ゆらぎ荘の蹴る人と殴る人   作:フリードg

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大変遅れてすみません……。m(__)m
一から順番に更新出来れば一番だったんですが……。書いてみたいな、と思ったのでとばしてしまいました。


原作14巻 より 第1話 コガラシとホムラと師匠

 

 

「初恋…… ガチで答えなきゃいけねぇのか……??」

 

 

 呑子考案の女王様ゲームを開催していたゆらぎ荘の面々。

 

 夏の旅行で沢山の女の子たちで海へと来ていた。

 いつも通りのゆらぎ荘のメンバーに加えて

 

 京を束ねる大妖怪 大天狗の娘《緋扇かるら》

 京最高戦力の一角 大妖怪 鵺《巳虎神マトラ》

 

 コガラシに振られても尚、めげるコトなく諦める事なくアタックを続けているかるらは、こんなイベントを逃す筈もなく、方やホムラ目当てなマトラも同じく。

 今日こそ 力比べを! と息巻いてついてきていた。

 

 勿論、遊ぶ事が大優先なので そんな物騒な事にはなるわけもなく、とりあえず マトラもかるらも表向きは大人しくしている。

 

 そこで始まったのが 先ほどもあった通り 呑子の女王様ゲームである。

 

 

 こゆずが女王になり、命令は恋の質問。『3番の初恋の相手はだれか?』と。

 その3番がコガラシなのだ。

 

 

 そんな内容に大注目。コガラシはコガラシで思わせぶりな返答だったので尚更だ。

 

 ばちばちばちっ、と火花が飛ぶのが判る。

 幽奈、かるら、ひばり、朧……と。

 

「そのくらい良いんじゃないか? ……減るモノでもないだろうし」

「他人事だからって……」

「ま、実際にオレが当たった訳でもないし。そりゃ他人事だよ」

「うぐっ……」

 

 ホムラに焚きつけられる形で、コガラシは頭を掻きながら 決心した。

 

「オレに初恋の相手がいるとすりゃ……師匠だ。たぶんな」

「まぁ、…………だろうな」

 

 コガラシの一言に動揺が走る。

 ホムラが否定してない所を見ても 信憑性が更に増す。

 

 コガラシの師匠は此処にいる誰もが知っている。

 

 

《御三家の一角 八咫鋼》

 

 

 人の身でありながら、神々の霊力を遥かに凌駕すると言う存在だ。コガラシの出鱈目な力も、その師匠が御三家の一角なのであれば納得する。

 

「なるほど。では夏山ホムラも同じ師と聞く。つまり、冬空コガラシとは こいがたき、と言うヤツなのだろうか?」

「んなっっ!!」

 

 

 ここで爆弾発言をするのは朧である。

 コガラシの師匠については以前のかるらやミトラの一件で把握されていたが、ホムラに関しては曖昧なものだった。

 

 師匠と言うのは間違えてはいないが歯切れの悪い返答。

 

『確かに、そうでもある』

 

 と。

 それだけでそれ以上何かを言う事はなかったのだ。と言うより、色々とトラブルが重なってしまって聞く機会が無くなったというのが本当の所である。

 

 

「ホムラ………」

「夏山君………」

 

 

 千紗希と狭霧の視線が集まり、その横で目をキラキラとさせているのはマトラだ。

 

「八咫鋼とおんなじ師匠ってんなら、ホムラのヤツが強いのも頷けるよな! よっしゃ、次はあたしと勝負だな!」

「いや、マトラ。なんでこの流れで勝負って事になる??」

「そうよぉ。まずは女王様にならないとぉ」

「しょーがねーな! んじゃ次々! さっさといこうぜ!」

「ちょっと待つのじゃ!! コガラシ殿の初恋の話は!?」

「あんまキョーミねーし。ま、ホムラのヤツだったらちょっと出てくるかもだけどな」

 

 マトラが強引に話を進めてしまった為、有耶無耶になってしまった。

 とりあえずゲームは進んでるのでそれ以上何かを追及するのは無しにした。女王になれば話は別なので、次のターンに集中である。

 

 

 そして―――選ばれたのはマトラ。まるで あらかじめ決められていたかの様だ。

 

 

「っしゃぁぁ! んじゃ、ホムラ! バトレ!」

「……番号指名だって」

「えー、別にいいじゃん!」

「ダメよぉ。女王様ゲームのルールは絶対なんだからぁ」

「そ、そうだよ! 名前指定有りにしちゃったら、色々と大変じゃんっっ!!」

 

 色々と周りから反対されて、どうにかマトラは納得した。

 そして、念には念を入れて、透視でもしているかの様にホムラの持つカードを見続け、意を決して言った。

 

 

「んじゃ、5番がアタシとバトレ!!」

 

 堂々とルールに則り指名した。

 そんなマトラに呆れつつ言うのはかるらだ。

 

「はぁ。マトラ。京妖怪、体術最強のマトラと戦える者など、呑子殿くらいじゃろ? ホムラ殿を狙っておるようじゃが、女性に手を上げる事を禁とする、芯を持った紳士じゃろう? 中々叶わぬと思うぞ?」

「んっん?? そりゃそうだけど 女王様の命令は絶対だろー? ちょっとくらい良いじゃん。な? ホムラ」

「はぁ……。なんでこういう時に限ってドンピシャでオレに当たる?」

「おっ!? よっしゃーーー! マジで5番か! 良いじゃんヤローゼ!」 

 

 ぐわっ! と腕を肩に回してくるマトラ。

 それを黙ってみたりはしないのが 狭霧である。

 

「近づき過ぎだーー!!」

「おっ!? 雨野とももっかいやってみたいと思ってるぜ! 一緒にやろうぜ!」

「ちょっ、コラ!! わ、わわ」

「うぷっ…… む、むぐっっ///」

 

 マトラはホムラと狭霧を巻き込んで腕を回した。

 頬を擦り合わせる様に、それでいて自身の豊満な胸に顔を埋める様に。……女性耐性がまだまだ皆無に等しいので、ただただ顔を真っ赤にさせてされるがままになってしまった。(いつも通り)

 

「んじゃ、海の方でやろうぜ! この辺じゃ迷惑かかってしまうしな! 全力で一本!」

「えぇ…… ほんとにやるの?」

「女王様の命令だぜ~♪」

「はぁ…… ん?」

 

 心底げんなり、としてたホムラだったが ふと、視線を変えた。その方向は……ゆらぎ荘の方角である。

 

 

「……なんだ? 霊信樹に反応……?」

 

 ホムラは身体を持ち上げる。霊信樹とは以前 何度かゆらぎ荘に襲撃の類があったので、用心の為 ゆらぎ荘の庭にホムラが植えたものだ。ゆらぎ荘から離れ過ぎたら効果がやや薄くなるが感知するには問題はない。

 

 問題なのは……ここまで離れているというのに、はっきりと大きく感知できる程の強大な何かがゆらぎ荘にいる、と言う事だ。

 

 

「マトラ、ちょっと待っててくれ。ゆらぎ荘に何かが、来た反応がある」

「へ?」

 

 その後、ホムラからある程度の説明を聞いたマトラは、興味津々! と言わんばかりに目を輝かせた。

 

「おおっ、何か凄いヤツがゆらぎ荘にいるって事か!? なら、あたしが戻ってみてきてやるよ!」

「はっ?」

「おひいさん! 頼む!」

 

 マトラの行動の方が早い。

 ぱっ、とホムラと狭霧を解放すると、かるらの元へ。

 

「え、ええっと…… ゆらぎ荘に誰かがいたとして、壊さないでくださいね?」

「勿論だぜ! ちゃんと空の上でやるからよ!」

「そういう問題じゃないのじゃが……。仕方のないのぅ」

「い、いや ちょっと待てって。こんな遠くまで感じるのが異常なんだから、もっと注意して……あ」

 

 

 止める間もなく、マトラは姿を消した。かるらが使用した 神足通門 を潜ってゆらぎ荘へ。

 

「はぁ…… ったくもー」

「大丈夫じゃろ。マトラは京妖怪最強ゆえに。何かあったとしたら、直ぐに戻ってくる。……それよりもまず、コガラシ殿の初恋の話じゃーー!」

 

 かるらの一言で、コガラシの方に何人か集っていった。マトラの事は一先ず置いといて。

 

 

「冬空の師は霊だと聞いたが、どの様なつきあいがあった?」

「あ、私も聞きたい! どんな人だったの!? まさか、まだ好き!?」

「あ、いや 何年も前のことだしな」

「ならば、どこまでの関係だったのじゃ!? ホムラ殿が恋敵とは如何に!?」

「いや、別に恋敵とかじゃねーって……」

 

「もぉ~~! さっきから言ってるでしょぉ! 女王様になってから質問だってぇ~!」

 

 

 楽しそうに話している間も、ホムラは ゆらぎ荘の方が気になっていた。

 

 ここは、マトラの後を追った方が良いのでは? と。かるらの言う通り マトラは京妖怪最強と呼ばれる鵺の妖怪。半端な相手では話にならないだろう。……でも、何処か気になった。

 

「………あの気配って、まさか」

 

 と記憶の奥を呼び起こそうとしていた時だ。

 

 凄まじい爆音に似た何かが、かるらが作った神足通門の先から聞こえてきた。

 

 

「な、なに? 今の!?」

「むぅ、神足通門の先からじゃ」

「ま、まさかマトラさんが何かを壊したり……??」

 

 

 皆が驚いている間に、一足飛び足で ホムラは神足通門へと飛び込んだ。

 

「ホムラ!?」

「あ、コガラシさん! 私達も!!」

「ああ!」

 

 ホムラが向かったのを見て、遅れながらもコガラシ、そして幽奈が飛び込んだ。

 

 

 

 そこに、飛び込んできたのは 半壊したゆらぎ荘。そして――屋根の上にいる2つの影。1つは気絶しているマトラと、そのマトラの首を掴んでいる影。

 

「なっ……」

「マトラ……さん」

 

 

 コガラシ、幽奈が驚き固まっている間にホムラは既に行動をしていた。

 素早く跳躍し、その影の元へ。

 

 

 

「多分、マトラが先に仕掛けた。それで返り討ちにした。 貴女が意味もなく暴れたりしないのはオレも良くしっている。……マトラにはきつめに叱っておくから、とりあえず下ろしてやってくれないか? 八咫鋼の師匠」

 


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