異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第4話「王国の騎士」

あたしが気がつくと村人達が集まっていた。

 

オートマトンがあたしの前に立つ。

 

「何の用だ?」

 

あたしの代わりに村人と話してくれる。

 

あたしは指揮官だから気安く他人とは喋らないのだ。

 

オートマトンの後ろからコッソリと村人達を観察する。

 

その怯えた様子から察するに、あたし達に敵対する気になったわけではないみたい。

 

口下手なオートマトンが、根気よく聞き出してみたところ、先ほどの戦闘音に驚いただけみたいだ。

 

「盗賊らしき者達を退治しただけだ」

 

オートマトンの愛想の無い返事でも、村人達は安心したみたいだ。

 

盗賊を倒してくれた事に感謝してきた。

 

えっへん。

 

もっと感謝したまえ。

 

オートマトンの後ろで、あたしは胸を張る。

 

 

お昼のご飯はバーベキューだった。

 

オートマトン達がいっぱいのお肉を持ってきてくれたから、寛大なあたしは村人達にも振舞ってあげた。

 

オートマトン達は飲食が不要だから、どうせあたしだけでは食べきれないからだ。

 

見るからに栄養状態の悪そうな村人達は、喜んで食べている。

 

オートマトンが、あたしがマスター(指揮官)だと勝手に村人に告げたりしたから、あたしに礼を言ってくる。

 

まったく、面倒な事をしてくれる。いちいち返事をするのは疲れるのだ。

 

それに、ちっちゃな女の子が引っ付いてくる。

 

名前はネムというそうだ。

 

何が楽しいのか分からないけど、あたしの体をよじ登ろうとする。

 

肩まで登ったところで、ネムの姉らしき娘が慌てて来たと思ったら、ネムを引き剥がすと謝りながら連れていってしまった。

 

肩まで登れたご褒美に、ネムに何かをあげようと考えていたのに残念だ。

 

 

夕方までゴロゴロしながら、今後の事を考えていた。

 

王国に行くか。帝国に行くか。法国に行くか。竜王国に行くか。それとも…

 

「この村に住もうかな?」

 

そんな事を考えていたらオートマトンがまた報告してきた。

 

「マスター、この村に近付く騎馬がいます」

 

「そいつらも敵対勢力か?」

 

「現在は不明ですが、荒々しい雰囲気はあります」

 

「分かった。今朝と同じ場所で迎え撃つ」

 

疑わしきは罰しろだ。

 

この命の軽そうな世界で躊躇などしたら、即座にこちらが殺されるだろう。

 

そういえば今朝、探知系魔法であたし達を覗こうとした奴らのことも気になる。

 

もしかしたら、今こちらに向かっている奴らがそうなのか?

 

探知系魔法を弾かれたから、直接様子を見に来たのかもしれないよね。

 

あたしは気を引き締める。

 

「倒すより、捕まえて尋問すべきかも」

 

「イエス、マスター。捕縛を前提にした戦術に切り換えます」

 

あたしの独り言にオートマトンが応えてくれた。

 

 

あっさりと捕まえた。

 

縄でグルグル巻きにされた男達は、俺達は王国の騎士だとか、この方は戦士長だとか、訳の分からない事を口にする。

 

村長に確認しても、男達の装備は統一性がなく判断がつかないらしい。

 

「お前達が覗き見をしようとした奴らか?」

 

オートマトンが質問する。

 

「何の事だ?」

 

一人の男が答える。こいつかリーダーだろうか? どう見ても魔法が使えるような顔に見えない。ただの粗野なおっさんだった。

 

剣の腕も大したことないし、ただの野盗のようだ。

 

ただの野盗なら興味はない。この村を襲おうとしていたのなら村長に任せよう。

 

「ここで殺すか? それとも王国の衛兵に突き出すか?」

 

あたしは村長に直接聞いてみた。

 

バーベキューも一緒に食べたし、村人に直接話すことを許してやったのだ。

 

荒事に慣れていない村長は、殺す事には反対する。それに王国に罪人を引き渡せば、多少の報奨金が貰えるらしい。

 

こいつらが賞金首だったりすれば、その金額も上がるそうだ。

 

男達に罪人として王国に突き出す事にしたと告げると、全員が真っ青になっていたから、重罪人として賞金首になっている可能性が高いと思う。

 

これでこの世界のお金を手に入れられそうだ。

 

「クク、賞金は幾らかな」

 

あたしが喜んでいると、男達のリーダーらしき男が、諦めたように深い溜息をついていた。

 

 

あたし達は王国に向かう事にした。

 

村の防衛のために即席のゴーレムを数体ほど作ってあげた。

 

流石にあたしの大事なオートマトン達は、貸してあげれないからね。

 

それに、この村にはオーガプリンセスのあたしの匂いが残っているから、この辺の弱いモンスター達は近付かない筈だ。防衛は即席ゴーレムで十分だろう。

 

そういえば、ネムが王国に行ってみたいと言うので、観光がてら連れていく事にした。

 

ネムの両親や姉が恐縮していたが、気にするほどの事でもない。

 

ネムの一人や二人など負担にもならないと笑ってあげた。

 

するといつの間にか、ネムの姉のエンリも一緒に行く事になっていた。

 

この子は愛想がいい子なので、交渉役に良さそうだ。

 

あたしのオートマトン達は口下手だから、きっと衛兵への説明に時間がかかるだろう。エンリが一緒に来るならちょうど良かったと思う。

 

あたし?

 

あたしは前も言ったけど、指揮官だから前には出ないのだ。

 

そしてあたし達は盗賊共を連れながら王国へと向かった。

 

あたしとネムそしてエンリは、村の馬車で移動している。

 

オートマトン達は、先行部隊と護衛部隊に分かれて警戒に当たってくれている。

 

盗賊共は当然だけど、縄で縛ったままで歩かせている

 

村を出てすぐに先行部隊が、天使の群れに襲われかけたらしいけど、威嚇射撃だけで撃退出来たそうだ。

 

やっぱり、この世界は危険に満ちている。

 

野良天使がいるなんてビックリだよ。

 

 

 

 

 

 


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