大変長らくお待たせしました。本当に申し訳ありませんでした。
話は変わりまして、来月にはいよいよCSMファイズギアが届きます!
来月にはたっくんばりのコートを着込んで、ファイズギアを腰に巻いている姿が容易に想像できますな!
それでは、どうぞ!
例の如く一悶着あった巧たちだったが、夕刻の空が広がっているのことに気がつき、メンバーはそれぞれ帰路につくことになった。
中でも沼津に住んでいるヨハネこと津島善子を送るため、巧はサイドバッシャーを駆っていた。
当の本人はというと・・・。
「さぁ、行きなさい!堕天使ヨハネに仕えしリトルデーモン!漆黒の馬を駆り、我を安息の地へと誘いなさい!!」
「はいはい」
もはや巧には手に負えない状態となっていた。乗り始めて少し経ってから、何故かずっとこの調子なのだ。口を開けばリトルデーモンだの堕天使ヨハネだの・・・正直、ウザい。
そんな善子の絶好調な口を閉じさせるため、巧は大きくスロットルを開いて沼津への道を駆け抜けたのだった。
「ち、ちょっと!?スピード出し過ぎだから〜!!!」
その道中で、堕天使の悲鳴は鳴り止まなかった。
「はい、ここが私の家よ。送ってくれてありがとね」
数分後、巧は無事に善子を家に送り届けた。善子を降りたのを確認してすぐに帰ろうとした巧だったが、それを善子が呼び止めた。
「ちょっと待ってよ!・・・せっかくだし、家上がってく?」
巧は悩んでいた。今日は特に疲れた、今すぐにでも帰って寝たい。しかし、この善子が素直に返してくれるであろうか。たとえこの質問を断ったとして、「そんな事言わないで・・・」のやり取りが際限なく繰り返される気がしてならないのだ。よって答えは既に決まっていた。
「じゃあ・・・少しだけな」
巧はサイドバッシャーを駐車し、善子の後に従うのだった。
「ちょっと散らかってるけど、どうぞ。あ、お茶で良いわよね?」
「ん、ああ・・・頼む」
鞄を置いた善子はキッチンへと向かった。残された巧は、何となく周りを見渡してみる。本人は散らかってると言っていたが、決してそんな事はなくむしろ綺麗に整っていた。そこで、ふと扉の開いたままの部屋に注目する。不思議に思った巧は悪いと思いながらも、隙間から部屋の中を覗いた。
「特に何もないか・・・ん?この写真って、まさか!?」
巧はそれを見て、思わず驚きの声をあげる。そして、タイミング悪く善子が帰ってきた。
「何、やってるの?」
善子が巧に問いかける。しかし、巧は動揺を隠しきれずに善子に詰め寄る。
「お、おい・・・あれって!?」
巧は部屋の中の写真を指差して、善子に問いかける。善子は少しだけ微笑みを浮かべながら、写真を持ってきて答えた。
「あ〜、コレの事ね。どう?カッコイイでしょ!人知れず謎の怪物と戦う仮面の戦士!まぁ、私も最近知ったんだけどね」
善子はまるで自分の事のように誇っているが、巧にはそれを気にしている程の余裕が無かった。何故なら写真に写っていたのは、オルフェノクと戦うファイズの姿・・・そして、それらを遠くから見ているもう一体のオルフェノクの姿があったからだ。
「・・・善子。用事を思い出したから、悪いけど帰る」
巧は淹れたてのお茶を一気に飲み干すと、善子の制止の声も気に留めずにその場を立ち去った。足早にマンションを出た巧はすぐさまサイドバッシャーに乗り込み、再び内浦に向けて進路をとった。
「ようやくオルフェノクの謎に迫れるって事だよな・・・。
木場・・・やっぱり、お前も・・・」
翌日、Aqoursは早速堕天使の要素を取り入れた動画を撮影し、投稿した。今思えば、一言でもいいから止めておくべきだったと思う。
巧はそう思いながら、浦の星女学院の生徒会室で佇んでいた。
「こういうものは破廉恥と言うのですわ!!」
生徒会室にダイヤの怒号が響く。Aqoursのメンバーはもちろんだが、なぜ巧までここに居るのか?
「節度を持ってあーだこーだ。こんな格好をあーだこーだ」
ダイヤがさらにヒートアップする。いたたまれなくなったのか、ルビィが小さく謝罪をする。
「ご、ごめんなさいお姉ちゃん」
ルビィの視線に一瞬黙り込むも、その熱はすぐさま燃え上がる。
「キャラがたってないとか、個性がないと人気が出ないとか、そういう狙いでこんなことするのは頂けませんわ」
堕天使の要素を押し出した動画は、確かに順位が上がるがそれは一時的なものだとAqoursに言い渡す。
その言葉の通り、曜がパソコンでAqoursの順位を確認すると、確かに自分たちの順位が下がっていた。
「本気で目指すのならどうすればいいか、もう一度考えることですね。さあ、もうお戻りになりなさい。あなたはまだ駄目です」
ダイヤは巧以外のメンバーに戻るよう伝える。そして、その言葉の通りに室内にはダイヤ、巧、小原鞠莉が残された。
「さて、あなたには色々とお聞きしたいと思っていましたの。彼女たちはどうして今回のような奇行に走ったのか?」
ダイヤはAqoursの突発的な行動の真意を巧に問う。巧は直前に聞いた出来事を思い出しながら、その質問に答えた。
『でも、少しづつ皆のこと知って、全然地味じゃないってわかったの!それぞれ特徴があって、魅力的で、だから大丈夫じゃないかなって』
昨日の千歌と梨子の会話の中で話された内容らしい。千歌はリーダーとしてどこか責任を感じている、何とか結果を出そうと急いでいるといった様子だ。おそらく、それが今回の出来事の原因だと言えるだろう。
「・・・なるほど。そういう事でしたの」
巧が気づいた時には、ダイヤは静かに納得していた。鞠莉も「うんうん、分かるな〜!」と一人舞い上がっていた。
その様子を見て、巧は自分が考えていることを口に出していた事に気がついた。幸いにも聞かれて困るようなことは言ってなかったため、注意して言葉を選ぶ。
「まあ、あいつらなりに考えてやった事なんだ。良い考えってわけでもないが、前に進もうとしてる姿勢っつーか、熱意みたいのは分かってやってくれないか?」
巧の言葉にダイヤと鞠莉は“理解できないでもない”といった様子で聞いている。が、すぐにその姿勢を崩した。
巧の強い意志の篭った言葉にダイヤは遂に折れた。一方で鞠莉はというと、何かを考え込んでいるようで巧の言葉はあまり届いていなかった。
「・・・まぁ、全く理解できないとは言いませんが。あまり度が過ぎた事は彼女たちにとっても、プラスにはなりませんという事は理解して頂かないと困ります。あなたにも、ですわよ?」
ダイヤに釘をさされ、押し黙る巧。流石に自分でも責任を感じているので、思わず目線を逸らしてしまう。その時、ふと鞠莉と目があった。
「ん?マリーに何か言いたいのかな〜?」
鞠莉がからかうように言葉を投げかける。しかしその時、巧は鞠莉の背後から迫る触手に気がつき、直撃する直前に鞠莉の体ごと引き寄せる事で、何とか回避する事ができた。
「おい、大丈夫かよ!?」
巧は鞠莉に気遣いの言葉をかける。突然の出来事に驚いているのか、あまり上手く声が出せないでいる様子の鞠莉。
「黒澤!悪いがこいつを頼む!俺はあいつを・・・」
巧の言葉を受け取ったダイヤは、鞠莉の体を起こしながら、巧に跡を追うように強く頷く。
それを見た巧は、部屋の片隅に置いておいたカイザギアケースを持ち出して、生徒会室を飛び出していった。
巧は触手の正体を追い求め、校舎内から飛び出した。すると、そこで信じられないものを目の当たりにした。
「ウゥゥゥウウッ・・・!!」
そこに居たのは、馬を模した灰色の怪物“ホースオルフェノク”。決してその存在を忘れる事など出来る訳もなく、もう一度だけ逢えるならと切に願っていた友。
「お前・・・木場か?」
巧がそう問いかける。しかし、ホースオルフェノクは巧の言葉に気にもとめず、生成した剣を振りかざしながら、巧に急迫する。
「・・・ッ!?お、おい!乾 巧だッ!!分からないのか!?」
一瞬の差で何とか斬撃を回避すると、急いでカイザフォンに変身コードを入力する。
“9・1・3 Enter Standing by”
「仕方ねぇ・・・変身ッ!!」
呼び掛けても応える様子はなく、止むを得ずカイザへと変身する巧。
“Complete”
バックルから二本の黄色いラインが発現し、全身を包み込むように伸びていく。やがて、光が消えると同時にカイザへと変身が完了する。
同時にカイザフォンのミッションメモリーをカイザブレイガンに装填し、ブレードモードへ変形させる。
ホースオルフェノクとカイザ。両者の視線が交錯し、そして同時に走り出した。
「ウアアァァァァッ!!?」
「ヤアァァァァッ!!」
巧にとっても望まれない死闘が始まった。
Open your eyes for the next φ’s
「少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれてありがとね」
「どうして、堕天使だったんだろ・・・?」
「自分が一番好きな姿を…輝いてる姿を見せることなんだよ!!」
「君と話せて良かった・・・俺が、俺でなくなる前に」
第14話 死者の叫び