ピピピピ!
目覚ましのアラームが私の耳に届く。
この小さい体にこのアラーム音はいささか大きすぎる。
だから自然と目が覚めてしまう。
私は目もこすりながらデジタル時計を確認すると時刻は6:30だ。
こいつは、いつもこの時間にセットしてるのに起きた試が一度もない。
なんでセットした本人が起きずに、私が起きないといけないのよ。
まったく……。
「うーん……あと5分……」
何をふざけた寝言を言ってるのかしら。
このスヤスヤと安心したこの寝顔。
なにか無性に腹が立つわね。
こんな寝顔を見ると安眠の邪魔したくなるじゃない。
私は壁に張り付き窓辺をめざしてそのまま剣を突き刺してクライミングしていく。
ふぅ、ふぅ……さすがに窓辺までは遠いわね。
どれくらい上ったかしら?
真下を見ると、変わらずにスヤスヤと天井を見つめて寝ている。
まったく。私が起こさないと起きないこいつが悪いのになんで私が朝からクライミングしないといけないのかしら。
「……アヴェンジャー」
「え? なに?」
条件反射で真下を見る。
その時、運悪く手を滑らせてしまう。
「あ」
私の体は自然の摂理によって落下していく。
結果……。
「ぎゃふん!」
あいつの眉間にお尻から着地……着肌かしら?
そのままお尻をさする。
あー、お尻がひりひりするわ。
「いたた……あれ? アヴェンジャー? 今日は僕の眉間になにを……ずいぶん可愛いおしr―――――」
「うっさい!」
反射的に剣ではなく炎でこいつの目をつぶす。
「ぎゃああああああ! 目が! 目がぁあああああ!」
ほんとに、こいつにはデリカシーというものがあるのかしら。
でも、目を覆い飛び上がる姿は素直に笑えたわ。
ACT02 狂いはじめ
まさか、朝から目を焼かれる羽目になるとは思ってもいなかった。
現在の時刻は朝の7:00。アヴェンジャーの今までにない刺激的な
着替えを済ませアヴェンジャーを胸ポケットに入れてから、ダイニングへ向かう。とそこには神父が昨日の残りであろう泰山麻婆を食べていた。
よく朝からそんなものを食べられますね……この人の胃袋はどうかしているよ。
僕に気が付いたのか手に持っていたレンゲを一旦おく。
「おはよう。今日の朝は早いな。何かおかしなものでも食べたのか?」
「ふっ。そうか……。それはそうと昨日の麻婆が残っているからお前も食べr――――――」
あ、そうだ! 王様まだ起きてないですよね!?
僕が起こしてきます!
「待て、ギルガメッシュは――――――」
待てと言われて待ちますか! 止まった瞬間に麻婆を朝から食べないといけない羽目になる。
それだけは何としても回避しなければ!
僕はダッシュでダイニングを立ち去り王様の部屋を向かう。
「やれやれ、今のギルガメッシュは賢者モードに入ってるから無理に起こさなくてもいいと言おうとしたのだが……まぁ、それはそれで面白そうだ」
神父の声が聞こえたがどうせ僕の朝飯は麻婆みたいなことを言ったんだろう。
『ぎるがめっしゅ』というプレートが下がった部屋……王様の部屋の前に到着。
「王様ー! 朝ですよー! 朝飯ですよー! 起きてくださーい」
扉越しに扉を叩きながら王様を呼ぶ。
本当に起きてください。朝から麻婆と勘弁してください!
「別に朝から金ぴかを呼ばなくてもいいでしょう。麻婆くらい食べきりなさいよ。仮にも男でしょ?」
アヴェンジャーが胸ポケットから顔を出して言うが、君もそんなことを言える立場じゃないだろう?
そうしたらまた、あの
「………(ガタガタガタ)」
嫌なことを思い出したといわんばかりに、胸ポケットの中に入りガタガタと震えはじめる。
『……朝からうるさいぞ、雑種。我は今とてつもなく無気力なのだ……。ああ、セイバーをもう一度この手で……くぅ!』
やっと返事が返ってきたと思ったら、何をわけのわからないことを言ってるんですか!
こっちは朝から命かけてるんですから!
『セイバー……あの麗しく華奢なあの肢体……今一度、我の手で―――――――』
ダメだ。朝から変なモードに入っている。
こうなれば実力行使だ。
「王様、ご無礼を失礼します!」
扉を強引に開け部屋を確認する。
「「」」
僕とアヴェンジャーの目が点になった。
僕たちの目に映ったのは、アヴェンジャーと似たような顔の人物の写真が部屋中に散乱しており、部屋の中心で悟りを開いた御仏のように座禅を組んで顔を伏せている王様の姿があった。
しかも全裸で。大事なことだからもう一度言う。しかも、全 裸で 。
昨夜、一体何があった……。
僕たちがこの光景に唖然としていると王様が僕たちの存在に気付いたのか「はっ!」と言いブリキのように顔を上げる。
「見たな?」
さっきまで死んでいた王様の目に光が戻る。
「な、なんのことでしょう……」
思わず身を引く。
「見たな?」
瞬間的に開かれた黄金の波紋が部屋中に散乱していた写真を回収する。
「ですから、なに――――」
一歩後ずさる。
「見 た な !」
再び開かれた黄金の波紋から10や20ではきかない数の剣や槍が一斉に射出される。
「す、すいませんでしたぁぁああああああああ!」
僕に平和な朝というのは、いつ訪れるのだろうか?
* * *
朝からあのような騒動があるとは……。
結局。僕は朝からあの麻婆を食べる羽目になり体から汗が吹き出し、口から火をはき(比喩にあらず)おなかの中でがずんがずんが麻婆が暴れている。
そして、自転車に乗るほどの元気があるわけでもなく歩いて学校へ向かうことにした。
時刻にして朝8:30。このままいけば普通に間に合うが、いかんせん僕のお腹で暴れている麻婆は衰えるどころかむしろ活性化している。
神父ェ……あの麻婆に何を入れた。
え? アヴェンジャーはどうしたかって?
アヴェンジャーはね、いつもは胸ポケットに入ってるのに今日に限っては頭にのっているんだよ。
しかも、理由を聞いても答えてくれない。
……ねぇアヴェンジャー。
「何よ。私は忙しいのよ」
やっと返事が返ってきたっていた!
なんで僕の髪をチマチマと抜いてるの!?
いじめ!? これは新しい僕へのいじめか!?
「あんた、白髪が多いわよ。髪質はいいんだから手入れぐらいはしっかりなさい」
あ、はい。
結局。学校に着くまで僕はただひたすらアヴェンジャーに白髪を抜かれ続けた。
* * *
いつもは遅刻ギリギリに来てるから廊下は常に走るものだと考えていたけれど、今はHRまで時間はまだあるからゆっくり教室へ向かう。
あー、なんだかとても新鮮だ。
いつもは誰もいない廊下を走っているのに、今は生徒たちが談笑したりしてるよ。
廊下ってこんなにも賑やかしいモノなんだね。
因みにアヴェンジャーはちゃんと僕の胸ポケットにいるよ。
流石に学校で僕の頭に堂々と乗せるわけにはいけないからね。
……さて。僕の教室に着いたわけだが、みんなどうしたの。
そんな信じられない! みたいな顔をして。
「「「「ぐだおが遅刻してないだと!?」」」」
「悪い?」
首を傾げて聞いてみる。
それと、僕の名前は……まぁ、いつか語ることにして
何故かって? それは。まぁ……自分で言うのもあれだけど、ぐだぐだしてるからだよ。
「「「「今日は何か起こるぞ!」」」」
そこまで言うか。
『あの遅刻常習犯が……こんな時間に?』
『いつものタイガーとの第47回遅刻の擦り付け合い合戦はないの!?』
『今日はきっと何かが起こるぞ……』
なんでさ。
僕は自分の席に着き隣で鞄から荷物を出している衛宮に話しかける。
「えーみーやー」
「ん? どうしたんだ、ぐだお……朝から大変だったんだな」
どうやら僕の目だけで今日の朝のことを察したらしい。
無駄な観察眼だな。うん。
すると衛宮は強引に話題を変える。
「そ、そうだ。今日は今が旬の白魚をたくさんもらってさ、その中華風にアレンジしたものがあるんd――――――」
「中華はもうたくさんです」
昨夜の泰山麻婆。
今朝はその残りの泰山麻婆。
あげくに中華風にアレンジしただと?
「え? でも昨日は旬の食材でうまいものがいいって……」
「それでもしばらく中華は勘弁してください」
「そこまで言うならわかったよ。それなら明日はロールキャベツでいいか? 昨日、商店街で買い物してたらキャベツが安売りしててさ、昨日の夕飯にもキャベツを使ったんだけど少し残ってるからそれでいいか?」
「中華以外なら喜んで」
「あはは……」
衛宮の苦笑いが痛い。
それと、僕の胃袋にいる麻婆はまだ元気です。
* * *
今日はなぜか非常にツイていない。
ツイてないのはいつものことだが今日は非常にツイてない。
普通に廊下を歩いていると誰かと肩がぶつかり、その肩がぶつかった人間というよりも海藻類に近い奴はわーわーと喚いた挙句よくわからないことを言ったあとに「おぼえてろよ!」とか言ってどこかに行った。
……今日の夜ごはんの味噌汁は具はワカメと豆腐かな。
僕が密かに使用してる秘密の場所こと学校の屋上で購買で買ったパンを食べていると、いきなりタイガーが表れた。
そのあと? 決まってるじゃないか。散々言い争って痛み分けということにしたの。
移動授業の際に階段を衛宮と談笑しながら登っていると遠坂さんと遭遇して僕に渡した紙を渡してくれたか? って聞かれたから、渡してない。って答えるとね。
ギリッ! って歯を鳴らしたんだよ?
あの才色兼備のミス穂群原がだよ?
きっと麻婆のせいだと信じたいよ。
……今日の1日も長かった。
気が付けば辺りはオレンジ色に染まり、ほかの生徒たちは帰っていく。
なんだか濃い1日だったよ。
いろんな意味で。
「ふん。あんたの幸運ランク。きっと一番低いEね」
いつの間にか僕の胸ポケットから顔を出したアヴェンジャーが邪悪な笑みを浮かべ僕に言う。
うん。それに関しては間違いないね。
あ、そうだ。じゃあ、アヴェンジャーの幸運ランクはどれくらいなの?
「」
今、墓穴掘ったって顔してるよ。
しばらくフリーズした後そっぽを向きながら
「き、決まってるじゃない。Aよ。A! あなたの最低ランクのEとは違うんだから」
そうかーAなのかー。
「そうよ! 最高の幸運の持ち主よ」
幸運かー。でもその幸運の持ち主といるのに僕にはちっともいいことがないなー。
朝から眉間にヒップドロップを食らうし、目を焼かれるし。
大変だったなー。
「うっ……」
今日の朝のことを掘り返すと急に顔を真っ赤にして僕の胸ポケットに隠れた。
「はぁー……今日も長かったなぁー」
深くため息をつき玄関で靴を変え、グランドに差し掛かった時だ。
世界が炎に包まれた。
* * *
カチコチカチコチ……
運命の歯車は止まらない。
お気に入り登録数45!?
しかも評価してくださった方が2人も!?
ありがとうございます。これからも頑張っていきます!
そして明日はついにFgoにおける夏がやってくる。
海だ! 夏だ! 水着だぁ!
それにしても邪ンヌがないとはどういうことだ……解せぬ。
どこかおかしい描写、言動などがありましたらご報告をお願いします。