ポケットの中の英霊   作:ACT 07

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みなさんお久しぶりです。
どうにかできました。
その割に全然、話が進んでいない気がする……。

楽しんで頂ければ幸いです。

獅子王? そんな子は私は知りませぬ(白目)



ACT07 answer

 

 

行動は必ずしも幸福をもたらすものではない。しかし、行動のないところに幸福はない。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

円蔵山、大聖杯前。

 

そこに一人の堕ちた少女が地面に漆黒の剣を突き刺し待ち構えている。

何を待ち構えているのか? 

彼女は待っている。自分を受け入れてくれたマスターを。

騎士王としてではなく一人の女性として見てくれたあの赤銅色の少年を待っている。

嗚呼。今でも貴方が愛おしい。シロウ。

この地獄の中で貴方は生きているとは、私は思えない。

シロウ。願うことなら私はこのまま貴方と会うことなく座に帰りたい。

私は、外道に堕ちた。

だが私は魂まで堕ちたわけではない。

いかに聖杯で無理やり汚染させ黒化させようが、最優のサーヴァントたるセイバーの対魔力を侮ったようだな。

黒化しても一片の理性が残っているならば。私も十分だ。

聖杯などもう、どうでもいい。

あれほど固執していた聖杯による過去の改変。

だが、それよりも私は大事なものを知ることができた。

だがシロウは、そんな私を許してくれるだろうか?

己の手の両手に目を落とす。

こんなにも穢れた私を、シロウは……。

 

ふと、後ろに控える大聖杯に目を向ける。

 

願いを叶える万能釜たる聖杯よ。

もし、機能しているのであれば貴様を守護している私のささやかな願いを聞け。

 

 

 

 

 

もう一度。シロウと――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ACT07 弓兵再び

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たち一行は円蔵山の大聖杯目指して行進中だ。

今の僕たちの目的は現在の大聖杯の現状確認。それが終わり次第アサシン抹殺だ。

キャスターを先頭に衛宮、最後尾に僕といった並びでキャスターが索敵しながら慎重に進む。

それにしてもルーンって本当に便利だね。書いたらばー! って文字が浮き出てしゅぱー! って感じで索敵やってくれるんだから。

そのおかげもあってキャスターと合流してから一度も敵と会ってない。

キャスター凄い。正直、魔術師が強くなっただけのお上りさんだと思って舐めてました。

キャスター。本当にごめんなさい。君は最高のサーヴァントだ。

 

「………」

 

ねぇ、アヴェンジャー。

 

「……それにしても熱いわね。ねぇ、あなた水なんて縁起のいいものないの?」

 

「いやいや! さっきまで胸ポケットにいたのにいつの間に僕の頭の上にパイルダーオンしてるの!?」

 

本当にさっきまで胸ポケットで人の気も知らないで爆睡してたのに……。本当に気配感じなかったよ? いつの間に移動したの?

そのアヴェンジャーは今、僕の頭の上で額をぺちぺちしながら水を要求してくる始末。

あの。アヴェンジャーさん? 非常に言いにくいのですが歩くたびに君の鎧が頭皮に擦れて痛いんで辞めていただけませんかね? 頭皮ゴリゴリされて、そこだけ根毛死滅しそう。

……あ! 僕にも水ある! 少々味に難があるが……まぁ、アヴェンジャーなら大丈夫でしょう。

 

「僕の腰にあるバベルの塔から――――」

 

「次の言葉を言った瞬間にあなたの両目は目玉焼きよ?」

 

「ド下ネタでごめんなさい」

 

ちくしょう! 別にいいじゃないか! 僕も日本男児だ! 人並みの性欲はあるわ!

昔からそんな変な気を起こした瞬間にカレンに簀巻きにされて教会の外で蓑虫やられてたんだ!

別に少しくらいいじゃないか!

 

「「…………」」

 

キャスターと衛宮の「「うわーなんて哀れなの」」と言いたげな視線が突き刺さる。

……もう泣いていいかな?

というより、僕。こういうキャラのポジションだっけ?

改めて僕は泣きたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

『答えは得た……。大丈夫だよ、遠坂。俺も、これから頑張っていくから』

 

 

 

 

 

 

円蔵山前、私は否。オレは聖杯にたどり着きそうな奴らを片っ端から排除している。

何故ならばオレにできることはおそらくそれぐらいだと思っていたからだ。

エミヤシロウという壊れた男のできることは、黒化して身を外道になり果てようと変わらなかった。

オレは遠坂凛に召喚され、オレは冬木の聖杯戦争にアーチャーとして参加。

そして、衛宮士郎という男を見た。あいつはセイバーのマスターとして聖杯戦争に参加した。

理由は言うまでもない。かつてのオレもそうだった。

だが、今の聖杯戦争はオレがやってきた聖杯戦争とは違う。

聖杯が暴走し、聖杯が何者かに破壊され一時的に途絶えた聖杯による魔力のバックアップ。

そこを狙われ、行動を共にしていた凛と衛宮士郎、オレとセイバーはマスターとの契約を切られ外部から持ち込まれた聖杯に汚染され、外部から持ち込まれた聖杯に直接契約させ直された。

オレは三騎士であるが所詮はまっとうな英雄ではないオレは高い対魔力をもっていないから、すぐではないが時間がたつとともに聖杯に汚染された。

セイバーは騎士たる矜持か、はたまたセイバーが持つ高い対魔力のおかげか。完全に汚染されることはなく理性を保てている。

 

オレは考えた。

今のオレは聖杯に汚染された身でセイバーを救うことはできない。

今の衛宮士郎は確かに弱い。

だが、もし。あの時のように英雄王を退けるほどの力を身に着けさせれば……。

彼女を救うことができるかもしれない、と。

そのためには他のサーヴァントとの戦いで、それとオレ自身との戦いで固有結界の発動までしろとは言わない。だが、入り口には入れ。

だが、そこまででセイバーに届くとは思えない。

それを補うであろう存在がいる。やつ……ぐだおだ。

言峰綺礼を養父に持ちオレと同じあの地獄を生き延びた者だ。

八極拳の使い手であり、生前に遠坂と共に八極拳を教えてもらった。ということは覚えている。

特に親しいわけでもなかった。

普通に教室で挨拶を交わしあう、ただのクラスメイトだった。

それに、生前にオレが参加した聖杯戦争では、あいつがマスターになることはなかった。

そして少なくとも、オレが居たときは胸ポケットにあのような者は鎮座していなかった。

あの胸ポケットにいたのは、間違いなくサーヴァントではあるようだが……。

あんなに小さい英霊をオレは知らない。そもそも胸ポケットに収まる英霊なぞいるのか?

 

話が逸れた。話を戻そう。

だが、先ほどの戦闘で確信したことがある。

やつの……。ぐだおの拳は英霊に通じる。

それはオレが身をもって体験した。オレは曲がりなりにも英霊でありサーヴァントである、普通の人間がサーヴァントにダメージを与えることなぞ皆無だと思っていた。

だが、ぐだおはそれを覆した。

身体に響く五臓六腑を破壊しかねない威力に攻撃動作までの洗練された動き。

こいつらが、他の誰でもいい。サーヴァントを連れてくるのであれば……。

届くかもしれない。彼女(アーサー王)に。

オレができなかったことをやつらならば、やってくれるのではないか。と。

心のどこかで期待している自分に腹立たしいが、勝算があるならば賭けてみるのも悪くない。

 

記憶が摩耗し消えそうになっても忘れることの無い、薄暗い土蔵での彼女との出会い。

オレが愛した彼女を救うために……。

 

「……衛宮士郎。お前にアルトリアが救えるのか?」

 

 

 

 

 

 

再び彼らが対峙する時は……。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、1人で私を相手に取ろうとは。貴様も度し難い阿呆のようだな。衛宮士郎」

 

円造山の中腹で再び現れたアーチャー。

 

「……」

 

そうだ。アーチャーの言う通り、今の俺は1人だ。

キャスターとぐだおに無理を言って1人で来たのだ。

勿論ぐだおとキャスターに無茶苦茶止められた。

 

 

『衛宮、本気で言っているのか!? あの時は3人で大博打に近い作戦で、やっと退けることができた相手だよ!? それを1人ってお前……」

 

『こいつの言う通りだ。いくら何でも無謀すぎる。マスター。勇敢と蛮勇をはき違えちゃいかねぇ』

 

たしかに、無謀だ。正直、勝てるかも分からない。

でも俺は、あいつと……アーチャーと決着をつけないといけない。

そこまであいつに固執する理由は、はっきり言って俺にもわからない。

それでも、これだけは言える。

 

あいつはどこか、俺と似ている気がする。

 

どこって言われたらどうも言えないが、でも。体の出来かた? 生き方? 見たいというかなんというか……。

うまく言い表せないけど、俺があいつを倒さないと前に進めない気がするんだ。

勿論、俺は死ぬつもりはない。

遠坂の仇を討たないといけない。

それ以上にあいつとの決着を付けなきゃいけないんだ。

 

『……分かったよ、衛宮。本当は縛りつけてでも行かせたくないのだけど、お前がそう言うということは何か勝算があるんだろう?』

 

……ぐだおの言う通りだ。

俺はキャスターに無理を言って発現させたものだ。

いわば未来の先取り、といったところだ。

それが、アーチャーに対抗できる俺の唯一の切り札だ。

 

『マスター。これはサーヴァントとして言っておくがアレを使いすぎるとお前は……』

 

分かっている。リスクも承知の上だ。

そうでもしないと、あいつに勝てないから。

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ、俺一人だ。そのほうがお前もいいだろう? アーチャー」

 

俺は黒い影となったアーチャーを見る。

 

「……衛宮士郎。お前に一つ聞こう。貴様はまだ『正義の味方』などという下らない理想を追い続けるつもりか?」

 

「ああ。そのつもりだ」

 

即答だった。

俺が、俺自身がこの理想を捨てることはない。

 

「……ならば、ここで下らない理想を抱いたま『でも!』?」

 

アーチャーの言葉を遮り俺はアーチャーへ語る。

 

「俺はたしかに『正義の味方』なんて言うものを追いかけると、いつか自分が消えるんじゃないかって……時々そう思う」

 

「それを理解しているならば、何故その道を歩もうとする?」

 

「それが……俺という、衛宮士郎にできることだからだ。人を助けたい。その思いが間違いなはずがない、そうだろう? アーチャー……いや、英霊エミヤ!」

 

こいつは、俺だ。

未来の俺自身。

己の理想に準じて朽ち果てた愚かな俺だ。

 

「……いつオレの真名にたどり着いた」

 

「お前の真名に、たどり着いたのはついさっきだ。前回の剣戟でいくつ打ち合ったと思っているんだ? そのたび流れてくるのはお前自身が見てきた地獄だった。最後見た、あの10年前の誰も助けてくれない絶望の中での、充満する死の風景だった。この記憶を写し出せるのは、衛宮士郎をおいて他にはいない。それと、打ち合っていく度に分かる剣の基本骨子、創造概念、戦闘方法。それは何故か俺自身の体にすぐに馴染んでいった。理由はそれが衛宮士郎にとって一番いい戦い方に他ならない」

 

「それらがわかっていてなお、お前はその道を行こうというのか!」

 

「そうだ」

 

アーチャーが怒るのも無理はない。

何故なら俺が辿る終着点は己の理想に準じて朽ち果てる。という未来だからだ。

でも、俺の答えはそんなものじゃない。

 

「お前は……セイバーをアルトリアを置いていくつもりか!」

 

アーチャーが吼える。

それは、エミヤシロウという男の魂の咆哮だった。

 

「違う! 彼女を……セイバーを置いていくことなんてしない!」

 

それをすぐさま否定する。

否定しなければ、ならなかった。

あいつを肯定すれば、確実に俺の負けだと思うからだ。

 

「ならば、どうというんだ! 答えろ! 衛宮士郎!」

 

「俺は……彼女をセイバーを救う。幾万の人を助けることは無理だ。俺にできるのは……手に届く人だけを救うことだ。セイバーを救う。それだけの、たったそれだけのちっぽけな正義の味方でありたい……」

 

胸に右手を当て目を瞑る。

 

―――――ドクン

 

胸が大きく鼓動する。

銃の撃鉄を落とす。同時に身体の回路が悲鳴を上げる。

分を超えた魔術は人を滅ぼす。

そして静かに語るように詠唱を口ずさむ。

これから俺のすることは―――――――――――――

 

 

 

 

俺自身(無限)への挑戦だ。

 

 

 

 

体は剣で出来ている(I am the bone of my sword. )

 

俺が挑むは俺自身。

 

血潮は鉄で心は硝子(Steel is my body,and fire is my blood. )

 

俺が辿るはずだった未来の俺があいつだ。

 

幾たびの戦場を越えて不敗 (I have created over a thousand blades. )

 

ただ理想を追い続けた男の末路。

 

ただ一度の敗走もなく(Unaware of loss.)

 

まるで鏡を見ているようだった。

 

ただ一度の勝利もない(Nor aware of gain. )

 

理想は同じはずなのに。

 

担い手はここに独り(Stood pain with inconsitent weapons, )

 

思うことが違えば、変わってくる。

 

己の体で剣を鍛つ(waiting for one's arrival. )

 

俺の理想は借り物に過ぎない。

 

わが生涯は今だ果てず(my flame never ends.)

 

衛宮切嗣という男が残したいわば呪いのようなもの。己を殺してでも救うという機械じみた人生に。

 

されど、この体は(My whole)

 

その運命に。

 

いずれ至る(life was )

 

今、俺はここで――――――――

 

 

 

「"剣戟の極致へと"(Limited/zero over)

 

己の運命に己の意思で抗う!

 

俺の手には一振りの銘も無き刀。

左半身に魔術刻印を宿し赤い射籠手を纏う姿に変わる。

 

「……それがお前の『答え』か」

 

この姿を見たアーチャーから零れた小さな言葉。

そうだ。これが俺の出した答えだ。

収斂こそ理想の証だ。

 

刀を構え、アーチャーへと駆け出した。

 

「いくぞ、アーチャー。武器の数は十分か!」

 

 




今回の話でアーチャーと士郎のことを書いてみました。
え? こんな士郎はおかしい? ……そこは、目を瞑ってください。
どうしても書きたかったんですよ! 袴士郎! かっこいいから!

次の話で、展開が大きく揺れる(予定)
流石にそぉーろそろ邪ンヌさんを活躍させないといけないという使命感に駆られております。

プリヤコラボはどうやら明日から開始らしいですねぇ……運営は、私たちから金を絞るとる気満々ですね。
水着で弓王は来ない。円卓ピックアップで来るのは概念礼装ばかり。
きっと次の為に運をため込んでいるんだな(あきらめ)

それでは、みなさん次でお会いしましょう。

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