ゆらぎ荘の蹴る人と殴る人   作:フリードg

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第2話 コガラシとホムラと師匠②

 

 

「ああ、わかってるじゃねぇか。そうさ、目つきがどうとか言って突然襲い掛かって来たんだよ! あたしゃ 生まれつきこんな目つきだってんだ!」

「やっぱり……、血気盛んな若者だから、堪忍してやってくれないかな?」

 

 ホムラが言う師匠、と言う人物は、コガラシの師匠でもある八咫鋼。目つきの鋭さはコガラシにも通じる所がある。……ホムラは少々違う様だが。

 

「師匠!」

「ま、マトラさん!? そんな、なんてことを……」

 

 遅れてやってきたコガラシと幽奈。

 惨状を目の当たりにした幽奈は唖然とする。コガラシは師匠の事がわかり、状況も察する事が出来たが、幽奈はそうはいかない。マトラが攻撃されて、傷付けられたようにしか見えず、その元凶である頭上の女性を睨みつけていた。

 そして、ポルターガイストで助けようとするが、それをコガラシが手で止めた。

 

 

「幽奈。落ち着いてくれ。……まぁ、やり過ぎ感はあるし、過剰防衛だけど…… マトラがいきなり攻撃したって」

「おうとも! あたしゃ、なーんにも悪い事してねぇぞ!」

「逢牙師匠……?」

「わ、悪かったって。そんな顔しないでくれよ。アイツ(・・・)を思い出しちまうじゃねぇか……」

 

 ホムラに怒られた? 女性はマトラを解放した。

 そのマトラをしっかりと受け取って、ホムラも下へ降りる。

 

 

「わぁぁぁ、ゆ、ゆらぎ荘が……!!」

「は、半壊!? マトラの仕業か!?」

「あらぁ?」

 

 

 心配した皆が続々とゆらぎ荘へと戻ってくる。

 マトラの仕業と考えて、青ざめるかるらだったが、とりあえず事情を簡単に説明。その後、応急措置としてこゆずが 葉札術で見た目だけでも修復。

 

 

「あ、ありがとうございます。こゆずさん! とりあえず、これでご近所さんに心配かけずに済みそうです!!」

「あはは。別に良いんだよ! でも、この変化は一日しかもたないんだ」

「十分ですっ! 何とか頑張ってみますから」

「申し訳ないのじゃちとせ殿……。わらわもマトラにはしっかりと言い聞かせておこう……」

 

 

 ゆらぎ荘 半壊状態の問題はとりあえず 今は良しとする。どう立て直すかは、今後の課題だ。

 

 それよりも気になるのは……

 

 

「あーっはっはっは。久しぶりの両手に花だなぁ! 久しぶりじゃないか。ホムラにコガラシ! お前ら随分背ェ伸びたじゃないか~。うんうん、イイ感じだ」

「ちょ…… や、やめろって」

「両手に花って 男側に使う言葉だったっけ……??」

 

 

 ぐりんぐりん、とコガラシとホムラに腕を回す。

 恥ずかしそうにコガラシはしている。勿論、ホムラも。……そして、驚くべき所は ホムラだった。

 

 確かに、頬を赤く紅潮させている。……でも、普段のそれとは比べ物にならない程だった。いつもなら もっともっと顔を赤くさせていた筈だ。湯気まで出して 最後は気絶する程な筈。でも、そんな気配は見えない。

 

 

「……どういう事だ?」

「え、えっと…… 夏山君、結構普通にしてない……?」

「いつもはバタンキュー! なのにねっ!」

 

「コガラシさんの初恋相手……っ。わ、わたしとは真逆ですぅっ……」

「歳上がいいんだーー。巨乳がいいんだーーーっ!」

「うぐっ、年に関してはどうする事も……。コガラシ殿は年上好きじゃったのか……」

 

「うっ。アネゴって感じなの」

「冬空の師、ともなれば 貴女も御三家の一角。八咫鋼なのか?」

 

 

 朧の言葉、八咫鋼の単語を聞いて反応した。

 

 

「おうとも! あたしは六代目八咫鋼。魔境院 逢牙さ!」

 

 

 コガラシが七代目、と言う事になるのだろう。

 ただ、師匠と教えを請うたのは事実だが、八咫鋼を正当に受け継いだかどうかと聞かれれば、なかなか難しいものがあるが。

 

「ふむ。成る程……、ではもう1つ。夏山ホムラは 《八咫鋼ではない》と聞いていたが、それはどういう……?」

「うん? ああ。簡単な事だ。コイツには あたしの他に師がいてな。そいつが先だった、って事だ。あたしは ある程度引き継いだだけで、術を教えたって訳でもないからねぇ。八咫鋼とは違うってのはその辺からだろうよ。つーか、ちゃんと説明してなかったのかい? ホムラ」

「する必要、無かったし……。それに、色々と思い出してしまうから」

「………成る程ね。ま そういうこった。コイツがあんまり言わないってんなら、あたしも言うのは止めとくよ。ホムラに嫌われちまうしな!」

 

 

 両手を腰に添えて笑う逢牙。

 目つきこそあまり変わらないが、凄く楽しそうだ、と言う事はよく判った。

 

「あの、では今日はどうしてゆらぎ荘に……?」

「ん? ああ。久しぶりに弟子たちの顔を見にね。元気そうで何よりってな!」

 

 ぐりぐり、と再び腕を回す逢牙。

 もういい加減放してくれ、とコガラシとホムラは、逢牙の呑子に勝るとも劣らない豊満な胸から脱出を果たした。

 

 

「こっ、コガラシ君とはどこで出会ったの!?」

「コガラシ殿とはどのような修行を!?」

「わ、私はホムラの事が気になるが………。コガラシの事もそうだな。八咫鋼については特に」

「ふむ。私としては、コガラシもそうだがやはり、雨野狭霧の言う通り夏山だな。あの魔境院の胸に挟まれても気を失わなずにおける術を知りたい。《最後は一緒》が一番良いと、書物でもあった故に」

「お、朧! 何馬鹿な事いってるんだ!!」

「な、夏山くんは、純情過ぎなだけで、そんな術とかないんだよっ!! き、きっと付き合いが長くて……っっ~~~(な、なら長くあんな風に……!??)」 

 

 

 一斉に矢継ぎ早のリクエストである。目を丸くさせていた逢牙だったが直ぐに笑顔になった。

 

「おいおい、なんだい? あんた達。あたしら師匠の2人がいなくなったからって、こんな沢山の可愛い娘囲ってたのかい?」

「囲ってねぇって」

「……同じゆらぎ荘で泊まってる仲間だよ。たらし見たいに言わないで」

「かっはっはっは。ま、あたしは兎も角、アイツが怒っちまうかな?? 自分の子っぽいトコもあったしね。ま、良い! そんじゃ、2人の昔の話、してやるさ!」

 

 

 

 わーい!

 

 と皆いろいろと興味があったので、この話には誰もが関心があった。

 本人には聞きづらい事でもあり、少なからず気に咎めるが、それでも 本人が止めようとしてる気配は無かったので安心できたりもした。

 

 

 

 

 

 

 始まるは、魔境院の物語。……そして、コガラシの過去。

 

 ある日、コガラシは逢牙を庇って霊に 霊魂を喰われ死にかけた。

 それを助けたのが逢牙だった。ただの囮捜査みたいなものだったのだが、それを勘違いしたコガラシがやられてしまった、と言うのが真相である。

 

 そこで色々とあって、コガラシは逢牙の弟子となる。

 

 逢牙が助けた事によって、少なからずコガラシの霊魂に逢牙の霊力が混ざり、幽霊を触れるようになったからだ。様々な霊に憑りつかれ、人生を狂わされたも同然だったコガラシは、そこから弟子入りを志願。

 

 そこからは、マンツーマンで鍛えに鍛える毎日。最強の一角である逢牙との組手。

 コガラシは霊体にはまだまだ触れれないので、ただただ一方的な暴力だったが、どうにか克服した。(一番最初に触れたのが、巨乳な胸。と暴露されたので、そこから巨乳派? になったのでは、と周りから推察をされた)

 

 

「あっはっは。そんでホムラが登場したのはね。裏世界の武闘大会だったってのさ」

「あらあら、少年漫画みたいねぇ?」

「あたしは コガラシを鍛えてやって、それなりに実力をつけてやった、って思ってたんだが、ホムラにはコテンパンにやられちまってね。そんで、その大会でリベンジ! って意気込ましたんだが、ホムラのヤツは出ないって言っててさ」

「……元々、オレはただの見学と言うか、観戦しにきただけだったのに、こっちと(・・・・)いきなり意気投合して 絡ましたんだろうに……」

「あっはっはっは。そうだったかな」

 

 

 楽しそうに言う逢牙だったが、突然 組手をさせられて正直迷惑だったのはホムラだ。

 コガラシに関しては、同年代、同じ子供同士だったって事もあって興味はあった様子。ただ、ボコボコに負けたので、そのあと折檻されてしまって、嫌な思い出になったのも事実なので、苦虫かみつぶしたような顔になってしまっていた。

 

 

 

 そうやって、色々あって最終決戦。

 超越者と呼ばれる強者一角でもある妖怪ザクロ。御三家にも匹敵する力で、逢牙を降し、そしてコガラシ迫った。

 

 だが、コガラシはそれを返り討ち。

 

 その成長速度をみたホムラは目を見開いて驚いていたんだ。初戦の時とは比べ物にならない程の実力。

 

『アイツとまたやってみたいって顔だな。ホムラ』

『……別に』

『コガラシはやればやる程強くなる。魔境院の秘術はそういうもんなんだよ。この大会で加速度的に成長するなんて 別に驚くほどの事でもないさ』

 

 ここで強くコガラシ興味を持ったのがホムラだった。

 

 まだまだ、力の差があった筈だった。でも、今やればどうなるか判らない程の力を得た。ここで燃えるのがやっぱり男の子、と言う事だろうと横にいる銀髪の女性は笑っていた。

 

 

 

 

 

『んじゃ、次はアイツの所に行ってみるか。ホムラのいた世界にもいけるし、一石二鳥だな』

 


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