side禊
俺は、会議が終わり、咲のいる部屋に行き、今までの事を全て話した。咲は、俺の事を優しく受け止めてくれた。そうしていると、曹操が俺を訪ねてきた。
「禊…君と同じ時期に仲間になった、いわば、同僚の紹介をしたい。ついて来てくれるか?」
そう言う曹操に、俺は頷く。その後、曹操にある部屋に連れてかれた。その部屋に入ると、銀髪の男と猿面の男、そして、前に出会った、着物を着た痴女がいた。
「彼の名は、ヴァーリ。彼らは、独自のチームとして、これから活動していく」
曹操が、そう紹介をすると、ヴァーリと呼ばれた男が、俺に手を差し出す。
「ヴァーリ・ルシファーだ。よろしく頼む」
ルシファー…その名を聞いた瞬間、俺からドス黒い殺気が漏れ出す。
「テメェ…俺の前で悪魔と宣言するとか…随分余裕だな…」
俺が、ヴァーリを睨みながらそう言うと、ヴァーリは、ニヤリと笑って答える。
「君とも是非本気で戦ってみたいしな…それに、俺は悪魔である父と祖父は好きじゃないんだ。この部分だけは、君と似ているかもしれない…」
そう言うヴァーリに、俺は一つ疑問に思ったことがあり、呟く。
「悪魔の父?という事は…お前まさか!」
「ご名答…俺は、悪魔の父と人間の母の間で産まれた、ハーフなんだ」
俺は、それを聞いて驚く。まさか、悪魔が人間を愛するとは思っても見なかったからだ。転生悪魔ならまだ分かるが、ルシファー、魔王の血族が、人間を愛するなど、信じられないことだ。
「まぁ、俺の話はここまでにして、仲間の紹介をしようか…今二人だけしかいないが、残りは、また別の機会に…美猴、黒歌」
ヴァーリがそう言うと、後ろにいた二人が前に出てくる。
「俺の名は美猴…孫悟空の末裔だ…よろしくな…禊…」
猿…美猴がそう言うと、美猴に続いて、女も言い始める。
「私の名前は、黒歌…転生悪魔にして、猫又ニャン…久しぶりね…」
黒歌がそう言うと、美猴は驚きの声を上げる。
「おいおい…お前さんたち、知り合いなのか?」
美猴がそう言うと、黒歌が頷く。
「そうニャン…昔…追っ手の悪魔に犯されそうな時に、颯爽と助けてくれた王子様ニャン」
そうふざけて言う黒歌に、俺はついツッコんでしまう。
「捏造するな…俺は、うるさいコウモリを消しただけだ…」
俺がそう言うと、美猴がニヤニヤとする。
「へぇ〜」
美猴が、ニヤニヤしながらそう言う。俺は、それを無視し、話を続ける。
「俺の名は、四条禊。嫌いなものは悪魔、好きなものは、悪魔の絶望した時の顔だ。ヴァーリと黒歌は気をつけてくれ…悪魔を見ると、ついつい弄り壊したくなる…」
俺がそう言うと、二人は各々反応する。
「わかった…気をつけよう…」
「気をつけるニャン…あぁでも、壊すなら別の意味で壊して欲しいにゃん!」
黒歌は、自分の身体を抱きしめながら言う。
この痴女がぁ!!!
俺はそう心の中で叫ぶ。すると、曹操が、ある提案をする。
「そうだ…禊に頼みたいことがあってな…」
「なんだよ?」
曹操の言う頼みが気になり、俺はそう問いかける。
「いや…近々、3大勢力が、とある神話体系と和平を組むらしくてな、我々の組織のように、それに反対な奴がいる。そいつを、会談会場である冥界まで、連れてって欲しいんだ」
曹操がそう言うと、黒歌が意見を述べる。
「それ…私もついてくニャン…私も冥界に用事があるし、そのついでに、仕事もするニャン」
黒歌の提案に、曹操は了承する。
「良いだろう…それじゃあ、よろしく頼む…」
曹操は、そう言うと、部屋から出て行く。俺も、その後に続き、出て行行った。
「咲〜」
俺は、自分達の部屋に戻り、咲に話しかける。
「なんですか?兄さん」
そう聞いてくる咲に、俺は答える。
「少し用事があるから出てくる。メディア達には、お前が伝えておいてくれ」
俺は、そう言い残し、アジトを後にした。
side out
side彩乃
私は、あの後、自分の意思をサーゼクス様に伝えた。すると、とあるカードを渡された。
『このカードを君に返そう…このカードだけ、誰にも反応しなかったのだ。まるで、使われる事を拒否するように…もしかしたら、君ならと思ってね…彼と戦うなら、このカードは必須だろう。だから…』
私は、真名が黒く塗り潰されたカードを見る。
「キャスター…禊が使った感じを見ると、これは、有名な偉人の力を使うものなのかな?」
私は、そう呟きながら、とある場所に向かっていた。暫く歩くと、そこは、お墓だった。
「お父さん…お母さん…久しぶりです……今日…禊に会ったんだよ…私達が殺された事を恨んでいた。折角復讐をやめたのに…また……でも…私が止める。そして…この想いを…いつか禊に…」
私がそう誓っていると、後ろから足音が聞こえる。そして、私が後ろを向くと、驚くべき人が立っていた。
「禊!!!」
「姉さん!!!」
それは、私の弟で、テロリストの禊だった。
side out
side禊
咲に出かけることを伝え、俺は今、親父とお袋の墓に向かっていた。
「あ〜あ、姉さんは本当に正しいよ…何処までも真っ直ぐで…本当は一緒に来て欲しかったけど、それが姉さんのいい所だもんね…」
俺がそう呟きながら歩く。すると、親父達の墓の目の前に、ある女性が立っていた。その女性は、俺に気づいたのか、後ろに振り向く。その女性は、なんと、姉さんだった。
「禊!!!」
姉さんは、驚きのあまり俺の名を叫ぶ。それはそうだ。仮にも俺はテロリスト、呑気に墓参りに来るとは、誰も思わないだろう。
「姉さん…」
俺は、そう呟くと、姉さんの隣に立つ。
「大丈夫…姉さんには、何もしないよ…俺が殺すのは、腐った思想の悪魔や、堕天使だけだ。まぁ、邪魔する奴もだけどね…でも、今日は親父に、ある誓いをするために来た。事は起こさないよ…」
俺はそう姉さんに言うと、親父の前で宣言する。
「親父…お袋…俺は誓う…思い上がった悪魔共に正しい絶望を与える。奴らの泣き叫ぶ顔を…俺が親父達に見せてやるよ…だから待ってて、親父たちの無念は…俺が晴らす!!!」
俺はそう言うと、姉さんの顔を再び見る。
「どうしても考え直すつもりは無いの?」
俺はそう言う姉さんに答える。
「確かに……復讐は正しい事では無いのかもしれない」
俺がそう言うと、姉さんは叫ぶ。
「なら!!!」
俺は、そんな姉さんの言葉を遮る。
「でも!!!俺は許せない…知ってるか?俺の妹の咲は…俺が悪魔から助けた時…悪魔達に犯され…家族の記憶すら失っていた!!!それだけの事を奴らは俺の家族にしたんだ!!!!!!それに、姉さんだってそうだ…自分達で殺しておいて、それを助ける?悪魔にして?どうせ…姉さんの持ってるものが欲しかっただけだろ!!!!!!」
俺がそう叫ぶと、姉さんは黙ってしまう。
「姉さん…俺たちさ……今まで一度も…姉弟喧嘩をした事なかったよね…だから…これが最初で最後の姉弟喧嘩だ!!!姉さん達に負けたら…そうだな…あの赤龍帝…あいつはいつか強くなる…恐らく、俺の前に立ちはだかるのは、あの男だろう。だから、俺があいつに負ければ…諦めてやるよ…でも、タダではやられないよ…俺は、悪魔共の社会に爪痕を残す。一生消えない絶望を……それじゃあね…姉さん……悪魔としてだけど…姉さんが生きてて…俺…嬉しかったよ」
俺はそう笑顔で言うと、転移の魔術で、アジトまで転移した。
side out
side彩乃
禊の叫びは…確かに理解できるものだった。でも、憎しみは憎しみでは断ち切れない。それは、ただの負の連鎖…
「そうだね…確かに初めての姉弟喧嘩だ…姉さんを怒らせると怖いってことを…しっかり教えてあげるからね…禊…」
私は、禊が消えた場所を眺めがら、小さくそう宣言した。
side out