ラブライブ!サンシャイン!!夢の守り人   作:自由の魔弾

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ご無沙汰しています、自由の魔弾です。
前回の更新から時間が空いてしまい申し訳ございません!先月の下旬からいよいよ仕事が始まりまして、中々更新が出来ずにいました。今後もこのようなことが多々あると思いますが、何卒よろしくお願いします!
さて、ここからは雑談を。
まずはエグゼイド関連です。変態社長念願の仮面ライダークロニクルが完成し、いよいよエグゼイドも折り返しかなぁと思う私ですが、ゴライダー然り仮面ライダーレーザー然りまだまだ盛り上がりを見せてくれると期待しています!
もう一つはアマゾンズ関連です。いよいよシーズン2が始まり、嬉しい悲鳴をあげ続けている日々でございます。ベルトもまさかのCSM仕様となっており、比較的良心的なバンダイさん。前回もそうしてくれよ〜と思うのは私だけではないはずです。
まぁまぁ近況報告はこんな感じですかね。もう少しで初給料がもらえるので、迷わずに溶かしてやろうと思います。引き続き、ご意見ご感想お待ちしております!ではでは〜!


第20話 夢、儚く散るとき

「それで、旅館って何処なんだ?」

 

Aqoursと合流して行動を共にしている巧が改めてその詳細を問いかける。その質問に唯一の常識人である梨子が答えた。

 

「はい、えっと鳳明館っていう旅館みたいです。多分、もうそろそろのはずですけど・・・あ!」

 

説明をしていた梨子が、視線の先に目的地の旅館が見えて来た事に気がついた。千歌と一年生組が我先にと走り出し、その後を巧たちが追いかける。

 

「えぇー!?ちょっとどういう事ですか!」

 

少し遅れて到着した巧たちの前で、千歌たちが何やら旅館の女将と言い争っていた。状況がイマイチ掴めていない巧たちが、詳しく聞く事に。

 

「おい、いったい何だってんだ?」

 

「今予約を確認してもらったんだけど、巧くんだけ予約人数に入ってないって!」

 

巧は状況を理解すると、あまりの事の小ささに安堵する。若さ故なのか、物事を事実以上に表現してしまうきらいがあるようだ。

 

「んだよ、良いじゃねぇか別に。元々男が同室ってのも、落ち着かないだろうしな。お前らは先に休んでろよ。ほら」

 

巧は無理矢理にでも千歌たちを押し出し、部屋に行くよう促す。大きな舞台を明日に控えている彼女たちを、自分の都合に巻き込みたくなかったのだ。

その様子を見ていた女将が、微笑ましそうな笑みを浮かべて巧に話しかけた。

 

「お優しいのですね。もしかして彼女さんですか?」

 

唐突の言葉に思わずたじろぐ巧。この女将、高海姉妹と同じ匂いを感じる。

 

「そんなんじゃねぇよ。それより、俺の部屋はどうすればいい?」

 

「その事なんですけど、実は先ほどの方々には言い忘れてしまいまして、お客様のご予約は別の方が先になさっていまして、既に部屋は確保してあるのです。部屋までご案内いたします」

 

女将の言葉に困惑する巧。わけもわからないまま、女将に部屋まで案内される。千歌たちとは反対の方向にひたすら進んで行く女将の後を静かについて行く巧。

やがて、女将と巧はVIPと記された部屋の前で足を止めた。

 

「乾様の部屋はこちらになります。乾様のご予約をとられた方と同室になりますので、“何卒ご用心下さいませ”。それでは」

 

女将はそれだけを伝えると、深々と礼をしてその場を離れた。巧は女将のご用心下さいませという言葉に違和感を覚えたが、迷いを振り切るように勢いよく扉を開けた。

 

「おい!これは一体どういうこ・・・と・・・ッ!!」

 

「・・・へ?」

 

勢いよく啖呵をきった巧だったが、部屋の中の光景を見て思わず絶句してしまった。そして、先ほどの女将の言葉の真意をようやく理解するが、遅かった。

 

「お前は・・・!」

 

「い、い、い・・・!?」

 

巧がその人物の名前を呼ぼうとしたが、それよりも先に羞恥の悲鳴が旅館に木霊した。

 

「いやああああああー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー?何か聞こえたような?」

 

「どうしたの、千歌ちゃん?」

 

「いや、多分私の勘違いかな。それよりほら!大っきな露天風呂だよ!」

 

「おおー!これは中々・・・よーし!渡辺曜、いっきまーす!!」ドボーン!

 

「曜ちゃん!?それじゃあ私も!とぉーう!」ドボーン!

 

「クックック・・・!我、治癒の清泉に・・・堕天降臨!!」ドボーン!

 

※他の入浴者の迷惑になりかねますので実際に飛び込んではいけません。

 

「ルビィちゃん、花丸ちゃん、私たちはちゃんと掛け湯をしてから静かに入ろうねー」

 

「はーい!それにしても、花丸ちゃんはスタイル良くていいなぁ」

 

「ルビィちゃんだって肌が綺麗で羨ましいずら・・・えいッ!」

 

「ピギィ!!花丸ちゃん、くすぐったいよ〜。梨子さんも笑ってないで助けてくださいー!」

 

「ウフフッ!本当に二人は仲がいいんだね。ちょっと羨ましいかも・・・」

 

「梨子さん・・・?」

 

「ううん、何でもない。じゃあ、私たちも入ろっか!」

 

『はい(ずら)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、もう落ち着いたか?」

 

「うぅ・・・もうお嫁に行けないです」

 

巧は何とかして少女を宥める事で、事なきを得た。始めから何もかも知っていた女将を内心呪いながらも、何とか話を進めることにした。

 

「それで、何でお前がここにいるんだ?梅原」

 

そう。巧をAqoursから離した人物とは、以前東京に訪れた際に出逢った梅原沙希だった。ついでに先ほどの状況を詳しく話すと、沙希が浴衣に着替えている最中に運悪く巧が入ってしまったという事だ。

事故とはいえ年頃の少女の柔肌を間近で見てしまった巧には、少なからず罪悪感があることは言うまでもなかった。

 

「はい・・・実は以前から乾さんが気にかけていた三原修二さんの居場所が分かったので、少々強引な手を使わせていただきましたがそのご報告に。その点は年頃の乙女の裸を見てしまった事で“おあいこ”にと手を打ちましょう」

 

沙希は巧の罪悪感を煽るかのように、嫌味を含んだ物言いをする。巧は怒りのままに拳を振るいかけるも、何とか自制心で落ち着かせ、話を進めることに。

 

「・・・それで、三原は今何処にいるんだ?」

 

「三原さんはスマートブレイン本社に監禁されていると思われます。恐らくもう・・・」

 

沙希の言葉に巧は驚きを隠せなかった。自分が東京から離れている間に、三原が何かの事件に巻き込まれていたなんて。それも、因縁深いスマートブレインが関係しているとなると、結局自分は何もできなかったのかと自身を責めてしまっていた。

 

「だったら、今すぐ行って三原を助け出す!スマートブレインってことはオルフェノクが関わっているんだろ?カイザのベルトがあれば、俺一人でも三原を救えるはずだ!」

 

巧はそう言うと、側に置いてあったカイザギアを持って出て行こうとする。しかし、その行く手に沙希が立ち塞がる。

 

「待って下さい!例え乾さんと言えど、一人で行くなんて無茶ですよ!今は仲間を増やして、それからでも救出は「それじゃあ遅いんだ!!」ッ!?」

 

沙希の言葉を遮るように巧の叫びが部屋に反響する。

巧の悲痛な叫びが沙希の胸に刺さる。

 

「救えなかったら、何にもならないだろ。俺はこの手の中で死んでいった奴を何人も見てきた。生きたいと願いながら死んでいった奴らが大勢いたさ。確かに俺だけの力じゃ救えないかもしれない。でもな、それで迷っているうちに人が死ぬなら、俺は戦う。ただ・・・それだけだ」

 

巧は沙希を押しのけて部屋を飛び出した。途中、沙希の制止の声を背中に受けながら。

 

「まるのバックトゥザぴよこ万十~!!」

 

またある時は、よく知る人物たちのどうでもいい悲鳴すらも聞こえないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね・・・なんか、空気悪くしちゃって」

 

その日の夜、一人窓に腰掛けて外の景色を眺めていた梨子が、同じく眠れずにいた千歌に気づいて話しかける。内に秘めた気持ちを語り始めたのだった。

 

「音ノ木坂って、伝統的に音楽で有名な高校なの。私、中学の頃ピアノの全国大会行ったせいか、高校では期待されてて・・・でも結局、大会では上手くいかなくてね。期待って感じ過ぎるとプレッシャーになるって言うのも、ちょっと分かるなぁ・・・」

 

梨子が今まで秘めていた自分の過去を語った。東京から内浦へ来た梨子が初めて心の内を曝け出した様に見えた。もちろん家の事情ということもあったが、一番は彼女自身を変えたいという思いだろうか。スクールアイドルは手段の一つに過ぎなかったのだ。

 

「期待されるって、どういう気持なんだろうね・・・」

 

ふと、そんな言葉が千歌の口から溢れた。思い返せば、自分の人生の中で特別に誰かから期待された事なんかなかったのだ。東京に招待された事で、浦女の生徒たちや町の人々からの期待が高まっていくのが容易に見て取れた。絶対に失敗できない、期待に応えないといけないと。自分たちが望んだ結果であるに違いないのに、何処か人ごとであったらいいと思ってしまう自分がいた。

 

「・・・寝よ。明日のために」

 

千歌の心情を感じ取ったのか、梨子が話を切り上げるよう催促する。千歌は不安で仕方がなかったが、その心を紛らす術を知らない。故に梨子の提案に頷くほかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌と梨子が眠りに着くと同じ頃、巧はサイドバッシャーを駆ってスマートブレイン本社跡地に赴いていた。因縁の相手とこうしてまた相見えようというのか。

 

「待ってろよ、三原・・・変身ッ!」

 

巧は待機状態のカイザフォンをバックルに装填し、カイザへ変身する。

 

“Complete”

 

全身に帯びている黄色のフォトンストリームの光が、闇夜を照らす。そして、ゆっくりとした足取りで歩き始めたその時、耳鳴りと同時に何者かの声が響き渡る。

 

《そこには立ち入らない方がいい。どうやら君の探し求めている人物は既に別の場所に移されたようだ》

 

「っ!?・・・誰だ!」

 

突然の言葉に巧は周りを見渡した。姿こそ見えないが確実に近くにいる不気味な存在に気を配るも、返答はなかった。これ以上は無駄と踏んだ巧は気にせずにスマートブレイン本社跡地へ走り出した。しかし、次に返ってきた答えは確実にカイザへ向けて放たれたオルフェノクの使徒再生能力によって生成された衝撃波だった。

 

《これは警告だ。それよりも、今は彼女たちの身を案じた方がいい》

 

巧はその言葉に目を見開いた。何故この人物がAqoursの存在を知っているのかと。それに身を案じろとはどういう意味なのか。

 

「お前・・・あいつらに手を出してみろ!塵一つ残さずに消滅させてやるッ!!」

 

巧の叫びは闇に消え、それ以上の謎の人物の言葉が返ってくることはなかった。Aqoursか三原か、巧が出した答えは・・・。

 

「・・・ああ!!クソッ!」

 

巧はカイザの変身を解いてサイドバッシャーに跨った。そして、すぐさま元来た道を引き返すのだった。気づけば既に夜は明け、朝陽が昇り始めていた。当然、巧の中には不安と焦りが生じていた。

 

(頼む・・・間に合ってくれ!)

 

巧の思いに呼応するように、サイドバッシャーのスピードも速くなっていく。そして完全に巧の姿が見えなくなった時、スマートブレイン本社跡地の影から一人の男が現れた。

 

「それでいい。戦え・・・戦い続けるんだ。そうすれば自ずと答えは見えてくるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?あいつらは何処だ!?」

 

巧は旅館に辿り着いたと同時に、千歌たちを探す。どの部屋に泊まっているかなど聞いていなかったため、片っ端から部屋を一つずつ確認していく。

 

「何このイケメンッ!嫌いじゃないわ!嫌いじゃないわ!」

 

「サバじゃねぇ!」

 

「記憶喪失でも免許は取れるんです」

 

「ザヨゴオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

 

「んだよ!何処にも居ねぇじゃねぇか、あいつら・・・ん?」

 

焦りを隠せないでいる巧だったが、ふと旅館の玄関に目を奪われる。これだけ旅館の中を探しても見当たらないということは、まさか外に出ているのではという考えが過った。

そう思った瞬間、巧は周りを気にせずに走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、全力で輝こう!」

 

しばらく探し回っていると、電光掲示板の前で手を重ね合わせている六人の姿が見えた。とりあえず何か被害があるようではなかったので、ひとまず安心した巧。

 

「あぁー!今まで何処に行ってたの!?」

 

巧の存在に気づいた千歌がいち早く巧のもとに駆け寄り、少し遅れて他のメンバーも集まった。

流石の巧でも一言も告げずに出て来てしまったことに、多少なりとも罪悪感を感じざるを得なかった。

 

「んまぁ、いろいろあってな。それより、朝から集まってどうしたんだよ?」

 

「今年のラブライブ!が発表になったんです!!」

 

巧の問いにやや興奮気味のルビィが答えた。しかし、次の瞬間には巧に詰め寄ったことが恥ずかしく思ったのか「ご、ごめんなさい・・・」と尻込みしてしまう。

不可抗力とはいえ自分に非がある思われる状況に困惑する巧に、善子と花丸がルビィを慰めて!とジェスチャーをする。

 

「あぁー・・・まぁ、気にすんなよ」

 

巧はルビィの頭に手を乗せると、軽く撫でてみせた。不器用だが何処か優しい手つきで、ルビィといえども撫でられている間は恥ずかしくもどこか嬉しそうにはにかんでいた。

 

「ほら、もういいだろ?」

 

「あっ・・・あの、ありがとう」

 

巧が撫でていた手を止めてルビィの頭から手を離すと、ルビィは何処か名残惜しそうにしていたが、すぐに気持ちを落ち着かせて感謝の言葉を紡いだ。

 

「・・・お姉ちゃんの言葉の意味、少し分かった気がする」

 

ルビィは誰にも聞こえない程の声量で、そう呟いた。彼女が自分の中で確実に何かが変わり始めていると気がついた瞬間だった。

 

「それで、そのラブライブってのに出るんだな?あんま俺が言えたような事じゃねぇけど、お前らはお前らが思っている以上に、その・・・いい女だよ。だから、自信持ってやり切ってこいよな」

 

あくまでぶっきらぼうに言う巧。明らかに普段から言い慣れていないセリフ回しに、思わず吹き出してしまうAqoursメンバーたち(ルビィ以外)。

その反応は当然、巧の反感を買う結果に。

 

「お前ら・・・人の気も知らねえくせに。とにかく、俺はここで見てる。行ってこい」

 

巧はまたもや無愛想に吐き捨てるが、もはやそれが本気で悪態ついている訳ではないことはAqoursには分かりきっていた。共に過ごす中で巧の人となりが理解できてきた証拠だろう。

Aqoursはそんな巧を軽く流して、早速当初の目的だった東京スクールアイドルワールド運営委員会主催のイベント会場へ向かうのだった。

謎の人物の警告に不安を隠せないでいる巧の様子に気づかないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Open your eye’s for the next φ’s

「私ね、今日のライブ、今まで歌ってきた中で出来は一番良かったって思った!」

「お疲れ様でした。素敵な歌で、とても良いパフォーマンスだったと思います」

「バカにしないで。ラブライブは・・・遊びじゃない!」

「このリストに載っている人物は、既に亡くなっている可能性があります。もしくは、九死に一生を得た人物とも言えるでしょう」

第21話 悔しさと建前

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