ラブライブ!サンシャイン!!夢の守り人   作:自由の魔弾

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お久しぶりです!まず最初におことわりをさせていただきます。

この更新から大体2、3週間ほど更新することが出来ないと思われます。
今月は就職の試験があるため、そちらに集中させていただきます。
ご了承ください。では、どうぞ!


第9話 赫い少女

浦の星女学院にて行われたライブから数日後、その会場となった体育館に新たな部室が誕生した。

 

「まさか本当に承認されるなんて」

 

創設された部の名前は“スクールアイドル部”。メンバーは千歌、曜、梨子の3人である事は言うまでもない。

ここで、改めてここに至るまでを振り返ってみるとしよう。

当初は観客が10数人程度でライブがスタートした訳だが、その原因として千歌がライブの開始時間を間違えて知らせてしまったとの事。結果、約束の通り会場を埋め尽くすほどの観客を動員させ、無事にスクールアイドル部の創部へとこじつけたのだ。

 

「うぅッ・・・片づけて使えって言ってたけど・・・」

 

ようやく与えられた自分たちの部室の有様を見て、梨子がつい本音を漏らす。そして、千歌から悲鳴にも聞こえる叫びが部屋の中に響き渡る。

 

「これ全部ゥー!?」

 

2人が愚痴を漏らすのは無理もなく、与えられたスクールアイドル部の部室の中は、物が散乱し部屋中埃まみれで、中には何かを書いて消した様なホワイトボードや返していない図書室の本などなど。綺麗に掃除をすれば使えるものの、その有様はゴミ屋敷そのものだ。

 

「ん?何か書いてある・・・」

 

千歌はホワイトボードに注目する。書いてある事といえば、何かの歌詞にも見てとれる言葉やスクールアイドルに関連するような事だった。気にはなったものの、肝心の内容の部分が消されていたため、3人はひとまず部屋の中に置いてある物を片づける作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、巧は今日から始まったクリーニング業務に追われていた。内浦に来てからの数日間、ろくに仕事をしていなかった事もあり、少し手間をかけながらも何とか一つ一つ丁寧に作業をこなしていった。そして、配達に行った啓太郎の代わりに留守番をしている巧は、中身がないアタッシュケースを見つめる。

 

「ファイズギアは奴らに奪われたまま・・・でも、何でこれが?」

 

巧は視線を空のアタッシュケースから少し大きめのアタッシュケースに移す。ケースを開くと、ケース上部にΧを模したツールが収納されており、ケース下部にはベルト、携帯、カメラ、双眼鏡を模したツールが収納されていた。それに巧には気になった事がもう一つある。

 

「それにあの言葉・・・草加、やっぱりお前は・・・」

 

巧の脳裏に焼きついていたのは意識を失う直前に聞いた幻聴だった。草加雅人は死んだ、この事実が覆される事は無い。しかし、だったらどうして消えたカイザギアが今手元にある事が説明出来るか?自分は何処かで期待していたのではないだろうか?倒したはずのオルフェノクが現れたのだから、きっと木場や草加も・・・。

 

「たくっ・・・らしくねぇな。俺はもう迷わないって決めたろ」

 

巧は自分の頭の中に渦巻いていた疑問を振り払う様に思考を停止する。

例え死者が蘇る事があっても、目の前に立ちはだかる敵がいるなら命を懸けて戦うしかない。まだ始まったばかりの夢を、そしてこれから始まる夢を守る為なら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の放課後、国木田花丸は1人悩んでいた。その内容とは親友の黒澤ルビィの事だった。念願だったスクールアイドルに誘われたにも関わらず、何処か悩んでいて一歩を踏み出せないでいる。帰り道で何で誘いを断っているのかを聞くと、その答えが返ってきた。

以前からスクールアイドルが好きだったルビィ、そして姉のダイヤは2人で好きなスクールアイドルの真似をしたり、話をしたりしていたという。しかし、姉のダイヤが高校に入ってしばらく経った頃、突然スクールアイドルに関するもの全てを拒否する様になった。その理由は分からないが、ダイヤが嫌いになったものをルビィが好きでいてはいけないと思ったらしく、その事があってイマイチ良い返事が出来ないでいるということだ。

 

「本当はね、ルビィも嫌いにならなきゃいけないんだけど・・・」

 

そう言ったルビィの悲しげな顔が、花丸の頭の中から離れないでいた。同時にいくら家族の為だとはいえ、好きなものを好きだと言えないなんておかしいと思った。しかし、自分にはどうする事も出来ないことは分かっていた。ましてや自分がスクールアイドルになる事なんて考えてもなかった。どうにかできないかと考えている時、ある事を思い出す。

 

「そうだ・・・乾さん!乾さんならルビィちゃんのこと何とかしてくれるかも!」

 

花丸はすぐにチラシを取り出し、地図で書かれている場所へと走って向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸が十千万に向かっている時、そちらでも既に一悶着起きていた。

客足も落ち着き相変わらずボケーっと頬杖をつきながら座っている巧の前に、客が現れる。

 

「すみません、こちらでクリーニングをお願い出来ますでしょうか?」

 

現れた客を見て、巧は少し驚いた表情を見せる。

 

「らっしゃい・・・って本当に来たのか」

 

現れたのは浦の星女学院生徒会長の黒澤ダイヤだった。以前巧が学校に行った際に良かったら来てくれとは頼んだものの、まさか開店当日に来るとは思わなかった。しかも、量もそれなりにある。

 

「あー、じゃあそれの中身確認するから、紙に名前と住所書いといてくれるか?」

 

巧は配達用の紙を渡し、ダイヤが持ってきた洗濯物を受け取り中身を確認する。特に変な物は無いようで量こそあるものの、何とか今日中にでも終わりそうだ。

そんなことを考えていると、突然ダイヤが巧に話しかける。

 

「あの、お怪我の具合はもうよろしいのですか?」

 

一瞬、何のことを言われているのか分からなかったが、すぐにこの前の学校での事だと思い出す。

 

「あぁ、あん時の事か。別に大した事はない、しょっちゅう怪我してるからな」

 

はぐらかされた形で話が着地してしまい、ダイヤは「その話ではありませんのに・・・」と1人小声で嘆いていた。確かにあまり大きな声で話せる内容でもない事は、その光景を目の当たりにした自分が一番分かっている訳で、渋々諦めた様子で必要事項を記入した紙を差し出す。

 

「・・・よし。他にも何軒か回るからそっちに着くのは2時間後くらいだが、その時間で大丈夫か?」

 

巧に言われて時間を確認するダイヤ。現在は午後4時近いので、2時間後の午後6時付近には家に居る。なのでオッケー。

 

「問題ありませんわ。では、その時間にお願いします・・・あ、一つ言い忘れていました。スクールアイドルの件はもうお気になさらず。私は私のやり方で夢を追いかけます。それでは」

 

ダイヤはそう言って、その場を立ち去った。正直巧には何の事なのかは分からなかったが、夢を追いかけるという言葉に少し良い印象を受けたのは言うまでもない。

 

「さてと、ちゃっちゃと終わらせるか」

 

巧は軽い足取りで、洗濯物を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、終わりか。あとは配達だけか?」

 

全ての作業を終え、残るは配達のみとなった。時間にして現在は午後5時20分過ぎなので、順調にいけばほぼ予定通りの時間になる。

巧は洗濯物が入ったケースをサイドカーに載せると、エンジンをかける。調子を確認していると、誰かがこちらに 走ってくる事に気がついた。

 

「あ!乾さ〜ん!間に合って良かったずら・・・」

 

巧はその人物をみて、以前チラシ配りの時に紹介された国木田花丸である事を思い出す。息を切らすほど走ってきた様子からどうやら何かあった様子を察する。

 

「一体どうしたんだ!えぇ?」

 

「ルビィちゃんを・・・助けてあげてほしいずら」

 

巧が花丸に聞くと、花丸はルビィがスクールアイドルの誘いを受けていない事を巧に伝える。姉のために自分の気持ちを抑えて、一歩を踏み出せないルビィに巧からどうにかできないかと。

 

「・・・とりあえず、話はしてみる。もう遅いからお前は帰った方がいい」

 

巧に帰るよう促されるが、快く承諾する事は出来ない様子の花丸。しかし、すぐに「よろしくお願いしますずら」と言って、来た道を戻っていった。

 

「訳ありか・・・行くか」

 

巧は既に準備を終えたサイドバッシャーに跨り、その場所へと向かうのだった。

 

 

 




Open your eyes for the next φ’s

「えぇ?スクールアイドルに!?」

「でも、練習どこでやるの?」

「巧さんには、分からないんだよ!」

「俺だって怖いさ。でもな、いつかは自分で決めるしかないんだよ・・・好きな事なら、尚更な」

第10話 決断する3人




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