ゆらぎ荘の蹴る人と殴る人   作:フリードg

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すいません。短い上に色々と忙しくて 更にスランプ気味です。


第26話 猫神も大好き♪

 

「ねぇ、ホムラー……」

「ん? どうした 夜々」

 

 

 それは あの豪勢な夕食が終わった後の話。

 夜々がホムラの部屋へとやってきていた。普段だったら、何か霊的な? 妨害が入って2人きりになる様な状況にはならないのだが(確信)、今回は何処か違った様だ。

 

「その、夜々…… コガラシとも仲良くしたくて……、でも どうしたら良いのかもよく判らなくて……」

「ん? コガラシと……? ああ、なるほどな」

 

 夜々の話を訊いてホムラはにこっと笑った。

 この時点で大体察したから。

 

「夜々。コガラシの魚料理、美味しかったよな?」

「え……、うん。とっても美味しかった。猫神様にも食べてもらいたいって思ってるの」

「だから また、食べたくなった時どうやって頼もう、って考えてるって事か。夜々は結構人との距離感を気にするもんな。オレの時もそうだったし、コガラシと知り合ってまだ日が浅い。気軽には頼みにくいか」

「うー……うん。そーだケド」

 

 夜々の頭をゆっくりと撫でるホムラ。夜々は気持ちよさそうに目を瞑るのだが、ちょっと違う指摘をされたから顔を直ぐにあげた。

 

「でも違うのっ! 夜々、ホムラのご飯も好きだから! ホムラの事も好きだから! その……なのに、コガラシの事を……」

「………?? んん? どういう意味だ?」

 

 夜々が言っている意味が段々よく判らなくなってきたのはホムラだった。好き、と言ってくれるのは嬉しいが、本質が判らず 首を傾げる。

 

 最初は コガラシの料理がおいしくて、もっともっと食べたい、と言う食欲が夜々を動かしていると理解できた。でも、先程ホムラが行った通り、夜々は人との距離感を気にするし、何カ月かの付き合いがあるホムラは兎も角、まだ知り合って間もないコガラシに気軽に頼めないのが現状。

 だから、ホムラは思って手を貸そうとしたんだけど…… 何やら違う様だ。全部違う、と言う訳ではなさそうだけど……、何か違う様だった。

 

「うー……、もうっ 知らないっ」

 

 夜々はそう言うと駆け出していった。

 外に出ていく寸前の所で、ホムラは言う。

 

「お、おーい 待ってくれって夜々。……無理しなくていいからな。アレだったらオレも一緒に頼んでやるから」

「う………っ」

 

 夜々の心は揺れる。

 ホムラが一番好きなのは間違いない。でも、コガラシの料理も好きになって食べてみたいと強く想う。……それは ホムラに悪い事ではないのか? と夜々は思っていた。つまり言葉にすると浮気の類を自分自身に言い聞かせてる模様。その様な間柄じゃないんだけど 夜々は気にしていると言う事だ。

 でも、……でも 幾ら気にしていても それ以上に勝るのが美味しいものだ。

 

「うー。むぅ…………。もうっ頼んだから! ホムラ」

 

 最終的に夜々が根を上げた? ようだった。

 

「おう。任せとけって」

 

 と言う訳で、今すぐ~と言う訳ではないが 夜々と一緒にコガラシに頼みに行く事なって夜々とはここで別れた。

 

 そして自分の部屋へと戻る途中 ホムラは この時ここに来たばかりの事を思い返していた。

 

 夜々とは そこまで話す間柄ではないのは言うまでも無く、ひょんな事から仲居さんの手伝いをする、と言う事で料理を振る舞ったら 夜々の見る目が変わり、どんどん接近・接触する様になってきた。

 以前に温泉に侵入してきた事もあった。顔を真っ赤にさせて逃げるホムラ。そして追いかける夜々と狭霧。

 

 と色々とあって今の信頼関係(笑) があったりする。

 

 

「ホムラ」

「ん? ああ、狭霧か。どうしたんだ?」

 

 道中でばったりと出会ったのが狭霧。狭霧も丁度部屋へと戻ろうとした所だった様だ。

 

「いや……、夕食の件だ」

「ああ。随分と盛り上がったよな。仲居さんが帰ってきて凄く戸惑ってた気持ちがよく判る……ってもんだ」

 

 非常に豪勢な夕食。仲居さんがいなかった期間が色々と大変だった(主に食事)から、最後の夕食は鬱憤を晴らさん勢いで食べては騒ぐ大宴会だったんだ。

 

「いや……、私が言いたいのは アレだけ大見得を切って、やはり 最後はホムラに。……、それにコガラシにも 迷惑をかけた。その詫びをしたかったんだ」

 

 何処となく表情が暗い狭霧を見て、ホムラは一瞬だけきょとんとしていたが 直ぐに笑った。

 

「気にする事は無いよ狭霧。楽しかったから。……ここは毎日が楽しい。それだけでオレには十分過ぎるからな」

 

 ホムラは そう言うと狭霧の頭を撫でた。

 撫でられる狭霧は 数秒間呆然としていたのだが、段々顔を赤くさせて。

 

「っ! な、何をするんだ! 子供扱いでもするつもりか!!」

「っと、悪い悪い。不躾だったな」

 

 ホムラは直ぐに頭を離す。そして狭霧はそっぽ向いた。

 

「…………ふんっ」

 

 必死に赤い顔を、照れてしまってるのを悟らせない様にして。

 ホムラはそんな事をしなくとも気付かないと思うのだが、そこはご愛敬。

 

「さて、と。明日はコガラシの焼き魚、だな」

「む? それは何の話だ?」

「さっきの夕食だよ。夜々がコガラシの料理を随分と気に入ったみたいなんだ」

「ああ、そう言う事か。夜々ならそうだろう」

 

 食べる事が大好きな夜々の事は狭霧もよく知ってるから納得をしていたのだった。

 

 そして それ以上に好きなのは…… 目の前の男だと言う事も知ってる。だから前回のホムラとの件。つまり夜々がホムラに色々と迫ろうとしてた事も。 

 

 

 

「……オレの時みたいに、色々と暴走されても困るだろ? 狭霧も怒りそうだし」

「っ……!! だからいつも言ってるだろ! 夜々の裸、婦女子を辱める等と、この私が許さん!!」

「こっちこそいつも言ってるだろっ! ぜーーーんぶ冤罪、無罪だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日の夕食時。

 

 

 

「ほら、夜々。できたぞー」

「!」

 

 焼き魚を沢山作ってくれたコガラシ。そして目を輝かせる夜々。

 

「でも、味付けしなくて良かったのか?」

「コガラシの腕で素材を存分に活かせる焼き方が出来てるし、何より猫神だって 元は猫だからな。塩分は抑え気味の方が良いんだ」

「おー、そう言う事か」

 

 猫神も夜々の様に目を輝かせてぱっくんちょ。

 美味しそうに頬張っている。

 

「コガラシありがとう。猫神様にも食べさせてあげたかったから。凄く嬉しい」

「~~!!!」

 

 猫神はコガラシにすり寄った。言葉を話さなくともよく判る。

 

『凄く美味しかった、ありがとう!!』

 

 と。

 

「うおおっ!!??」

「ははっ、気に入られて良かったな? コガラシ」

「にゃむにゃむっ♪」

「って、おわっっ!」

 

 猫神は コガラシだけでなく、ホムラの事も抱き寄せて大きな舌でペロペロ。

 

 

「にゃむにゃむにゃむ~~♪」

「2人のお料理美味しいって! ありがとね? 2人とも」

「わぷっ! わ、わかった。わかったから」

「かんべんしてくれーー」

 

  

 盛大に愛された2人は そのまま食べられてしまうのでは? と思う程 猫神にペロペロされ続けられるのだった。

 

 

 


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