ゆらぎ荘の蹴る人と殴る人   作:フリードg

6 / 39
第6話 全員集合?

 一先ず……、一言で言えば大浴場内は 修羅場だった。予想通りと言えばそうなのだが、全くの予想通り、100%の的中である、と言うのも何処か悲しかったり、むなしかったり。

 

 そして、ここまでに至った経緯は推察ではあるが、何があったのかは推理は十分出来る。と言うより、予知出来ている時点で間違いないだろう。予想した本人(ホムラ)も、自信をもって言える。(別に、自信持てたって 嬉しくないが……)

 

 

 此処で何度か、しれっと出てきていたかもしれないが、改めて紹介をしよう。

 

 

 空中をふわふわ、と浮いていて、更におろおろ~ としている 明らかに人間ではなく、間違いなく幽霊である少女。

 

 ここ、ゆらぎ荘の地縛霊の《湯ノ花(ゆのはな) 幽奈(ゆうな)》。

 

 その容姿は、浴衣を着ている女子高生……と言えば当てはまるだろうか、目鼻が整った顔立ちに加えて、今は羽織る物を何も纏っていない為、……はっきりと見えてしまっている。整った顔立ちに相応しいスタイルの持ち主であると言う事が。

 おろおろとして、世話しなく両手を動かしているせいか、その起伏に富んだ身体が……、まぁ 所謂、豊満な胸が、擬音を付けるとするなら、《ぷるんっ×2♪》と左右に、上下に揺れている。

 

「………///」

 

 勿論、ホムラは、幽奈の身体は見ない様に、完全に視界からフェードアウトさせていた。それでも、若干は見てしまったから、思いっきり赤面させてしまったのだ。……まるで、呑子と酒の付き合いをしてしまったかの様に、真っ赤っ赤。

 

 この初心な反応は、このゆらぎ荘に来てから、一切全然変わらず、耐性を持てたりもしていない。 だから、そんなホムラを見て、《からかう者》がいたり、《ほほえましく笑う者》がいたり、《別にどーとも思わなかった者》がいたり、《憤怒の化身の如く怒る者》がいたり……、と言うのがパターン化されているのは、最早決まり事、決定事項、自明の理である。

 

 

 あ……、話が、少々それてしまったので 幽霊の幽奈の話に戻そう。

 

 彼女は、幽霊であるのに、とツッコミは無しにして……、湯に浸かっていた身体は まだ湿りを残していたのだが、見た目からも判る程 すべすべの肌、サラサラの髪……、つまり 彼女も十二分程の美少女に分類されている。そんな彼女を――コガラシが目撃してしまった、そこから始まったのだ。

 

 だがしかし……、色んな意味で、ゆらぎ荘のレベルは高位? である事が判る。と言うのは勝手な感想である。

 

 そして、修羅場たる現状を作り出す要因となった者は幽奈とコガラシだけではなく……、そして 先ほど乱入したであろう狭霧にもあった。

 

 ホムラが、狭霧を止めようとした理由は、ここの大浴場、温泉にコガラシが入っているであろう事。彼に貸した、入浴中ですよ~の表示もばっちりと引っ掛けているから、乱入はされないだろう、と安心しきっているであろうコガラシは 間違いなく全裸だった。

 そこで、幽奈とばったり遭遇したのだろう。……普段の幽奈の姿は、一般人であれば見る事は出来ない。見えたとしても、所謂白い靄がゆら~~と漂っている場面程度だろう。だが、コガラシはただの学生、一般人ではなく、霊能力者だ。

 幽奈の姿は、はっきりくっきりと 身体の隅々まで―――……と、これ以上は刺激的過ぎるので、割愛をしよう。コガラシにとってもだが、勿論ホムラにとっても。

 

 兎も角、総括すると コガラシが幽奈と風呂場でばったり出会い、見えないと油断していた幽奈だが、実はしっかりと見られてしまっていた、見えてしまっていた、と言う事。

 

 彼女は、思いっきり動揺してしまうと、その動揺が強ければ強い程、比例する形で ポルターガイスト現象を引き起こしてしまうのだ。

 

 その結果、発動したのが、幽奈のゲージ溜め必殺《真空・風呂桶(フロオケ)ン!》

 

 その強力な必殺技をモロに受けてしまったコガラシがすっ飛ばされてしまって、完全にノびてしまっている。……それも素っ裸で。そんな場所に正面からどうどうと入っていった狭霧が目撃してしまったのは、ナニなのか……、もう 言うまでも無いだろう。

 

「……ハァー、ハァー、ハァー……っっ」

 

 今も息を荒く何処か焦点の有って無い目をきょろきょろとさせているのは、狭霧だ。幽奈に続いて狭霧も、動揺しまくっている。もしも狭霧にまで幽奈の様な技を使えるのなら、ゆらぎ荘ごと吹き飛ばされてしまいそうだ。

 

「///っと、……ったく」

 

 幽奈の裸をちょこっと見てしまっていたホムラだったが、直ぐに気を取り戻して、狭霧にバスタオルを頭から被せた。

 

「あー……、コガラシはオレが移動させておくから。皆 外に出てて。……その、夜々、呑子さん、幽奈を、……いや、狭霧もだ。2人を宜しく」

「はいはーい! まっかせて~♪」

「うん」

 

 呑子は 酔っぱらっているくせに、ニヤニヤとさせていて(( ̄∀ ̄).☜こんな顔)。

 夜々は 手伝ったら ごはん強請ろう! と頭に思い描きつつ、せっせと働いた。

 

 そして、風呂場。

 

 いるのはホムラとコガラシの2人であり、とりあえず 引き摺って脱衣所にまで運ぼうか、と検討。1人で背負ったら 嫌なモノが自分の身体に……、と考えてしまったが、決してホムラは悪くないと思う。

 

 兎に角、沢山のタオルやらで、引き摺る時 掠り傷にならない様にと一通り巻いて、脱衣所にまで見事に完遂。

 

「ふぅ……、ったく 昔っから世話を懸けるんだから、コガラシは……」

 

 《×-×》☜ リアルにこんな顔してぶっ倒れているコガラシを見て、大きくため息を吐きつつも、何処か懐かしさを覚えるのはホムラだ。

 

 共に研鑽した修業時代を思い出す――と言う事だった。無論、決して良い思い出だけではないけれど。

 

「それにしても……、まぁ 良い位置に収まったモンだったな、……幽奈の投げた風呂桶」

 

 たまたまなのか、或いは色々と、誌面に乗せられない! いや、文章に残せない!! と天よりフォローがあったのか……、コガラシの丁度良い位置に、すぽっ! と収まっていて、最低限度は隠せる事が出来ていた様だ。……それでも、最低限度(・・・・)だから。狭霧たちには 色々と刺激が強いかったのも事実。

 

「それは兎も角、浴衣を着せる前に、扇風機……だな。のぼせてる可能性だってあるし……ん?」

 

 コガラシをバスタオル数枚で敷いた上に寝かせて 後扇風機を掻けようとした所で、気持ち良い風が身体に吹き抜けていくのが判った。そして、同時に声も。

 

「いつもありがとう。ホムラ君。色々と対処してくれて、すっごく助かってますよ」

 

 ニコニコ、と呑子とはすごい違う笑顔を見せて、お礼を言うのは、このゆらぎ荘の中居さんである。

 

「はは。いやいや。中居さんには いつもお世話になってますから。そこは お互いさま、と言う事にしましょう。それに オレの連れが迷惑を掻けたのは間違いないし……」

 

 最後の方は、はぁ、とため息を吐いてしまうホムラ。

 そんなホムラを見て、中居はもう一度にっこりと笑うと。

 

「あははは。ホムラ君、凄く汗かいてますよ。後は私が対処をしておきますので、汗を流してください」

「あ、でも 大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよー。私は 仲居なんですから。ずっと、皆さんのお世話をさせていただいてるんですし」

「…………そう言われると、凄い説得力ですよね」

「えへへ」

 

 中居さんは、笑顔を絶やさずに せっせとコガラシの後始末? をしてくれた。

 

 

 ここで、ゆらぎ荘の仲居である彼女の説明をしよう。

 

 彼女の名は……仲居である。勿論、旅館等の給仕接待をする職業の話ではなく、彼女の本名。

 

 《仲居(なかい) ちとせ》。

 

 見た目は……明らかに アレなのだが、驚く事なかれ ゆらぎ荘の最古参であり、この変わり者揃いの住人達の衣食住の世話をほぼ1人の細腕で切り盛りする敏腕仲居さんなのだ。当初こそ、ホムラも驚きを隠せられず、それとなく手伝ったり 色々としたりしていたのだが、彼女の手際の良さは神がかっていて、それを目の当たりにした為に、いろんな意味で 仲居さんには 頭が下がる思いだったりするのだ。

 

 

「じゃあ、すみません。後は宜しくお願いします」

「はい~。では、ごゆっくり」

 

 仲居さんは その身体の何処にそんな力があるのか……、コガラシの肩を持って座敷の真の方へと向かっていった。

 

 そして、ホムラも色々と汗をかいたので、それを流そうと 浴衣に手を掻けた。

 

「あ、そうだ。ちゃんと 表示、つけとかないと……、コガラシの二の舞になる可能性が……」

 

 しゅるっ、と帯を解いた所で、重大な見落としに気が付く。

 今の今さっきまで、大変な事態になっていたし、まさか 二連チャンは無いだろう、とは思うが用心に越したことは無い。

 

 そんな時だ。

 

『あ、ホムラさーん。ちゃんと、掛けてますからねー。ホムラさんが入浴中だと言う事も、ちゃんと皆さんに説明をしておきますから~!』

 

 仲居さんの声が、脱衣所にまで届いてくる。

 先の先まで読むその頭の回転力にも脱帽。……本当に。

 

「ほんとに、お世話になりますよ………。あぁ……、仲居さんがあんなに頑張ってくれてるのに、なんで 色々と起こるんだろ……」

 

 仲居さんに感謝をしつつ、何処か哀愁漂わせながら、温泉で色んな疲れを取るホムラだった。

 

 

 

 

 

 

 

   □ ◆ □ ◆ □

 

 

 

 

 

 コガラシは、辛うじて感じる事が出来る夢の中で、思い馳せていた。

 

———目の前が、真っ暗になって、更に真っ白になった。

 

 こういうのは、何時だったか、以前は何度も何度もあった。

 あれは、修業時代だ。

 

『全く、筋がなってない!』

 

 盛大に尻をばちっ!! と叩かれてしまう。叩いてくるのは、超スパルタな コガラシの師匠その2、である。目を回すコガラシを威風堂々と見下ろしているのだが……、その右手にはホットドックが握られていて、物凄く説得力に欠けてしまう。

 

『ホムラは、1度しごけば出来る様になったぞ!!』

『……あー、コガラシ? 気にするなよ。オレん時より、異常にハードル上げてるから。……さっきまでのオレとは、お子様ランチと満漢全席くらいの差があるから』

 

 ぼそっ、とそう言うのがホムラだが あまり説得力を感じないのは、これまで涼しい顔して 先を走っていたホムラの言葉だから、と言う理由があるだろう。

 

『ばかもん! 互いの競争精神を育もうとしてる時に、ネタバレすんな!!』

『うぎゃああああっっ!! め、めが、めがぁぁぁぁ!!』

 

 何処からともなく取り出したのは、黄色い容器。

 ぎゅっ とそれを握りつぶしたら、口から盛大にこれまた黄色い何か(・・)が、発射されて、ホムラの眼に直撃。

 

 そのおかげで、宛ら、某国民的長編アニメ―ションの 『バ○ス!!』の直撃を受けてしまった大佐の様な目にあってしまったのだ。

 

 目の前が真っ黄色になってしまったのは ホムラだが。

 

『コラァァ!! コガラシ! サボるな!』

『ぐえええっっ!!』

 

 追撃を受けてしまって、霧の彼方へ吹き飛ばされ……、真っ白と真っ黒の両方を味わう結果になってしまった。

 

 よく——、生きていたなぁ、と我ながら感心さえする。

 

 

 

 

 

 

   □ ◆ □ ◆ □

 

 

 

 

 

 はっきり言って、地獄の記憶だ。

 だからこそ、思い出してしまって、 はっ!! と目を覚ましてしまうのも当然だった。

 

 目を覚まさなければ——、あの悪鬼羅刹の師匠が目の前に仁王立ちをしているんじゃ……、と思えたからだ。

 

 だけど、その心配は杞憂となった。

 

「……あら? お目覚めですかーー?」

 

 目を覚ました光の中には——あの時とは天と地ほどの差がある笑顔を向けられていたから。

 

 いわば——天使に目覚めさせてくれた、そんな感じ。

 

 

 暫く、コガラシは放心をしていたのだが、ひとつひとつを思い出していった。

 

 

「え……、あれ……、確か ここはゆらぎ荘で、オレは ホムラと別れて風呂に入ってたら———。う~ん、あ、そうだ。あんたは?」

「ふふ、冬空コガラシさんですね?」

「え? なんでオレの名を……?」

 

 まだ名乗っても無かった筈なのに、と不思議に思ったのだが、直ぐに解消された。

 

「ホムラ君から沢山、沢山訊いてましたよ。それに、わたくしは ここ、ゆらぎ荘の仲居を務めさせていただいてますから。わたくしの名は、仲居――、仲居ちとせ……と申します」

「えっっ!! 仲居さん?? 君が??」

「はい~~ ゆらぎ荘の皆さんのお世話をさせていただいてるんです~~」

 

 あどけなさの残る笑顔を見せてくれた仲居さんだが……、ちょっと信じにくいコガラシ。

 後で、ホムラに裏を取ってみよう……と、頭を過ぎった所で。 ぱさっ と頭に何かが乗る感じがした。

 

「ほれ。汗を拭け」

 

 頭にかけられたのは、タオルだった。あの夢(悪夢)のおかげで、冷や汗をびっしりかいてしまっていた様だ。そして、タオルを渡してくれたのがホムラだ。

 

 そして、コガラシの疑問も解消される。

 

「仲居さん、どうも ありがとうございます。今日も良いお湯を頂きました」

「いえいえ、これがお仕事ですからっ。ホムラ君にも、いつもお世話になってますし。させてください」

 

 淀みない会話は、この目の前の幼い少女の風貌を擁した彼女が、間違いなくここ、ゆらぎ荘の仲居なのだ、と言う事を物語っていた。

 それに訳の判らない、意味のない嘘をつかないホムラだから、直ぐに納得も出来ていた。

 

 そんな時だ。

 

「おお~~、やぁ~~っと目が覚めた~~~??」

 

 襖が がらっ と開き、そこから入ってきたのは 一升瓶を手に持った呑子。

 

「君が、コガラシちゃんね~~! 私も訊いてるよー♪ お近づきの印に君もいっぱいどーぉー?」

 

 ぷはー、と明らかにさっきまで、飲んでたろ! と言う為体。だが、これがスタンダードである事は、コガラシ以外は判っているから、とりあえず スルーだ。

 だが、その隣の復活した狭霧は そうはいかない。

 

「呑子さん。彼は未成年ですよ!」

 

 狭霧は、しっかりと止めた。

 

「えーー、お堅いなぁ、ほーら、さぎっちゃんだって、お酒の力りよーした方がよくなーい? 以前だって~~♪」

「わ、わぁぁぁ!! い、言わないでくださいっっ!!」

 

 呑子が何やら思い返す様に口にするが、即座に狭霧に止められた。

 何のことか、それに状況も完全にはつかめなかったコガラシは ただただ首を傾げるだけだった。……その隣で、ホムラは何処か視線を外していたが、、それに気づいた者は、呑子だけである。ニヤニヤ~と笑っていたのだが、一先ず 暴露されることは無かった。

 何故なら、コガラシが先に訊いたから。

 

「えーっと……、あんたらもここの住人なのか……?(確か、オレ達以外は皆 女のひと(・・)、とは訊いてたけど……)」

「そーよぉ! アタシ、荒覇吐 呑子! キミは コガラシくんだよねーー! よーろしくねぇ~ぃ♪」

「は、はぁ……冬空コガラシっす……」

 

 コガラシは、眼のやり場に困ってしまっていた。

 とりあえず、呑女が酒癖が悪そうなのは理解できた。……そして、盛大に肌蹴てしまっている事も。

 

「(み、見えとるがなーーーっっ!!)」

 

 ぐるんっ!! と視線を外へと向けてみないようにするコガラシ。

 その気持ちはよく判る。……非常によく判るのはホムラだ。

 

 ホムラ程ではないが、コガラシも色々と自重はするのだ。

 

 そして、もう1人……自己紹介が始まる。

 あいさつ代わりに放たれたのは くない!

 

 びゅんっっ! と言う風切り音が聞こえたかと思えば、畳に どっっ! と何かが突き刺さっていた。

 

「は、はい………!?」

「冬空………コガラシ…………」

 

 目を血走らせているのは、狭霧だ。

 

 落ち着いたとはいえ、温泉での光景を忘れた訳ではない様で、その見てしまった羞恥を怒りで誤魔化す様に青筋を立てていた。

 

「1つ……、覚えておけ、もしも――、貴様がこのゆらぎ荘の風紀を乱すような行いをした場合……、この雨野 狭霧が天誅を下す!! とな……」

 

 いつもの倍増しで、表情が怖い狭霧。

 2本目のくないを構えて、その眼は光っていた。……眼の光がくないに反射し、更に鈍く、光っている様にも見える。

 

「は、はぁ!?」

 

 当然の事ながら、刃物を突然投げられてしまって動揺してしまうのはコガラシだ。

 一度も無かった、と言う訳ではないが 初対面でそれは無いだろう、は思う。

 

「うん……出会いが悪かった、諦めろ。コガラシ」

「ええっっ!?」

 

 慰める様に、ぽんっ と肩に手を置くホムラ。

 そして、等の狭霧はと言うと。

 

「んも~、さぎっちゃんてば、いきなり辛辣すぎぃ~、それに、ホムラちゃんとは 随分違うしぃ~~」

「そ、そんな事無いですっ!! ホムラの時だって、私は しっかり釘さしました!!」

「あー、呑子さん? 間違いないぞ。釘、ってか くないだけど…… ああ、それに オレも似たような事、言われたし」

 

 やれやれ、と首を振るホムラ。

 それを訊いた狭霧は、ぼひゅんっ! と頭に湯気をだしていた。色々と(・・・)思い出してしまった様だ。

 

「ほ、ホムラ!! き、貴様は黙ってろっっ!!」

「うおっ! って、こら、あぶないだろ! それに、ゆらぎ荘を壊すな」

 

 ホムラは、何とか回避する事が出来たが、今度は木の柱に刺さってしまったから、思わずツッコミを入れる。人に刺さる方がまだ良いのだろうか……? と疑いたくなるのも仕様がない。

 

 ぽへ~、と見ていたコガラシだったが、突然 びくっっ!! と身体を震わせた。

 何故なら、ぺろっ、と頬の辺りを舐められた感触があったからだ。丁度、狭霧にくないで切り傷を付けられてしまった場所を。

 

「なななっ///、ちょ、なにすんだ! てめー!?」

 

 ほっぺにチュー、ではなく 本当にぺろっ! となめられてしまったのだ。……何処かエロい……と思った。

 

 そして、そのなめた本人は 夜々である。

 夜々は、コガラシに憤慨されて、 顔をムッ と顰めると。

 

「……せっかく、夜々が治してあげようと思ったのに」

 

 怒った様子で、コガラシから離れていった。

 

 

 色々と騒がしくなってしまい、なかなか収集がつかない状態だったのだが。

 

「はいはーい。皆さん。コガラシ君もついたばかりですし、今日は疲れた筈ですよー。もう、お体を、休めてもらいませんか」

 

 ぽんぽん、と手を叩きながらそういうのは、仲居さん、である。

 

 まるで、大統領命令? 色々と騒いでいた狭霧や呑子は、一先ず騒ぐのをやめたのだ。(と言っても、呑子が酒を飲むのは辞めてないが)

 

「ふん……。時に冬空コガラシよ。貴様、何号室に越してきたのだ?」

「部屋、か。空いてるの、4号室だけだって、ホムラから訊いてたし、そこにしてもらった」

「ああ、そうだったな」

 

 そう言った。

 

「4号室、か。……」

 

 狭霧が、何やら俯きながら考える。

 

「ん? 何かあるのか?」

 

 そう、コガラシに訊いた途端に、くないを ばっ!! と出され、目先に切っ先を向けられた。いや、寧ろ刺す気満々だ。

 

「不埒な真似をすれば、天誅する! 覚えておけ!!」

「何の事だ! って、何度も何度も刃物むけんなーーーっ!」

 

 コガラシとて、武芸を身に着けているのだ。何度も何度も刺される程、護身がなってない事は無い。真剣白羽どりの要領で、攻撃を回避した。

 

「はぁ、とりあえずは 随分と仲良くなったもんだな。一応、安心だ」

「この状況の何処に、安心する要因がある、っていうんだーーホムラ!!」

「だだ、ダレが仲良くだ!! ホムラの口から言われたくない!!」

 

 盛大にクレームをつけられたホムラだったが、一先ずほっといたのだが……。

 

「とーーりーーけーーせーーーっ!!」

「こらっ、狭霧! もう、今日はくないは止めろ。直すの大変なんだから。 せめて コガラシにしろ!」

「だぁぁ、長年の連れを売ってんじゃねぇぞ!! ホムラ!!」

 

 またまた、乱闘が始まりそうになった。

 

「あっはっはっは~♪ ほ~んと、ホムラちゃんは、ど~んかんさ~~んっ♪ コガラシちゃんも 可愛いし~、楽しくなりそうね~?」

「くぁ……、夜々、やっぱり眠くなってきた……」

 

 その様子を楽しそうに見ていたのは、呑子と夜々、そして ニコニコと微笑みながら見守っていたのは、仲居さん。

 

 

 だけではなく――――。

 

 

『……とっても、楽しそうです…………――――』

 

 

 物陰から、今は出るに出れない少女が、羨ましそうに羨望の眼差しを向けていたのだった。

 

 

 

 

 




Q:「投稿早い!? どーした!!」

A: 頑張った。でも ずっと続くとは思えない。



Q:「やっぱり、仲居さんには 頭上がらないの? ホムラ君も」

A: 男掴むなら、胃袋を、じゃないけど 衣食住、非常にお世話になってるから 人としては当然だと。



Q:「ゆらぎ荘の幽奈(・・)さん なのに、幽霊な彼女の出番少なくない?」

A: 後、もうちょっと。



Q:「ってか、真空・風呂桶~って、何さ?」

A: ……………………………………………

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。