次回は食レポ…はなしで原作に絡めていきたい。
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今宵の弁当争奪戦。
まさかこんなことになるなんて思わなかったと、茶髪と呼ばれる狼は一人胸の中でつぶやく。
始まりは昨夜、この時期には珍しくはない光景である狼の狩場に何も知らない者が迷い込んだところから始まる。
高校や大学の入学式があり、それまでの生活が変わる人間が多いこの時期は、スーパーに晩飯を求める者が出てくる。
その地域を駆け回る狼達からしたら迷惑な話にはなる。
何も知らないからこそ行われる行為、それは狼たちの間では豚と比喩される行い。
そんな豚をこの時期、何度も駆逐するのは一種の風物詩となっているのは彼らが協力して洗礼を加える姿からも察せられる。
だから茶髪は思った。
今日もまた、豚が紛れ込んできた、と。
案の定、それは現れた。
見た目は普通の男子学生。
黒の髪、大きな目、175㎝以上ある身長。
なんだかどこにでもいそうで、なんの特徴もないと、第一印象を持った。
クルクルな髪の毛以外は。
いわゆる天然パーマというのだろうか。
ハネたり、巻いてあったり、なんだか見ているだけで面白いそんな髪をしているその男子学生は弁当コーナーへ足を運んだ。
そして恥もなく、買いもしない弁当を触っては戻すことを繰り返す。
狼達のボルテージが上がっていくのを感じた茶髪は、哀れみの眼をもって迎えた。
きっと、彼は駆逐される。
そして二度と姿を見せないだろう。
今までの豚と同じように。
しかし、予想に反してその豚は次の日も来た。
それだけなら100歩譲ってまだわかる。
ドMなのかとも思ったがそんなことはどうでもいい。
驚いたのはその豚が、なんと狼の姿を模したかのようにふるまっているのだ。
なんだかその姿に親しみを覚えた。
たとえるなら…出来の悪い愛犬が、いつまでたっても芸を覚えないくせに、ある日突然TVを見ている時に何の前触れもなくその芸を披露したような。
そして茶髪は声をかけた。
その豚…いや男子高校生に。
そして気まぐれに、この場のルールを教えてやった。
普段の彼女ならこんなことはしない。
ここは戦場、出会いの場ではないのだから。
しかし、最近になって名うての狼である【氷結の魔女】が二頭の犬を囲ったと聞いた。
それに加えてこの時期は【アラシ】も多発する。
だから、だろうか。
茶髪も、一頭の犬を導く感覚で声をかけた。
最初は。
話していく中で、その男子高校生…茶髪はこの男を【天パ】と呼ぶことにした…は普通とは違うと感じた。
具体的に何が、どこがとは言えないがなんとなくそう思った。
そして現れた月桂冠、訪れた開戦の時。
狼達は駆ける。
獲物を求めて。
茶髪も牙をむく。
爪を立てる。
そして手を伸ばす。
その瞬間、あの【天パ】が素人らしからぬ姿で場を蹂躙していく。
ここで茶髪は改めて【天パ】への評価を改める。
走る姿は狼のそれ、敵を薙ぐ姿は鬼のようだ。
【天パ】と共闘した時など胸が躍った。
対峙した時など食われるかと体中の穴が開いたほどだ。
そして見つけた一瞬の勝機、その一点をこじ開け弁当へと駆ける。
獲った、そう思った。
【黒い悪魔】が目を覚ました。
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その場にふさわしい言葉とそうでない言葉っていうものが世の中にはある。
例えば、超高層ビルの屋上付近のレストラン、ガラスの外は星いっぱいの夜景。
「この夜景も君の瞳の美しさの前では霞んでしまう」や「月がきれいですね」なんて言うものはふさわしい言葉だ。
人生の勝ち組と言っても差し支えないだろう。
しかし逆に同じようなシチュエーションでも「…割り勘で良い?」や「今日から一週間は水と塩で過ごさなきゃ」なんかは最悪だ、人生の負け組だろう。
その場にふさわしい言葉、シチュエーションと言うのは本当に大事なことだ。
調和していなければどんな要素も場を乱すための格好の材料なりえない。
今この場でそうだ。
僕の繰り出した技。
その名も❝ゴキブリダッシュ❞
皆さんはゴキブリと聞いてどんな感情を持ちますか?
普通の人なら、まああまり良い感情は持たないと思います。
かくいう僕もそうです。
見ただけで叫びます、発狂します。
きっと食欲も減退してしまいます。
だから僕はこの技をあまり使いたくはなかった。
しかし恐るべきは茶髪。
僕を吹き飛ばし、その一瞬を狙って弁当奪取を狙う。
これはいまさら普通に走って追いつけるものではない。
月桂冠が…お宝がとられてしまう。
許せない、そんなこと。
それは僕のだ、僕が食べると誓ったのだ。
なりふり構っていられない。
使いたくなかろうが仕方がない。
僕はすぐ、技を使うために目を閉じる。
何故か、それはイメージをするためだ。
ゴキブリの素早さの秘訣。
それはゴキブリの筋肉は液状であるからだ。
…実際は知らない。
でも『範馬刃牙』でそういってたもん。
実際捕まえて確かめてみようなんて絶対に無理なのだから、それを信じるしかない。
ともかくゴキブリの筋肉が液状だというならそれに倣って、僕の筋肉もまた液状であるとイメージする。
いや、筋肉だけではない。
骨も、内臓も、皮も何もかも。
一切合切を液状であるとイメージする。
…イメージするのは常に最強の自分、痺れるね。
…だめだ…まだ硬い…硬すぎる…石みたいだ…早くしなければ取り返しがつかないことになる…月桂冠を奪われてしまう…奪われても全力を出したのだからいいじゃないか、なんて自分で許せない…そんな言葉を吐いて負けを受け入れるなんて絶対に嫌だ…まだ駄目だ…筋肉に力が入っている…まるで溶けていない…イメージは服だけを残してそのほかの部分が水になってしまうこと…液化…すべてを液化する…出来ないはずがない…不可能なことでもない…なぜなら前世から妄想もとい創造することだけが社畜に許された特技なのだから…!
ゴキブリは速度を旨とする生物の中で、その中で唯一初速からMAX、人間大なら270㎞を一歩目から出すことができる稀有な存在!
加速の必要がない…ッ!いきなりの最高速度ッ!
イメージが進む。
ゆるっ、と体の細胞が悲鳴を上げる。
まるで、手を取り合って繋がっていたものを切り離すように。
笑みが浮かぶ。
来た。
「ゴキブリダッシュ」
125万種以上の生命の炎が燃え盛るこの地球を生き抜いてきた【害虫の王】の力、括目せよッッッ!!!
瞬間、服だけを残し体全てが水となり流れ落ちる。
残された服だけがかろうじてそこに人間がいたということを証明するかのように立ち続けた。
否、それはイメージ。
しかし、イメージは完ぺきだった。
音もなく全てを追い抜き、ある者は悲鳴を上げ飛びのき、またある者は勇敢にも攻撃をしてくるがそれらすべてを速度に任せた突進ではじき返す。
いや…果たしてその攻撃は僕に当たったのか。
かすりすらしなかったのではないか。
どうでもいいか。
今は、どうでもいい。
この手にある確かな重量。
僕が生まれて初めて勝ち取った獲物。
見せつけるように、確かめるようにそれを掲げる。
あの顔色ばかり窺い、自分の声を出さなかった社畜時代からの決別。
僕は声を出して叫ぶ。
月桂冠『括目せよ!春の祝い膳!鯛のありがタイ行楽弁当!』
GETだぜ!
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