異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第29話「ナザリック」

久しぶりに冒険者ギルドに行ってみたけど、割のいい依頼はなかった。

 

どこかにお宝が眠っているダンジョンでもないかな?

 

「そういえば、アルシェ達が潜るとか言っていた遺跡はどうなのー?」

 

そういえば、そろそろアルシェ達が目的地に着く頃かな?

 

アルシェ達を魔法で覗き…じゃなくて見守っているオートマトンにアルシェの状況を尋ねる。

 

「そうですね。目的地までワーカー達の護衛をしていた冒険者の戦士に興味を示しているようでした。彼を見ているときは鼓動が少し早くなっていましたね」

 

よし、アルシェ達を呼び戻そう。

 

「今は遺跡に潜っているので、戦士とは別れています」

 

よし、あたしの方からいこう。

 

そして、そんな冒険者の戦士なんかよりあたしの方が凄いということをアルシェに教えてあげよう。

 

「あんた、やっぱりそういう趣味なわけ?」

 

「ふふ、マスターは友達を取られることが嫌なだけですよ」

 

「なるほど、子供役じゃなくて、本当に子供なわけね」

 

オートマトン! 変なこと言わないで!!

 

 

 

 

 あたし達はアルシェ達の下へと“精霊王の門”を使って転移した。

 

あれ?

 

遺跡の中じゃなくて、闘技場みたいだな。

 

アルシェ達はどこかな?

 

「向こうにいるよー」

 

クレマンティーヌが指さした先にアルシェ達がいた。誰かと話をしているみたいだ。

 

「ナザリックに許可なく土足で入り込んだ者に対し、無事に帰したことは私達が占拠して以来一度も無い。たとえお前達が勘違いしてようが、知らなかっただろうが、関係は無い。その命を以て愚かさを償え」

 

偉そうな骸骨がアルシェの仲間の戦士と話しているぞ。

 

「もし許可があったとしたら?」

 

「……何?」

 

「もし許可があったとしたら?」

 

何の許可だろう?

 

「……馬鹿な……いや……可能性は無いわけではない? ならば何故……ここに……」

 

骸骨がブツブツ言っている。気持ちの悪い骸骨だな。

 

「……誰がこのナザリックに入る許可を出した?」

 

ナザリック…?

 

どこかで聞いたことがあるような?

 

そうだ!

 

ペロロンナントカさんのギルド名だったな!

 

「あなたがご存知じゃないんですか、彼を」

 

おや、アルシェの仲間の戦士の人も、ペロロンナントカさんを知っているのか?

ところで、この人の名前は何ていうのかな?

 

あっ、骸骨の後ろにシャルティアがいるぞ!

 

相変わらずエロ可愛いぞ!!

 

「久しいな。シャルティア」

 

「えっ? あ、貴女はペロロンチーノ様の!」

 

思わず声をかけたあたしに、シャルティアは一瞬だけキョトンとした顔になったが、あたしの事を覚えていたみたいで、すぐに顔を輝かしてくれた。

 

あたしがカモン!とばかりに両腕を開くと、シャルティアが胸に飛び込んできてくれた。

 

おおっ!?

 

柔らかくていい匂いがするぞ!!

 

あたしがシャルティアを抱きしめて、アハハウフフといった感じにクルクルと回って楽しんでいると、無粋な骸骨が声をかけてきた。

 

「あのう、もしかして貴女は…」

 

さっきまでの偉そうな喋り方ではなく、どこぞの営業マンのような口調には聞き覚えがあった。

 

クソ…じゃなくて、モモンガ、久しぶり!

 

「お久しぶりです!! 貴女もこの世界に飛ばされていたんですね!!」

 

モモンガは、凄く嬉しそうに再会を喜んでいる。

 

その嬉しそうにしている姿を見ていると、あたしまで嬉しくなってきた。

 

うむ。昔の失言は忘れてやってもいいかな?

 

綺麗なメイド達を呼んで、あたし達の歓迎の宴の準備をさせているモモンガの姿を見ていると、そんな寛大な気持ちになるあたしだった。

 

「あんたは何様よ。って感じだねー」

 

「マスターは神様です。ププ…」

 

はっ!?

 

モモンガに神様ロールをしている事を知られたら引かれそうだ!

 

“ユグドラシル”と比べて、こっちの世界の者達のレベルが低い事をいい事にやりたい放題していると思われてしまうぞ!

 

あ、あたしは悪い事はやってないよね?

 

えっと、最初は盗賊退治をして、その後はアンデッド大量発生事件を解決して、竜王国も助けたし、友達も出来たし、優しい宗教も広めたな。そうだ! 八本指とかいう害虫退治もしたぞ!!

 

うんうん。あたしはいい事しかしてないね!!

 

良かった良かった。

 

おや、アルシェ達がポカンとして動きが止まっているぞ?

 

こっちにおいでよ。もうすぐモモンガが、ご馳走を食べさせてくれるよ。

 

 

 

 

モモンガが開いてくれた歓迎会のご馳走は凄かった。

 

帝国の最高級レストランすら相手にならないレベルだぞ。

 

アルシェ達は緊張しているのか、全然食べていない。食べないと勿体無いよ?

 

クレマンティーヌなんか、お代わりまでしてガツガツと食べているよ。

 

オートマトンは品良く食べている。流石だね。

 

あれ、モモンガも食べないの?

 

「いえ、私はアンデッドなので食事は不要なんですよ。私の事はお気になさらずにお食事を続けて下さい」

 

こんなに美味しいのに食べないのは勿体無いよ?

 

オートマトンも種族的に飲食不要だけど、【飲食可能】のアイテムをつけて食べてるよ。

 

あたしの言葉にモモンガが、“なんだって!?”と叫んだと思ったら、慌ててアイテムボックスを探って【飲食可能】の効果がついたアイテムを取り出して装着した。

 

その後は、クレマンティーヌとタメを張るほどの食欲をみせて“うう、なんて美味いんだ!”と口走りながらガツガツと食べまくっていた。

 

どうやら【飲食可能】のアイテムの存在を忘れていたみたいだな。

 

ペロロンチーノさん(さっきシャルティアが叫んでいたから覚えたぞ)は、モモンガは頭が切れるような事を言っていたと思うけど、本当はお馬鹿キャラなのかな?

 

あたしの言葉に、近くに座っていたシャルティアは、涙を流しながらガツガツと飢えたグールのように食べているモモンガを見ながら「意外な一面も魅力的でありんす」と訳のわからない事を言っている。

 

あたしは歓迎会の前に紹介された他の人にも目を向けてみる。

 

メガネをかけた悪魔はコメントを避けるようにサッとあたしの視線を躱すと、わざとらしくナプキンで口元を拭ったりしている。

 

虫の人は固まって動かなくなった。

 

双子のダークエルフは揃って、“アハハ”と乾いた笑いをするだけだった。

 

おっぱいの大きい美人さんには、是非おっぱいを揉ませて欲しい。

 

「お断り致しますわ。この胸はモモンガ様の所有物ですので」

 

なんとっ!?

 

この美人さんはモモンガのお嫁さんだったのか!!

 

あたしの言葉に美人さんは凄く嬉しそうな笑顔を見せてくれたけど、すぐにシャルティアと喧嘩を始めてしまった。

 

うむ。

 

どうやらモモンガを取り合っているみたいだな。

 

意外とモテるようだ。

 

この食いしん坊の骸骨は。

 

チラっと、メガネ悪魔を見る。

 

サッと視線を躱された。

 

 

 

 

 

 

 

 


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