二次創作でもあまり見ることのない(作者主観)到達点。
ここまで長かった。
あれからココ達の事件を解決した後の事後処理が終わり、これにて一件落着。
なんて、そんな訳はない。
次のイベントは既に始まってるようなもの。
ついに……
それが、1週間近くに迫ってきた。
待ちに待った戦役。
役者はたくさん、よりどりみどり。
誰をどうバラすかは……まあ、その時の楽しみにしておこう。
最終的な目的はお姉ちゃんを救うこと。
だけど、個人的な目的は私の考えた犯罪計画が無事に完遂されることだ。
犯罪者なんて個人的な欲望で動いてるだけものだしね。
他人の為だろうが、自分の為だろうが結局は自分がそうしたいから殺し、犯す。
ふふ♪ それはそうと、もっと観察して資料を集めないとね。
癖とか仕草だけじゃない。過去の思い出も、今の想いも……全部知らないといけない、見ないといけない。
誰にも気付かれずに成し遂げる。
私なりのこだわりだね。
そのためには、私の存在をなかったことにしないと。
もとより誰でもない私なんだから、誰になっても問題はない。
まあ、理子や家族達にはネタバラシをしてもいいかな?
全部終わった後でだけどね。
それよりもまずは、チーム編成。
理想はキンジや神崎達と同じチームになること。
でなければ、観察できない。
これから何を思って何をしたのかを知る必要がある。
いずれ別たれる運命だろうけど。
チーム編成の日取りは既に明日に迫っている。
神崎に編成は任せてるから、私の理想と言うより希望通りに話は進むことだろう。
人間らしさを見せ、新しく生まれ変わったとも言うべきウルスの姫はココ達が逮捕された後、東京駅から
いつも彼女が言っている風のようにどこか自由に吹き流れて行ったようだ。
神崎の話によると、彼女――レキから未だに連絡はなく、
チーム編成は事前登録が普通。
だけど、私達が受けるのは
文字通り、チーム登録〆切日に申請を出す駆け込み乗車的なシステムだ。
私を警戒していた彼女が同じチームに入るかは、微妙なところ。
いや、逆に私を監視する意味も含めて自ら来るかもしれない。
キンジに対してもあなたを守るから、的な宣言してたし。
どっちにしても、妙な動きをすれば……真っ先に死んで貰おう。
私の計画がおじゃんになるのは勘弁して欲しいしね。
せっかく人間性を獲得したんだから観察したいとは思うけど、私には優先順位がある。
切り捨てるのもやむ無し、だよ。
と、武偵高の自室でゆっくりと明日の準備をしてると……机の上のお仕事用の黒い携帯電話に着信。
相手は――ジャンヌ。
珍しい事もあるもんだね。
「Hey.聖女からのお告げですカー?」
ハイテンションな外国人女性で対応する。
『あんまり招待したくないが
「それは、スミマセン。けど、待ってましたネー!」
私の反応にジャンヌは疲れたような息を吐いた。
『誰もお前を待っていないがな。結局どうするつもりなんだ?』
「どうもこうもしないネ。色金なんか、私には興味のない話ヨ。戦役には参加しますが……勝手に争ってクダサーイ」
興味はなくても必要ではあるけどね。
ただ言えるとすれば――
「私は好き勝手にバラすだけダヨ」
『無辜の人を巻き込めば戦役どころではなくなり、両陣営からも狙われるぞ。決闘じみた戦争だ。もし、戦役に参加するのであれば――』
「戦役で済むと思ってるのですカ?」
『なに……?』
私の言葉にジャンヌは話を途切れさせた。
これは、謎が出る前のヒント。
だけどヒントはそれだけ。
「おっと……それでは、
それだけ言って私は一方的に電話を切る。
戦役の先に待ち受けるモノが何か、ほとんどの者は知らないだろう。
その現実に私は笑みを浮かべる。
直前申請には、
ぱっと見は、リクルートスーツっぽいんだけどね。
いや、印象的にはどちらかと言うとマフィアかな。
黒のテンガロンハットでも被れば、いかにも80年代のマフィアって感じになりそう。
まあ、そんなイメージ通りのマフィアの知り合いは既にいるんだけれども。
そんな訳で自室の鏡の前で衣装合わせ。
黒の長袖、長ズボンにそして黒のネクタイ。
靴も黒のパンプス。
まさしく黒ずくめの怪しい人。
遊園地で頭から血を出した小さい子供が発見される事件とか起こりそう。
ピンポーン……
「キーちゃん、迎えにきたよー」
インターホンが鳴ったと思ったら理子の声が玄関から聞こえてくる。
「はいはーい」
軽い感じで返事だけして、最後にチェック。
化粧も済んだし、鏡の前で襟首を正して玄関に向かう。
そのまま玄関を開ければ同じように
服のタイプは私と違うみたいだけど。
それよりも元気そうでなにより。
そして気付いたのか、妹がツッコんでくる。
「それ、男物じゃないの?」
「ちゃんと全部女物だよ」
「ふーん……真面目に仕事が出来そうなキャリアウーマンっぽいね」
「いつも仕事出来てないみたいな言い方で失礼だね……。私はいつでも楽しくなるように面白おかしく仕事を完遂してるでしょ?」
「普通に仕事を完遂させる気はないんだね……」
私のモットーは何事も
さて、妹が私の服装をチェックするなら……私もそれに
まず目につくのは谷間を大きく露出させ、強調した上着。下はタイトな黒のミニスカート。
上着の下は……ブラウスっぽい。
それと体のラインがハッキリしてるね。
小柄な理子のあどけなさが抜けて、まさしく女を感じさせる雰囲気。
それと黒に金髪はよく映える。
私の視線に気付いた理子が少しだけ胸の谷間を片手で隠す。
別に女の子同士なのに何で隠すんだか……
「キーちゃん、視線が舐め回す感じなんだけど」
「成長を見てる。と言うかブラぐらいしたら?」
明らかにしてないでしょ。
「これはこう言うスタイルだからいいの」
「あら、そう……どっかで水でもかけようかな……ふふ」
「キーちゃん、理子そう言うのよくないと思うんだ」
「じゃあ下着はつけなさい。Rー18的な絵面になりたくなかったらね」
「むう、分かったよ……」
少しむくれたかと思うと、理子は廊下を歩きだす。
自分の部屋に戻るんだろう。
全く……女の子ならそこら辺は意識しないと。
お父さんからも無闇に肌を
2年ぐらい前か……あの時はよく分かんなかったけど、羞恥心って言うものを持てって事なんだろうね。
別に誰に何を見られようが私は構わないんだけど……
でも、キンジに見られるのは、ちょっと困る、かな……
これって羞恥心なのだろうか?
未だに分からない気持ちは色々とある。
他人がどう思って、どう言う感情を抱いてるかは分かるのに……自分の気持ちはあまり分かんないなんて今にして思えば変な話だね。
まあ、いいや……今はそこら辺を考えてる時じゃない。
キンジの部屋に行こう。
どうせみんなそのつもりだろうし。
私は部屋を出てキンジの部屋を目指す。
そのまま、同じように直前申請をするつもりなのか、同じように黒い制服に身を包んだ生徒の何人かとすれ違い、キンジの部屋に到着。
玄関を開ければキンジ以外の靴が一足、丁寧に爪先を
この丁寧さとサイズは白雪だね。
先に来てるってことは、チーム申請の話は既に白雪から聞いてるかな?
キンジは初めて編成を知るだろうね。
神崎からキンジには内緒にするように他の面々を含めて言われてるし。
そして、神崎に一任したチームの名前は――バスカービル。
それはお父さんが解決した事件の1つ。
今は神崎の所有してる土地の名前でもあるらしい。
対して、私達はライヘンバッハ。
2人の先祖の運命が分かれた場所だね。
それを組織として名乗ってるって事は、我々がその転換点になるって言う暗示かな?
そう言えば私が結成中の組織に名前、なかったね。
別に組織って言える程に高尚じゃなく、ただの殺人サークル的なものでしかないけど。
あとメンバーは今のところ1名だけだし。
増える予定は未定。
当てがない訳じゃないけど。
考えながらもリビングに到着。
やっぱり白雪はキンジと一緒にいた。
様子を見るに、どうやら私の予想通り白雪を通じてチーム編成について知ったらしい。
キンジのことだから、転校を考えてる身としては編成なんてどうでもよかったんだろうけど。
そして、2人とも私に気付いたらしい。
「霧、お前もか。というか顔がにやけてるぞ」
そんなカエサルが暗殺された時みたいなセリフをキンジは最初に言いながらも、気付いた事を指摘してくる。
キンジのセリフで思い出した……カエサルの名を冠する子がいるのを。
あの子、いいかもね。
ただまあ、皇帝の名を冠する者の例にもれず高慢でいて寛大。
誰かの下にいる器ではないけど。
それは置いておこう。
「改めてよろしく、チームリーダーさん」
「結局組む流れになったな。チームとしてだが……」
そんな気はしてたのか、キンジは軽口を叩きながらも
チームの編成は、リーダーにキンジ、副リーダーに神崎。
メンバーは私、理子、白雪さん、レキと顔見知りばかりだ。
おまけにキンジを除いて武偵ランクA以上。
まあ、本来ならキンジもSあるんだけど書類上はそうなってる。
「それはそうと、早く着替えてきなよ。あと、申請の〆切まで30分ぐらいなんだから。白雪さんに着替え、手伝ってもらう?」
「え、そんな……き、キンちゃんのお着替え。い、良いんですか!?」
「よくねえよ! 1人で着替えられるッ」
白雪の変わりようを見て、キンジは危機を感じたのかすぐさま制服を持って部屋の中に。
相変わらず愉快なんだから。
申請の場所と言うか撮影会場は
現地集合という事でキンジ、白雪と共に到着すれば既に2、30人の生徒がいた。
存外、他の生徒ももつれ込んだんだねチーム編成。
背中を預ける存在を見定めるための修学旅行だったからね。
相性がよくないと思ったらあらかじめ決めてた編成も変えるだろうし、こんな風にギリギリにもなる。
キンジみたいに
神崎は、いたね……オーダーメイドらしいSサイズより小さそうな黒い制服を着ている。
同じ服装でもあの髪の色と外見のおかげですぐに見つかる。
理子も一緒だ。
しかし、天気が悪いね。
ロンドンみたいな曇り空。
イギリスのロンドン出身者には馴染み深い空ではあるけれど。
撮影者は
撮影場所には床に黒いビニールテープで、長方形の枠で示されている。
その中で生徒が横一列に並んで撮影している。
「おいアリア。カミナリ様にヘソとられるぞ」
撮影の様子を無言で見ていた神崎にキンジはそう声をかける。
ああ、そう言えばさっきからヘソがチラチラ見えてたね。
「キンジ……」
声を掛けられた神崎はキンジを見上げると、
「相変わらずおかしな事を言うのね、撮るのはヘソじゃなくて写真よ?」
ここで文化の違いが出た。
この国特有の雷神がヘソを取る言い伝えを知らないらしい。
あ、キンジ……何か企んでるね。
神崎が雷が苦手なのを良いことに少し仕返ししようと考えてる感じだ。
「撮影まであと5分、風の少女は未だに来ず?」
「そうね。朝一で待ってるし連絡もいれてるけど……」
時計を見て、私が尋ねると神崎はそう答える。
そう言えば携帯破壊されたみたいな事を言ってなかったっけ、キンジ。
もしそうなら、レキに連絡が入らないのも納得だけど。
「キンジ……あんた、来てくれたって事は……いいの? あたしと……チームを組む事」
「完全に事後承認だな。お前が勝手に書いたんだろ? 俺の名前。それにリーダーにまで
「それは、あたしとレキのせいであんたがどこのチームにも入れない事態は避けたかったのよ。別にレキから横取りし返したとかじゃ……ないわ」
言いながらも神崎は周囲を見回す。
待ち人を探してるんだろうけど、未だにその姿も気配もない。
いや……違う。
気配は、ある。
以前の彼女は感情がないせいで、同じ空間にいても人形が部屋の隅に置いてあるみたいな存在だったけど。
ちゃんとした存在感、雰囲気がある。
へえ、たった数日でここまで変われるもんなんだ……リリヤに比べて変化がすごいね。
おそらく、目に見えての変化はあまりないんだろうけど。
気付いても教えるのはやめておこう。
「キーちゃん、良いの? これで」
理子が周りに聞こえないように静かにそう聞いてくる。
「何言ってるんだか。良いんだよ、これで。お姉ちゃん風に言えば、解は収束する。あるべき答えにね」
「理子達、悪い子だね~」
「これも家族の為だよ」
「バツはいつ2つになるの?」
「彼ら次第だね」
そのまま私はキンジと神崎に目を向ける。
何やら向こうも話してるらしい。
それからキンジが呆れるように首を振って、何かに気付いたのか一点を見つめた。
それは屋上に置かれた2メートル程の空調設備。
そこへキンジが駆け出した。
「キンジ!?」
驚く神崎の言葉が聞こえてないような感じだ。
待ち人を見つけたらしい。
それを見て私達も駆け出す。
「レキさん……! 良かった、間に合ったんだね。みんな、心配して探してたんだよ? どこに行ってたの、ほんとうに……」
白雪がそんな感じで声を掛けた。
言い方がまるで迷子を見つけた母親みたいだ。
「――ハイマキと合流しに京都へ戻りました」
「えっ」
レキの言葉に白雪は驚いてる。
あの東京駅から、どうやって京都に戻ったのか……
夜行バスを使った可能性もあるけど、どっちにしても白雪の驚きようを見るに星伽神社には行ってないらしい。
「――それから襲撃を受けた時の民宿を貸し切り、湯治をしていました」
襲撃を受けた時の民宿……キンジと一緒に泊まってただろう場所だね。
湯治とは――随分と自然治癒に任せた治療法だ。
内臓に効くところもあるにはあるけど……どちらかと言うと、
「それにしても、俺達がここにいるってよく分かったな」
「携帯を新調した時にメールが届きましたから」
キンジの疑問に答えるようにレキは端的に答えた。
なるほど……やっぱり、その時まで携帯はなかったんだ。
しかし、自分の意志でここに来たっぽいね。
これからの事を考えると人形の方が都合がよかったのかもしれない。
いや、その前に死んでただろうけど。
事実、殺すつもりだったし。
でも……その方が面白い。
私にとってはそれだけで充分。
それはそうと……
「…………」
真っ先に近付いた割にレキの前でもじもじしてるこのピンクツインテールは何してるんだか……
申請した本人で、そう言う"意図"もあったでしょうに。
キンジが私に視線を向けてくる。
ニュアンス的にはフォローするか? って感じだね。
でもそこは、お
なんて言ったってリーダーだからね。
私はどうぞ、とばかりにジェスチャーをする。
「レキ。お前、このチームでいいのか? アリアが勝手に編成決めちまったけど」
キンジが会話の道筋を作るようにそう聞くと、レキは静かに頷いた。
「だとよ、アリア。言いたい事があるなら言えよ」
そう言って背中を押すキンジ、だけど当の本人はこういう時には弱いだろう。
今まで1人でやってきたんだから。
つまりは仲直りの仕方がまだよく分かってない。
「ん、んぅ……その、レキ……あの時は、悪かったわ」
『!?』
その瞬間、レキを除く全員が驚く。
特に神崎に関しては困惑してる。
何故なら喋ってるの本人じゃないし。
腹話術ってヤツだね。
「ち、違うわよ――今のは、あたしが言ったんじゃ」
「私も、奪うような事をしてすみませんでした」
そう言ってレキは軽く頭を下げた。
これにはちょっと神崎だけじゃなく、他のみんなも少しだけ驚いてる、私も含めて。
「それとあの時、助けてくれてありがとうございます」
目に見えての変化はそんなに無いと思ってたけど。
私が想像してた以上の変化だよ。
こんなにも素直に自分の意思を伝えるとは。
感情が乗ってるとは言い難いけどね。
さて、ここまで言われて貴族様はどうするつもりなのかな?
「レキ……」
少しだけ顔を赤くした神崎は、名前を読んだあと――
「無事で、よかった……! 心配したのよ! あたしも、あの時はありがとう。それに来てくれて嬉しいわ! えっと、その……絶交は取り消しよ。復交? 再交?」
「復縁ね」
「そう、霧の言うとおり復縁。何にしてもまた、交わりましょ」
感情のまま、喜びを表現するようにレキを抱き寄せた。
うん、こういう温かみのある光景は嫌いじゃないよ。
別に私、そこまで壊れてない……と思いたい。
何よりも殺人欲求が優先されるだけで、感性だけは普通の人とそう変わりないハズ……
って、何を考えてるんだか私は。
別に人並みの人生に
それでもキンジと一緒なら退屈しないだろうなって、ふと考えてしまう。
私もやっぱり変わってるんだろうか……
「ホラホラ! 私ノ可愛い生徒達! 締メ切リマデ15秒ヨ! 武偵ハ時間厳守デショ」
このオカマ口調は。
声はしても姿が見えないという事で有名だけど。
毎回、予想外のところに潜んでるからあの人。
多分これ、屋上の上にある空調設備の中だね。
視線とか向けたら勘付かれそうだから見ないフリ、見ないフリ。
「くォら! ガキども、イチャイチャしとらんと、こっち来いや! さっさと撮影するぞ!」
蘭豹がカメラを大きく振り回して、撮影場所の黒いビニールテールの枠を示す。
「行きましょ!」
レキの手を握って神崎が駆け出す。
「俺達も行くぞ」
それからキンジの声と同時にみんなも釣られて行く。
「あと5秒や、走れ!」
蘭豹が時計を見ながら怒鳴り散らす。
やれやれ……横一列に並んでる余裕もないみたいだね。
そして、これは写真撮影でもチームの登録。
犯罪者に情報が渡る可能性を考えて特殊な撮影方法になる。
「よし、笑うな!
とまあ、顔を全面に見せる事はせずにちょっとだけ表情が見えないようにする。
正体を微妙にぼかすためだからね。
所属の高校も分からないようにするため、制服も統一されている。
「チーム・バスカービル! 神崎・H・アリアが
ふむ、私はちょっと空の方を見ておくかな。
横顔が見えるくらいでいいや。
それぞれ正体をぼかす工夫をしたところで時計を見ていた蘭豹が、
「9月23日11時59分、チーム・バスカービル――承認・登録!」
大きくシャッターボタンを振り上げてスイッチを押す。
ストロボの閃光がパシャ、と弾ける。
この時に大きく振り上げた蘭豹のせいでカメラが微妙に傾いてしまった。
その時の写真はお世辞にも良いものではなく、全員が写っていたとは言え構図はすごく斜めになっていたの。
何よりも、これが最初で最後。このチームの始まりであり終わり。
同じ面子が
何でって、分かるでしょ? 名探偵さん。
私が何者なのか、誰もが知ってるもの。
◆ ◆ ◆
日付が10月1日に変わろうとする深夜帯。
気が、重い。
これ程までに気が重いのは久しぶりだ。
魔女であるのは確か。だが……それは人を魔に落とす為ではなく安寧の為。
それが私の祖先である初代ジャンヌ・ダルクが魔女であった理由。
新たな戦の幕開けを、私が
これは、既に定められていた事だ。
なぜ私を指名したのかは未だによく分からないがな。
霧が出てきたか……
それが、夜の空き地島を覆い隠し始める。
カツェか、ヤツか……どっちにしてもそのどちらかが近くにいるのは確かだ。
しかし、電話で話してた言葉。
ジャックの言葉は何を意味している?
『戦役で済むと思っているのですカ?』
いつも通り声を変えながらも語った、あの言葉の意味は……
もしや、この争いの先を既に見定めていると言うのだろうか。
だとしたらその狙いは……色金以外のモノなのか?
色金に興味がないと言っていた。
事実、ジャックは興味を抱いておらず人間観察と殺人にしか好奇の目を向けていない。
それはどの人物であっても一貫していた。
「はあ……」
疲れた息を吐く。
駄目だな、まるで私には分からない。
相手の真意や裏をかいてこその策士。
だがヤツの真意も、目的も……何も分からない。
リスクは高いが、協力関係になれば何か分かるか?
理子を救う方法も分かるかもしれない。
それと、問題は……遠山だな。
事態の深刻さをヤツは自覚していない。
ただ目の前の障害を乗り越える事だけに全力を出しただけだ、その後をまるで考えてはいない。
いや、知る
我らイ・ウーが世界の均衡を保つ
あのひた向きさは好ましくある。
だが、それも今回ばかりは裏目に出たようなものだ。
……当の本人がお出ましか。
「遠山、こっちだ」
私が声を掛けると気付いたのか霧の中をかき分けるように近付いてくる。
手紙の通り武装はしてるみたいだが……いささか軽装だな。
「何だ。こんなところに夜遅くに呼び出して」
何も言わなかったせいで既に
これは、電話で聞かれた時に事の次第を言わなくて正解だったようだ。
遠山の場合、全てを語れば来なかっただろう。
「――まもなく0時です」
風車のプロペラに腰掛けているウルスの巫女が静かに告げた。
間もなくか……
「何なんだよ、お前達……」
遠山が困惑した瞬間、この一帯を強烈なライトが照らし出す。
霧に移るシルエットは様々。
だがそのどれもが、組織、結社、あるいは機関の代表者――大使の任を負った者であるには違いない。
「――先日は
丸眼鏡を掛けて、
噂ではシャーロックとやりあったのもそうだが、光線を放つらしいからな。
どう言った原理かは不明だが、理子は軍師ビームとか言っていた。
そのまんまだが。
「お前がリュパン4世と共にお父様を
影から出て来たのはブラドの娘――ヒルダか。
周りを見回せば、続々と集まっているな。
顔見知りはパトラ、カナ、カツェ、メーヤぐらいのものか。
私が一番に警戒をしているヤツは……まだ見えない。
だが既に刻限だ。
私は進行役としての役割を果たさなければならない。
「それでは各地の機関・結社・組織の大使達よ。イ・ウー崩壊後の力の再配分、求めるものを奪い、巡り、戦い合う運命にある我々が次に進むために」
始めよう――
Go For The Next Stage!!
ふっふっふ、楽しみですね~
今後の展開的な意味で。
実は作者自身が楽しみにしてる。
だが問題は執筆時間である。