シユウになってしまった様だ。   作:浅漬け

15 / 17
リハビリ投稿故に内容は無きに等しくなってしまった事への申し訳なさで一杯です。
でも体が書き方を忘れるよりは良いんだ、と言い訳しちゃう。皆様が下さった感想の嬉しさを噛み締めながら続けなきゃ(使命感)


第13話 師匠、悩む

 きょくとうちほーと言えそうなビル群の間から、俺はいつも通り贖罪の街に朝日が昇るのをぼけーっと見ている。……いや、いつも通りじゃないか。俺の横で眩しそうに目を細めている白い女の子がいるんだもの。うん、ちょっと言い訳をさせてね。

 

 昨日のあの出来事の後、俺は彼女をあそこに放っておく事もできず、そのまま寝床に抱えて戻ってきた。勿論危ないから、という理由もあるが……最早俺が把握できない程非常に事態はややこしい方向へと向かっているかもしれないからでもある。訳が分からない? いやね、実はそれにはシオの素性が大いに関わっているのですよ。

 

 ペイラー・榊の提唱するオラクル細胞の学習の果ての1つの答え。それがこの人間の少女の姿をした()()()()、シオである。いや、正確に言えばこの時点でシオという名前は彼女には存在しないのだが……まぁ彼女と一々言うのもどこか違う気がするので一足先にこの名前を借りるとしよう。ごめんな青フードくん。

 

 さて、さっき言った通り彼女は人間ではない。俺と同じアラガミだ。しかしそんじょそこらのアラガミとは訳が違う。彼女はゴッドイーターという物語の根幹を為すキーパーソンであり、同時に世界滅亡のトリガーを握る存在でもある。

 星を喰らうアラガミ。互いの喰い合いの果てに出現する究極の個、【ノヴァ】。いつかそれが現れた時の制御機構である特異点。これこそがシオの正体である。ややこしいという人は取り敢えずなんか俺が霞む位の凄い子と思っていてくれればいい。

 

 さて、ここからが俺がシオを確保しておかなければならない理由となる。これから物語の流れとして蒼窮の月という出来事が起こるというのは確定なのだが、実はその時にこの子、シオが居なければ詰んでしまうのである。俺が死ぬという意味ではない。この世界のお先が真っ暗、というレベルの詰みなのだ。

 

 詳しく説明しよう。まず前提として、蒼窮の月とはフェンリルが第一部隊に下した任務であり――ある事を知られた現極東支部支部長、ヨハネス・フォン・シックザールが雨宮リンドウを抹殺せんが為に利用する任務でもある。つまりあれだ、「騙して悪いが」というやつ。

 前にピターだのマータだのが来るから本当にヤバイと言ったが、全部こいつがリンドウさんを殺す為に差し向けた奴等である。この外道めと叫ぶ前についどうやったのと尋ねたくなるね。餌付けでもしていたのだろうか?

 

 それで結局、まことに業腹だがその企みは見事に殆ど成功する。彼を上手いこと孤立させた上で、彼の神機との相性が悪いマータと戦わせ消耗させた所に駄目押しのピター投入である。そりゃ死ぬわ。

 ズタボロのままピターと戦うリンドウさん。如何にウロヴォロスを単騎で撃破できる程の実力者といえど、遂に限界が訪れる。神機を犠牲にした捨て身の攻撃で右腕の腕輪を損傷、偏食因子の制御を失い、投与していたオラクル細胞が自分を食べ始めたのである。当然こうなっては打つ手もない。ゴッドイーターとは言わば人工的に制御されたアラガミなので、暴走すれば完全にアラガミと成り果てるだけ……だったのだが、そこで登場するのがシオである。

 

 偶然なのかはたまた運命なのか、たまたまそこを通りがかっていた彼女はピターを何かテレパス的なもので退け、右腕を浸食されて苦しんでいるリンドウさんと接触。特異点の力で一時的にオラクル細胞を制御し、命を救ったのだ。もっとも、副作用なのか暫くの間は昏々と眠ったままになっていたが。

 かくしてまこと奇妙なこの出来事によって彼は助かり、これが後々色々と影響を及ぼしてくる。それが本当に世界の存続に支障が出てくるレベルなのだから、知ってる身としては、というかこの世界に生きている身としては今回の事が上手くいって欲しいのである。

 

 偶然に任せるまでもなくシオがここに居るのだし、そもそも俺の存在で筋書きが変わっているかもしれない以上、俺がこの子を確保しておいた方が好都合なのだ。

 これがシオを連れて帰ってきた理由である。如何にこの子がややこしい事情を抱えているか分かって貰えただろうか。いやね、正直こんな事になるとは思ってもみなかった。でもこうする位しか思い付かないもの。

 

 しかしこれは自分の都合であり、本来の筋書から大きく外れるだけでなく、彼女の都合を無視したものだ。勝手な事をしたことには変わりないのだが――あれ、シオがいない? なんでさ。

 

 慌てて周りを見渡すが、影も形も見当たらない。屋上には隠れる様な場所は無い。風化してしまったのか殆ど何も無いし、あるものと言えば精々俺がちまちま集めていたガラクタ(おやつ)が積まれている位だし……まさか。

 

 そんなイヤーな予感がした次の瞬間、ドシン! と派手な落下音が響いた。現実を見ることを拒否する体を抑えつつ下を覗いてみればあら不思議。シオちゃんが朝日に向かって走り出していたとさ。やっべぇ。

 

 俺は自由に走っていく彼女を追い掛けんと、目映い光の中に飛び出した。さぁ行こうぜ、と何処からか聞こえる様な気がするメロディと共に。

 

 意志疎通の方法、考えておかなきゃなぁ……。

 




プロットも固まったし、次は一週間以内には投稿できる……筈。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。