「帰っているか、薬屋の息子」
薬屋に来て、あたしが声をかけるけど返事はない。
ふ、ふ、ふ、薬屋の息子は気弱そうだったから、あたしも話しやすいのだ。
強気の人って話しかけにくいよね?
あたしは念のため、店の奥まで見に行ってみる。
まあ、もしも少年が若さゆえの自家発電を隠れてしていたら見ないフリをしてあげよう。
奥の作業場に続く扉をドキドキしながら開けようとすると、中から知らない女性が出てきた。
「こ、こんな所にどうしてお前みたいな化物がいるのよっ!?」
何か失礼な事を言われた。
でも、あたしはオーガプリンセスだから人間からしたら化物なのかな?
考えてみたら初めて指摘されたと思う。
ところでこの女性、マントの下がチラリと見えたけど、水着みたいな露出度過多な服装だった。
うん、痴女って初めて見た。それとも露出魔と言うべきなのかな?
個人の趣味だから別にいいんだけど、男の露出魔は死ね! と思うけど、女の露出魔は可哀想な気持ちになってしまう。
何か、心を病むような事でもあったのかな?
あたしは少し優しい気持ちで、彼女に接してあげる事にした。
「貴女は何を苦しんでいるんだ? そんなになるまで自分を追い込んで何になる」
あたしの優しい言葉に痴女が激昂した。
お前みたいな化物に何が分かるんだ! とか、知ったような事を抜かすな! とか、このクレマンティーヌ様が! とか、色々言われた。
最初は可哀想な女性だと思って我慢して聞いていたけど、途中で面倒臭くなって頭を叩いたら気絶した。
何となくオートマトン達が、“お前、何やってんだよ!?”と言ってる気がする。
たぶん気のせいだと思うけど、あたしは女性を担ぐと宿屋に戻って介抱してあげた。もちろん介抱したのはオートマトンだ。
目を覚ました女性は、何か憑き物が落ちような表情になっていた。
頭を叩いたせいじゃないよね?
女性は色々と身の上話を始めた。何でも小さい頃から優秀な兄と比べられて、なんやらかんやらだったと言っていた。
詳しく知りたかったらオートマトンに聞いて欲しい。あたしは途中で眠ってしまったけど、オートマトンは親身になって聞いてあげたらしい。
翌朝に目を覚ましたら、痴女がオートマトンに懐いていたから間違いないだろう。
痴女は、クレマンティーヌと名乗ると仲間になってあげるとか言ってきた。
「仲間はいらん。あたしは一人で十分だ」
「あのさー、その状況で言っても説得力皆無だよー」
オートマトンに身嗜みを整えてもらいながら言ったのが失敗だった。
まあ、この痴女…クレマンティーヌからもボッチの気配がするから近くにいさせてあげてもいいかな?
はっ!? あたしはボッチじゃないけどね!
あたしは孤高を貫いているだけだ!
「仕方ない。我が部隊の広報部隊……は、評判が落ちそうだから、情報部隊として入隊を許可しよう」
一瞬、クレマンティーヌは口が回るから交渉係にしようかと思ったけど、痴女スタイルだとあたし達まで痴女だと思われかねない。
情報収集が得意らしいので、情報部隊に所属させる事にした。
「へえ、情報の大切さが分かるんだー。ところで隊員は何名いるのかなあ?」
「お前一人だから、隊長に任命する。職務に励め」
クレマンティーヌが“なによそれ!?”とか言って、感激していた。
入隊直後に隊長になれたのが嬉しかったのだろう。
ふふ、新たな部隊も得たことだし、周辺の調査に乗り出すとしよう。