ポケットの中の英霊   作:ACT 07

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本当にぶっ倒れました(布団の上に)
改めてこの場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

*加筆しました


ACT04 聖杯戦争

僕とアヴェンジャーは駆け足で教会へ向かう。

教会へ向かう道中も何度か骸骨と遭遇した。

その度に自分の拳で葬ってきた。

教会のことも気になるし、神父のことも気になる。それに王様も……たぶん大丈夫。

言峰神父は殺しても死にそうにない人だ。あの人のことだ。僕が慌てて戻ってきたところを笑うにきまっている。

王様も王様で殺しても死にそうにない類の人だ。なにせ世界最古の王様ギルガメッシュ(笑)なのだから。

次の角を曲がれば教会だ。

この炎が回っている中で教会は原型を保っている。

僕は教会の扉を蹴破り中へと入る。

 

「!」

 

そこで僕が目にしたのは礼拝堂で体から血を流し倒れている言峰神父の姿だった。

 

「神父!」

 

僕は神父の下へ駆け寄り胸に耳を当て心臓が動いているか確かめる。

……微弱ではあるが生きてる!

僕はすぐさま自分の鞄に常備しているタオルで神父の傷口に巻いて止血する。

 

「神父! 僕です! ……ぐだおです! 神父!」

 

「ごふっ! ……ふっ、誰かと思えばお前か」

 

血を吐き、うっすらと目を開く。

 

「何があったんですか!? それに王様はどこです!?」

 

「……情けないが私たちは負けたのだ。ギルガメッシュは座へ強制返還された……私はあいつを甘く見すぎていた。――――ごふっ!」

 

「喋らないでください! 傷口が開きます!」

 

さっきまいたばかりなのに、もう血でタオルが真っ赤になっている。

 

「新しいタオルと救急箱を持ってきます! 死なないでくださいよ!」

 

僕は新しいタオルと役に立つかもわからないけれど救急箱を取りに行こうと立ち上がる。

 

「待て。ぐだお」

 

立ち上がった僕の腕をとり声をかける神父。

 

「なんですか」

 

僕は神父に向き直る。

 

「残念ながら、私はもう持たん。いくら泥が心臓の代役を果たそうともその元を壊されれば元も子もない……」

 

「一つ聞こう―――――生き残りたいか?」

 

神父は一拍置いて静かに開け問いかける。

 

「もちろんです」

 

即答だった。僕はそう簡単に死ねないし、死にたくない。

 

「そうか……ならば、誠に遺憾だがお前にくれてやろう」

 

そういい終えると神父は腕をまくり上げる。

そのまくり上げられた腕には赤い痣のようなものがいくつもある。

すると、痣が淡い光を帯び始め次第に痣が消えてゆく。

 

「ッッ!」

 

右腕に鋭い痛みが走る。

思わず右腕を抑える。

そして症状を見るために腕をまくり上げるとそこには手から肘にかけて神父と同じような痣があった。

 

「これは……」

 

「なに、ただの餞別だ。お前のこれからの道化っぷりをこれからも地獄から見守るとするか……」

 

そういい終えると神父は糸が切れたように息絶えた。

 

「なんで勝手に死ぬんですか……」

 

僕の頬に再びぬるい涙が伝うのだった。

 

 

 

 

 

ACT04 聖杯戦争

 

 

 

 

 

 

僕は神父の亡骸を抱え教会を出る。

そして、神父があのような亡者にならぬように火葬を行った。

人が焼ける。

タンパク質が燃えた時に発する独特のにおいが鼻を突き抜ける。

形見となってしまったこの幾重にもあがかれている刺青のような赤い痣。

 

「……アヴェンジャー。これからどうする? 僕、また帰る家を無くしちゃったよ」

 

「……そうね」

 

アヴェンジャーと共に神父が燃えるさまを見ている。

ああ。人が死んでいる。

僕は一体何なのだろうか?

■■■■■■は既に死んでいる。

それなら、僕は一体……。

くらい空を見上げる。

空には巨大な円環が浮かんでいる。

改めて思う。

僕の心には穴が開いている。と。

不意に、背後から気配を感じる。

だが、今までの殺気とは違う。

骸骨のような気配でもない。

これは、人間の気配……。

だが、これがもし。言峰神父と王様をやったやつだとすれば……僕で勝てるのか?

僕は気づいていることを悟られぬように再び炎に向き直る。

そして、背後から気配が僕の技が放てる有効射程内に侵入するとともに、先手必勝とばかりにわずかな動作で震脚を行い背後の奴に攻撃を繰り出そうと、僕は拳を突き出す。

が、その拳は相手の顔面間近で止める。

 

「……衛宮?」

 

「……ぐだお?」

 

僕が拳を繰り出した相手は、赤銅色の髪をしている友達の衛宮だった。

 

「衛宮、お前「ぐだお、お前生きてたのか!?」勝手に殺すなよ」

 

僕が死んでいるとは失礼な。

遅れてやってきたのは穂群原のマドンナ遠坂さんだった。

 

「ちょっとー。待ちなさいよ。士郎ー。ってあなた……誰だっけ?」

 

まさか、名前すら憶えてもらってないとは……。

 

「ああ。こいつの名前は―――――」

 

「ぐだおって呼んでくれるといいよ。みんなそう呼んでるから」

 

衛宮の言葉を遮るように僕が遠坂さんに言う。

 

「……そう。ならぐだおくん。綺礼はどこにいるか知っているかしら?」

 

そうか……彼女たちはまだ神父のことを知らないのか。

 

「言峰神父はさっき、僕が火葬を行ったよ……」

 

僕は神父を火葬した炎を目で見ながら言う。

 

「……あのエセ神父がそう簡単にくたばるとは思えないけれど、あなたの言葉を信じるわ。それと、あなたの腕にあるのは。何かしら?」

 

遠坂さんと衛宮の視線が僕の右手に注がれる。

 

「神父からの餞別だよ。これからも僕の道化っぷりを地獄で見てるってさ」

 

そういって僕は右腕をまくり上げ、遠坂さんに見せる。

 

「綺礼があなたに預託令呪を託した……? それなら、あなたは『魔術師』ということになるけれど、それで合ってるかしら?」

 

「正確には家系が、だけどね」

 

肩をすくめる。

 

「立ち話もなんだし、教会へ入る? 道場の方は倒壊しているけれど、礼拝堂の方はまだ無事だから」

 

「そうするわ。いくわよ、士郎」

 

今まで空気だった衛宮に言う遠坂さん。

そして、僕たちは教会へ入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、改めて自己紹介させてもらうわね。遠坂凛よ。この冬木のセカンドオーナーでもあるわ。よろしくね、ぐだおくん」

 

「よろしく」

 

遠坂さんが手を差し出してきたので僕も手を差し出し握手を交わす。

……随分と華奢な腕だ。

それで思い出した。

 

「そういえば遠坂さんはうちの道場の門下生だったね」

 

「え? なんの門下生ですって?」

 

あ、シラを切られた。

 

「なにって、八極拳に決まってるじゃないか。うちの道場の一番弟子みたいな感じで札が下がっていたよ?」

 

「……♯(あんのエセ神父ぅぅうううううううう!)」

 

今、彼女の額に青筋が浮かんでいるのは気のせいだろう。うん。

 

僕たち改めては教会の礼拝堂の硬い椅子に座る。

 

「改めて、あなたに聞きたいことがあるわ。あなた魔術師の家系なのよね?」

 

最初に切り出してきたのは遠坂さんだ。

 

「そうだよ。でも、神父から聞いたことだから、どうせ冗談か何かだろうって思ってさ」

 

「あんのエセ神父ぅぅぅううううううう! 冬木のセカンドオーナー()の報告も一切なしですって!? ふざけるのも大概にしろっての!」

 

ムキー! と言って衛宮に向かってローリングぽこぽこかましてる。

……ああ。これが素の遠坂さんか。

あれー? 誰かに似てる気がする。

 

「はっ! おっほん。と、とりあえず、あなたが魔術師の家系であることは分かったわ」

 

咳払いして話題を戻しても時、すでに遅しだよ。

 

「それなら、次は僕の質問に答えてもらってもいい? 質問攻めは流石にね」

 

「……わかったわ。私たちの答えられる範囲内なら答えるわ」

 

「まず、この冬木で何が起こっているんだ? 似たようなことが10年前にもあった。それと何か関係があるの?」

 

素直に聞きたかった質問。

そのセカンドオーナーというほどだ。何か知っていてもおかしくない。

 

「あなた、10年前の冬木でこの災害を……」

 

「それはどうでもいいことだ。それよりも、この冬木はどうなっているんだ? いきなり光ったと思えば爆風で飛ばされるし、学校倒壊してるし、埋葬した死者が骸骨になって襲ってくるし……本当にどうなってるの?」

 

「あー……そんなに一度に言われても難しいから、順を追って説明するわ。まずは『聖杯戦争』について説明する必要があるわね。まず、聖杯戦争っていうのはね―――――」

 

あらゆる願いを叶えるという万能の願望器、聖杯……。

聖杯に選ばれし七人の魔術師は、過去、未来における伝説を打ち立てた者たち英雄の魂……英霊をサーヴァントとして従え、マスターとして聖杯を手に入れ願いを叶えるという権利を巡り、血で血を洗う闘争のこと。

魔術師たちはその戦いを、『聖杯戦争』と呼ぶ。

 

……少し頭が痛くなってきた。

こんなことが冬木で起こっていたのか。

 

「ええ。私と士郎はその聖杯戦争のマスターとして聖杯戦争に参加していたわ」

 

「……なんでそこ過去形?」

 

「言いたくはないけれど、私たちのサーヴァントが奪われたのよ(・・・・・・)

 

奪われた? サーヴァントって簡単に奪われるものなの?

 

「違うわよ。そう簡単に奪われるものじゃないわ。なにか特別な魔術、それも神代の魔術レベルじゃないと無理よ」

 

「ふーん……。それで、この惨状となにか関係あるの?」

 

「少しは察しなさいよ。これは聖杯戦争で起きた二次災害よ。あなたの言っていた光ったというのは円蔵山にある聖杯に膨大な魔力を無理矢理流し込んで暴走させて起こった爆発よ。そして、聖杯は破壊された余波がこの惨状が生まれたわけ。水風船に限界まで貯めた状態からさらに水を加えれば破裂するのと同じよ。聖杯が破壊されたせいで、私たちは聖杯の魔力のバックアップなしで英霊をこの場に繋ぎ止めることはできない。そこを狙われたのよ。」

 

なんとなく事の顛末が読めてきたよ。

それならば、10年前の災害はその聖杯に膨大な魔力を流し込んだから起こった?

それがそうとしたら、聖杯は既にない状態になる。

ということは10年前の災害はまた別になる……?

 

「ちょっと。いつまで私を空気にさせるつもりよ」

 

不意に胸ポケットからひょっこりと顔を出したアヴェンジャー。

え? このシリアス場面に君を出すわけにはいかないだろう?

 

「ちょっと! それはどういう意味よ!」

 

その言葉のとおりだけど、なにか?

 

「ムキー!」

 

僕に向かってローリングぽこぽこをかますアヴェンジャー。

あ、デジャブ……ちょっと! お願いだから胸ポケットで暴れないで!

 

「……士郎。私少し疲れてるみたい」

 

「空気だった俺に助け船をありがとう」

 

遠坂さんが頭を抱えその隣にいた衛宮が肩を叩いて「大丈夫」って言っている。

夫婦か。お前らは。

 

「あんたねぇ……。あ、ぐだおくんのほうよ。なんで聖杯のバックアップなしで英霊を限界させているわけ?」

 

「嫌だなぁ、遠坂さん。僕がそんなのわかるわけないじゃないか」

 

HAHAHA! と笑いながら言う。

 

「もしかして、ポケットサイズだから消費する魔力も半分以下になるのかしらか……?」

 

顎に手を当てて考え始める遠坂さん。

 

「それは、置いといて。ぐだおくんのサーヴァントの真名はなに?」

 

「え? 真名? ああ、知らないよ」

 

「ふーん、知らないんだ……(威圧)」

 

淑女が鳴らしてはいけないボキボキという音を立てる遠坂さん。

 

「え? 真名って知る必要あるの?」

 

「あるわよ! それによって色んな作戦が練れないでしょうが! それなら、はクラス名? アサシン? それとも、キャスター?」

 

「いや。アヴェンジャーだけど」

 

「…………士郎。私もうだめみたい。普通の聖杯戦争にアヴェンジャーなんて本来は召喚されない筈なのに……」

 

遠坂さんが疲れきった目でこちらを見てくる。

やめてくれ。なんか悲しくなる。

 

「こいつ、そんなに凄かったの?」

 

改めてアヴェンジャーを見る。

 

「……(ドヤァ)」

 

うわぁ、今世紀最強のどや顔をかましてくる。

こんなのが輝かしい功績を打ち立てたのか?

 

「遠坂さん。それはないよー。だって彼女はとんでもないほど我儘で兎レベルの寂しがり屋で―――――あべし!?」

 

あの、アヴェンジャーさん。

胸ポケットから大ジャンプからのライダーキックなんていつの間に覚えたんですかね?

 

「あんたはいつも一言多いのよ!」

 

見事に椅子に着地したアヴェンジャーが僕に指をさして訴える。

あーはいはい。分かったからおとなしくしていようねー。

そういって指でつまむ。

その間にもギャーギャー喚いていたけどそんなのお構いなしで胸ポケットにダイブさせた。

 

「とまぁ、こんな彼女が英霊だと?」

 

最高の決め顔で衛宮と遠坂さんに言う。

 

「士郎。胃薬なんて縁起のいいもの持っているかしら? 物凄く胃がきりきりしてきたの」

 

「大丈夫だ遠坂。俺もあいつを見てると俺って実はまだマシな部類だったんだって思ったよ」

 

あれー? 反応がおかしいな。もう少し食って掛かると思ったんだが。

 

「ぐだお」

 

「どうした。衛宮」

 

さっきまで空気だった君が。

 

「なぁぐだお。今物凄く失礼なこと考えていなかったか?」

 

「気のせいです」

 

「……まぁ、いいけれど。お前、10年前の災害を受けたのか?」

 

ピタ。

 

自分の顔を無表情になるのがわかった。

 

「それを聞いてどうするんだ? 衛宮。同情でもするの?」

 

「いや……それは」

 

目を逸らす衛宮。

 

「それなら、聞かないでくれ。僕もあまり思い出したくない」

 

本当に。思い出したくないんだ。

 

「ぐだおくん。士郎もあなたと境遇を同じにした10年前の災害にあった一人よ」

 

「ちょ、遠坂……」

 

……衛宮?

あの災害の生き残り?

 

「……なぁ、衛宮」

 

重い口を開く。

 

「お前、自分が歪んでいるって思うときはあるか?」

 

「……歪んでいないと言ったら嘘になる。俺は『正義の味方』になることが目標だ。それは他者を助けるということだけだ。基本的に自分は助かっていない。でも、誰かを助けたいって思う気持ちは間違いじゃないと思うんだ」

 

拳を握り力説する衛宮。

 

「なんだ……お前はもう『答え』を得ているのか」

 

二人に築かれないように小さくつぶやく。

衛宮はすでに自分の『歪み』に対する答えを得ている。

でも、俺は……!

僕は椅子から立ち上がり叫ぶ。

 

「二人とも! 今すぐに教会から出るんだ!」

 

「何を言ってるの? あ――――――」

 

「つべこべ言わずに早く出るんだ! 死にたいのか!」

 

僕の気迫に押されたのか遠坂さんと衛宮は急いで教会から出る。

 

「……壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

ドガァアアアン!

 

爆炎が教会を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本物と偽物、両者が交わるとき

 

運命は動き出す




今回は説明会でした。
しっかりと説明できていればいいんですが……すごく心配です。
おかしな描写などがありましたら、ご報告をお願いします。

fate/goの無人島開拓に没頭してるあまりこちらが疎かになっていた……。
それとやはり無欲のなせる技は恐ろしいですね。
私「調子こいて呼札で回してやる」
友人「出るわけないだろ」
私「別にほしい奴はいない……でもボックスを輝かせたい……ポチ(単発)」
アン「はい、マスター! この水着いかがです?」
メア「……視線がいやらしいよ、マスター。ふん」
私「水着邪ンヌ連れてきなさい」
友人「これが無欲のなせる業か……」

残暑厳しくなりので皆さん、体調を崩さないように気を付けてくださいね←先日体調を崩して大変な目にあいました

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