異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第34話「王都凱旋!」

あたし達はバーバリアンと共に王都へと向かうことにした。

 

バーバリアンはこれでも王子だから、きっと王都に帰れば豪華な馬車で凱旋パレードをするだろう。

 

ククク、あたしが王子の隣で手を振っていたら、きっとネム達は驚くことだろう。

 

あたしの気のせいかもしれないけど、最近のネム達は、あたしに対して憧れ的な視線を向けてくれる事が少なくなっている。必ずやこのパレードであたしへの評価を巻き返してやるぞ。

 

ところで、どうしてバーバリアンは王子なのにお供がいないの?

 

王国兵達は、あたし達を遠巻きにするだけで近付いてこようとしない。

 

「なんでも風貌が以前と違いすぎてて、本人なのか疑われてるらしいよー」

 

「イエス、マスター。そして、思考も別人となっているため、王も疑っているそうです」

 

「全ては私の不徳の致すところ。情けない王子とお笑い下さい」

 

なんだか面倒くさい話だね。

 なんだったら、王ごと疑っている兵士達を吹き飛ばしてあげようか? 

 

「プリンセス神の御慈悲に私は感涙を止める術を持ち得ません。ですが、この程度の逆境でプリンセス神の御慈悲に縋っては、私は私自身を許せなくなるでしょう。どうかプリンセス神は静かに見守ってて下さりますよう伏してお願い申し上げます」

 

ビックリした。

 

バーバリアンが難しい事を喋っているぞ。

 

バーバリアンも勉強するのかな?

まあ、一応は王子なのだから、知能も普通のバーバリアンよりは高いのだろう。

 

もちろん、知性派のあたしの足元にも及ばないけどね!

 

 

 

 

「ねえ、こいつがどうして知性派に拘るのかが分からないんだけど?」

 

「いいでしょう。クレマンティーヌには話しておきます。随分昔の話ですが、マスターが独り言で仰っていました。お金がなくて小学校に入学出来なかったと。その所為で碌な仕事に就けないと。小学校の正確な意味は分かりませんが、恐らくは学び舎の一種なのでしょう。その学び舎にお金がない所為で入学出来ず、マスターは随分と御苦労なされたようです」

 

「お、オーガにも学び舎があるんだ。そっちの方にビックリだねー。それにオーガの世界にも貨幣制度があるだなんて新発見だと思うよー」

 

「はい、私も同意見です。それに仕事と仰っていましたが、オーガにどのような職種があるのかは不明です」

 

「群れでの序列が関わってくるんじゃないのー? 下っ端は過酷な狩りをさせられて、偉い奴は獲物を喰らうだけとかさー」

 

「なるほど。確かにオーガロードの頃のマスターはボッチで狩りをしていました。よっぽど群れでの序列が低かったのでしょう」

 

「オーガロードって、伝説になるほどの存在なのに……オーガの世界は学歴社会なんだねー」

 

「はい。そして、抑圧され過ぎたマスターは、とうとうある日ブチ切れて他のオーガを皆殺しにしてしまいました」

 

「えぇっ!? そうなのっ!!」

 

「同族の血に塗れながら、オーガを統べる王を屠ったあの日…以前も言いましたが、マスターはオーガロードからオーガプリンセスへと進化したのです。そして、知性派を気取るだけの最低限の知能を手に入れました」

 

「あ、あはは…そうなんだー。下剋上の成功だねー。それに本当にオーガプリンセスになれて良かったよー」

 

「そうですね。オーガロードのままでしたら、きっと今頃は全人類と全面戦争になっていたでしょうね」

 

「ぜ、全面戦争って、こいつはそこまで凶暴な奴じゃないよねー?」

 

「これも以前に言いましたが、オーガロードだった頃のマスターは、人間を見つけたら問答無用で襲いかかる化け物でした。それは女子供も関係なくです」

 

「こ、こいつに殺されたオーガ達と、オーガの王に感謝すべきかも」

 

「ふふ、マスターの良い糧となってくれましたからね」

 

 

 

 

王都に到着する寸前で、風花聖典達が馬車を準備してくれた。

だけど、時間がなかったため余り豪華な馬車を用意出来なかったそうだ。

 

うーん。

 

確かに立派な馬車ではあるけど、王族が乗るには格が足らない気がする。

 

「そうだねー。これぐらいの馬車なら裕福な商人なら普通に乗り回しているレベルだもんねー」

 

クレマンティーヌも同意見のようだ。

 

せめて、王様が乗っている馬車レベルを希望したい。

 

ん?

 

王様が乗っている馬車?

 

そうかっ!!

 

王様の馬車を借りればいいんだ!!

 

「イエス、マスター。直ぐに馬車を献上させてきます」

 

オートマトンが素早く動いてくれた。

 

オートマトンは眷属達を引き連れて王様の所に行ってくれる。

 

おや、髭面の男がオートマトンに話しかけたぞ。

 

あ、オートマトンに殴られて吹っ飛んだ。

 

王様はそそくさと馬車を降りて、オートマトンに馬車を渡してくれた。

 

うむ。王様には代わりに風花聖典達が準備してくれた馬車を貸してあげよう。

 

感謝していいぞ!

 

あたし達は豪華な馬車に乗り込む。

 

馬車の前後には眷属達を並ばせる。

前方にはビーストマンとの死闘を生き抜いて迫力を増したオーガの戦士達が100体。

後方にはビーストマンの返り血で、その身が格好いい感じに染められているゴーレムが200体。

 

ククク、中々に壮観な眺めだろう。王都の住民達も喜ぶと思うぞ。

 

風花聖典達は、色々と事情があるとかで姿を消してしまった。

 

王国軍は先に王都へ向かわせることにした。

 

何故なら、主役は最後に登場するからだ!

 

王国軍が先に城門を潜っていった。

 

住民達の歓声が聞こえてくるぞ。

 

さあっ、次はあたし達の番だ!!

 

行くぞっ!!

 

 

 

 

バタン。

 

 

城門を閉じられた。

 

 

何故だっ!?

 

 

 

 

 


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