八幡、誕生日おめでとう。
という事で、初めて書いた、誕生日SS。
・・・後悔はしていません。
それではご覧ください。
朝、鳥の囀りと共に、カーテンの隙間から日差しが差し込み、長い睡眠から目を覚ました。ベッドから起き上がると、そこにはいつもの変わらない、自分の部屋の光景。
「ふあぁぁ」
小さなあくびを漏らし、ベッドから離れようと動いたら
「う、うぅーん」
「はあ、またか」
案の定、俺の隣に双子の妹である、
「おーい、起きろ八菜」
「うぅーん。あ、八兄ちゃん。おはよう」
そう言うなり、いきなり抱き着いてきて、頬ずりをしてきた。
「おう、おはよう。ちょっと一旦離れようか」
「ええー、もうちょっと!」
「はぁ、今はこれで我慢してくれ」
俺が頭を撫でると、うにゃぁ、と猫のようにおとなしくなった。これがまた可愛すぎるから、何にも言えないんだよなぁ・・。
台所に行くと、すでにマミーが朝食を作り終えていた。
「あ、おはよう。・・八菜、またあんた八幡のベッドに忍び込んだね」
俺と八菜はそれぞれ別の部屋がある。だけど、八菜は毎回俺のベッドに入り、俺を抱き枕にしながら、寝ているのだ
「ぶー、いいじゃん!」
「全く、もう高校生だっていうのに。兄離れする気は?」
「死んでもしない」
嬉しいけど、それ重いぞ、八菜。
「まぁ、いいじゃねえか。俺も嫌じゃないし、ていうかむしろ嬉しいくらいだ」
「八兄ちゃん!♪」
俺の一緒に寝れて嬉しいという発言に、八菜は再び興奮し、抱き着いてきた。
「はぁ、あんたたちの兄妹愛はとんでもないわね。私はもう慣れたからいいけど、外では控えなさいよ」
「はいよ」
現在、俺と八菜が通っている総武高校は、夏休み。
「じゃあ、お母さんは仕事があるから、片付けとかお願いね」
「はーい。行ってらっしゃい」
母ちゃんを見送り、再び朝食を頬張る俺と八菜。
「八兄ちゃん、あーん」
「いや、俺も同じの食ってるから。自分で食えるから」
「ちょっとだけ!」
「わ、分かったよ」
八菜が突き出してきたパンを、パクッと口に入れた。うん、同じ味。
「それ、一回私が口の中に入れてるから」
「ぶっ!おい!」
「冗談♪」
クッソォ、このブラコン妹が・・・。
朝食を食べ終えた俺は、再び自分の部屋に戻り、布団を被りながら、携帯小説を読み始めた。今は夏で布団被るとかとんでもないと思うが、部屋のクーラーがガンガンに効いてるから、寧ろちょうどいいのだ。
「八兄ちゃん、相手して~。つまんない」
そう言って、布団の中に潜り込み、顔を近づけてきた八菜。
「あんまりくっつくなよ。暑いから」
「分かった♪」
そうは言ったが全く離れる素振りも見せず、寧ろ余計体をべったりとくっつけてきた。こういう時は大抵何言っても聞かないのが八菜の特徴だ。
「八兄ちゃ~ん」
そして、かまってちゃんオーラ全開の甘い声を出したら、もうお手上げ状態。だからこうするのだ。
「はいはい。後で存分に可愛がってやるから、大人しくしとけ」
八菜の頭を胸板にうずくめ、耳元でこうイケボで囁くと、基本顔を赤くして、だんまりする。
ちなみに手段はこれしか残されていません。今まで幾度となく、数多の方法を駆使してきたが、唯一残った方法がこれだ。
まぁ、俺も幸せだからいいんだけどね。
◆
「昼は何が食いたいんだ?」
「パスタ!♪」
「分かった。んじゃ、材料買うために、スーパーに行くぞ」
「うん♪」
スーパーで買い物を済ませ、部屋着に着替え、昼食の準備をする。買い物では、特に何も起こらなかったので割愛。
「できたぞー」
俺は慣れた手つきで、食欲が湧くいい匂いと赤いソースが綺麗な、パスタを仕上げた。母ちゃんは昼から、仕事なのでたまに俺が昼食を作るんだ。
「いただきまーす♪」
八菜は満面の笑みを浮かべ、俺の作ったパスタを頬張っている。うん、作った本人からしたら、これが至福のひと時だ。
「八兄ちゃんは食べないの?」
「ああ、あんまり腹が減って無くてな」
「でも少しは食べた方がいいんじゃない?・・はい、八兄ちゃん、口開けて」
「ちょっと待て、そのパスタを口に含んで、俺に口を開けさせて、何する気だ?」
「口移し」
「おい、ダメだそれは。普通にフォークをくれ」
「ぶー」
何で不満そうなの?そんなに兄と口移ししたかったの?う~ん、ならするのも吝かではなかったな。いやいやそんなわけあるか!普通にダメに決まっている。
昼食を終え、暇な俺らはソファに座って、ボーっとしていた。
「暇だね」
「そうだな。なんもすることないし」
本だって全部読破してしまったし、ゲームだって八菜とやりこんで、全部クリアしてしまった。暇を潰せるものは何もない。
「寝るか?」
「え?・・・そっか。ついに兄妹の域を超えるんだね。分かったよ、八兄ちゃんの覚悟。しっかり受け止めるよ」
八菜は顔を赤くしながら瞳を潤せ、変な独り言を始めた。そして、タレ目になった八菜が俺に迫ってきた。
「おい待て。なにを考えてるか大体予想つくが俺はそんなこと思ってない。だから、一旦首に回した腕を離そうか」
「照れなくてもいいよ。私も八兄ちゃんとつなが」
「はいそれ以上言うな。それ以上言うとアウト。兄妹だから無理に決まってる。後、普通に寝るという意味だ」
「ぶー」
何で不満げなんだよ・・・。
することもないし、結局暇をつぶすため、寝ることにした。八菜も隣で添い寝。
「はぁ、こんなに早く寝て、夜寝れなくなったらどうしよう・・・」
「大丈夫だよ♪お休み~」
八菜は俺の腕に絡みつき、そのまま眠ってしまった。起きたとき腕痺れてないといいなぁ。
「それにしても、八菜の寝顔は格段に可愛いなあ。ずっと愛でてたい」
俺は八菜の頭に手を乗せながら、そのまま眠った。
「か、か、可愛い///八兄ちゃんが、あんな優しい笑顔で、愛でたいなんて//うぅ~」
――――5時間後
「あんたたち、いつまで寝てるの!もう夜よ!起きなさい」
「んぅ~~~、あれ?お母さん?」
「ほら、晩御飯できたから、八幡を起こして下りてきなさい」
「はーい」
母親の大きい声で半分意識がある私は、隣で寝ている、八兄ちゃんを起こそうとした。
しかし、あまりにも気持ちよく寝ているため、起こすのが躊躇われてしまう。
「ああ、やっぱり八兄ちゃんの寝顔は見飽きないなぁ。可愛い」
そう言って私は、八兄ちゃんの頬をツンツンと、指先で突いた。
さて、そろそろ起こさないと母親が怖いので起こします。
「起きて~」
「・・・・・・」
「おーきーてー」
「・・・・・・」
身体を揺らしても、一向に目を覚まさない兄。
「う~ん・・」
お?起きたかな?・・と思ったら、八兄ちゃんが寝ぼけたのか、私の腕を掴んで自分の上に被せる形で引かれてしまった。現在、私はうつぶせ状態、そしてその下には愛しの兄が。・・・・最高♪
うん。私は何も悪くない♪これは八兄ちゃんがやったこと♪そう、これは八兄ちゃんのせいだ♪
顔をあげると、目の前に八兄ちゃんの顔があり、私の目に吸いつくもの。それは、男子なのに、健康な潤った唇。
・・・いやいやいや、何を考えてるんだ私!寝込みを襲うなんてダメ!八兄ちゃんにだって嫌われるかもしれないのに。・・・で、でも、顔が勝手に、八兄ちゃんの顔に近づいていく。
「うん、なんか、やけに体が重い・・・・ッ!なっ!」
目が覚め、顔をあげると、そこにはもうゼロ距離と言っていいほど近く、八菜の顔が目の前にあった。鼻と鼻の先がくっついている。
「お、おい八菜!何してんだ?」
「え?・・あっ、起きちゃった!」
起きちゃった?ちゃったって何?お前は一体何をしようと思っていたんだ・・・。
「お、お母さんが晩御飯できたから起きて、だって。行こう!」
八菜は凄く焦った様子で、俺の手を取り、リビングへと連れた。
「あ、そうそう。渡すものがあったんだ」
晩飯を食べ終え、しばらくしたら、母ちゃんがカバンから何かを取り出した。それは、見た目はリボンが装飾された一枚の封筒だった。
「明日誕生日でしょ?だからプレゼント」
確かに明日は8月8日。俺と八菜の誕生日だ。でも、渡されたのは一枚。これには何か意図があるのか?
「温泉旅行のペアチケットよ。2人で行ってきなさい。本当は当日に渡したかったんだけど・・・。仕事が忙しくて。でも、ケーキは買って帰るから」
「ううん。ありがとうお母さん!」
「ありがとな」
「私はもう寝るわね」
ちょっと照れくさい様子の母ちゃんは、頬を人差し指で掻きながら、そそくさと自分の寝室へ入っていった。
◆
「そろそろだな」
「そうだね」
時計を見ると、後ちょっとで8月8日の0時になる。
そして、その時がやってきた。
「八菜、誕生日おめでとう」
「八兄ちゃん、誕生日おめでとう」
互いに正面切って、祝福の言葉を送り、それぞれ用意したプレゼントを渡す。
「おお、綺麗」
俺が買ったのは、ネックレスだ。
「お、いいなこれ」
そして、俺がもらったのは、腕時計だ。
「ありがとう、八兄ちゃん♪」
「俺もありがとな。大事にする」
俺達は早速、身に着けてみた。
「どうかな?」
「おう。世界一可愛いぞ」
「ありがとう。八兄ちゃんも、世界一カッコいいよ!」
「サンキュー」
はぁ、妹にブラコンと言いながら、大概俺もシスコンだな。妹のカッコいいという言葉だけで、こんなに甘えさせるなんて。
でも、今の妹の笑顔が見れるなら、もう俺、シスコンでいいや。
「八兄ちゃん大好き!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
作者、アイゼロ氏からの八幡への誕生日プレゼントは、『ブラコンの妹、比企谷八菜』でしたー。
ではまた。