異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第3話「蹂躙戦」

なるほど。

 

村人から話を聞いたところ、この村は王国と帝国と法国の三つの国の中間ぐらいの所にあるらしい。

 

三つの国とも、亜人が生きるには厳しい国のようだ。

 

ところでオーガって、亜人扱いなのかな?

 

とにかく、近場では生きにくそうだから足を伸ばして竜王国とかいう国に行ってみようかな。

 

村人では、国名しか知らないそうだけど、国名だけでもある程度は察しがつく。

 

竜の名を冠するからには竜が治める国か、または竜の如く強い軍事国家なのだろう。

 

そしてその辺りは、亜人も多く存在するという噂があるらしい。

 

これはきっと、“ククク、強さこそ正義、良い時代になったものだなあ”というノリの国だろう。

 

あたしの本領が発揮できそうだ。

 

オートマトンを間に挟んだ村人からの情報収集は思ったよりも時間がかかり、気付いたら日が沈んでいた。

 

「眠たい」

 

「イエス、マスター」

 

あたしはオートマトンに連れられて寝室に行き、今日もぐっすりと眠った。

 

 

翌朝、オートマトンに起こされた。

 

「マスター、村に接近する騎馬を発見しました」

 

「敵対勢力か?」

 

「イエス、マスター。騎士達には新しい血の汚れがあります。恐らくは問答無用で襲ってくると予想されます」

 

なるほど、つまり。

 

あたしは、ニヤリと嗤う。

 

「蹂躙の時間だ」

 

「イエス、マスター」

 

 

村の外に出てみると、すでに目視できる距離に武装した騎馬兵達が迫っていた。

 

「あいつらだけで全員か?」

 

「イエス、マスター。敵対勢力は前方の集団のみです」

 

うん、それなら分かりやすい。

 

あたしは遠距離用のオートマトン達に攻撃態勢に移るように命じる。

 

総勢、12機のオートマトン達が内蔵された銃火器を剥き出しにする。

 

そういえば、銃弾はどうなっているんだろう?

 

補給とか必要なのかな。

 

「お前達に銃弾の補給は必要か?」

 

分からないことは聞いてみる。

 

「イエス、マスター。私達の武装の補給は、平時に溜めている魔力を変換して医療・兵站部隊が備蓄しております」

 

「戦闘中にも補給出来るのか?」

 

「イエス、マスター。基本的に戦闘中は自分の魔力を銃弾に変換しながら戦闘を行うので、補給は不必要です。ですが、長期戦の場合は補給を行う事で継戦能力を飛躍的に上昇できます」

 

なるほど、オートマトンは機械人形なのに魔力を持っているんだね。

 

ファンタジー世界の謎だったけど、機械人形もファンタジーの産物だったのだ。

 

「マスター。敵対勢力を射程内に収めました」

 

そうこうしている内に、騎馬兵達が射程内に入ったみたいだ。

 

あたしはゴクリと喉を鳴らす。

 

これが現実なら、あたしの号令一つで人間が死ぬのだ。

 

あたしはその事に恐怖を……あれ、感じないね。

 

うーむ。これから人殺しをするというのに微塵も動揺していない。

 

きっとあたしは、敵に対しては容赦をしないタイプなのだろう。

 

まあ、馬に乗って槍を構えながら突進してくる奴らに同情しろって方が無理があるよね。

 

どう見ても彼奴らは、こちらを殺そうとしているもの。

 

「我が娘達よ。撃て」

 

「イエス、マスター。撃つ」

 

オートマトン達が一斉に射撃を始める。

 

周囲の地形を変えんとばかりに鳴り響く爆発音や炸裂音。腹の底にまで響く轟音にあたしは頼もしさを感じる。

 

オートマトン達は様々な銃器を使用している。連射性を重視したもの、貫通性を重視したもの、広範囲に散らばるもの、大砲みたいなのを撃ってるオートマトンもいる。

 

立ち上る爆炎や土埃に、そろそろ自分の出番かなと思い、あたしは愛用している棍棒を取り出す。

 

そう、棍棒だ。

 

オーガが、剣や槍を振り回すのは何か違うだろう。

 

もちろん、ただの棍棒ではない。

 

なんと神器級の棍棒なのだ。作るのには苦労したものだ。

 

オーガロードの頃なら丁度いい大きさだったけど、今のあたしには少し大きいかもしれない。

 

何しろ自分の背丈より大きいのだから。

 

でも、女戦士が巨大な棍棒を振り回すというのも味があっていいだろう。

 

とにかく、オートマトン達が遠距離攻撃で敵の気を引いてくれている内に、あたしは敵に接近しよう。

 

「マスター、敵対勢力の殲滅を確認しました」

 

あれ、あたしの出番なし?

 

あっさりと遠距離攻撃だけで終わってしまった。

 

どうやら敵は雑魚だったみたいだ。残念。

 

その時だった。

 

バチバチと何かが弾けるような音が聞こえた。

 

「マスター、探知系魔法を受けました。常時展開中の防御壁によって退けましたが、警戒体制レベルの上昇を具申します」

 

「分かった。任せる」

 

「イエス、マスター。警戒体制を通常レベルから戦闘レベルに引き上げます」

 

いきなりの状況にあたしが混乱する暇もなく、オートマトン達が対応してくれる。

 

オートマトン達が頼りになりすぎる。

 

よく考えてみると、あたしはオートマトン達に頼りきっている気がしないでもない。

 

もしもオートマトン達がいなかったら困っていただろう。なにしろご飯を出してくれる人がいないのだから。

 

複数の防御壁を展開してくれているオートマトン達を眺めながら、あたしはふと考えた。

 

オートマトン達は、あたしのことをどう思っているのだろう?

 

このオートマトン達は、“ユグドラシル”の限定イベントの迷宮でしか手に入らなかったオートマトンだ。

 

あたしはその外観が、現実での自分に少し似ていたから嬉しくて集めまくった。

 

名前も自分の本名を付けているぐらいだ。数が多いから、名前の後ろに1から60の数字を付けた手抜きだったけど。

 

怒っていないよね?

 

性能的には他のオートマトンと比較しても、少しだけ上なだけだから、わざわざ拾っている人はあたし以外にはいなかっただろう。

 

拾った後に、修理・起動イベントをクリアしないと使えないから面倒くさいのだ。

 

それを60回も繰り返したあたし。

 

流石は、あたしだね!

 

 

 

 


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