異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第2話「現状把握」

「ふぁああ……おはよう」

 

『イエス、マスター』

 

あたしの挨拶にオートマトン達が一斉に挨拶を返してくれる。

 

「…おしっこ」

 

「イエス、マスター」

 

 オートマトンは、半分寝ぼけているあたしを簡易トイレの許に連れていってくれる。

 

ズボンを下されたところで完全に目が覚めて、自分ですると断ると、初めてオートマトンが表情を変えて残念そうにした。

 

次からはお願いした方がいいのかもしれない。

 

 

一晩が過ぎたけど、コンソールは相変わらず開かない。

 

朝食はオートマトンが雑炊を作ってくれていた。

 

「うん、美味しい」

 

あたしがポロリと漏らした言葉にオートマトンの表情が緩んだ。ような気がした。

 

美味しい雑炊を食べながら、あたしは昨日引っかかった事に気付く。

 

「味を感じる?」

 

ヴァーチャル技術の進歩は凄まじいけど、味覚はまだ再現出来ないはずだ。

 

あたしは嫌な予感を感じた。

 

「まさか、異世界転移とか?」

 

そんな小説とかでよく有る設定を思い出すけど、そんな非現実的なことが本当に起こるわけがない。

 

自分にそう言い聞かせようと思っても、頬に当たる風に、香ってくる草の匂い。

 

空を見上げると、作り物とは思えない蒼い空が広がっている。

 

とてもヴァーチャルとは思えない。

 

「どうして昨日は気付かなかったのだろう?」

 

一度気付いてしまえば、あたしの五感がこの世界が現実だと訴えてくる。

 

本当にここが異世界だったら、あたしは生きていけるのだろうか?

 

“ユグドラシル”では、他のプレイヤーから恐れられていたあたしだけど、現実ではか弱い女の子でしかなかった。

 

ここが“ユグドラシル”なのか、それとも全く別の世界なのかは分からないけど、頼れるもののない世界で一人なのだ、不安になっても仕方ないだろう。

 

「お代わり」

 

「イエス、マスター」

 

とりあえずは、“腹が減っては戦はできぬ”という言葉もあるから、お腹いっぱい食べておこう。

 

もしゃもしゃ。ごっくん。

 

 

お腹が膨れ、少しだけ余裕が出来たあたしは、現状を把握する事にした。

 

「周囲に敵はいる?」

 

「イエス、マスター。周辺10キロに敵性対象は確認出来ませんでした」

 

偵察用のオートマトンが答えてくれる。

 

「人間やモンスターはいた?」

 

「イエス、マスター。戦闘能力を持たない人間の村を発見しました。モンスターは低レベルのものを発見しましたが、我らの障害にはなり得ない強さしかありません」

 

あたしが眠っていた間に調べてくれたのか、オートマトンは淀みなく答えてくれる。

 

「そうか、とりあえず危険はなさそうだね」

 

あたしは胸を撫で下ろす。

 

何しろ、異世界なのだ。

 

慎重に慎重を期する必要があるだろう。

 

単純な殴り合いなら自信があるけど、普通に生きていく手段は考えてもよく分からない。

 

ここは自宅と会社を往復するだけで生きていけた世界とは違う。

 

小説なら冒険者になるのだろうけど、この世界にもあるのかな?

 

考えれば考えるほど不安になってくる。

 

あたしは不安を誤魔化すため、近くにいたオートマトンを抱きしめながら二度寝をする事にした。

 

腕の中のオートマトンは、機械人形の筈なのに人間の女の子のように柔らかくて、いい匂いがした。

 

薄れていく意識の中、これでもう仕事に行く必要がないのかも。そう思ったら少し嬉しく思えた。

 

 

「ふぁああ……おはよう」

 

『イエス、マスター。おはようございます』

 

あたしの挨拶にオートマトン達が一斉に挨拶を返してくれる。

 

「…おしっこ」

 

「イエス、マスター」

 

ボーとしたまま、あたしはオートマトンに簡易トイレに連れていってもらった。

 

お手伝いもしてもらった。少し恥ずかしいけど、意外といいかも。

 

スッキリしたあたしは、朝食よりも少しボリュームのある昼食を食べる。

 

もちろん、作ったのはオートマトンだ。

 

「村人はどんな人達なの?」

 

「イエス、マスター。学はありませんが、善良な村人といえます。森で捉えた生きたゴブリンを十匹ほどを目の前で蜂の巣にしたところ、我らの要求を素直に飲むことを承諾しました」

 

どうやら、事を荒立てずに済みそうだ。

 

まずは村人から情報を得てから、これからの事を考えよう。

 

こんな時に相談できる相手がいれば心強いのだろうか?

 

ユグドラシル時代にギルドを作っている人達がいたけど、あたしもギルドに入っていれば、ギルドの仲間達と転移出来たのかな?

 

まあ、あたしにギルドを一緒に作ってくれる相手はいなかったけど。

 

これは、あたしがボッチとかいうんじゃなくて、PK狩りをしていたから他のプレイヤーに嫌われていたからだ。

 

ホントだよ。

 

 


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