ベン・トーの世界に転生者がいたら   作:アキゾノ

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勢いで書きました。

感想等いただけたら、嬉しいです。
どうかよろしくお願いします。
あと、おすすめの漫画の技とかありましたら教えてくださるとうれしいです。


2食目

一瞬の静寂のあと、それは起こった。

あぶら神が扉の向こうへ消えるや否や、どこにそんだけ居たんだっていうくらいの狼の群れが突如として沸いた。

ある者は坊主頭の男に飛び蹴りをくらわしていたり、またある者は茶髪へ殴りかかってはカウンターで掌底を受け飛んで行ったりしていた。

はたから見れば本当にカオスだな。

だが、これでこそだ。

この乱戦で戦い抜き、勝ち取り、食らう。

そうすることで僕はきっとこれまでにない感動を味わうはずだ。

思い出せ、あの大きな鯛を。

思い出せ、あの色鮮やかな漬物を。

腹が鳴る。

あぁ…本当に愚かだ僕は。

半額弁当にこんなにも胸を熱くさせているなんて。

早く食べたい…たべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたいたべたい

 

「おおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」

 

自然と湧き上がる声。

久しく忘れていた喉を震わす感触。

踏みしめる床。

体を丸め、そのまま地面に倒れるように傾ける。

そして、地面ぎりぎりというところで足を爆発させた。

これまでにないほどの加速。

体が置いて行かれそうになる。

だめだ。

それでも止まらない。

食べたい。

僕の行く手を阻む一頭の狼。

そいつは僕に蹴りを放つ。

間近で見るとなんて気迫だ。

これが狼の持つ、食欲の形。

僕を鎮めようとするその蹴りを、僕は更に踏み込むことで相手の蹴りを置き去りにし、そのまま抜き去る。

と、同時に左手をかぎ爪のようにし、狼の首に巻きつかせ勢いそのままにたたきつける。

ラリアット。

プロレスを知らない人でもきっと見たことがあるだろう。

ぷげぇ、という聞きなれない悲鳴を最後にその狼は沈んだ。

だが、僕は止まらない。

僕の存在に気付いた他の狼がタックルで止めに来た。

構うものか。

そんなものでは僕は止まらない。

止まれない。

腰めがけてくるそのタックルを、僕はカウンター気味に膝蹴りを相手の顔に叩き込む。

面白いくらいに決まった。

まるで吸い込まれるような流れだった。

なんだろう…こんなにも胸が熱く、興奮しているのに、どうして僕はこんなにも落ち着いているんだろう。

周りの光景がやけに遅く見える。

後ろの光景までもが手に取るようにわかる…ような気がする。

 

見かけぬ存在である僕が猛スピードで弁当へと迫る光景を目にした二頭の狼が迫る。

するとその二頭の狼のさらに後ろから茶髪が見えた。

視線が交わる。

頷きあった、気がした。

茶髪が後ろからベジータよろしく、両手を組みハンマーのようにした手で後頭部を強打する、のと同時に僕はもう一頭の狼の股の下を滑り込み、背中合わせになる。

瞬間、飛び上がりまわし蹴りを繰り出す。

一瞬で消えたように見えたであろう僕の姿を探す名も知れぬ狼にモロにそれは入った。

 

共闘、茶髪と僕はお互いに笑い、次の瞬間、拳と拳がぶつかる。

 

「やるじゃない」

 

「…あざす」

 

周りの狼はどんどん減っていく。

しかしまだ奪取の声を聴いていない。

現状、僕は弁当コーナーに背を向ける形となっている。

そして茶髪と対峙中だ。

これで弁当コーナーへ向かうのは至難の業だ。

茶髪に背後を取られる。

先ほどまでの動きを見るに茶髪はかなりの力量だ。

 

一息吸って、茶髪が動く。

拳の連打。

冷静に対処しなければ。

拳を見極めようと目を見開く。

線のようだった軌道が、はっきりと見える。

なぜ、こんなにもはっきり見えるのか。

思い当たるふしは一つある。

が、それを説明している暇は…ない!

見えてはいても、それに体がついてこない。

今の状態では、これが僕の限界のようだ。

十は繰り出された拳を、僕は6発しか防げなかった。

しかし鳩尾や顔への攻撃は何とか防げた。

 

鳩尾をやられれば、胃にもダメージがあり、食欲そのものが消えてしまうかもしれない。

口をやられれば、血の味がして同じく食欲が消えてなくなるだろう。

血の味で興奮する変態ではないから。

 

「的確に糸口へのダメージを防ぎきるなんて…あなた本当にデビュー戦?」

 

「…」

 

「【腹の虫の加護】、知ってるのね?」

 

狼は【腹の虫の加護】と呼ばれる、まぁ要は食欲を燃料に超人じみた戦闘を行える。

これが先ほど挙げたように胃や口にダメージが行くと、加護が減り、当然戦闘能力も下がる。

確か原作でも、胃を直接攻撃するような描写があったはずだ。

 

「本当に…おもしろい!」

 

茶髪が走る。

いまだ、体がついてこないが動きは読める。

 

だからわかる。

不味い!

慌てて距離を取ろうとするが、茶髪は僕が先ほどしたように無理やりステップを踏み、加速を行った。

来る!

苦し紛れに片手を伸ばす。

それをクルリと周り、僕の懐へ入る茶髪。

次の瞬間、衝撃が体を…いや、胃をピンポイントで貫いた。

 

肘鉄。

中国拳法でいう頂肘。

 

やられた!

一切よどみのない動き。

吸い込まれるように入るダメージは、僕の左手の上から胃へとダメージを与える。

ギリギリのところで、左手を胸の前でクロスさせ、衝撃を和らげることに成功した。

したが、それでもこの狩場に於いてその一瞬のゆるみは致命的だ。

 

茶髪は舌打ちをして、しかしチャンスとばかりに僕を抜き去り弁当へと向かう。

 

 

ここで僕の話を一つ。

僕は5歳から特訓をしてきた。

以前にも話したことのある、漫画に出てくる技の特訓である。

現在、15歳。

おおよそ10年をその特訓に捧げた。

その結果、確かになかなかの数の技を模倣することができた。

しかし、漫画の技は漫画の技でしかない。

どうしてもそんなイメージが先行してしまい、通常時に扱うことはできなかった。

考えてもみてほしい。

普通に生きていて、昇竜拳や通背拳を使う機会なんてまぁない。

日常生活では必要ないものなのだから。

だから、僕がこれら漫画の技を扱うにはある条件がいる。

それは枷を外すことである(厨二)

いや、枷と言っても詠唱したり包帯を外したりではない。

そんなんしてたら恥ずかしくて悶え死ぬわ。

 

僕の枷の外し方。

いたって簡単である。

その技の名前を口にすることである。

そうすることで僕は現実から漫画の世界を再現することができるのだ。

 

さきほどから周りがスローモーションに見えているのも小さいころから眼筋を自分なりに鍛えているからである。

さぁ行くぞ、僕の(元居た世界の漫画の)力を思い知れ!

 

 

「ゴキブリダッシュ」

 

 

 

 




・ゴキブリダッシュ
漫画・【範馬刃牙】で出てくる技。
主人公、刃牙の編み出した技。
初速から270㎞で走れる…らしい

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