そして、目に見えて落ちる更新速度。
表現力が足りない!
今回の注意事項
・最初は白雪視点でお送りします。
・クオリティが下がってるかも。
・人生迷走中(作者が)
はい、最後は蛇足です。
「ただいまー」
そんな暢気な声と一緒に霧さんが外から帰って来た霧さんと、ちょうど部屋から出た私が廊下でばったりと会いました。
食後に、なにやら電話が掛かったと同時に外へと出て行ったのです。
多分、お友達でしょう……
不意に気になって思わず尋ねました。
「誰からの電話だったんですか?」
「フランス生まれで今、日本にいる知人からね。色々と教えて欲しい事があるって」
霧さんは、ほがらかに微笑んで何でもないようにそう言いました。
だけど、友達が少ない私からすれば彼女が羨ましく思えます。
私は彼女と同じように笑顔で、
「交友関係が広いんだね」
と返します。
「まあ、人脈は多いと便利だからね。ところで白雪さんが手に持ってる札は何かな?」
そう言って霧さんは私の持ってる
「これは、巫女占札って言ってね。星伽でよくやる占いなの」
「占い、ね」
「うん。霧さんも占いとか興味ある?」
「興味と言うか、参考程度には当てにしてるよ。最近の占いもバカには出来ないからね……キンジのために占うつもりかな?」
最後の一言は確信を持ってるように言う。
な、何で分かるんだろう?
私はそんなこと一度も言ってない筈なのに。
「白雪さんの行動理由は大体キンジ関連だからね。半年ぐらいしか付き合いはなかったけど、簡単に分かるよ」
私が何を考えてるかも分かってるかのように、霧さんはそう答えます。
霧さんは、私なんかよりも凄い。
キンちゃんみたいに私の事をよく分かってる。
まるで昔から知ってるみたいに。
それから霧さんは、私の後ろに回って軽く背中を押す。
「ほら、キンジの所に早く行こう」
「う、うん」
いつものように私を後押してリビングへと向かいます。
そして、霧さんが静かにソファーへと向かって行って本を読み始めるのを見てから、アリアと何やら揉めてるキンちゃんに向かって私は話しかける。
「キンちゃん、ちょっといいかな?」
「どうしたんだ白雪?」
「あ、あのね。この私が持ってるの巫女占札って言うんだけど――」
「占いの一種か?」
「そうだよ。キンちゃん、最近は将来の事に悩んでるみたいだから占おうと思って」
「……そうだな。じゃあ、1つやってみてくれ」
「うん!」
何だか頼られるのが嬉しくて、私は少しだけ強く返事をした。
星伽の巫女として占いには自信があるし、キンちゃんも私の占いがそこそこによく当たるのは分かってる。
だけど、それでも嬉しい。
「それじゃあ、何について占う? 色々あるよ、金運に恋愛運に恋占いに人との相性を占ったりとか、結婚できるかどうかとかも分かるよ?」
私自身、怖いけど気にもなってる。
例えばキンちゃんと結ばれるのか、キンちゃんと子供が出来るのか、何人子供がいて――
「俺の将来……数年後に進路がどうなってるかを占ってくれ」
「チッ」
うん、そうだよね。
思わず舌打ちしちゃったけどキンちゃんが気になってるのは、本人が言った通り数年後のキンちゃん自身がどうなってるか。
大丈夫大丈夫……根気よく待つのも大事。
むしろ、キンちゃんの周りに女が増えたからって焦っちゃダメなんだよ。
私には霧さんと言う味方もいる。
そう自分に言い聞かせて落ち着かせる。
すぐに笑顔で、
「分かったよ。ちょっと待っててね」
私はキンちゃんに向かって言う。
5枚の巫女占札で
順番に札を返していく。
ちゃんとした順番じゃないと、占いの当たる確率が変わったり、結果が変化して安定しなくなる。
だけど、1枚、2枚と表にしていく度に……よくない感じがする。
最後の1枚を手にとって表にする。
…………………。
……これって、どう言う事なんだろう。
「結果は? どうだったのよ」
アリアはそう言って尋ねてくるけど、私には何とも言えない。
占いが示したのは――
『キンちゃんがいなくなる』
それも数年以内に。
どう言う意味、なのかな?
占いと言っても具体的に何かが分かるって言う訳じゃない。
キンちゃんが、一体"どこから"いなくなるのかが分からない。
そもそもキンちゃんがいなくなると言うこと自体が考えられない。
「おい、白雪……どうしたんだ?」
「う、ううん、何でもないよ。総運としてはいい感じだよ。ただ、具体的にはよく分からないかな……」
「そうなのか……」
私の嘘に、不安そうな感じを見せるキンちゃん。
あまりキンちゃんに嘘を言いたくないけど、私自身この結果の意味をもう少し考えたい。
「じゃあ、次はあたしの番ね」
アリアはそう言ってテーブルに手を突いて身を乗り出してくる。
彼女は、適当でいいよね。
それよりもアリアが本当に色金を持ってるのか……疑問に思う。
彼女からはこれと言って何も感じない。
考えながらも私は適当に巫女占札を並べる。
「ところで生年月日とかはいるの? あたし、乙女座なんだけど」
「へー、そうなんだ。似合わないね」
私の返答に膨れた顔をしてアリアは座り込む。
そんな顔をしたってキンちゃんは渡さないし、譲らない。
大体、キンちゃんと一緒にいること自体がおこがましい。
「総運、ろくでもないの一言に尽きます」
1枚を表にして見ただけだけど、一応占ってはいる。
取りあえず、彼女には不幸が訪れるみたい。
それがいつ起こって、どんな不幸かは分からないけど。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「何かな? アリア」
「あんた、ちゃんと占ってないでしょ!」
「私の占いに文句があるの? 私、ちゃんと占ったよ?」
「あたしと
鋭いツリ目で私を睨むアリア。
私も負けじと睨み返す。
こんなちんちくりんに私のキンちゃんが取られる訳にはいかない!
「この間、戦った時……私は切り札を出してない」
「あ、あたしだって切り札くらいあるわよ! あんたよりも多いんだからね!」
「じゃあ私はその3倍はあるよ」
「あたしはその2乗よ!」
「お前ら少しは落ち着けっての!!」
キンちゃんが私とアリアの間に入りこみ、引き離す。
それからアリアは私に向かって舌を出して「ふーんだ!」と不機嫌そうな顔をしてリビングから出て行った。
本当にあの子はなんなの?
気に入らない。
でも、それ以上に……私に真正面から立ち向かってくる事に驚きもある。
学校の皆は、私の事をいつも一歩引いた感じで話しかけてくる。
だけど、彼女は違う。
日本刀みたいに真っ直ぐ、私と同じ立ち位置で向かって来た。
それが何だか気に入らないながらも……新鮮な感じ。
霧さんやキンちゃんとは、また違った感じがする。
「小学生みたいだね~」
本を閉じた霧さんがソファーで寝転びながらそう言ってこっちを見てきます。
「お前もちょっとは止めようとしろよ」
「ケンカするほど仲がいいって言うヤツじゃないの?」
「何か微妙にズレてる気がするぞ」
「そう? 興味がなかったらいがみ合ったりもしないと思うんだけどね」
キンちゃんの言葉に霧さんはそう返します。
「そんな事ない」
何だか認めたくなくて私は思わず否定した。
「他の男子から見れば、アリアは可愛いかもしれない。けど、うるさいし……さっきだって私もだけど、キンちゃんに迷惑を掛けてるし。その前にはキンちゃんに失礼な態度だって取ってる。だから私は彼女のこと、キライっ」
顔を伏せて私は一息に言った。
だけど、それからハッとなって2人の視線に気付く。
「ごご、ごめんね。なんだか……雰囲気悪くしちゃう様な事を言っちゃって」
「なあ、白雪。お前はアリアのことキライって言ったけど、本当か?」
「えっ……?」
「こう言うのもおかしな話だが、霧の言う通り……興味がなかったらいがみ合ったりもしないと思うんだよ。それに、お前がこんなに自分の考えや感情を表に出してるのもあまり見た事がない気がするし、俺や霧に対してる時でさえ変におどおどしたりするのにアリアに対してはハッキリと言ったのが……何て言うか、珍しい気がする」
うんうんと、霧さんも同意するように寝ながら頷く。
この2人は……私のことをよく分かってる。
霧さんなんて、半年しか私といなかったのに。
もちろん霧さんはキンちゃんほど私のことを知らないけど……キンちゃんが知らない事を彼女は知ってる。
「人は自分にないものを他人に見て、羨ましがったり妬んだりする時があるからね。実は、白雪さんも一部は神崎さんのことを認めてるんじゃないのかな?」
何気なく言われた霧さんの一言。
「どうなんだろう。自分ではよく分からないかな……でも、そうなのかもしれない」
私にないもの……例えば彼女の真っ直ぐな所とか、自分に自信を持ってる所とかがそうなのかも。
何となくだけど。
「ま、しんみりした話はここまでにしよう」
「そうだな」
霧さんが切り替えるようにして言って、キンちゃんも同意するように言う。
2人には気を遣わせちゃったね。
特に霧さんにはいつもキンちゃんの事で後押ししてくれたり相談にも乗ってくれるのに、あまりお礼出来てないし……申し訳ないな。
……そうだ。
「霧さんも巫女占札で占ってみる?」
「私のことを……? そうだね~。じゃあこれから先に、私にどんな事が起きるかを占ってみて欲しいんだけど……こんな
「もちろんだよ。ちょっと待っててね」
今の私に彼女に出来ることと言ったらこれぐらい。
きっと霧さんなら、良い結果も出るはず。
そう思って占いをする。
キンちゃんの時と同じように順番に札を表に返していく。
だけど――
(キンちゃんの時以上にイヤな感じがする)
1枚目と2枚目を返す時には何ともない感じだった……だけど、3枚目をを表にした時に変な予感がし始める。
これ以上は見ちゃいけないような、占っちゃいけないような予感がする。
よくない結果なら本人に教えてあげればいい。
それだけで済むはずなのに、何でだろう。
4枚目を表にしてからさらに不安は膨れる。
けれど、ここでやめれば不審に思われちゃう。
それに星伽の巫女として、こんな所で占いをやめる訳にはいかない。
最後の札を、静かに……表にする。
………………。
――ッ?!
どうして、こんな結果が。
「えっと、白雪さん? どうかしたのかな」
霧さんが近くにまで来て、思わず彼女を見ます。
「……な、なんでもないよ」
「もしかして、よくない結果でも出ちゃった?」
「う、うん……そうなの。だから、何て言っていいか分からなくて」
「そっかぁ。でも占いって当たるも八卦、当たらぬも八卦でしょ? 絶対にその通りになるとも限らないんだから白雪さんが落ち込む必要なんてないって」
……違う。
そう言う意味じゃないの霧さん……
ただ運が良いとか悪いじゃない。もっと不安になる結果なんだよ……
「人生、山あり谷ありだしな。そう言う時もあるだろ」
「そうだね。さてと、そろそろ寝よっかな……」
「結局、日曜洋画劇場を見逃しちまった」
「キンジがそう言うと思って、録画しておきました。見ないなら私が見た後に消すけど」
「……相変わらず用意がいいな、お前」
キンちゃんと霧さんはそんな事を言いながらそれぞれの部屋に行きました。
そうだよ……霧さんの言う通り占いは当たるも八卦、当たらぬも八卦。
絶対にそうなるとは限らない。
私も外す時は外す。
結果がどうであれ、そうなると決まった訳じゃない。
私の考え過ぎだよね。
だって――
霧さんが"裏切る"なんて考えられないもん。
◆ ◆ ◆
この間の白雪はちょっと様子がおかしかったね~。
一体、私を占ってどんな結果を得たのか気になるよ。
それよりも、
「おはよーう。キンジ、朝だよ~」
問題はこっち。
さっきから布団にいるキンジに声を掛けてるのに全然起きない。
仕方がない。
私は窓を開けてM500を取り出す。
そして、外に向かって――
ドウンッ!
「――ッ!?」
後ろを見れば、銃声に驚いたキンジは陸に打ち上げられた魚みたいに跳ね起きた。
2段ベッドの下で寝てるから、そのままガツンと頭を上のベッドにぶつけた。
「いってぇぇっ!!」
「おはようございます。朝の6時半です」
「なんで朝のテレビ番組みたいなナレーションしてるんだ! それより、さっきの銃声は!?」
「あ、それ私」
「アホかお前は!」
アホかって言われてもね。
武偵が確実に起きそうなのって銃声ぐらいなものだし。
「なになに、敵襲!?
キンジが寝てる反対側の2段ベットの上部に寝てた神崎も跳ね起きて、ガバメントを振り回しながら辺りを見回す。
「いや、敵襲じゃなくて私の銃声」
「朝っぱらから何やってんのよあんたは!!」
「モーニングショット」
「意味が分かんないわよ! 全くもう、人騒がせなんだから」
白雪を護衛し始めて数日……
口調からも朝からイラついてるのが分かる。
ちょっとした物音でも、夜に彼女は銃を取り出して部屋の中を警戒する。
気負い過ぎなんだよね。
でもこの展開はある意味、ジャンヌの筋書き通りかもね。
白雪も白雪でキンジの傍にいる彼女が気に入らないのか、いちいち難癖を付けているのも神崎の不機嫌を増長させてる。
そして、結果としてその
まあ、私に関しては口先三寸で言いくるめられるけどキンジにはそう言う技能はない。
女性を
ヒステリアモード――もといHSSに限らずに。
簡単に言えば、天然と言うやつだね。
話を戻せば、舌が回らないキンジは神崎の理不尽な暴力にあってると。
要するにいつも通りだね。
時々は私も
ほどほどにって言うやつだよ。
「それはそうと、朝ご飯出来てるからさっさと顔でも洗って着替えなよー」
私はそれだけ言って、部屋から出て行く。
放課後――
夕焼けの校門に背中を預けて私は待ち人が来るのを待つ。
別に待ち人って言っても彼氏が来るのを待ってる訳ではないけどね。
そんな事を考えてる内に、校門から白雪とキンジの2人組が出てくる。
「――わっ!」
「ひゃうっ!」
うん、白雪の驚きの顔で待ち時間の退屈さは解消された。
「相変わらずイタズラが好きだな」
「悪いね。人の反応を見るのが性分だから、ついやっちゃうんだ。褒めても良いんだよ?」
「褒める要素がないぞ……」
呆れた感じでキンジは私を見ながら言って、白雪はそんな私にクスリと微笑む。
それから私は正面左からキンジ、白雪、私の順番になる様に並ぶ。
出来るだけキンジと白雪がよく話せるように、って言う私の気遣いだね。
私の知らない色々な事を喋ってくれるといいかな~……なんて思ったりしながら話題を振る。
「今日、アドシアードの会議だったんだよね」
「あ、ああ……女子ばっかりで居心地がよくなかったけどな」
それはキンジにとってヒステリアモード的な意味も含んでそうだね。
ただ、それを女性である白雪の前で言うのはどうかと思うけどね。
「ゴメンね、キンちゃん。何だか付き合わせちゃって……」
「いや、これもボディーガードの
「う、うん。そうだよね……」
キンジの回答にちょっと不満そうな顔をする白雪。
大方、キンジが白雪に付き添ってるのはボディーガードだからと言う依頼による理由。
自分と一緒にいたいと言う意思でいる訳じゃないって事を白雪は分かってるんだろうね。
だから残念に思って、そんな不満そうで悲しそうな顔をしてる。
すぐに白雪は、話を切り替える。
「そう言えば今日の会議、どうだった? 私、変じゃなかったかな?」
「みんなに頼られて、信頼されてる感じがしたよ。どこも変じゃなかった」
「そっか……キンちゃんに褒められるなんて、嬉しいな」
白雪はそう言って恥ずかしそうに微笑んだ。
嬉しいのは分かるけど、前方不注意だよ。
そう思いながらもさりげなく白雪の背後に回って彼女の襟首を引っ張って避けさせる。
「ほら、電柱にぶつかるよ」
「ご、ごめんなさい……霧さん」
「全く、何やってんだよ」
「あう」
キンジに呆れられて彼女は別の意味で恥ずかしそうに顔を伏せる。
「そう言えば……お前、アル=カタのチアには出ないのか? 他の人からも勧められてたろ」
「ううん……いいの。私は霧さんみたいに明るく振る舞えないし、内気だし、地味だから……見てる人も楽しめないよ」
まるで自分に自信がないように白雪は、キンジに対して答える。
「別に明るく振る舞おうだなんて考えなくていいのに、自然に楽しんでいればいつの間にか明るくもなってるよ」
私は言いながら、いつも通りに白雪に微笑みかける。
「無理だよ。私には出来ないし、それに……星伽に怒られちゃう」
「なんでだよ?」
「私はあまり大勢の前に出ちゃいけない。そう言う決まり……なの」
尋ねたキンジに、白雪はいつもと違うハッキリした感じで答えた。
決まりと言う事は……彼女の家がそう定めてるんだろうね。
星伽は割と閉鎖的な部分があるみたいだし。
「会議の時に買い物に誘われたのを断っていたのも、星伽か?」
「そうだよ」
「お、おいおい……いくら何でも――」
「いいの、キンちゃん。元々、星伽は守護の巫女……土地をあまり離れずに護る。そうやって先祖代々から受け継がれて来た。時代が変わっても、それはあまり変わらない。昔よりは外に出れるようになったけど、それでも星伽神社をあまり離れてはいけない決まりなの」
彼女の俯く視線。
何かを諦めてる様な、そんな顔。
うーん……実に私が好きそうな話だね。
家の秩序に縛られ、伝統に縛られ、だけど外へと憧れるお姫様。
そして彼女は外へと連れ出してくれる王子様を無意識の内に待っている……自分で考えてて、なんだかお
まあその王子様はとんでもない朴念仁どころか朴念神みたいな感じだけどね。
うん、自分で言ってて上手いのかどうかよく分からない。
イ・ウーでの公用語だから私も結構な年月を使ってるんだけどね……日本語って難しい。
「だから私が武偵高に来る事も、本当はすごく反対されたよ……」
「だけど、お前は出て来たんだろ? そんな習わしは素直に守る必要もない。今からでもあいつらと一緒に出かけて来いよ」
いつの間にやら私は空気だね。
いや、別にいいんだけどね。
色々と話を聞けるし。
それからキンジの言葉に白雪は首を振る。
「ううん……いいの。それに、今は護衛中だし」
「護衛って、
また、『いない』なんて決めつけちゃって。
って、私も責任を取る立場なんだった。
教務科からの正式な依頼だし。
「うん、そうだよね。
「……外が怖いってお前」
「だって、私……小学校や中学校だって家や学校の外に出た事なんてほとんどないし」
箱入り娘だった弊害って感じだね。
私だったらそんな窮屈な生活は勘弁願いたいところだよ。
そして、白雪はつまるところ――
「何も知らないから自信がないし、怖いのかな?」
「うん……霧さんの言う通り、私は皆の知ってる事を何も知らない。服も、音楽も、最近の流行とかも……全然分からないから」
それから白雪は顔を上げて笑顔で続ける。
「でも、いいの。私にはキンちゃんがいるから、大丈夫。他には何もいらないの」
「キンジ以外いらないって事は、私もいらないのか……悲しいね~」
「え、あ……ごめんなさい」
「冗談だよ。まあ、ちょっと毒舌だったかな?」
私はそう言って、イタズラっぽく微笑む。
ほんと、キンジがいなくなったらこの子はどうなるんだろう。
なんて思いながらもキンジを見れば……なにやら物憂げで、なにやら心当たりがあるようなそんな感じの表情で白雪を見ていた。
夜の10時ごろ――
キンジ、白雪の3人で帰ってる途中で神崎に呼ばれて一緒に
いい感じに夜が広がってる。
こう言う日は散歩に出かけたくなるんだよね……大きい衝動はないから出かける必要もないけど。
そして、今はキンジの部屋に帰る最中。
「全く、急に連絡して来たと思ったら調査に付き合えだなんて」
「仕方ないじゃないの。あんたぐらいしか、付き合ってくれる人がいないんだから」
「武偵なんだからお金で依頼すればいいでしょ……」
「アドシアード期間中だから、どこも忙しいのよ」
「もうちょっと友達増やせばいいのに」
「……イヤミ?」
「いいや、事実だよ」
そう言って神崎を横目に見れば、「……ぐぬぬ」と少し悔しそうな顔をしてる。
私と口論しようとすれば簡単に負けるから、なかなかに言いだせないんだろうね。
キンジの時みたいに勢いに任せて銃を撃てばいいんだろうけど、直感で私の報復が怖いんだろう。
やられた場合、私は薬でも盛ってAV鑑賞の刑で反撃するつもり。
悪いけど、キンジみたいにやられて我慢できるほど受け身じゃないんだよね。
つまりは基本的にやられたらやり返す主義な訳だけど。
「「ただいまー」」
ドアを開けた瞬間に私と神崎の声が重なり、
「キンちゃんお願い! 離して!」
遅れて白雪、
「いいから、おとなしくしてろって!」
続いてキンジの声。
そして、私と神崎の目に飛び込んできた光景は――
上半身裸のキンジと巫女服がなぜかはだけてる白雪がもつれ合い、暴れてる所だった。
私達の声を聞いてもつれ合ってる2人は顔をこっちに向ける。
目と目が合う瞬間、見られていると気付いたキンジと白雪。
私はいつも通りの笑顔。
私の隣からは不穏な空気。
この状況で取るべき行動は、
「お邪魔しましたー」
何も見なかった事にする。
しばらく時間を置けばきっとキンジは一皮むけてるはず。
そう思って扉を閉めようとすると神崎がバンッ! と、私が閉めようとした扉を手で抑えた。
「この……バカチンのバカキンジぃぃぃぃぃッ!!」
「おっと」
神崎がももまんの入った紙袋を手放してガバメントを取り出した。
代わりに私が自由落下する紙袋をキャッチ。
「ちょ、ちょっと待て!」
「言い訳なら聞かないわよ! なに!? ちょっと任せたらこの有り様ってどう言う事よ!」
響くガバメントの連射音に負けないぐらいの大きな声で、神崎はずんずんとテンポよく歩いて行く。
そして、逆にキンジは叫びながら後退する。
(きっとこれも誤解なんだろうなー)
なんて、私は内心思っていた。
大体、ヘタレのキンジが自分から手を出す筈がない。
ヒステリアモードを知っている私はその事を理解してるけど……神崎の場合は違う。
彼女の場合は本気でキンジがグレーゾーンの行動をすると思ってる。
服を脱がしたりとか、色々と触ったりとか。
「もうやめて! アリア、負け惜しみなんて見苦しいよ!」
「一体! いつ! あたしが負けたのよ!」
キンジを庇うように白雪が神崎の
「あれは、合意の上だったんだよ! だからキンちゃんは悪くない!」
「ご、合意の上ですって……ッ!?」
「そうだよ! 私から服を脱ごうとしたの! アリアは見せるものがないからって、キンちゃんにやつあたりはよくないよ!」
うーん、それは何かずれてるんじゃないかなー……白雪。
それから神崎は顔をリンゴみたいに赤くして、いや彼女の場合は色合い的にサクランボかな?
とにかく、いつもの
怒りも混じってそうだけど。
「あたしの体型は関係ないでしょ!」
自分から言っちゃったよこの子。
まあ、白雪もそう言う意図で言ったんだろうけど神崎は半分自爆してる。
「それに例え合意の上であったとしてもっ!」
「――きゃんっ!?」
おっと、ここで神崎が白雪を華麗に一本背負い。
そのまま白雪はあえなく沈んだ。
「護衛対象とそういう関係になるなんて! 武偵失格! 人間失格!! 大失格ぅーーー!!」
さらにキンジは神崎に迫られベランダに追い込まれた! 後がない!
って、これはマズイかな。
キンジ裸だし……
前から思ってたけど、今の生活は退屈してない代わりに余計な手間が増えたよね。
「風穴の刑っ!」
神崎の叫びと共に放たれる銃弾。
そして、キンジはベランダを飛び降りた。
見えたのはベランダの手すりにワイヤーを引っ掛けたところだった。
同時に私も荷物を置いてベランダへと駆ける。
神崎はベランダから外へと身を乗り出してる。
その後に聞こえる一発の銃声。
やると思ったよ……
ほぼ銃声と一緒に私もベランダから飛び降り、キンジがやったようにベルトのワイヤーをベランダの手すりに引っ掛ける。
「霧っ!?」
驚いてるね、キンジ。
それから神崎にワイヤーを銃弾で切られて落ちるキンジの手を掴む。
「ふいー、間に合っ――」
プチッ!
……あれ?
「さすがに2人は無理があったかー……」
しかも落ちる勢いがあるから、負荷が掛かり過ぎたせいでワイヤーが切れた。
残念ながらフックショットはメンテナンス中でないんだよ。
「何を冷静に言ってんだぁぁぁぁ!」
結局、助けた意味もなくキンジの叫び声と一緒に私も東京湾に落ちたのだった。
MMD艦これドラマ、面白いよね。