである。

万事解決。

「よし、連絡は終わりだ。号令!」

 

そう声がかかると号令さんが凛とした声で挨拶をする。

帰宅部の本領発揮の時間である。

俺はすぐさまバッグを抱えて靴箱へと向かう。

 今日はなんて濃ゆい日だっただろうか。

ついに接点を持ってしまった俺はもう、逃げ惑うしか手段がない。

俺が彼女らと関わり合いを持つのは多分やってはいけない、タブーというやつなのだろう。

 人は大抵、自覚してもせずとも自分の色というものを持っている。

その中で、俺は限りなく黒に近いグレー。

彼女らと混ざっても色は汚くなってしまうし、俺に何色を混ぜたとしても俺が段々と黒へと近づくばかりである。

だから、俺は人と混ざらない。

人生は、色を吸い取るスポイトを用意してくれるほど甘くはないのだ。俺はそんなちゃちな期待なんてしない。

 俺はずり落ちそうになっているバッグをもう一度抱え直してまた一歩を踏み出す。

すると開いていた窓の外から御都合主義的になのか入ってきてしまった桜の花びら一枚が俺の目の前にスッと落ちる。

踏んでしまうのも気分が悪いしな。

俺は誰にしたのかわからない言い訳をして、桜の花びらを手に取ると、学校を後にした。




どうも!ちい太です!
まずは本当にすいませんでした。当初の予定では十一月前半に投稿する予定でございました。
ここで本当にいけないのは、投稿できなかった理由がないことです。単にサボってただけなんですね、ええ。
どうかそんな私めを許していいただけると……。
あ、失踪だけは必ずいたしません!命にかえても完結させる心算です。

あまり聞きたくはないはずですので謝罪はここまでにしておいて、UA50000更にお気に入り約550件ありがとうございます。
こんなに見てもらえて嬉しい嬉しい限りです。

そして、結構重大なことなのですが、三話以降を一回削除しようかな、と思っております。
どうしても二話から三話となる時に矛盾が生じてしまうので。
ダメ!残しておいて!という方は普通のコメントに添えて頂ければ、しっかり受け止めようと思っています。

はい!ここら辺で後書きを閉めようかな。
最後に一つだけ、お気に入り約500件の方々が全員評価、コメントをしたら……?(もちろん強制ではないです)
あ、別に特典があるわけではないので、そこの所よろしくです。ただ私のモチベが上がるだけですので、あしからず。

それでは、また次話で。

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