余談ですが、ライダー&戦隊45周年アニバーサリー感謝祭、見に行きました。語ると長いので一言。三浦大地スゲー!松岡くんかっこいい!リッキー!貴利矢!ISSA!草加ー!
(一言じゃねぇ)
『消える時間』
【皆さん、こちらに隠れていて下さい!】
テディの誘導によって、怪人から解放されたAqoursメンバーが近くの建物の陰に隠れ、そこから様子を探る。そして、彼女たちの目の前には三人の戦士が降臨していた。
「あれが、幸太郎さんの変身・・・」
不意に梨子がそう呟く。昨日、自分を助けようとした幸太郎の本来の姿を見て、感嘆の声をあげる。
今度は善子がもう一人の見知らぬ男の姿に声をあげた。
「あ、あの姿は・・・!?」
「・・・善子ちゃん?どうしたずら?」
善子の異変に気づいたのか、花丸がその様子を伺う。が、善子によってそれは遮られてしまった。
「・・・いや、やっぱ何でもない」
意味深な態度を見せる善子が気になった花丸だったが、今は巧たちの身を案じることにした。
眼前には無数の怪人が押せ寄せていた。しかし、カイザを纏った巧には既に自身の消滅の事など頭の中から消えていた。仮に自分が居なくなっても、今は草加がいる。代わりにAqoursをオルフェノクから守って戦ってくれると知っているからだ。
「ちょっと待って。まだ仕上げが済んでないからさ、テディ!」
NEW電王はそう言って、二回ほど指を鳴らす。すると、Aqoursの側に付き添っていたテディが呼応するかのように、その身を変形させてNEW電王のもとに召喚された。
ライダーに憑依して戦う事の無いテディがNEW電王の能力によって巨大な刀に変身した姿、その名も“マチェーテディ”だ。
「へぇ、面白い武器だね・・・」
意外にも食いついたのは雅人だった。もちろん本心で言っているわけではなく、巧には皮肉を含んでいることは容易に想像できた。
「知らなかった?イマジンは普通、誰かに憑依するんだけどこいつは特別でね。さぁ、これで準備ができた!」
すると、幸太郎の掛け声に呼応するかのように、武器となったテディが話しかける。
【幸太郎、デンライナーを動かすまでの五分間は怪人を近寄らせてはならない!】
テディの警告を受けた幸太郎は、余裕の笑みを浮かべて返した。
「こいつら倒すのに五分もいらないな・・・三分でケリをつける」
強気の発言に背中を押されるかのように、自然と巧にも力が入る。
【・・・分かった】
テディの了承も得て、いよいよ始まりの瞬間が訪れた。
「よし、行くぞ!」
巧の掛け声と同時に、眼前の怪人に向かって走り出した。
〈φ〉
「やれやれ・・・この程度の戦力で勝てると思ってるのかなぁ?」
最初に切り込んでいったファイズは、向かってくる怪人の攻撃を完璧に避け、同時にカウンターを仕掛ける。使い慣れていないファイズギアを装着しても尚、怪人を寄せ付けないその圧倒的な戦いのセンスは失われていなかった。
しかし、いくら倒してもその数に変化は少なかった。
「数だけは一人前か・・・ならば」
雅人はベルト左側に携帯されたファイズショットを取り出し、ミッションメモリーをセットする。
“Ready”
続けて左手に装着されているファイズアクセルから、アクセルメモリーを抜き取ってファイズフォンにセットした。
“Complete”
音声と同時に胸部アーマー・フルメタルラングが展開して肩の定位置に収まり、複眼の色は赤、エネルギー流動経路である赤色のフォトンストリームから銀色のシルバーストリームに変化する。
雅人はファイズアクセルのスタータースイッチを押して、アクセルモードを発動する。
“Start up”
音声とともにカウントダウンが始まる。が、雅人はそれよりも先に動き出し、通常の千倍の速さで目の前の怪人たちに必殺技“アクセルグランインパクト”を連続で叩き込んでいく。
『・・・イッ!?』
怪人たちが攻撃をかわすどころか視認するより速く、ほぼ同時に決め込まれたパンチに怪人たちは痛みも感じる事が出来なかった。
あらかたかたずけたところで、機能終了を知らせるカウントダウンが再び始まる。
“3・・・2・・・1・・・Time out”
その瞬間、攻撃を受けた怪人たちからφのマークが浮き上がり、その場で全ての怪人が爆散した。
雅人はその様子を見届けると、ファイズフォンからアクセルメモリーを抜き取った。
“Reformation”
次の瞬間、展開していたフルメタルラングがもとのように収納されて通常の状態に戻ってしまった。
雅人は辺りを見渡して敵が居なくなった事を確認すると、ファイズフォンを抜き取り変身を解除してしまった。
「まぁ、今日はこのくらいか・・・どう足掻いたところで、この時間は消えてしまう運命にある・・・か」
雅人はファイズギアをアタッシュケースに収めると、それを持ったまま再び何処かへ消えてしまった。
〈NEW電王〉
「ハッ!ダァ!なんだよ、あいつもカウントダウンするの?」
幸太郎は群がる怪人をマチェーテディで薙ぎ払いながら、ファイズの戦闘を見て素直な言葉が出る。
【幸太郎、こちらも負けていられないぞ!カウントは?】
テディに促され、幸太郎は敵の数を数える。数にして20人程、自分の力量を考慮してその結果を伝えた。
「20・・・いや、15でいける!」
幸太郎はそう告げて怪人の中へ飛び込んでいく。
15・・・14・・・13・・・12・・・11・・・。
テディによるカウントダウンが始まる中、NEW電王はマチェーテディによる銃撃で怪人を一か所にまとめるよう牽制する。怪人たちは攻撃をかわすためやむなく身動きが取れなくなる方へ誘導されていく。
10・・・9・・・8・・・7・・・6・・・。
カウントダウンが進む中でも、NEW電王の攻撃は止まらない。マチェーテディによる銃撃をやめ、空中に放り投げる。突然の行動に怪人たちが空を舞うマチェーテディに気を引かれる隙に、ベルト横に携帯されたデンガッシャーをソードモードに組み立て、すかさず空中のマチェーテディも回収する。流れるような無駄のない動作に怪人たちが動けない隙に、ライダーパスを取り出しベルトにセタッチする。
“Full charge”
5・・・4・・・3・・・。
音声とともにベルトからマチェーテディとデンガッシャーに力が伝わる。残りのカウントに間に合うように、一ヶ所に固まった怪人たちに向けて必殺の斬撃を炸裂させた。
「ハアァァッ!!」
2・・・1・・・0。
テディによるカウントダウンが終了した瞬間、同時に必殺技をうけた全ての怪人たちが爆散した。自身の定めたカウントの通りに。
【流石だな、幸太郎。さぁ、デンライナーに急ごう!】
「あぁ!」
幸太郎とテディはデンライナーに向けて、走り出したのだった。
〈Χ〉
「ハッ!ダァァァ!くそ、何だってんだよ!この数は!?」
カイザはなおも戦い続けていた。怪人とだけではなく、自分の時間とも。
蹴りやパンチだけでは拉致があかないと踏んだカイザはサイドバッシャーを呼びつけて、乗り込むとその姿を変形させる。
“Battle mode”
ビークルモードから二足歩行型重戦車形態に変形したサイドバッシャー。その巨体に怯んでいる怪人に対して、カイザはサイドバッシャーを操作して右腕の前輪部分に装備されている4門の光子バルカン砲で攻撃する。
『イッ、イッー!?』
カイザの攻撃に逃げ惑う怪人だったが、それだけでは終わらない。今度は左腕の後輪部分に装備されているマフラーから、6門ミサイル砲で攻撃する。ミサイルは次第に分裂していき、最終的には無数の小型ミサイルとなって怪人たちに降り注そぐ。
『イ、イィィ・・・』
エグザップバスターで全ての怪人を倒したかに思えたが、一体だけ残ってしまったようですぐさま背を向け逃げ出そうとする。しかし、カイザがそれを許すはずがなかった。
“Exceed charge”
カイザは跳躍して空中で一回転して足先を怪人に向ける。すると、既に右脚のホルスターにセットしていたカイザポインターから黄色い二重の四角錐状の光が放たれて、目標をポイントし急降下キックを叩き込んだ。
「ヤアァァァァッ!!」
怪人をすり抜けるように着地するカイザ。次の瞬間、怪人はΧのマークを浮かべ爆散した。全ての怪人が倒されたのを確認した巧は変身を解除した。
同じタイミングで、巧の頭上をデンライナーが旋回するように上昇していた。
「乾!援護、助かった!あとは俺たちがなんとかする!だから“気をつけろ!”」
意味深や幸太郎の言葉だったが、巧は気にせず短く返した。
「あぁ!あとの時間を、頼んだぞ・・・!」
巧の言葉を聞いて、デンライナーは今度こそ出現したゲートに消えていった。
「全部、終わったのか・・・」
巧の中でとてつもない虚無感が襲う。全てが終わったという実感がないまま事態は収束してしまった、中途半端という感じだ。
任せるとは言ったものの、結局は幸太郎に押し付けているのではないかという考えが渦巻いてならないのだ。
「巧くん・・・」
全てが終わったのを確認したAqoursメンバーが、巧のもとに駆け寄る。やはりと言ってはなんだが、千歌の様子はあまり変わっていなかった。
「お前ら・・・悪い。帰ってもいいか?」
何かを思いつめたように話を切り出した巧を止められるはずはなかった。
ふと、巧は目を覚ます。時計は深夜の2時を過ぎたところだった。十千万に戻って既に11時間ほど経っただろうか。
そんな事を考えていると、突然部屋の扉が開かれた。
「あ、ごめん・・・起こしちゃった?」
扉を開けたのはもちろん千歌だ。何故こんな時間に・・・と思った巧だったが、幸太郎に言われた事を思い出して一人で合点していた。
「お前、もしかしてずっと待ってたのか?」
巧がそう聞くと、千歌は苦笑しながら答えた。
「ずっとってわけじゃないんだけど・・・それより、実は話したい事があってさ」
改めて千歌が真剣な表情で話す。千歌はなんとかして自分を奮い立たせて言葉を紡ごうと、強く唇を噛みしめる。
「(ちゃんと伝えなきゃ・・・“好き”って言わなきゃ!)た、巧くん!」
千歌はいよいよ決心して、その想いを伝える。
「あの、私ね・・・本当は巧くんが・・・!?」
そう、伝えるはずだったのだ。
「グゥ・・・!!?な、なんだよ!?」
突然、激しい頭痛が巧を襲う。まるで何か大きな力が、この世界全体を捻じ曲げているような強い意志を持って作用しているかのように。
そして、それは巧だけに起こっているものではなかった。
「く、クゥ・・・!?あ、頭が痛い・・・!?」
巧と同様に千歌にも症状が出ているようで、やはりこの異常は世界全体をも呑み込もうする“何か”が働きかけていた。
「た、巧くん・・・」
許容範囲を超えた痛みを受けた千歌は、その場に倒れてしまった。
「ち、千歌・・・」
気力で踏ん張っていた巧だったが、遂に耐えきれず意識を失ってしまった。
「うわー、すっごぉおおい!!」
突然聞こえた千歌の歓喜の声に、居間で寝ていた巧は否が応でも現実に引き戻された。
それは隣に住んでいる梨子にも聞こえたようで、巧が外に出た時には既に千歌と合流していた。
「千歌、一体何だってんだ?」
巧が何事かと問いかけると、やや興奮気味の千歌が見た時の様子を言葉にする。
「梨子ちゃん!巧くん!えっとね・・・!あれ?なんだっけ?」
千歌の言葉を受けて、巧と梨子は思わずずっこけてしまう。あれだけ騒ぎ立てておいて、忘れたの一言で済ますつもりらしい。
梨子は何もなくて良かったと安堵しているが、巧は収まりがつかなかった。
「ふざけんな!お前のせいでせっかくの安眠が台無しだ!」
巧は怒ってズカズカと十千万の中に帰っていった。
「あら?どうしたの巧くん、そんなに怒って?ホットコーヒー、飲む?」
「それ飲んで少しは落ち着きなって。何ならフーフーしてあげよっか?」
「お前ら、いつか覚えてろよ・・・!」
「ワン!!」
「あ、あああ・・・。い、嫌ぁああああああッ!!!」
高海千歌の日常。普通だと思っていた彼女の周りにはこんなにも騒がしくて、こんなにも愛おしいもので溢れている。
そんな大事な宝物を彼女は今日も大切に育んでいく。
【幸太郎、よかったのか?】
「まぁ、仕方ないんじゃないの?一応、警告はしたし。それにしてもAqoursか・・・結構スゴイ人気じゃん。乾は何を心配してたんだ?」
【幸太郎、戻って伝えに行かなくていいのか?】
「・・・いや、止めておく。自分の力で辿り着かなきゃ意味ないだろうし。それよりもまだやる事があるだろ?」
【分かってる。次の時間へ急ごう】
時の列車、デンライナー。次の駅は過去か、未来か・・・。
今回でコラボ話はおしまいです。次回からフツーの話に戻ります。時間軸戻りますんで、そこらへんはお気をつけください。