ゆらぎ荘の蹴る人と殴る人   作:フリードg

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第14話 最後は皆で楽しく卓球大会!

 

 

 

 

「さ~て、ひょんな事から、選手変更となりましたぁ~!」

 

 主審をしていたホムラだったんだけど、選手になっちゃったから、と言う事で、呑子が前に出て進行役、主審を買って出てくれた。……楽しそうだった。

 とは言っても、殆ど呑子も進行役をしていたし、実質は変わってないだろ? ともいえる。

 

「これからはぁ~、さぎっちゃん VS ホムラちゃんの、ドキドキ♡ アツアツ♡ ラヴラヴ♡ な大卓球大会に変更しまぁす♪ ポロリもあるよ~♪」

「ちょっっ!!! な、なに言ってるんですか!! 呑子さんっっ!!」

 

 盛大に否定をする狭霧。

 またまた、対戦相手が変わりそうな勢いだ。

 

「んー、それは兎も角」

 

 全く動じてないホムラ。

 それに対して、狭霧は、少なからず……いや、バリバリに不満があった。でも、そんな事は露知らずなホムラは、コガラシの方を向いていた。

 

「まぁ、狭霧に対して一言多かったオレの自業自得な展開であるとはいえ、オレと狭霧が対戦する事になってしまったが、コガラシの運命? はどうなるんだ? オレが勝ったら、残留になるのか?」

「う~ん……、どうなんだろうな。オレに聞かれても……」

 

 ホムラは、確かにコガラシに聞いても無意味だと思って、仲居さんの方を見た。

 

「代理、と言う形でも問題ありませんよ~、ですが、あくまで コガラシ君の退去の希望が出てますので、コガラシ君本人の意思やコガラシ君の試合の結果と関係なく、ホムラさんの結果で、運命が決まってしまいますが、それでも良いでしょうか?」

 

 そう、つまり……、ホムラが負けてしまえば、コガラシは 自分ではどうする事も出来ず、問答無用で、勝者(狭霧)の言う事を聞かなければならないのだ。自分が負けた訳でないのに。

 だが、ホムラの事はこの場の誰よりも知ってる、と言う事もあって、変に心配はしてなかったんだ。

 

「成る程。コガラシはそれで良いか? オレの力で、勝ったら、って事になってしまうが」

「う……」

 

 負けず嫌いな性格であるコガラシ。 やっぱり、少々不満は残るのだが……。

 

「狭霧が言い出した事でもあるからなぁ……」

 

 ちらり、と狭霧を見た。

 肉食獣の様に、目を鋭くさせている。……あれはもう、何言っても無駄だろう事が判り、更に、今更自分が何言っても逆効果だという事も判る。

 

「……今回限り、だ。分身サーブをどう崩すか、……ちょっと興味があるし」

「一度でも見りゃ、大体判る。……見取り稽古は昔から得意だっただろ?」

「……そのおかげで、何度も後塵を拝していたんだがな!」

 

 むかっ、とさせながらも手を挙げた。

 了承した、と取った呑子は、球を狭霧に渡す。

 

 

「……こほん、兎も角! 我が分身サーブを敗れるものなら、やって見せろ! ホムラ!」

 

 両手で構えて、分身を作り出す狭霧。

 現れたその数は、5人。それぞれが構えた。……パッと見は、分身の術特有……いや、漫画やアニメ、映画などである分身は、本体と違って、若干薄くなってたり、ブレてたりするのだが、狭霧のはそれが無い。それぞれの分身体がしっかりと輪郭と色を帯びており、本体と大して変わっていないのだ。

 

 そして、5人が構えて――同じく増えた球を構えた。

 

「行くぞ!」

「ああ、来い」

 

 カ カ カ カ カンッ! と5つの内、4つは偽物のハズなのに、音まで再現する程、密度の濃い分身球がホムラに迫るが……、ホムラは、ゆっくりと息を吸い……止めた瞬間。

 

 そのすべての球を弾き返したのだ。

 いや、そう見えた(・・・・・)のだ。

 

「なっ!?」

 

 目にも止まらぬ動きで、実体の無い球をも弾き返した。

 本来であれば、実体がない故に、偽物だったらスカ振りになってしまうのだが、あまりの完璧さに、分身も思わず返ってきてしまった、……のだろうか?

 

 狭霧にとっても、返してくるとは思ったが、それはあくまで、本物を見極めて 弾き返してくる、と思っていた。まさか、全部返してくるとは到底思えなかったから、面を食らってしまって、動きが止まり――、そのまま 床へと落下した。

 

「これで、タイ、だな」

 

 腕をぐるん、と振ってそう宣言するホムラ。

 あまりの鮮やかさに、お気楽実況である呑子も、仲居さんも、言葉が数秒出てこなくなってしまって……、その沈黙が数秒続いた後。

 

 

 

「おおおおっっ!」

「ホムラさん、凄いっっ!!」

 

 

 

 一気に場が沸いた。

 

「す、すごいですー。どうやって、返したんでしょう? コガラシさん!」

「なにが見取り稽古だ。……あんなん、ホムラにしかできないだろ……」

 

 呑子たちの様に興奮気味の幽奈。

 ため息を吐くコガラシ。

 

「え、見えたんですか?? コガラシさん」

「……まぁ、な。オレは拳で、アイツの場合は脚。自分自身の特化した部分を盛大に使ってる。事、競技において……、ま、有利になるわな。勿論種目によると思うけど」

 

 頭をガシガシ、と掻き毟るコガラシ。

 

「瞬発力と何より、足運びが以上に早くて正確なんだ。殆ど同時のコースに飛んできてんのに、ほんと 短い距離で瞬間移動でもしてんのか? って錯覚するくらい、早く動いて、全部打ち返してる」

「はぇ~……、す、すごいですね」

 

 少々悔しい気持ちがやはりあるのだろう。コガラシの言う様に相性はどうしてもあるんだけれど、それでも自分が取れなかったサーブをあっさり跳ね返してしまうのだから。

 

「ぐ、むむむ……!!」

 

 狭霧もぐうの音も出ない程のやられっぷりだった。

 でも、このまま黙ってみている狭霧さんじゃありません。

 

「もう一球だ!!」

「ほい、OK」

 

 半ば意地になって、分身サーブを打ち込む狭霧。

 

 でも、返されてしまう……。

 

 

 3球目からは、返されても冷静に対処をしていったのだが。

 

 

「一応、オレもコガラシに付き合わされていたからな。あの鬼コーチの指導も当然ながら受けてる。正式な部に入った事はないが、全国出場するくらいは、いけると思うな。水山選手と手合わせしてみたい、と思ったり」

「っっ。オリンピアン、それもメダリストの名を出すとは……ホムラの腕はそれ程までか……」

 

 気圧される狭霧。まさかの日本人で初の快挙、メダリストの名が出てくるとは思わなかった。 だけど、その後ホムラは意味深に笑うと。

 

「ってのは、冗談。精々高校レベルだ。コーチの霊も高校の部活の顧問だったしな。オレが相手になる訳ないだろ」

「ぐぐぐ!! か、からかったな!? ホムラ!!」

「ははは。まさか、本気にするとは思わなかったんだよ」

 

 外から見ていたら、本当に楽しそうに卓球をしている様にしか見えない2人。

 でも、幾らオリンピアンであっても、はたまたメダリストであったとしても、……分身サーブを取れたりする? と疑問に思えるのだが、そこはスルーをしよう。

 

 

 そんな時、幽奈が仲居さんに一言。

 

 

「もう、これで……皆で楽しく卓球大会~で良いんじゃないでしょうか……? ホムラさん、強すぎます。それに狭霧さんも、当初の目的、忘れちゃってそうですしー。それに……」

 

 幽奈はコガラシの方を見た。少々顔を赤くさせて。

 

「わ、わたしのせーなんで、コガラシさんは、狭霧さんの言うようなふしだらな人じゃないんですぅ……///」

「ふふふ」

 

 二コリ、と笑っている仲居さん。そして、顔を赤らめながらも2人を見る幽奈。

 スコアはホムラがリードしていて、崖っぷちにまで追いやられている狭霧なのだが、サーブ兼を渡したりしないし、寧ろ、スコアも見てない。

 

 もう、ただただホムラに挑みかかってる、と言う方が正しい。

 

「……それもそうですね」

「夜々も、ホムラとしたいっ!」

 

 ぴょんっ! とホムラの隣に立つ夜々。

 

「おっ?」

「ホムラっ! 夜々とダブルスするのっ!」

「なっっ!! 夜々! 寝返ったのか!?」

「夜々、もともとホムラと敵対してないー! ホムラは 夜々のごはんっ!!」

「……オレは飯扱いかよ」

 

 やれやれ、と首を振るホムラ。

 夜々の胃袋は完全にホムラが掴んでしまっている為、仕様がないだろう。

 だけど、……まだ夜々に言ってないが、コガラシも相当な腕前だから、きっとコガラシとも直ぐに打ち解ける、と確信をしていた。

 

「……(いや、餌付けされる、と言う方が正しいかな)」

「ホムラーっ! するのっ!」

「はいはい」

「ぐぐぐ、おい、幽奈! 私の方につけ! 今度こそ、打ち負かしてくれる!」

「あ、はい。判りました」

「あ~、ずっる~い。交代してよねー」

「やれやれ……、何か目的変わってないか?」

 

 

 と、言う事でいつの間にか、鉄の掟を謳っていた筈の、温泉ダブルス・一本勝負!!

 が、皆で楽しくワイワイ卓球大会になってしまっていた。

 

 

 でも、それが一番良いだろう、と何処となく思えるのはホムラだ。

 

 確かに、夜々に色々としてしまったのは、コガラシだけど、自業自得、と言う訳ではない。夜々の事を知ってまだ日も浅いし、幽奈との一件に関しては、コガラシを責めるのは……、正直可哀想だ。

 

「うぬぬぬ!! これではどうだーっ!!」

「いい加減サーブ兼を独占するなよ、狭霧」

 

 分身の術サーブに依存してるの? と思える程 狭霧はワンパターンになっちゃっていた。更に指摘されるまだ、狭霧は判ってなかった様だ。顔が赤くなってしまっていたから。

 

 そんなこんなで、皆が楽しく等しく良い汗をかいた卓球大会は終わりを告げた。

 最終的には、何故か……、いや 必然的に、ホムラ VS コガラシ の形となり、何処の大会の決勝戦だ!? と言えるような白熱としたラリーが延々と続いていた。

 

 もう、仕事が休み、と言う訳ではないから、タイムアップ、と言う事でお開きである。

 

「ふぅ……。コガラシもまぁ、狭霧に負けずと劣らず、負けず嫌いなんだから」

「お前に言われたくねぇって。ホムラも大概だろう」

 

 せっせと、卓球台の片付けをするみなさん。

 そう、使ったらちゃんと片付け、使った後の方が綺麗になる様に、との事。

 

「でも、やっぱりコガラシさんも凄かったですね? ホムラさんについて行けたのは コガラシさんだけですよ」

「ふ、ふんっ。私はまだ認めた訳ではないぞ。あくまで、卓球の結果のみだ! ……が、追い出すような真似はもうしないと約束はする……不本意だが、私の完敗だからな!」

 

 ホムラの実力を改めて見て、更にそのホムラと五分の戦いを繰り広げているコガラシを見て……、今回の1件、卓球大会については完敗を認めた様だ。

 

「あー、言葉を返す様で悪いが……、この中で最強は幽奈じゃないのか?」

「……まぁ、確かに」

 

 せっせ、と片付け、掃除をしながらそういうのは、ホムラとコガラシ。

 

「え? わ、わたしですか??」

 

 幽奈は言われている意味が判らない様だ。……本当に??

 

「ほら、いくらなんでも 試合中に、ポルターガイストをされたら、無理だ。台を乗り越えなければ、球に届かないし、そのまま彼方に飛ばされでもしたら……、お手上げ。来るタイミングも読めないんじゃ尚更だわな」

 

 両手をひょい、と持ち上げるホムラ。

 

 あの試合中も、何度か幽奈のポルターガイストが発動したのだ。

 

 まぁ、狭霧の言葉から、幽奈がコガラシとの一夜を色々と連想させてしまったり、勝手に自分で思っちゃって自爆をしてしまったり、と色々なパターンがある。

 あの手段は、傍から見れば試合放棄! とも取られるかもしれない技ではあるものの、殆ど異能バトルの様なものと化してしまった部分もある為、(狭霧の分身の術や夜々の肉球しかり)全然OKだったから。

 

「は、はぅ…… すみません……、よく考えたら散らかしてしまったの、主に私ですし……///」

「幽奈だけじゃない。コガラシが原因だ」

「オレだけかよ!!」

「トリガーがコガラシなら、連帯責任だろ?」

「うぐっ……」

 

 そう言われてば、ぐうの音も出ないコガラシ。

 確かに、夜な夜な抱き着いたり、衣服が肌蹴た所を見られてしまったり、ハダカを見られてしまったり……、etc

 

 以前は、ホムラも何度かあった事だが、ここ最近はコガラシに集中気味だから さんざん言えるだろう。

 だが。

 

「まぁ、連帯責任を言えば、オレもそうだ。だから さっさと終わらして、飯にしよう。皆」

「ぁ……、はいっ!」

「ふんっ」

「ごはん~!!」

 

 ホムラの最後の一言で 明るくなる面々。率先して片付けてくれている所もやっぱり良い所だ。勿論、コガラシもせっせと働いている。……発端がコガラシだから、まぁ当然だけど。

 

「さ~すが、ホムラちゃんっ! やっさしぃ~♪」

「それがホムラ君ですね。それに、コガラシ君も、負けないくらいきっと優しい子だと思います」

 

 このまま、平和に終わる……、と思っていたんだけど、ここで一発。

 

「お? 卓球台重いだろ? 手ェ貸すぜ!」

 

 いざ、名誉挽回。

 狭霧と夜々が片付けをしていた所に、コガラシが手を貸そうと駆け寄った時の事。

 

 幽奈のポルターガイストの影響もあって、それなりに床も色々と散乱している。 

 ……ここまで来たら想像できると思うが、コガラシはその散乱している床の上を走って、球を踏んでしまって……盛大にすッ転んだのだ。

 

 狭霧と夜々を押し倒す勢いで。

 

 

 その後、どーなったのかと言うと……。

 

 

 器用に倒れたコガラシ、その伸ばした両手は、これまた神業? と言いたくなる程正確に、2人の下着(ブラ)()。……上からではなく、ずぽっ! っと、入ってしまってて、更には、ひとモミしてしまったのだ。もにゅっ……と本当に柔らかく心地よい女の子の象徴ともいえる膨らみ。そんな聖域を犯してしまったコガラシ君。

 

 たぶん、わざとじゃないだろう。……たぶん。

 

「………//// お、オレはフォローはしない」

 

 肌蹴てしまった2人を見てしまったホムラは、即座に顔を背けた。

 

 今回の騒動の発端、コガラシと夜々の時は見ていなかったから、それなりに庇おうと思ったけど、これは弁解の余地なし。

 

「い、今のはオレが悪かった。ほんと、100パーセント、オレのせいだ……」

 

 コガラシも顔を赤くさせて、直ぐに両手を離したんだけど、それくらいの謝罪で許すはずもない。

 

 狭霧は、殺し屋の様な眼を。

 夜々は、猫は猫でも、ネコ科動物……、肉食獣(ジャガー)の様な眼を。

 

 2人は、それぞれの得物を手に(狭霧は苦無、夜々は爪)、コガラシをぶっ飛ばした所で、本当に幕を下ろしたのだった。

 

 

 

「こ、コガラシさんしっかりーー!!」

「………自業自得、これはほんと、自業自得だ、バカ。まぁ……オレを巻き込まなかっただけは良しとするかな」

 

 

 引き裂かれ、突き刺され、地面に突っ伏してるコガラシ。いつもだったら、とばっちりを受ける事が多かったんだけど、今回はホムラはお咎めなし? である。……当たり前だけど。コガラシはとりあえずは大丈夫そうだ。傷だらけだけど、ギャグっぽいから暫くはそのままの方が良いだろう。

 

 コガラシはと言うと、仮に永住権を獲得できたとしても、自分のせいであるとはいえ、住人との人間関係に先行き不安を改めて思いなおすのだった。

 

 

 




Q:「遅かったねー? アカメの方忙しかったから??」

A: ……忘れてた。リアルに。



Q:「コガラシ君が原作同様にずっこけて、揉んだみたいだけど、ホムラ君はシャイだし、ならないの? そっち系、行動系は?」

A: その気はないけど、なる。コガラシに負けずと劣らず。今後の展開次第だけど。



Q:「竜のカミサマとの対面楽しみ! あのクールでボーイッシュな従者はどっち派??」

A: まだ学校行ってないし、まだまだ先だから何とも。……でも、目的が強い奴と、だから。一応、そうとだけ。

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